ツールド山陽・第1ステージ
2002年3月3日
福岡県福岡市東区〜福岡県宗像郡福間町



14時過ぎに学会を切り上げ、えすあい宅に戻ってくる。
さて、いよいよこれから出発の準備だ!
学会用の荷物をすべてバイクケースに詰め込む。
できるだけ身軽にしたほうが、体にかかる負担は少なくなるのは、いうまでもない。
だから、荷物をリュックひとつにまとめた。
リュックの中身は...
スペアタイヤ。長い道中、パンクも計算のうち。高価だが耐パンク性の優れた、決戦用タイヤコルサCXを2本積む。
インフレーター。ようするに空気入れだ。以前から愛用している小型の携帯用のフレームポンプ。
マップ。出発地からゴールまでの地図。詳細な道路地図のコピーの束で、相当な量がある。結構重い。
サプリメント。アミノバイタルの最高級品とヴァーム、どちらも粉末タイプ。ほかにアリナミンEX。
ウェア。長袖Tシャツ2枚とパンツ、替えのバイクジャージとバイクパンツ、睡眠用ジャージ。結構かさばる。
サランラップ。これは明治大学の仲間の助言から携帯することにした。使い道いろいろ。
携帯電話&充電器。行く先々での連絡用。命綱に近い存在。壊れたらピンチ。
・タオル・洗面道具。目的地にたどり着けなかったときの野宿時に備えて。
現金・薬など。リタイア時に備え、新幹線で大阪まで帰れるだけの現金は常に余裕を持って所持。

こんなところだ。全部詰め込むと、リュックはほぼいっぱい状態になり、結構重い。
バイクには、ツーリング用に、ライトを装着する。白いヘッドライトに赤いテールライト。
暗闇を照らすというより、道路を行き交う車から俺の存在を示すためだ。夜のライドには欠かせない。
出で立ちは、もうちょっと下に出てくる写真のような感じだ。
寒さ対策にシューズカバーをつけ、ウィンドブレーカーを着て、バイクパンツの下にタイツを履く。
呼吸をスムーズにするためにノースブリーズ(鼻テープ)を貼りつける。

さて、ツーリングに必要ない道具を詰め込まれたバイクケースを、宅急便で大阪の部屋に送ることにする。
さっそくコンビニへ、ごろごろと箱をころがしていく。
この箱、借り物だけど、かなり年季が入っており、今の持ち主も誰かから譲ってもらったものらしい。
見ると、92年のトライアスロン世界戦のステッカーなど貼ってある。昔の持ち主は、かなりの強者だったのだろうか。
ところどころ、パッキングシステムが壊れている。
でもその部分はうまく補修して使用に耐えうるようになっていて、俺としては十分だった。
普段は大学の部室に置いてあるのだが、部屋まで持って帰るのがかなりしんどかった。
箱は折りたたむことができず、この大きさは俺の車に載らなかったのだ!
バイクは大学の研究室で箱に詰められたが、それを部屋まで運ぶ手段に困った。
しかたなく、後部トランクを開け放ち、その中に載せた。
固定のひもは、なし。そんなもの持っていないし、代わりになるものもなかった。
大学から部屋までの6kmの道のりを、深夜にできるだけゆっくりと走り、ゴトンっと音がする度に冷や汗かくが、
なんとか部屋まで持って帰ることができた。
重さは12kgほど、底にころが付いているとはいえ、この大きさである。取っ手など付いていない。
翌日電車で空港まで持っていくのもまた一苦労だった。
駅までの道のりと駅の階段、乗り換えがいちばんしんどかった。

近くのコンビニに到着。しかし、なんと受け取り拒否された!
大きさが所定の範囲を超えていたためだ。やれやれと、えすあい宅へと引き返す。
こうなったら、業者に引き取りに来てもらうしか手はない。
電話帳で黒猫を検索、電話して取りに来てもらった。
1週間後に受け取り日時を指定、お金を払う。
大きさの割に破損の心配はなかったので、3000円あまりと案外安くあがった。


さあ、出発準備が整った!いよいよ出発!!
そういえば、プロローグで語られた、カルパッチョの名前入りガムテープ。
さあ、写真を見られたし!!




う〜ん、よく見えないかな。
よし、拡大図。






なんという安易な名前の書き方、そして貼り方!!


もちろん、貼ったのはえすあい。しかも。




なんだよ「カルパョ」って!!!!



何て読むんだよ!! うまく発音できないよ!! 酔っぱらってたからだろうな。しかし、


出発前までまったく気づかなかったよ!!

それにしても、まんまとえすあいの策略にひっかかってしまった俺だった。それにしても。



どう見ても、かっこ悪いでしょうこれは!!!



だからって剥がすほど心ない俺ではない。
せめてこのまま行ってやる!!
カルパョの名を山陽に広めてやるさ!!



(せっせと出発準備中)

しかし、えすあいの策略は、それにとどまらなかった!!
バイクボトルの中に、スペシャルドリンクを入れてくれた
まぁ、つまり、昨日の泡盛を、入れてくれたわけだ
今日は距離も短いし、「マジかよ〜!?」と笑いながら受け取ったが、
これが小さな悲劇の始まりになろうとは、まさか思わなかったのだ。
アミノバイタルを粉末のまま一袋飲み、いよいよ出発準備完了。
2002年3月3日、17時40分。第一歩を踏み出す!!

えすあい宅は、国道3号線から道一本外れたところにあって、
この3号線を北九州方面へひたすら進めば、本州に渡れるはずだ。
今日は福間まで。だいたい25kmくらいかな。
福間には、広島大学のトライアスロン仲間のつよ丸の実家がある。
何人かでプチ合宿を計画し、実家に来ているという。今晩は、彼らのところでお世話になるのだ。

ドキドキのスタートだ。
DHバーを装着しているものの、初めての道なので、
いつでも危険に対処できるように、基本的にハンドルバーのブラケットを握る。
風を切る感覚が、心地いい。
そう、ついに、ひとつの長年の夢を叶える第一歩を、俺は踏み出したのだ!
そう思うと、興奮で全身がぶるっとくる。
とにかく、まだ初日だ。落ち着いていこう。
足への負担を最小限に抑えるべく、ギアは普段より軽めにセットし、いつもよりくるくると回して走る。

3号線は、さすがに交通量が多い。
3車線のいちばん左を走る俺のバイクの横を、スピードを上げたクルマの群が、次々と追い越していく。
方角的に言ったら、北上しているというより、東へ向かっているのかな。ず〜っと一直線、道なりに3号線を行く。

香椎から福間へ行く、国道371号線へ入る。
もうかなり暗くなった。ライトをつける。真っ白に光るヘッドライトと、テールライト。
テールライトは赤い光がつくのだが、点灯と点滅とが選べるようになっている。
夕方や暗くなり始めの時間帯はドライバーの視機能が低下していて事故が多いので、点滅モードでつける。
ちょっと寒い。日が落ちると、まだちょっと冷えた。
のどが渇いたから、バイクボトルに手を伸ばす。
が...

そう、ボトルの中身は、泡盛。
しかもえすあいのことだ、そうとうに濃い泡盛に違いない。
これを飲んだら、たしかに体は温まるだろうが、
この楽しいツーリングが、地獄へのツーリングに一変することは、楽に想像できる。
しかし...のどが渇いた。
ええいこの際だ、一口だけ!
ちゅ〜っと吸って、泡盛を口に含む。



うおっ、やっぱだめだ!!



予想通り、強烈だった! やられたぜえすあい!
まぁこれも、ネタかなと、思う。
のどの渇きを我慢しながら、福間を目指す。

実は、つよ丸の実家の場所を、俺は知らない。
近くまで来たら電話して、迎えに来てもらう手筈になっている。
しばらく371号線を進むと、「福間中前」という交差点に出る。
福間中学校は、おそらくつよ丸の母校と思われる。
ここは、もしかして、もうかなり、近いのか!?
交差点角のデイリーストアに寄り、電話すると、かなり近いことが分かった。ここまで迎えに来てくれるという。
今日のライド、これでおしまい!
18:20 福間に到着。
道に迷うことはなく、あっさり到着。かなり拍子抜けである。
25kmはあると思ったが、実際は18.2kmしかなかった。
それでもゆっくり行ったし信号で止まりまくったので、40分もかかってしまった。
明日からもだいたいこれくらいのペースになるだろう。

荷物はリュックに詰め、背中に背負っているわけだけど、
これがかなり、しんどい。
荷物を背負ってのライドは初。
早くも肩と腰に、ストレスを感じる。
圧倒的に練習不足ということもあるので、この先の不安がつのる。
果たして俺は、無事に完走できるのか??

間もなく、合宿をしている広大のつよ丸、D悟、ぱらどぅ、I崎の4人がクルマで迎えに来てくれた。
俺のバイクを後ろのキャリアに積み、つよ丸家へ。

さて、その日の夜は、鍋とお好み焼き。
話を弾ませながら、結構飲む。焼酎も出てきた。みんな顔なじみだが、改めていいやつらだ。
思えば、おとといの夜から、3夜連続の飲みだ。
これも、この旅の醍醐味のひとつだし、大いに楽しむことに決めている。
ゴールの日まで、毎晩お酒が出てくるのは、覚悟している。
いちばんのヤマは、広島と神戸の夜だろうと、思う。

テレビで天気予報を見る。明日まで晴れだが、あさってから崩れるらしい。
あさってといえば、北九州から広島までの200km以上を走破する、この旅いちばんの難関。
派手に崩れてくれないことを、祈る。

この3月に卒業する広島大学のトライアスロンクラブGullsのメンバーに、寄せ書きを書く。
ほとんどみんな、知ってる名前で、いろいろと世話になってきた人達だ。広大はほんと、なじみが深い。
みんなどんどん卒業していく。もうかれこれ8年も大学生活を送り、少なくともあと2年は大学院生の俺としては、
こういう瞬間には寂しい気持ちでいっぱいになる。

寝る前に、ボトルに入っていた泡盛を捨てる。飲もうとは思わなかったなー、なんでだろ。
きれいに洗って、粉末ドリンク用のアミノバイタルを入れ、さらに水を入れて溶かす。
これが明日、俺の命の水になる!
そういえば、粉末ドリンク用のアミノバイタルは、まだ飲んだことがなかった。
ちょっと飲んでみよう。

...んっ? なにかおかしい。

酒のにおいがする!!

きれいに洗ったはずなのに、においは抜けていなかった!!
これが本来のアミノバイタルのにおいではないことは、すぐにわかった。

アミノバイタルは高価で、何本も持っていないので、これを捨てるわけにはいかない...
しかたない、明日は泡盛フレーバーのアミノバイタルが俺の命の水だ
そしてバイクにセット。そのときに、かっこ悪い「カルパョ」を剥がす!
なかなかガムテープの糊がとれない。
フレームに傷が付くといやなので、慎重に剥がす。

しかし結構な粘着力だ!
「おねがい、剥がさないで!」というえすあいの熱意がこもっているのか!?

でも、「おねがい、こんなかっこ悪い名前シール、剥がして! きれいにだよ、き・れ・い・に!!」
というバイクの願いを俺は聞き入れることにした。

23:30頃、眠りにつく。

(今日の成績)
走行距離:18.2km
走行時間:0時間34分
平均速度:26.3km/h
所要時間:0時間40分

(通算成績)
走行距離:18.2km
走行距離:0時間34分
所要時間:0時間40分

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