(質問):買ったときは新品でピカピカだったバイクが、乗ってるうちに汚れてきました。
バイクはメカの知識もなく、メンテナンスはおろか、ほとんど自分でいじったことなくて、
どうやって掃除したり管理したり調整したりすればいいか分かりません。
水をかけて洗剤で洗えばOKですか?
簡単な、正しい方法を教えてください。

(回答)
考えなしに水をかけて洗剤で洗うのは感心しません。
基本的にはケミカルウォッシュを心がけ、
水はできるだけ使わないようにします。
調整のしかたや管理のしかたは複雑なので、
ここでは初心者にもオススメできる簡単な掃除のしかたを紹介します。
名付けて「簡単バイク掃除 ver.疾風怒濤」!


・・・なんて大げさなものではありませんが、
私がよくやっている簡易な方法です。

コンセプトは、以下のとおり。

・場所を選ばず誰でも簡単にできること!
・専門的な知識はほとんど不要!
・バイクから取り外すものは必要最低限!
・使う道具は必要最低限!専用工具はいりません!
・手間と労力は必要最低限!

そして当然ですが、


・しかしちゃんときれいになる!


目的はコレですからね。


あっと、でもちょっと待って。
ちょっと断り書きさせて。


「場所を選ばず」って言っても、基本的に「晴れた外」ということで。
ようやくバイクが収まるぐらいの狭いクルマの中とか、
やらしさも汚らしさもむき出しにして走ってくどしゃぶりの雨の中とか、
いまにもオー○やらト○ロやら出てきそうな草や木々が生い茂る森の中、
果ては海の中とか、宇宙空間とか、
そういうツッコミはナシにしてな。
部屋の中も、オススメしません。無理ではないですが。

専門的な知識不要といっても、説明する上で必要になる言葉は、つかわせていただきます。
何も「コルナゴの超高弾性カーボンの剛性はピナレロの46HM3KカーボンやAK61マグネシウムに比べてどうなの?」とか、
マニアックな内容を言うわけではないので。
ふつうにバイクをさわる上で使わざるを得ない単語は、たぶん一般的なものが多いです。(と思います)

専門工具は要らないと言っても、ある程度のふつうの道具や一部のケミカルは使用します。
改めて高価なものを買う必要はありません、という意味で。

まぁ「これはちょっと説明がいるな」と思うものには、
適時適当に、ふつうな範囲で、書いていきます。


今回このページへの掲載を考えて、何枚か画像を撮ってきたので、
他の「風の便り」内のページに比べて、理解度は高いかと、思います。


でも、この方法は、「私がやってる方法」ということで、
正しくないかもしれません。
もっといい方法もあるかもしれません。(というか、あるでしょう)
これはまずいでしょ、っていうのがあったら、理由つけて教えていただければ、うれしく思います。

そして、完全には汚れは落ち切りません。
洗車以外のメンテナンスもあまり考えていません。
あくまでも、簡単バイク掃除ということで。


さて、使う道具は、以下のとおり。


画像中央の缶ボトル2つだけ、専門的といえます。自転車屋さんなどに行かないと手に入りません。
それ以外は、ふつうに家にあるものやホームセンター、100均などで賄えましょう。

(1)てぶくろ
ふつうの台所用のでOKですが、指にぴったりフィットするタイプのが作業しやすくていいかと思います。
手を汚さないように、ケガをしないように。

(2)台所用洗剤
種類はなんでもいいです。液体のでも、ジェルタイプのでも、可。
台所からそのまま持ってきて何も差し支えありません。

(3)石鹸置き
洗面所や風呂場によく置く、石鹸を乗せておく台です。
べつに石鹸置きでなくても構いませんが、大きさと深さがちょうどいいので、私は愛用してます。

(4)歯ブラシ
使い古しで充分です。
狭く小さな面積を磨くには、これがベストサイズ。

(5)ウエス
ウエスって、拭き取り布のことです。ボロい傷んだタオルや布で充分。
着古した綿のTシャツが私的にベストです。色はなんでもいいけど、あえて言うなら白いのがよろしいかと。
最低2枚、できれば3枚。
ただし厚手の雑巾などは向きません。


次の2つは、専門の自転車屋さんなどで。


(6)ディグリーザー
左のやつです。
ディグリーザーとは、グリス(油)を除去するものという意味で、
今回のメインのケミカル洗剤です。
写真のは600ml入りで1200円ぐらい。スプレーではなく液体です。
ちょっと黄色がかった半透明の液体で、揮発性があります。有機系独特のにおいがして、くさいです。

(7)ルブリカント
右の赤いやつです。
「lubricant」は略して「lube」(ルーブ)とも呼ばれ、なめらか(円滑)にするもの・潤滑油という意味です。
ちなみに自動詞「luburicate」は、油を差すという意味の他に、
「酒を飲ませて酔わせて、丸め込ませる・買収する」という意味があります。分かる気もします。
人間関係を円滑にするという意味では支配的なイメージがあるので、
ケンカ相手と仲直りするときや会社の上司などに対しては、つかわないほうがいいね。
長い余談でした。
360ml入りで1000円ぐらい。スプレー式です。先端につける細いノズルは必須です(556など買うと付いてくる)。


それと、下に敷くものを別に用意してください。
今回は段ボールを展開したやつを下に敷いていますが、
レジャーシートなどあると、いいです。
目的は、油が撥ねたときやこぼれたときなどに備えて。
私のようにマンションの廊下などといった公共スペースで作業をする場合は、
エチケットとして必須のアイテムやね。

道具はこれだけ。


あ、ちなみに、ディグリーザーとルブリカントですが、
たぶんホームセンターでも探せば手に入ります。
でも自転車用の物がベストオブベスト。
というか、他用途用のものは、威力がありすぎたりなさすぎたりで、
かえってバイクを傷める結果になるかもしれないんで。
特に、業務用とかの自動車用のケミカルは要注意。
ちょうど残ってたからとエンジンオイルを塗ったら...(後略・体験談)。


次から、具体的な方法を書いていきます。


さて次、というか道具を揃えたあとの実質的に最初の段階です。
バイクの前後の車輪(ホイール)を取ります。
取り方は、分かるよね。
前後のホイールの軸の部分にあるレバー(クイックリリースという)を手で回せば、
ホイールを固定しているシャフトのテンションがゆるんで、がぼっと取れます。
取れにくいときは、タイヤを上からぼんっと叩いてあげればヨシ。
おっとその前に、ギアを必ず「インナー×トップ」に入れておこう。でないと後輪が取れない。
インナートップとは、前のギアを小さい内側のギア、後ろのギアをいちばん外側のいちばん小さいギア、の組み合わせのこと。
乗ってるときにはこの組み合わせはあまり使わないですね。
ギアをカチャカチャやりながらペダルを回して、この位置にしておこう。


これが後ろから見たインナー×トップの状態。前と後ろのギア、チェーンの引っかかり位置に注目。
前のギア(画像奥)は分かりにくいかな。内側のギアにひっかかってます。

ついでにブレーキのアジャスターレバーを上に上げてブレーキのアーチを広くしておこう。これでさらに外しやすい。


このレバーね。

あと携帯用の空気入れ(インフレーター)を取り外す。これは問題ないね。
外すものは、これだけ。


いよいよ掃除に入っていきます。


ふつう掃除とか洗濯するときって、汚れの小さなものから洗っていくよね?
水や洗剤や洗う道具がすぐに汚れないようにとか、水や洗剤の節約のためとか、そんな理由だったような気がするけど、

バイクを簡単に掃除するときの私の方法は、
いちばん最初にいちばん汚れた部分をきれいにします。
それが一般的かとか王道かどうかは、ぜんぜん知りません。
私はこれがいいと思ってるだけで。

いちばん汚れている部分、それはチェーン。
ちょっとさわっただけで、指が真っ黒になるでしょ?
まずこれを落とすのね。

理由は、
先に他の部分をきれいにしても、後々チェーンの汚れがついて、またきれいにしなきゃいけなくなる。
結局、二度手間になってしまうからなのね。
私がヘタぴぃだから、というのもあるけど、だいたいみんな、そうだと思う。
きっと、たぶん、おそらく、そうなんじゃ、ないかな。
(えらい弱気やな)


というわけで、まずチェーンを洗う。

この黒い汚れは汚れたオイルやらほこりやらなので、
ディグリーザーを使います。
中性洗剤も油を分解するけど、あとで水でゆすがなくちゃいけないし、
その水分を取るのがまた手間だし、
界面活性剤が新しくつけるオイルをはじいてしまう(なじまない)ことがあるので、
チェーンに中性洗剤は使いません。
たしかにきれいになるけど、私的に、絶対NGです。

掃除のしかたは、単純。
ディグリーザーつけて、歯ブラシでこしこし磨く。
こんな感じで、チェーンの掃除態勢をとります。


こんな感じで。


上のように、フロントギアに引っかかってるチェーンは、指で持ち上げて外して、内側に落としてください。

石鹸置きの中に、ディグリーザーを入れます。


これぐらい入れればOK。

そこにチェーンを落として、こしこし磨くんだ。
歯ブラシは、チェーンの上からと側面からの両方からあててね。
反対側(裏側)がこしこししにくいけど、そこはなんとかがんばれ。

石鹸置きの右側に、ウエスをたたんで置いておきます。
こうしておくと、掃除したチェーンに付いているディグリーザーで地面やチェーンを汚さないですむんだよ。

こしこし磨く。
きれいになったら、チェーンを手で送って、
こしこし磨く。
きれいになったら、またチェーンを手で送って、
こしこし磨く。
こんな繰り返しで、チェーンが一周するまで、こしこしする。

チェーンを送るときは、手で。
クランク(ペダルがついてる棒)を回して前のギア回しても、チェーン外れてるから無理だよ。
手で送るとき、ときどき後ろの変速機のところで引っかかるときがあるので、
きちんと小さな2枚のギア(プーリーという)にチェーンをかませてあげよう。

こしこし始めて間もなく、というかあっという間に、ディグリーザーは真っ黒になります。
でも構わず、こしこしします。
驚くぐらいに、きれいになります。


半分から右側はまだ洗ってない部分、半分から左側はすでに洗った部分。分かりづらいかな。


くにくに曲がる部分の奥の汚れとか、よくよく見ると完全に落ちてなくて汚れが残ってますが、


細かいところは、気にしません。


こんなのいちいち気にしてたら、日が暮れます。


次に乗ったときにどうせまた汚れるんだし。


それ言っちゃおしまいじゃろ!


でも掃除ってそんなもんだと思うぞ。


100%きれいにしたいなら、新しいチェーンを買ってつけるんだな。
そのほうがいいぞ、乗り心地も軽くなるし。

ってことで、次いこ次。


きれいにしたチェーンは、ウエスで拭いて、チェーンのディグリーザーを拭き取っておきます。
ウエスを介してチェーンを手で握って、ふきふきするといいな。
それが終わったらとりあえずチェーンはほったらかしておいて、
次はフロントギアを掃除します。


ここね。

フロントギアは、ほんとの名前は「チェーンリング」だけど、まぁ細かいことはよかろう。
フロントギアは、2枚(または3枚)の大きなギアがついてるよね。
これを、ウエス(拭き取り布)を介して手で固定しながら、きれいに拭いてやります。
てぶくろしたほうがいいぞ、ギアの歯で指をひっかいたりしてケガしないようにな。
汚れのひどいところは、歯ブラシにディグリーザーをつけて、磨いてやって。
結構がんこです。
ただし、ディグリーザーがクランクの根本(フレームとくっついてる部分)に入り込まないように注意!

この部分です。
だからギアに歯ブラシをあてるときは、上側以外からアプローチすることやな。

フロントギアは、特に内側のギア(インナーギアという)の掃除が厳しいです。
外側のギア(アウターギアという)やらクランクやらフレーム本体が邪魔で、うまく磨けないんだよね。
だからほどほどのところで妥協して。
完全に近いところまできれいにしようと思ったら、ギアとクランクをフレーム本体から外す必要があるんやわ。
そのために、ヘキサレンチ(六角レンチ;アーレンキーという)で止めビスを外さなくちゃいけない。
でも今回はそこまでしない。簡単掃除だから。

ついでにクランク(ペダルの付いてる棒)とペダルも、
ウエス(拭き取り布)にディグリーザーを薄くつけてふきふきしてやってください。

磨くというより、ウエスで汚れを拭き取るぐらいの感覚でちょうどいいな。
右側だけじゃなくて、反対側のクランクも忘れずにやれよ。

その後、上のほうに目線を移動、フロントディレイラーを掃除。


これです。

ここは奥まった部分が汚れやすいので、激しい汚れを見つけたら、ディグリーザーつけた歯ブラシ出動。
あんまりチカラを入れすぎないようにね。
チェーンが通っている部分の内側は、変速の時に直接チェーンがガチガチ当たる場所なので、摩耗やら剥離が起きやすいんよ。
ここでもさっきと同じように、クランクの付け根にディグリーザーが流れ込まないように注意。
ウエスかましておくといいな。

外から見える部分は、拭き取りでちょうどいいかな。
あ、そうそう、フロントディレイラーをとめている金具は、真鍮でできている。
たまたま私のがそうなのかもしれないけど、真鍮はツヤがないからすぐ分かる。
真鍮のペタペタした汚れはディグリーザーで落とせない。中性洗剤でもムリ。
表面の汚れだけ軽く拭き取って、あとは見送ろう。しかたない。

ここまで終わったら、指でチェーンをインナーギアにうにっと引っかけておきます。


うにっ。

次はリアディレイラーを掃除します。


ここね。後ろの変速機です。
この画像は雨乗りの後に撮ったものなので、特に汚れがひどいです。

まずきれいにするのは、プーリー。
ちいさなギアが2つ、ついてるでしょ、こいつらです。
上のやつを「ガイドプーリー」、下のやつを「テンションプーリー」って言います。変速のキモです。
これを、ディグリーザーをつけた歯ブラシをあてて、きれいにする。
このときね、前のギアのクランクを回してやれば、カラカラと音を立ててチェーンが流れて、プーリーが回ってくれる。
歯ブラシを動かすよりも、そっちのほうが効率いいね。

次に、リアディレーラー全体。
外側に見えてる部分(写真で「DURA-ACE」って書いてあるところ)は、結構かっこよく目立つところでもあるので、
傷を付けたくないでしょ、だから歯ブラシじゃなくて、ディグリーザーをつけたウエス(拭き取り布)で拭いてあげよう。
内側はかなり汚れてると思うので、歯ブラシとウエスを駆使して、きれいにしてやってちょうだい。
届かないところは、しょうがないな。
テンションプーリーが付いている部分は指で前後にスウィングできる。
前に押しだしてやって、隠れてる部分もきれいにするんだ。

はい、きれいになりました。


ふいー。ひとやすみ。


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