Red zone
2013, 435x607mm
文字通り、「警戒区域」をテーマとしたかった。本来、警戒区域であれば呼称は
「Danger zone」なのだが、あまりに直裁過ぎるタイトルだと思ったので、赤をきかせた
作品だし「Red zone」とした。
着衣も無く「危険」と言うテープを貼られた人物、彼岸花の群生、何も無い空に浮
かぶ月など、まさに「死に覆われた土地」をイメージしたのだが、あまりにテーマが重
過ぎて、途中から絵に向かうと体調が悪くなって来て、どうにも先に進まない作品と
なって来た。一時は廃棄する事さえ考えたのだが、救いとして画面右奥に教会を付
け加えて、ようやく画面が落ち着いた。
最初は教会が無く、海の向こうには、もっと重たげに山脈が並んでいた。下描きが
済んでからの構図の変更は滅多に行わないのだが、これは大幅変更となったので、
下絵を消すのに苦労した。今は、作品に救いを見せただけに、とても気に入った作
品となっている。
この作品は、「Spes」他、小品数点と共に「Red Zone」として、「3331千代田芸術祭
2013」の「3331アンデパンダン」に出展した。3.11以降ずっと、目に見える異変は
無いのに、放射能汚染によって警戒区域となった土地と言うものに、不条理さと憤
り、虚しさと言ったものを感じていた。そのため、危険な原発を造って、事故の後は
人間だけ避難させるしか出来ない、そんな人間のエゴによって見捨てられた土地
に、取り残された生物や魂を表現してみたかった。