ヴェネツィア

Venezia


ご存知のように、ヴェネツィアは世界に類をみない「海の都」で、主なる交通手段は、徒歩か船。運河をつなぐ橋を渡り、迷宮のような小路を歩くとき、切り取られた時間を保った空間が存在し得るのを感じます。と同時に、人々が生活を営んでいる「今」もきちんと感じられるので、私はこの都市が好きです。

アカデミア美術館 Le Gallerie dell'Accademia
ヴァポレット(水上バス)1、82番線 Accademia。
主な印象に残った作品
カルパッチョ 「聖ウルスラの物語」
ジェンティーレ・ベッリーニ 「聖十字架の奇跡」
これらの作品には、聖書に題材を借りて、15世紀当時のヴェネツィアの風景・風俗が活き活きと描かれています。
この後、ジョヴァンニ・ベッリーニから、フランドル派の影響を受けた田園風景が背景として描かれるようになる一方で、ヴェネツィアの街中の風景がほとんど描かれなくなるのが、ちょっと不思議です。

ジョルジョーネ 「嵐」
この美術館の至宝にして、美術史上の最大の謎といわれる主題を持つ、油彩画の名作。意外と小さい画面ですが、その色彩の鮮やかさ、瑞々しさには、「永遠」という言葉を信じさせるものがあります。

ティツィアーノ 「マリアの宮詣で」 「ピエタ」
前者は、ティツィアーノ中期=過渡期の作品で、構図のばらつきが指摘されますが、美術館の出口上にはめ込まれるように飾られ、アカデミア美術館のシンボルのようにも見えます。群集の表情がとてもリアルで、往時のヴェネツィアの人々に挨拶するような気持ちで、私は出口をくぐります。

後者はティツィアーノの遺作。90歳近い老人がこのような激しい生命力を噴出させたとは!怒れるマグダラのマリアが描かれているのは、珍しいのではないでしょうか。

予約必要なし。

フランケッティ美術館 Galleria Ca D’Oro Franchetti
ヴァポレット1番線Ca D’Oro
  大運河に面した名高いヴェネツィアン・ゴシックの邸宅カ・ドーロ内が、現在美術館となっています。

リアルト橋の側のドイツ人商館 Fonadaco dei tedeschi (現・中央郵便局)の外壁を飾っていたジョルジョーネとその弟子ティツィアーノのフレスコ画の断片が展示されています。
美術館のテラスから眺められる大運河は絶景。

予約必要なし。

ドイツ人商館(現・中央郵便局)

サンタ・マリア・グラリオーサ・デイ・フラーリ教会 Basilica di Santa Maria Gloriosa dei Frari
ヴァポレット1、82番線 S.Tomaより徒歩数分
14〜15世紀に建造されたゴシック様式の教会。
ティツィアーノ 「聖母被昇天」
中央後陣の主祭壇を飾る、ティツィアーノ初期の集大成。
上空を見上げる使徒たちのいる地上から、天使たちに押し上げられて天に上りつつある聖母、そして天上の神へと、黄金色の光がまばゆいばかりに増してゆく。未だにあるべき場所−祭壇−で輝きを保ち続けるその大画面は、何十分でも見飽きることがありません。

ティツィアーノ 「ペーザロの聖母」 
左側廊にある、やはりティツィアーノ初期の作品。聖母の衣の青色が瑞々しい。主人公の聖母子が斜めに配置されている構図が描かれた当時は、斬新だったとのこと。

ジョヴァンニ・ベッリーニ 「聖母と聖人の三幅対祭壇画」
つい見落としがちな場所、聖具室にある、ベッリーニならではの宗教画の佳作。硬く静謐な雰囲気を漂わせながら、暖かい血のかよう美しい聖母子です。
ティツィアーノの墓
1576年、ペストで死去したティツィアーノが眠る。現在のモニュメントは19世紀のもので、右側廊にあります。  
予約必要なし。

なお、今回のヴェネツィアの宿は、カステッロ地区にある友人宅に泊めてもらいました。5階の窓からの眺めが素晴らしく、これぞヴェネツィアの魂!と毎日感動していました。ここにその窓から写した写真を載せます。そのときにはほとんど気にならなかったテレビのアンテナが写真だと、ちょっと目障りですね・・・。


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