ツールド山陽・第5ステージ
2002年3月7日
倉敷市中庄〜神戸市垂水区
8:40 ヤマタク邸出発。
体中がかなり痛い。
とくに膝...負荷をかけたり、曲げたり伸ばしたりがとてもしんどい。
いちばん酷使している場所だからかな。普通に歩くのもきつい。
バイクに乗ってもしばらくはつらいだろうな。
慣れるまでの辛抱だ。
9:30 岡山市久米に到着
岡山市だ〜!!
朝メシを補給して、しばらくゆっくりする。
今日は昨日おとといよりも距離が短いので、気持ち的にかなり余裕だ。
地図上にマーカーでチェックしてある道を紙に書き留め、DHバーに貼りつける。
ちょっとした、ナビゲーションメッセージみたいなやつだね。
昨日もやったけど、見事に間違えてひどい目にあったからなー、今度はきちんと丁寧に、交差点の名前も書いておく。
余裕を持って、10時過ぎに出発。
県道162号から、県道21号へ、そして国道2号線へ。今日はだいぶん暖かい。
歌を口ずさんだりして、かなりごきげん。体の疲れや痛みも慣れ始めた。
GLAYのWay of DifferenceとhitomiのUnderstandingが、頭の中をかけめぐる。
この2曲、このツールのテーマソングに決定だね♪
11:00 備前市に到着。
長船(おさふね)というところ...なんか聞き覚えある。
備前の長船といえば、刀匠の里として有名なところじゃん!
いろんなゲームにも出てきていたような気がする。
備前長船博物館なるものを発見。ちょっとのぞいてみたい気もしたけど、そのまま素通り。
JRと並行して走る。今晩お世話になるS成くんに連絡を入れた。
少しずつ、大阪ナンバーやなにわナンバーのトラックを見かけはじめる。
大阪にいるときはあまり見たくないと思ってるのに、このときは妙な親近感を覚えてしまった。おかしなものだ。
伊部東交差点に到着。ここから国道250号線に入り、海際を走ることになる。
紙に書いたナビは「左折」ってあったけど、どう見ても右折。地図で見ても右折。
書き間違え。だめじゃん俺の紙ナビ。
250号線は、これまでの2号線と違って、交通量がかなり少ない。やはりちょっと遠回りだからかな。
ほんとにここが250号線なのか、しばらく不安だったほどだ。赤穂に向かって、走る。
コンビニで昼食と休憩をとる。
ところでこの国道250号線。JR赤穂線と並行してるんだけど、
日生町あたりはかなりの絶景。すばらしい眺め!
右手に海と島々、左手に山と線路。
絶対2号線よりもいけてると思うのだ。
天気もよくて、海も山も光って見えた。
あ〜あ、写真撮っておけばよかったな。
地図で見る限り、アップダウンも、山中を行く2号線より、海岸線の250号線のほうが緩そう。
やや道は狭いけど、それでもセンターラインはあるし、じゅうぶん車がすれ違うだけの道幅はある。
急いでいるのでないのなら、わざわざこちらを回るのも、悪くないと思えた。
13:00 兵庫県突入、赤穂市へ
福浦峠を越える。なかなかきつかったけど、調子に乗っていたし、景色もいいし、
これよりきつい峠も越えてきたので、どうしようもなく厳しいというほどではなかった。
成長したな、俺(^-^)
この峠の頂上が、ちょうど岡山県と兵庫県の県境になっていた。
ついに隣りの県まで来たぞー!かなりうれしい!!
これまででなんとなく分かってきたんだけど、街や市の境、県境などは、峠になっていることが多い。
それもなかなかの峠で、越えるのに一苦労するようなものばかり。
実際に走ってみて初めて分かるようなことがほんとに多くて、勉強になる。
練習不足でも、このツール、強行してよかったと、思う。
13:25 播州赤穂駅を通過
立派な駅舎だ。赤穂といえば、赤穂浪士。
そう、ここが忠臣蔵の里。いくつものぼりが立っている。ちょっとうれしい。
あいかわらず、写真を撮っておくんだったな〜と、後悔。
記憶に思いとどめておこうと思っていて、当初はこのツールをHPに載せる予定はまったくなかったからなぁ。
田舎の小さな街で、俺はこういう街は好きだ。
千種川を橋で越えて、250号線を行く。このあたりは走りやすい。
13:50 高取峠を越えて相生市内へ
今思えば、このステージ最難関の峠だった。初めは何も考えずに登り始めたが、ずいぶんと長い。
これは長い! そしてきつい! きびしい! でも楽しい!
上り坂で楽しいと思ってしまう自分が、おかしかった。
昨日までは、そんな余裕もなかったような。
好きでやっているのだから、これまでにしても「楽しい」には違いなかったのだが、
今日は気持ちの余裕がまったく違う。
雨の中の250km、深夜の223kmをクリアしてきたからかもしれない。何気に自身になっていた!
この高取峠、激しいカーブが連続しているのだが、
そのカーブひとつひとつに、防災のための番号が数字でふってある。
赤穂側から登っていくと、カウントダウンされていくのだ。
おそらくNo.1の近くが頂上なのだろうと目星をつけて登っていってみると、案の定。
この頂上から相生市へ入っていくことになるわけだ。
わかりやすくて、いいな、こういうの。
あとどれくらい登らなきゃいけないかが、なんとなくわかるしね。
さて、相生市内からふたたび2号線へ戻る。
あと神戸まで、ずっと2号線で行く予定だ。
16:00 姫路城前を通過
ようやく姫路の市街地まで来たって感じ。
かなり交通量が増えてきて、車道を走るのも一苦労だ。
でも久しぶりに生で観る姫路城、噂どおり美しい。
あああ、写真を撮っておけばよかった...。疲れでカメラを取り出す余裕がまったくなかった。
左に姫路城、右に姫路駅。その間を2号線が通っている。
通りは整備されているのだが、路上駐車が多くて参る。非常に走りにくい。
姫路市内から急に増えたような感じがする。
大阪は路上駐車日本一らしいけど、西の境目は姫路なのかもしれないと、思った。
16:20 高砂市へ突入
ところどころでマメに休憩をとりながら、姫路市の東の町、高砂市に到着。
しかしここで、突然2号線が交通封鎖されている!
なにか事故らしいけど、道路を完全封鎖するくらいの事故っていったい...??
自転車どころか歩行者すら入れない。
あああ、どうするどうする!
途方に暮れて、地図を取り出し、迂回ルートを探す。
地図で見ると、2号線のすぐ南・播磨灘沿いを、国道250号線が並行して走っていて、
西明石で2号線と合流している。
国道250号線といえば、備前から2号線をはずれて好んで通ってきた道。
あっちのほうでは田舎道みたいな一般道でも、
ここいらでは大きな幹線道路なのだ。
JRの線路を越え、250号線へと入る。このまま西明石まで行くつもりだ。
あとから聞いた話なんだけど、山口県の下松で会ったカワケンたち。
かれらはずっと2号線を進んでいて、備前から250号線に入っている間に俺は抜かれてしまったらしい。
そして彼らは、俺が道路封鎖をくらった2号線の事故現場を、目撃してしまったという。
それから間もなくして、封鎖になったらしいんだけど、
そこはおぞましい限りの現場だったんだって。
死亡事故で、亡くなった人は頭から脳みそが飛び出て散乱し、
これを見たカワケンや川西たちは気持ち悪くなって真っ青になってしまったらしい。
そのあとは終始無言になってしまったと。
そりゃそうだよな...。見ることなく迂回を余儀なくされた俺は、運が良かったとしか言えない。
話を元に戻そう。
この250号線は、2号線のバイパス的存在になっているらしく、大きな道路で、
路駐も少なく、俺は高速で駆け抜けることができる。
といっても疲れで35km/hあたりが最高だ。
腰、膝、大腿筋をはじめ、体中が痛んで、きしんでいるようだ。ずっとサドルに座っている尻も痛い。
でもあとちょっとだ、がんばろう。
ところどころ、高架になっている。
本来なら軽車両通行禁止のこの高架を、今の体で走り抜けるのは非常に厳しく、
そのたびに下に降りて、チンタラ走った。
もうとっくに、限界が来ている。
いうまでもなく、こんなに走っているのは初めてで、
完全に未知の体験ゾーンに突入しているわけで。
加古川市を抜け、明石市に突入。
神戸市は、明石市の隣だ。メーターの走行距離は、110kmを表示している。
あと40kmくらいだ、あとちょっとだ、がんばれー!
(40kmを「ちょっと」と思える俺が、すごく成長したなと感じた)
ぽつぽつと休憩をとりながら、西明石駅に到着。
ガードをくぐって、2号線に合流する。
ああ、しかし、すごい交通量だ...こんな体で車道を走るのが怖い。
かといって歩道に入っても、歩行者がいっぱいで進めないし...。
でも距離的にもあと少しだったので、
ケースバイケースで、車道と歩道を走る。
もう夕暮れ。帰宅途中のサラリーマンや買い物をするおばさんたちで、
明石の市街地は人混みであふれていた。
俺の苦労など、まるで無視するかのように。
18:00 舞子駅前・明石海峡大橋に到着
S成くんとの待ち合わせ地点に到着。
ふう、やっと着いた...。S成くんに電話を入れる。
18時に到着なんて、今まででいちばん計画通りかもしれない。
広島や倉敷なんて、着いた頃は真っ暗だったからね。
距離的に第3ステージや第4ステージよりも短いんだけど、
晴れていたのもあって、比較的、気分的にかなり楽に走って来れたなぁ。
明石海峡大橋...ライトアップされて、きれいだ。
日がどんどん沈んで暗くなっていく
夜は七色に光るらしいけど...今はまだ、ぽつぽつとしかライトがついていない。
この橋、大阪体育大学の駐車場からも見えるんだよね...。
ついにここまで来たか、という感慨にふけりながら待つこと20分ほど、
S成くんがS成パパといっしょに車で迎えに来てくれた。
バイクをルーフに積み、S成邸へ。
その途中、最近このあたりで、大学院生がやくざに殺されたという話を聞いた。
こわいなぁ...。このあたりはともかく、全国的なニュースになっているらしい。
そういえば俺、ツールを出発してから、ニュースをぜんぜん見てない。
いま日本で、世界で、何が起こっているのか、ぜんぜん知らない。
世間から置いて行かれているような、
世間と違うところで非現実的な日々を送っているような。
どっちも当たりだと、思う。
S成くんは、福岡教育大学の卒業生。
いっしょにインカレや合宿に行ったりもして、古いトライアスロン仲間だ。
鹿屋から大阪に引っ越してくるときに途中で合流して、引っ越しを手伝ってくれたりもしてくれた。
もっとも今は、仕事が忙しくて、ほとんど練習できていないらしいけど。
S成邸は、去年の夏に一度来たことがある。
高台にあって、見晴らしがいい。グリーンスタジアム神戸も近くにあって、花火も見えるという。
新興住宅地、のような感じのところだ。
食事のあと、S成くんの必殺アイテムで攻撃を受ける。
「底の穴の開いたお猪口」と「底のとんがったお猪口」だ。
底に穴の開いたお猪口は、底から穴の部分を指で押さえてから、酒をついでもらう。
話には聞いていたけど、これってつまり、
一度ついでもらったら、飲み終えるまで卓に杯を置けないようになっているわけであり。
日本酒が苦手な俺は、轟沈してしまったのでした。
23時ごろ、眠る。
S成家のみなさまには、訪れるたびにほんとに良くしてもらって(っても2回目だけど)、
ほんとに感謝です。
明日はいよいよ最終ステージ。巣に帰ってくる日が、くるわけだ!
よくここまでやってきたものよ! 自分でも感動する。
でもまだ終わりじゃない、あと1日、がんばろう!
(第5ステージ成績)
走行距離:134.9km
平均速度:20.5km/h
走行時間:6時間34分
所要時間:9時間20分
(通算成績)
走行距離:678.4km
走行時間:32時間34分
所要時間:41時間57分