1
夕方っていふのは寂しいんじあなくて豊かなものなんですね 「航海」
2
我々が望んでもとても適えられないものと思って自分に対して 「甘酸っぱい味」
吉田健一
海保青陵は武術の外書画ほど腹こなるるなしとぞ教えけり
石川淳
*海保青陵:江戸後期の儒者・経済学者。諸国を遊歴し、諸侯財政の商業化,武士の町人化,商売繁盛の秘策を説いた。広辞苑より
正岡子規
井戸の掻掘をする。汚い水を汲み出し汲み出し一滴もなくなったと思った時こんこんときれいな水が出てくる
橘曙覧
:たのしみは
1
たのしみは心をおかぬ友どちと笑ひかたりて腹をよるとき
2
たのしみはつねに好める焼豆腐うまくにたてて食わせける時
3
たのしみは門売りありく魚買ひてにる鍋の香を鼻かぐ時
4
たのしみは常にみなれれぬ鳥の来て軒遠からぬ樹に鳴きし時
5
たのしみはとぼしきままに人集め酒飲め物とを食へといふ時
橘曙覧;江戸末期の歌人・国学者。井出尚事とも称す。万葉調の歌をよくした。広辞苑
司馬遼太郎
士別れて三日なれば即ち当に刮目して相待つべし (風塵抄)
この田園の中で軒をよせあう集落ぜんぶが舟板塀をめぐらし (街道をゆく)
中勘助
ほほづき提灯みたやうにまっかいけな実がさがるなんてこたないけれど
すべて何も皆ことととのほりたるはあしきことなり しのこしたりを (徒然草八十二段)
酒井真人
吉田兼好
おほぞらはこひしき人のかたみかは物思ふごとにながめらるらむ
荒木田守武
落花枝にかへると見れば胡蝶かな
高橋新吉
何もないのだ分かったか わかるといふこともないのだ
留守と言へ ここは誰も居らぬと言へ 五億年経たら帰ってくる
金子みすず
すずと小鳥とそれからわたし みんなちがってみんないい
春風を得て花ひらく
盤珪和尚
過去も未来も只今ばかり心とめるより只歌うたへ
さとるさとるとこの頃せねば朝のねざめも気が軽い
一茶
目出度さは今年の蚊にも喰はれけり
上田秋成
悪をきらふを善じゃとおしやるきらふ心が悪じゃもの
高橋元吉
みずのたたへのふかければおもてにさはぐなみもなし ひともなげきのふかければいよよおもてぞしづかなる