「イタリア映画祭2004」寸評

La meglio gioventu'

輝ける青春

2003年

監    督 : マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ
脚    本 : サンドロ・ペトラーリア、ステファノ・ルッリ
撮    影 : ロベルト・フォルツァ

2003年度ダヴィド・ディ・ドナテッロ賞作品賞受賞、イタリアの戦後史を描いた上映時間6時間
の長編映画。もともとは、連続テレビドラマとして企画されたものだという。

それなら、最初の企画どおり、テレビドラマにしておけばよかったのに。

これが、私の正直な感想である。
スタッフ・キャストともに渾身の力を込めて作っていることは認めよう。だが、こんなにまであれこもこれも詰め込みたいのなら、製作側も見る側もゆっくりと時間の取れるテレビドラマもしくは長編小説を表現手段とすべきだったのだ。
そして、『向かいの窓』も裸足で逃げ出す「製作側に都合のよい展開」の連続。
1966年から新しい世紀に至るまでの40年近い歳月が、ローマに住む中流の上のカラーティ家を追いながら流れるのだが、60年代トリノの学生運動、「鉛の時代」と呼ばれるテロの吹き荒れた70年代、シチリア・マフィア、Tangentopoli(贈収賄疑獄)の80年代、とにかくありとあらゆるイタリアを震撼させた事件がこの一家に係わってくる。この偶然勃発度は、一家が年がら年中宝くじに当たるくらいの頻度といえよう。

これらの中から、例えば、物語の発端で、カラーティ家の二人の兄弟ニコラ(ルイジ・ロ・カーショ)マッテオ(アレッシオ・ボーニ)のその後の人生に決定的な影響を与える精神病院改革運動、これだけをテーマに絞ってもよかったのではないかと思う。このパートのヒロインである心を病み虐待を受けていた少女ジョルジア(ジャスミン・トリンカ)は、その後は脇にまわってしまうのだが、彼女を物語り全体の軸となるマドンナにしてほしかった。
イタリアの戦後の大きな人権問題のひとつである精神病院改革を雄弁にテーマとして提示したことが、この映画の一番の功績ではないだろうか。

苦言を並べてしまったが、観客を疲れさせ倦ませたはしても、とにもかくにも「波乱万丈」で6時間持たせた製作陣の努力は買えると思う。そこに fantagia があれば、私ももっと楽しめたのだろうが、残念ながら、この映画はエピソードを並べ、つなげるのがすべてだった−ただ一箇所、ラストシーンの少し前に美しい fantagia が映像として現れる−。もちろん、これはイタリア映画の伝統といえる fantagia にこだわる私の感想なので、ストーリー重視で映画を見るとすれば、もっと楽しめる作品だと思う。

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2004年7月15日

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