アンナプルナT峰登頂と8000メートル峰 
全14座完登「ドリームプロジェクト」の成功を祝って
明治大学体育会山岳部部長 小疇 尚
アンナプルナT峰登頂おめでとう----。
山本篤隊長、高橋和弘登攀隊長以下、隊員シェルパの皆さん、本当にご苦労様でした。
 待ちに待った登頂成功の吉報が飛び込んできたのは、炉辺会総会の前日5月16日の夕刻でした。50年前、エベレスト初登頂の報らせが、エリザベス女王の戴冠式直前にもたらされた故事を思い起こさせる、この上ないタイミングでありました。
 しかもこのアンナプルナT峰の成功で、山岳部員・炉辺会員による、8000メートル峰全14座登頂が達成されただけに、喜びも格別です。
 悪天候にくじけることなく、粘りに粘って、唯一とも云える僅かなチャンスをものにした、山本隊長の見事な采配と、気力の充実した隊員の強固なチームワークに心から敬意を表したい。惜しくも全員登頂は逸しましたが、いさぎよくサポートにまわった大窪、松本の二人の判断も立派でした。
 今春のヒマラヤは天候不良で、キャラバン中も昼からは雨。ベースキャンプでも私の滞在中は、アンナプルナ南壁が朝方には素晴らしいモルゲンロートに輝くものの、昼前後には雲におおわれて雪がふりだし、雷鳴がとどろくという天気が続きました。
 この時期なら、もう少し南にあるはずの亜熱帯ジェット気流の軸が、しばしば北に振れるのか、頂稜からは雪煙がたちのぼり、南から暗雲が押し寄せていました。
 登頂時には頂上は、国旗やペナントを取り出せないほど強風であったという。不順な天候の中での登頂成功は、極めて的中率の高いピンポイントの天気予報に寄るところが大であった。気象情報を提供して下さった日本気象協会の関係者に謝意を表したい。
 8000メートル峰全山登頂者が何人もいる現在、一大学の記録にそれほど意味があるのか、という声もあるでしょう。
 しかし、1995年のガングスタン遠征以降、1997年マナスル、2001年ガッシャーブルムT峰・U峰、2002年ローツェと明大隊としてのヒマラヤ登山では全員登頂を果たしてきました。
 そのMACが人類初の8000メートル峰登頂と”ナロンロの時代”、さらに”鉄の時代”の幕開けとなったアンナプルナで「大学創立120周年・山岳部創部80周年〜ドリームプロジェクト」を締めくくり、8000メートル峰14座完登を達成した意義は大きい。
 『大学山岳部』は----志を同じくする仲間が集まって、互いに切磋琢磨し、一致団結して困難に立ち向かい、それを克服して目標達成の感動と喜びを分かち合うところであり、ヒーローを作るのが目的ではありません。

「DREAM PROJECT」の成功は、単に”8000メートル峰完登”というばかりでなく、仲間全員が登頂して喜びを共にするというMACの姿勢を明らかにし、これからの大学山岳部の海外登山の在り方を提示した、という点で大きな意味を持つものであります。
 明治大学山岳部の部章になっている”鉈”は、切っ先鋭いスマートさはありませんが、これからも厚みがあって巾の広い刃の”鉈”で、新たな頂に向かって道を切り開き、着実に歩を進めて行くことを期待しています。

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