嵐山遊行の句ども御尋、(中略)渡月の長橋、大井の清流見る度にあらたなるさま、絶景言尽くしがたく被存候。
    筏士の蓑やあらしの花ごろも

三軒茶屋に眺望して、酒うち呑て居るに、晋才其外二三客うちつれ、ともに杯を挙て夕暮かへらんとするに、
    花にくれて我家遠き野道かな

(中略)
ひとゝせ先に、嵐山の句とて
  嵯峨へかへる人はいづこの花に暮し

此句と「いかだしの蓑や」の句、愚老生涯嵐山の句也とつぶやくことに候。
        岩波文庫(蕪村書簡集)より
花に暮ぬ我すむ京に帰りなん 蕪村
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