トリノ

Torino


ピエモンテ州の州都であり、スイスとフランスからの2本のアルプス街道の合流する地、それがトリノ。私の大好きな小説ナタリア・ギンズブルグの”Lessico famigliare”『ある家族の会話』の舞台であり、霧の街というイメージがあったのですが、私の訪れた2001年5月末は、異常気象といえる暑さでした。友人によれば、「なぜって“夏”が来たから!」とのこと。汗をかきながらの博物館・美術館めぐりでしたが、整然とした町並みは、やはり他のイタリアの都市とどこか違うと感じました。興味深い博物館をいくつも訪れることが出来たので、美術に限らず列挙して行こうと思います。すべて予約は、不要。

エジプト博物館 Museo Egizio
トリノにこんなに膨大な古代エジプトのコレクションがあったとは、驚きでした。世界でもカイロにつぐ規模だそうです。ひととおり見学するのに、少なくとも3時間は費やしました。
ヒエログリフの刻まれた石碑、動物の頭をした神々やファラオたちの巨大な石像、トトメス三世の岩窟神殿の再現等々。
大富豪の夫婦の墓内部もそのまま一室に再現されています。女性のミイラのつややかな黒髪には驚かされました。とにかく見ごたえあり。

サバウダ美術館 Galleria Sabauda
  上記エジプト博物館で時間と体力を使い果たし、閉館時間に迫られながらの駆け足の見学になってしまいました。こちらもまた膨大な量の絵画コレクションで、比較的小さい画面の油絵が多かったと記憶しています。王侯たちの肖像・静物・風景画多数。



リソルジメント博物館 Museo Nazionale del Risorgimento Italiano
イタリア国家統一運動(risorgimento)が繰り広げられた19世紀から、20世紀のファシズムの時代までのイタリア史を目でたどることができます。ただし、外国人には解説がないと、わからないことも多い。私が見学したときは、ちょうど小学生の一団がいたので、後ろについてまわって先生の説明を傍聴して参考にさせていただきました。
統一イタリア王国最初の議会場が再現されている展示もあり。


 モーレ・アントネッリアーナ Mole Antonelliana
19世紀後半に建造された、かつてはイタリア一の高さを誇った塔。
有料のエレベーター(透明張りの箱で高速、これに乗るだけでも高所恐怖症の筆者には、スリリングな体験でした)で昇る塔の頂上からは、トリノの町並みが一望できます。私の行った日は、あいにくの曇り空でしたが、それでも遠くにアルプスを眺望することができました。

この建物内に2000年国立映画博物館 Museo Nazionale del cinema がオープンしました。
映画が誕生する以前の幻灯、パノラマ、のぞき眼鏡などから始まり、映画の機材、衣装、小道具(最大の目玉はハリウッド大作の『十戒』の黄金の仔牛像)、ポスターなど種々の展示がなされています。また、場内には多くのモニターが設けられ、テーマごとに名画の断片を楽しむことが出来ます。天井がスクリーンになっていてベッドに寝転がって鑑賞する部屋までありました。とにかく映画好きにはこたえられない、ユニークで楽しい博物館です。
モーレ・アントネッリアーナから臨んだアルプス

イタリア統一後の王となったサヴォイア家の王宮Palazzo Realeは、庭園だけのぞいてきました。庭園だけなら、無料。
また、作家チェーザレ・パヴェーゼの自殺したホテルが駅の近くにあり、ここも今ではある種の名所となっているようでした。


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