学生トライアスリートの競技心理に関する研究
(まだ学術的な構成にはしていません、あしからず)
「Author's研究裏話」に、ここだけで話せる研究活動の裏話を少し公開しています。
本来タブー破りな内容なので、あまり突っ込まんでください。
2007/1/7加筆修正
(進捗によって随時加筆修正予定)
研究目的
「日本学生トライアスロン連合」が発足して15年が経過しようとしている。1993年に第1回の「日本学生トライアスロン選手権大会」(インカレ)が開催されて以来、2006年8月まで毎年開催され続け、年を追うごとに競技の質や競技レベルが大きく向上・変化してきている。学生トライアスロン競技人口の増加や意識の変化と並行して、それまでスイム・バイク・ランの三種目に分離して考えられがちだったトレーニングや価値観などの概念が、「トライアスロン」としてひとつの独立した競技としての概念が確立されてきたことが、大きな原因のひとつといえる。昨今では日本トライアスロン連合や実業団チームを中心にコーチングシステムが整いつつあり、それに伴い首都圏や中部地区・関西地区を中心にさまざまなかたちのトライアスロンスクールやセミナーも設営・開催されている。また日本トライアスロン連合では、公認の指導員を養成・資格認定するシステムを整え、後進の競技力向上を見据えている。
しかしその恩恵を受けているのは事実上一部の選手だけであり、学生に至っては指導者がいないチームが大多数を占めている現状がある。トライアスロン部専属の監督やコーチを抱えている大学はわずかであり、さらに学外においても指導を受けられる環境にない学生選手が大部分を占めている。彼らがどのように情報を得ているかは不明であるが、一部で発展していると思われるトライアスロンに関するトレーニング技術やコーチングシステムは、学生競技者にはあまりフィードされていないようである。
そこで本研究では、学生トライアスリートの競技力向上を図るために、競技心理の特性を把握することを目的とした。トライアスロンの心理面においてはまだコーチングの指標が整っておらず、研究や報告を目にすることもなく、指導者によって心理面のコーチングはまちまちであると聞く。さらに、学生という生活環境を考慮すると、一般のエイジグループのトライアスリート・および実業団などに所属するプロのトライアスリートに比べ、心理面は身体体力面や技術面に比べてもっとも差が顕著であるとも思われ、学生独特の競技心理特性が存在すると思われる。指導においても競技力向上においても、競技心理特性を明らかにし理解することは、まず必要であろう。研究結果は学生トライアスリートにフィードバックし、直接的に心理面の気づきを促進する。サポート的な効果も期待したいところである。
〜☆Author's研究裏話☆〜
・なぜ学生を対象に選んだのか? プロやエイジを対象に選ばなかった理由は?
ぶっちゃけ言うと、
(1)学生の目標のひとつにインカレがあること
(2)学生・エイジ・プロの中で私自身がデータを得ることがもっとも容易であること
(3)私自身がもっとも考察を得やすいこと
という以上3点から、対象を学生に限定したわけです...。以前の私の研究ではエイジも学生もショートもロングも一緒くたにしてデータを取ってしまい、考察が非常に困難になってしまった苦い経験があります...昔書いた修士論文ですが。
たしかに日本のトップであるプロ選手を対象にデータが取れれば、学生やエイジにフィードできる内容のものができたと思いますが、プロのデータを取るということは、とっても制約が多いのが常でして...。求められるものが多く、その内容もセンシティブなものなので、私としても疲れてしまうんですね。まだ私は実際にプロチームを対象に研究活動をしたことはないですが、非常に気を遣うものだと聞かされています。情報がそのまま競技者生命に関わってくる世界ですからね。
エイジのほうは、逆に窓口が広すぎて人数も多く、データ取るのが対極の意味で大変。生活や競技観があまりに多種多様で幅が広すぎ、分析結果が出ても考察がなかなか成り立ちにくいです。また基本的に個人宛てに調査依頼することになるうえに何千人規模なので、膨大な手間と経費がかかるのです。今の私では、とても手がつけられません。このあたりの判断は、昔の経験が生きています。とはいっても、めんどくさいからと言ってしまえば、そういうことです...。調査する必要がないわけではありませんが、今回はそう決めました。
研究方法
(1)対象
2006年8月20日に開催された「日本学生トライアスロン選手権射水市大会」(インカレ)に出場した選手・およびその地区予選に出場した選手。
地区予選は以下のとおり。
・北海道学生トライアスロン選手権大会(苫小牧ハスカップトライアスロンと共催/北海道苫小牧市)(2006/5/28)
・東北学生トライアスロン選手権大会(みやぎ国際トライアスロン七ヶ浜大会と共催/宮城県宮城郡七ヶ浜町)(2006/7/2)
・関東学生トライアスロン選手権大会(単独開催/栃木県那須塩原市)(2006/6)
・東海北陸学生トライアスロン選手権大会(蒲郡オレンジトライアスロン大会と共催/愛知県蒲郡市)(2006/5/21)
・近畿学生トライアスロン選手権大会(蒲郡オレンジトライアスロン大会と共催/愛知県蒲郡市)(2006/5/21)
・中国四国学生トライアスロン選手権大会(長崎西海トライアスロンin大島と共催/長崎県西海市)(2006/6/25)
・九州学生トライアスロン選手権大会(長崎西海トライアスロンin大島と共催/長崎県西海市)(2006/6/25)
対象候補となった計511名の中からアポイントメントが取れた全国の30大学へ調査の回答を依頼し、2006年11月〜12月に29大学へ計343部を発送。現在までに27大学214名分(男子153・女子61)を有効回答分として回収完了。回収率62.4%。
そのうち日本学生トライアスロン選手権射水市大会(インカレ)出場者は、51.9%にあたる111名(男子76・女子35)。
回収内訳は以下のとおり。パーセンテージは地区全体に占める割合(回収率ではない)。
(A)北海道地区:1大学8名(男子7・女子1)/72.7%(男子70.0%・女子100.0%)
(B)東北地区:2大学31名(男子24・女子7)/41.3%(男子35.8%・女子87.5%)
(C)関東地区:7大学76名(男子40・女子36)/28.6%(男子20.0%・女子54.5%)
(D)東海北陸地区:2大学16名(男子13・女子3)/41.0%(男子39.4%・女子50.0%)
(E)近畿地区:4大学31名(男子27・女子4)/54.4%(男子51.9%・女子80.0%)
(F)中国四国地区:6大学29名(男子20・女子9)/90.6%(男子90.9%・女子90.0%)
(G)九州地区:5大学23名(男子22・女子1)/74.2%(男子78.6%・女子33.3%)
全国計:27大学214名(男子153・女子61)/41.9%(男子37.1%・女子61.6%)
〜☆Author's研究裏話☆〜
現在も質問紙の回収を受け付けています。まだお手元に質問紙をお持ちの方、今からでもぜひ回答して送付してください。送付先は、各大学の窓口になっていただいた代表の方に聞いていただくか、私宛にメールを送ってください(dai_hard_triathlete@yahoo.co.jp)。
まだ回収が完了していない大学の分があり、最終的にもうちょっと回収数は増えます。ターゲットとして300部の回収を掲げていましたが、届きそうにありません。この母集団の数で約62%の回収率というのは、調査研究としてみれば「こんなものだろう」という、平均的〜まずまずといった数字なのですが、切実な事情がありまして...。内容は「調査方法」のところに書きますが、その分できるだけ高い回収率を期待していたのが正直なところです。
それでも学生のみなさんの協力でこれだけの数が集まったということに、とっても感謝を申し上げたい気持ちです。近畿から東のほうはまったく面識がない方々ばかりだったわけですが、突然の掲示板の書き込みに快諾してくださったり、つながりからつながりへ紹介やお願いをしていただいたり、狭い学生トライアスロンの世界ですがとっても密な連帯感と人間性の豊かさを実感しました。
回答してくださったみなさん、ありがとうございました。
(2)調査方法
質問紙法によった。質問紙は、以下の2つを使用した。
・独自に作成した質問紙。内容は、競技者のサポート経験・予選&本選の結果およびDIPCA.3の12下位尺度(※注1)における意識。
・心理的競技能力診断検査(DIPCA.3)(徳永,2000)
大学ごとに代表者に人数分の質問紙をまとめて郵送。回答・回収できた分をまとめて返送してもらった。
(※注1)DIPCA.3の12下位尺度
【01】忍耐力(がまん強さ,ねばり強さ,苦痛に耐える)
【02】闘争心(大試合や大事な試合での闘志やファイト,燃える)
【03】自己実現意欲(可能性への挑戦,主体性,自主性)
【04】勝利意欲(勝ちたい気持ち,勝利重視,負けず嫌い)
【05】自己コントロール能力(自己管理,いつものプレイ,身体的緊張のないこと,気持ちの切りかえ)
【06】リラックス能力(不安・プレッシャー・緊張のない精神的なリラックス)
【07】集中力(落ちつき,冷静さ,注意の集中)
【08】自信(能力・実力発揮・目標達成への自信)
【09】決断力(思いきり,すばやい決断,失敗を恐れない決断)
【10】予測力(作戦の的中,作戦の切りかえ,勝つための作戦)
【11】判断力(的確な判断,冷静な判断,すばやい判断)
【12】協調性(チームワーク,団結心,協力,はげまし)
〜☆Author's研究裏話☆〜
さきほどの「切実な事情」というのは、経費の問題です。DIPCA.3は著作権および販売権を有するためにコピーして使用することができず、業者から購入する必要があるのですが、これが1部210円します(税込)。学生500名に調査を依頼するとなると、この用紙代だけで105000円もかかってしまいます。今回350部買いましたが、これで73500円かかりました。自作の質問紙のコピー代や各大学への郵送費なども含めると、10万円以上かかっています。当然、自腹です。だから願わくは、すべて回答されて返ってきて欲しい、という思いがあるんですね...。白紙で返ってきても換金できるわけではないですし...でもこれは犠牲にせざるを得ない必要な無駄として、計算しておかなければならないものです。刮目せよ、って感じで。質問紙調査って、そんなもんです。
調査時期について。11月〜12月といえば、みんな忙しい時期。ことに4年生は、卒論が最初のピークを迎える時期。国内シーズンもオフに入り、寒いし、年内でも士気が低くなる時期。なぜこの時期に? というのは、以下の理由によります。
(1)日本選手権が終了し、シーズンが一段落つくまで待っていた。シーズン中だったら、その時期にその人が目標とするレースについて回答が集中してしまい差が出てしまうので、それは避けたかった。できるだけ条件にムラをなくす意味で。
(2)シーズンが終わってからこんな調査を依頼することで、今シーズンの振り返り&来シーズンへの動機づけになりはしないか、と思ったこと。本研究はもともと競技力向上が根底の目標にあるので、調査そのものが競技力向上に結びつけば、とってもうれしい。そのためにはもっとも適切な時期だと思う。2月ぐらいになってしまうと昨シーズンを思い出すのも大変だし、逆にこの時期にフィードバックができれば来シーズンに向けてこの上ない動機づけが可能となるのではないかという思惑がある。
(3)3月にある学会に発表するには、この時期しかなかった。1月初めに発表抄録の締切があるので、それを計算に入れると、12月半ばまでに質問紙を回収して、年明け直後までに分析完了するためにぎりぎりのラインだった。しかし今、その計算どおりには行っていません(爆)。
以上3つの理由によりますが、みんな忙しかったり不在になりやすいこの時期に調査するわけなので、回収率は期待しながらも最初から少し打算的でした。データ数を確保するためにできるだけ多くの依頼をしたかったのですが、経済的に逼迫してしまい、最終的に依頼できたのは3分の2、結果的に回収できたのは半分以下になってしまいました。それでもできる限りの精一杯でした...あれ以上は無理でした、はい。出てきた結果が最良の結果です。
※以下はまだ非公開または未着手
集計結果
分析方法
結果
考察
結論
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