angel's cheek

2nd early morning

乱れた吐息を必死に制しようとしている背中を掻き寄せる。
コートに立つ不二の背中はいつもすっとしていて、伸びた姿態はすごく相手を威嚇するほどの静寂がある。
試合が進む程に乱れる呼吸にもリズムがある。
空気を求めて上下する背中。
プレイしているときと違うのは、乱れたままのリズム。必死に次の手を避けようとする腕を拾って、抱き込んでしまうと一瞬息を詰める。
僅かな身動ぎも何も許したくなくて、そのまま覆うようにベッドに抱き伏せると不二が「助けて」と、泣いた。
胸に感じる君のぬくもりだけが世界で実感できる。
苦しいと泣く肩を返すと、綺麗な茶色の瞳からただ何筋かの涙が流れて頬を汚してる。
そっと目の縁を指先で拭う。
必死に正気を保とうする姿をみると、より離しがたいと思ってしまうのは俺がおかしいんだろうか?
初めから求めたのは俺。享受してくれたのは不二で。
自信なんてない。ただ離したくない。それだけなんだ。
風が窓を揺した途端、跳ねる体を幸いと掬い上げる。
混乱してる君の正気に取り繕う隙を与えないよう、痛みを掘り起こす。

手塚ぁ。

もう君の唇から溢れるのはそれ以上の言葉にはならない。
それでいい。
今から俺しかみないでくれ。
一緒にもうなにも考えられなくなるほどに。
すべての神経がなにもかも過敏になってるようで、いちいち反応してしまう。
汗に湿った首筋に歯を立てると、不二が押さえきれない声をシーツに落とす。
駄目だろう? どんなものにも君の欠片も与えたくないんだ。
君に恋してから、俺はもう俺じゃなくなっている。本当の自分なんて何処にいるだろう?
これが自分だっていうのか?
これが俺の中に隠れていた自分だというなら、それは君が暴き出したんだ。
細くしなやかな身体の抵抗もすべて身の奥に感じて、何度となく、揺り合うと不二が狂ったように髪を振リ乱す。
何度でも抱きしめて、唇を合わせる。どうしようもないほどに、震える舌先を探ると、逃げる端から声から痙攣している。
すまないなんて思わない。
君が悪いんだ。
捨てきれない現実から、その臆病なくらいの君の躊躇いを俺はどうすればいい?
だから、もう今から俺しかみないでくれ。
一緒にもうなにも考えられなくなるほどに。
そんな時間をこうして感じあって。
どんな風に君に、この思いを伝えれば、君の不安をぬぐうことができるのか。
俺はとうに君にすべて奪われてしまった。
今日こうして感じているぬくもりをずっと心からつないでいたい。
そう思っている。
今日、君を愛すように。今夜、君と愛すように。
君のすべてを守り奪うよ。
もう言葉はならない。
今宵、この夜に。
今はもう君しかみえないから。
言葉ではもうごまかしたりしない。何も隠せない。この瞬間なんて、ほしいものなんて何もない。
ただここでずっと君の情熱を感じるまま、受け止めていよう。
ほら、流れる調べも乱れる。
触れるまま、に。

きっとこうして君をみつめるうちに、窓の外では明けの月が淡く沈むだろう。
そして、この夜がおわるけれど、ただ君とずっとこのまま一緒にいたい。

これからも。






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