大阪ダービー
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 セレッソのデキが不可解だった。森島が西澤のポストプレーのヘディングを拾える位置つまり真ん中にはいなくてサイドにいることが多く、西谷がベンチ。韓国コンビが精彩を欠いていたのはコンディション不良としても解せない事が多かった。ナビスコ杯による疲労は両チームともに明らかで、むしろ延長戦PKになったガンバのほうが疲労は色濃い。その疲労が、ガンバの若手の大人の試合運びに繋がったのかもしれないというのは整合性のある見方である。実際、試合後のコメントを新聞その他で拾ってみると、稲本あたりも「ガマンしてれば相手の運動量が落ちてくる。85分過ぎが勝負だと思った。」と言っている。スタンドから見ていて、「走れない」というよりも「走らない」という印象は確かにあった。だんだん、稲本ら若手も自制が効くようになってきている事も間違いない。
 しかし、私はもう以下ふたつ別のポイントからこの試合は見てみたい。

1.1stステージが敗因を解析した上でのセレッソの戦略
2.ガンバの守備コンセプト
である。

1.について
優勝まであと一歩まで迫ったセレッソに勝った数少ないチームのひとつがガンバである。雪辱を期して対戦相手のスカウティングと1stの敗因追求は綿密に行われたはずである。ましてや副島監督はセレッソのコーチになる前はガンバでサテライト監督を務めており稲本のトップ昇格を強く勧め宮本や新井場にとっても重要な恩師の一人にあたる。ガンバに対する傾向と対策は十分立てられる人材である。私は1stの勝因は宮本が森島に対してしつこいチェックをしたからだと思っている。西澤にはダンブリーが蛇腹の足と身体能力でマンマーク。これでセレッソは前線に蓋をされてしまう。西澤のポストプレーは単なる攻撃における武器だけではなく守備に休息をもたらせ、中盤の押し上げのスイッチになっている。森島はこぼれ玉を拾うだけでなく、西澤が使うスペースを作ったり、西澤のマークを混乱させる役目も担っているのだが、そこを宮本が混乱することなく対処する。そう前線のパフォーマンスが落ちることはセレッソにとって死活問題なのだ。元々、セレッソはガンバは真ん中がしっかりしているからサイドから攻めるという傾向がある。(森島もそう明言している)元から稲本、宮本のタテのラインは苦手としているのだ。

 前節の試合では森島は宮本から遠いところに位置することが多かった。それはサイドに張るためではなく、宮本から遠い位置にいることが重要なのではなかったのか?すると西澤のポストプレーは誰がひろうのだろう?西谷はベンチだし、韓国コンビはコンディションが悪い。そう、この試合の西澤はポストプレーヤーではなくリアルストライカーであることを期待されているように思えた。ボールは落とされるのではなくガンバゴールに向かっていた。

 けれど、西澤も途中で投入された上村もゴールを割れなかった。ここで一般に流布する誤ったイメージについてひとつ釘を指したい。私は今期のセレッソ対エスパルスもスタジアムで見て「ポストプレーの成功と小島の不調」を書いた。エスパルスの3バックは西澤のポストプレーを全く阻めなかった。しかし、宮本或いはダンブリーは西澤と上村のポストをほとんどケアしていた。特に宮本が西澤、上村に競り負けるシーンなどなく、私にはかえって森岡のほうが余程弱々しげに見えたくらいだった。セレッソを止めるにはガンバがおそらく見本となる。しかし、それは「耐えて勝つ」などという精神論では決してなく、サッカーにおける論理性がキチンとある。

 副島が施したガンバ対策はおそらく間違っていない。1stに比べてガンバはニーノというポストプレーヤーを手にしていた。このことによって守備の負担は軽くなっていたし、かつての愛弟子達は連敗や代表経験から少し大人になったいたからだ。

2.ガンバの守備コンセプト
上段1.で述べたサッカーにおける論理性とは、この試合ではガンバの守備コンセプトである。吉原が前線からチェイシングを開始するが、中盤はコースを切ることで敵のプレーの選択肢を狭める程度にしておいて最終ラインで効率的にボールを処理する。カウンターを食らってもDFはシュートコースを消すことと、良い形で撃たせないことに主眼を置いて対処する。むろん、GKには最大限働いて貰う。そのためにGKの視界を確保することとGKの取れない角度をDFがケアするという連携は重要な武器である。これらの守備コンセプトに基づいて、逐一状況判断を下して味方守備陣を動かす宮本はまさにガンバの心臓。敵味方の位置と角度、ゴールへの距離、敵の視界と味方の視界、おそらくこんな情報を高速処理して分かりやすい指示に変換して言葉を発しているのだろう。だからファインセーブを連発した都築が「ツネさんのおかげ」とコメントするのには論理的な理由がここにある。一見すると都築が大当たりに見れるだけで、ガンバの内容は良くないように見えたかもしれない。しかし、4連勝中で内容は一番良かった。それは守備コンセプトが組織的に一番明確だったのがこの試合だったからである。


大阪ダービーを振り返ると、ガンバの良くないところは個人に帰結する部分であった。小島の不調と、新井場、柳本の守備のポカミス。セレッソ痛恨の一撃はシステム変更時に体制が整わない時間帯を見事にカウンターでつかれたことだろう。私にはそれが副島対宮本の勝負であったようにすら思えた。

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