GO
〔2001/10/20東映系公開〕

「国境線なんて、俺が消してやるよ。」



映画「GO」 は、在日韓国人3世である原作者・金城一紀氏の自伝的小説(第123回直木賞受賞文学作品)「GO」を映画化した作品。今までの概念を突き崩した鮮やかかつ爽快な“在日3世”を演じている。主人公・杉原の姿は、偏見に決して屈しないという“尊厳”を感じさせ、腕ひと周り分の世界をぶち破りながら自らのアイデンティティーに目覚め、成長してゆく青春“恋愛”物語。脚本は、「池袋ウエスト・ゲート・パーク」の脚本家で知られる宮藤官九朗氏による初の映画作品。金城氏自身の実体験をもとに書かれた原作とあって、日本という国が歴史的にも政治的にもおざなりにしてきた在日問題に触れながらも、決して作品に暗い影を落とさない行定監督の世界観によって、テンポあるポップな青春映画に仕上がっている。


主人公・杉原(窪塚洋介)は、民族学校に通っていたが「広い世界を見る」と日本人の高校へと進学する。そこであらためて“在日”という差別的な痛みを知るが、幼少期から父に叩きこまれてきたボクシングのおかげで、向かうところ敵なしのつわものとして名を轟かせていた。そんな彼も、一人の日本人少女・桜井(柴咲コウ)に恋をした事から、本当の意味でリアルに“在日”と向き合い、恋に悩み傷つくという体験をする。民族意識や国境を超え、自分の前に立ちはだかる壁を突き破りながら成長してゆく姿が見事に描かれている。


この映画は韓国・釜山国際映画祭でも上映され、韓国の若者に支持された事は、日本人の私達にとっても感慨深い思い出となった。両国にまたがる諸問題は多くの課題を残してはいるものの、次のステップに向かって一歩一歩前進していかなければならないことを考えさせられる。これからの時代を背負う若者達がきっとその壁を乗り越えてくれるのだと、新たな明日への希望を感じる爽やかな作品だ。


2001年度の錚々たる映画賞を受賞し、中でも日本アカデミー賞最優秀主演男優賞は、最年少の受賞を成し遂げた。行定監督がこの映画を撮影するにあたって、「2001年6月の窪塚洋介のポートレートを撮りたい」と言われていたことを思い出す。彼の魅力を余すところなく作品に投影してくださった監督に、心からエールを贈らせていただきたいと思います。 そしてもちろん、窪塚洋介の代表作であることには違いありません。これからも信じる夢に向かってGO!





「名前ってなに?。バラと呼んでいるその花を 
             別の名前にしてみても 美しい香りはそのまま」



とは、シェークスピアの「ロミオとジュリエット」の一節。
暗い時代を背負ってきた父(山崎 努)とぶつかり合いながら、それでも広い世界が見たいと飛び出した杉原。恋愛というきわめて“メンタル”な部分で、私達によりリアルな体験としての「在日」問題を考えさせた意味合いは大きいといえる。「名前なんかどうだっていいじゃん。」そう言い放つ桜井(柴咲コウ)も、彼の“在日”告白に怯え、彼女自身もまた傷つく。それでもやはり、“カッコイイ杉原”へ戻っていく心情は、人を愛するという極めてシンプルな少女の気持ちを投影している。その姿は、社会的偏見という痛みを伴った問題から決して目をそむけさせずに、身近な恋愛というものを通してとても分かりやすく私達に感じさせてくれた。そして、彼らがその最初のハードルをひょいと飛び越えてみせてくれたのだ。


「・・・広い世界を見ろ・・・。」


杉原の父(山崎 努)が、杉原に海を見ながら語るセリフ。山崎さん扮する父との数々のシーンは、セリフで語られる以上に観るものを惹き付けた。
自分を知る、自分の生きている世界を知る、歴史、政治・・・。役作りにおいて、たくさんの書物に触れた彼は、自ら去勢された社会に汲みこまれてきたと感じ、大事なものが記号化される現代にあって、杉原が大声で叫ぶ「俺は俺だ!」と言うセリフは、まさに自身の言葉でもあったと語る。彼自身もある意味で「広い世界」に目を向けたのだ。この役と出会い、自らも自分の生きている世界のことを考えたと言う。ちょうど公開前、ニューヨーク多発テロ勃発の最中だったこともあり、自らのアイデンティティーの成長をも感じさせた力強い「戦争反対」のメッセージは、内外に波紋を投げかけながらも、わたし達に直球を放っていくれた。
当時放たれたくさんのメッセージ。これらが、ヒリヒリとした痛みを伴って吐き出された時期でもある。と共に、いままでの俳優・窪塚洋介というイメージそのものを突き崩そうという気持ちが、私達を驚かせたことも事実だ。そういう意味でも、彼自身が大きく変化を遂げる過程にあった作品だったことに違いない。


「広い世界を見ろ”ということは、たくさんの価値観に触れろということで、その中から、自分の一番気持ちがいい価値観を掴み取れということです。」 


OnlyOne! yosuke fan's Web
UP 
UP


【GO・DVD】

©東映ビデオ(DVD)



【メイキング・オブGO】

©東映ビデオ(DVD)


(文:yuma ・2002/11)
 <Staff>
 公開日 2001.10.20 / 監督:行定 勲 
  原作 金城一紀 (2000年第123回直木賞受賞作品)
  脚本 宮藤官九朗
   配給 東映 /制作 東映(株)、スターマックス社(韓国)の共同制作
   市販ソフト 「メイキング・オブ・GO」DVD(41分東映ビデオ)/レンタルV
  「GO」DVD(122分東映ビデオ)
   主題歌 「幸せのありか-theme of GO-」 カレイドスコープ
 
 <Date>
  配給:東映

Copyright © 2001.6 ゆま All rights reserved. *“Only One!yosuke's fan” is a private web site managed by yuma.