「イタリア映画祭2002」寸評

 

La Carbonara

ラ・カルボナーラ

 

2000年

   : ルイジ・マーニ

 

監督のルイジ・マーニは1928年生まれのベテランながら、本作が本邦初公開だという。
なんとも不思議なコメディ。昔流行った「ビザール」とか「オフ・ビート」という言葉があてはまりそう。

19世紀、イタリア国家統一運動(risorgimento)の時代、ローマ郊外で食堂「ラ・カルボナーラ」を切り盛りするのは、ちょっと年増の美女チェチーリア。彼女は、山賊のルポーネ(クラウディオ・アメンドーラ)とも通じ、独立運動を展開するカルボナーリ党員の逃亡を助けるような度胸と義侠心を持ち合わせている。その反面、未だに白馬の王子様(principe azzuro)を待っていたりもする。彼女の夫は3年前に誘拐され、死んだものと思われるのだが・・・。
そんなチェチーリアを取り巻くのは、おかしな男たちばかり。ルポーネの他にも、彼女の政治活動へのかかわりを疑いながらも想いを寄せていた・・・はずのオーストリア憲兵、何度目の前で破り捨てられてもめげずに彼女の肖像を描き続けるドイツ人画家等々。

そんなある日、枢機卿(大ベテラン、ニーノ・マンフレディ)誘拐を企てたカルボナーリ党一団が捕まる。その中に、チェチーリアの初恋の男ザッカーリア(ファブリツィオ・ジフーニ)がいたことから、物語はさらにおかしな方向に展開する。枢機卿も一筋縄ではいかない爺だし、ザッカーリアの告解を名乗り出た修道士(ヴァレリオ・マスタンドレア)がまたいわくありげ。
これ以上、ストーリーを書くと、これから見る人の楽しみを奪ってしまうのでここまでに。

この監督のユーモアのセンス、言葉では説明できない。実に独特の笑いの「壺」を持っているとしか言いようがない。

また、映像の美しさも一見に値する作品である。いかにもイタリアの空気をとらえた、暖かな色合いの画面(撮影:ダニロ・デジデーリ、美術・衣装:ルチア・ミリーゾラ)。特に厨房の描写が抜群にいい。リアルで絵画的。動く静物画といっても、よいくらい。だからこそ、チェチーリアの作るカルボナーラ・スパゲッテイの味まで伝わってくるかのように感じられるのだろう。

それにしても、この映画の終り方は、ほんとうに「変」だ。ハッピー・エンド?ともなんともつかない。皆様、機会があったら、ぜひこの「変」さを味わってください。『もうひとつの世界』も同様だが、ぜひ『ラ・カルボナーラ』も一般公開が望まれるところ。
つまるところ、我ら女性にとって「白馬の王子様」は、永遠のテーマということなのでしょうねえ。

 02/09/02

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