ツールド山陽2003・エキストラステージ(1)
〜ここでは、管理人がツーリングしたときに培ったノウハウを、できる限り公開します〜

(1)目的について
ツーリングする目的なんて、その人それぞれでいいと思います。
ただ、「できる限り事故なくケガなく安全に旅を成し遂げて帰ってくる」ということは、
誰にでも、どんな目的であっても、当てはまることだと思います。

ちなみに私の場合は「夢の実現」でした。
それまでツーリングを体験したことのない私にとって、自転車のひとり旅は、未知なる憧れのひとつでした。
それを実現できるのは、学生のうちをおいてほかはない、と思った私は、
念願の自転車購入と同時に、机上で計画を立て始め、
なんとか実現し、達成できたわけです。

夢は、実現しました。
なんともいえない、充実感ですよ。
この感動は、自分一人のものです。
どんなに誰かに語ったところで、すべて伝わらないと思います。
誰かに理解されるかどうかというのは、まったく関係ないですね。
だって、福岡から大阪まで移動するんだったら、飛行機使えば1時間少しですよ。
なんでわざわざ自転車?って感じですよね、一般的には。
そんなの関係ないんです。
自分で納得できれば、それでいいんですよ。そんなもんです。

なにか個人的な思い入れがあれば、それで充分です。


(2)計画について
いくら自由気ままにといっても、ある程度の計画は必要です。
どこへ、どれくらいの日数で行くのか、どれくらいの距離なのか、というマクロな概算と計画、
今日はどこまで行くのか、そこまでどれくらいの距離か、何時に出発して何時ごろ着くのか、というミクロな概算と計画。
これぐらいは、押さえておくべきです。
そのためにも、地図は必要です。
事前の計画立案には、○ップルなどの詳細な道路地図が役立ちます。
これなら、コースのアップダウンがある程度分かるし、細かいルート検索もできます。
地図上で距離を測るときは、マップルーラーがあると便利です。

計画の時に常に頭に置いておくべきなのが、自分の力量です。
無理のない距離設定と日程を心がけるべきです。
暑さや寒さといった気象条件も、できる限り考慮します。

ちなみに2002年の私のときは...。

(1)1日あたりの所要時間は最大12時間までに設定。
日没過ぎまでに目的地に着くために、3月初めの春先なので、
朝7時から夜7時までを目安にした。

(2)1日あたりの距離を、200kmを基準に設定。
福岡〜大阪は、山脈越えなどはなく起伏は激しくないので、
普段のトレーニングのデータから、休憩時間も含めて平均速度20km/hと見積もる。
つまり、10時間で200km。
最大の12時間では、240kmまで行ける計算。
これは、いっぱいいっぱいまで引き延ばした机上の限界距離だ。

(3)宿を確保。
各方面に交渉の末、福岡・福間・北九州・広島・倉敷・神戸で宿の確保に成功。
各方面といっても、みんなトライアスロン関係だけどね。
冬〜春先で寒さがまだきつい時期なので、野宿は避けたかった。
山口県越え・推定250kmが最大の難所と踏む。

短い日数で大阪まで帰れればそれに越したことはないけど、
満足な練習ができなかったこともあり、連日200km走ることに体力的な不安が。
あと「宿を仲間に頼る=日程の変更が利かない」ということになるので、
できたら休息日的な日を盛り込みたいところ。

・・・とまぁ、こんなことを考えて計画を練りました。
これは私の場合で、その人の競技力や体力のレベルによって、数字は変わってくると思います。

2003年の2回目のツーリングでは、さらに洗練させた余裕のある計画となりました。
同じコースを一度やってると、完全に要領が把握できるので、強いです。

(3)準備
計画を立てたら、準備です。

(3-1)バイク
まずは自分の命を託すバイクですが、参考までに2003年3月に私がツールしたときのバイクの写真です。
全行程終了直後・雨の中走ったので、だいぶん汚れていますけど。。。



(3-1-1)特別な装備

・キャリア
シートピラーにくっつけた、ひときわ目を引くキャリア。
リュックを背中に背負って長い時間バイクに乗ると、腰や背中にかなりの負担がかかります。
できる限り、キャリアを利用した方がいいでしょう。
このキャリア、最高15kgまでしか耐えられないので、女の子とか乗せたらだめですよ。
それから、シートピラーがカーボン製の場合は要注意です。
もろいので、できるなら金属製にかえたほうがいいです。
私はカーボンのままで強行しましたが、道中かなりの心配の種でした。

・ヘッドライト

夜間やトンネルにおける前方の視界確保だけでなく、周囲への存在のアピールのために、必要不可欠です。
自治体によっては条例で日没後の前照灯の点灯を厳しく義務づけているところもあり、
またもし事故が起きたときに、前照灯を点灯させていたら、免責や保険金交渉に大きく有利に働きます。
電池式の明るい白色ダイオード灯がオススメです。

・テールライト

後方からのクルマなどに対して存在をアピールするためのものです。これも絶対必要。
赤い光を点灯または点滅させます。
単5電池2本でいける、コンパクトなものです。
クルマから自転車って、案外見えにくいものです。
トンネル内や日没前後、夜には必ずつけるようにします。

(3-1-2)その他のバイクの装備
その他のバイクの装備については、普段のトレーニングでも装備しているものがほとんどです。
特別なものではありませんが、いらないわけではなく、絶対必要なものばかりです。

・ボトルケージ&ボトル

夏場なら絶対2つ必要。
ひとつは水専用にすると、体にかけたりできるので、何かと便利。
もうひとつは、スポーツドリンクなどを入れます。
POLOR BOTTLEなどの保温性に優れたボトルなら、なおよし。
暖かい飲み物も、ある程度温度を保てます。

・スペアタイヤ
常に2本携帯するようにします。
決戦タイヤでなくても、「すこし上等な練習用タイヤ」がいいです。
新品の決戦タイヤは、固くてはめにくいですからね。。。疲れた体には、しんどいです。
ロードレーサー用のタイヤやチューブを売っている店は、旅先でそう簡単に見つかるものではないので、
余裕を持っておくことが大切です。
パンクして1本使ったら、どこかでの調達を頭に入れましょう。

・インフレーター

空気入れですが、携帯できるフレームポンプは必須です。
当然ですが、しっかり空気を入れられるものを用意しましょう。
ポンプの中のパッキンは損耗が早いので、インフレーターは消耗品と考えていてください。
しかしできるならボンベも用意したいところです。満足いく空気圧が楽に得られます。
ただしボンベは使い切ってしまうとおしまいなので、フレームポンプと両方持っておくのがベストです。
またボンベは、一度でも実際に使用して、あらかじめ使い方を覚えておきましょう。

・サイクルコンピュータ

走行時間や走行距離、スピード、平均速度、クランクの回転数などを表示してくれるものです。
これがなかったり壊れたりすると、ツーリングの楽しみが大きく減ってしまうので、必ず装備してください。
現在の走行状態を客観的に示す唯一の器材です。
表示される情報は、ライディングにおいて非常に大きな指標になります。
できればあらかじめ電池交換しておくといいでしょう。

・DHバー

ハンドルの先に突き出たエアロバーです。
これを使ったDHポジションをとると、前乗り前傾姿勢になって風の抵抗が減り、速く走れますが、
使用には熟練を要する上に、腰などにかかる負担も大きく、
知らない道や交通量の多い道では危険なので、
慣れた人以外は必要ありません。
バイクの重量化にもなってしまいます(だいたい1kgぐらいはある)
ただし使い慣れた人にとっては、大きな味方になってくれます。

(3-1-3)バイクのセッティング
ロングライドやツーリング向けのバイクのセッティングが、ないわけではないので、
少し紹介しておきましょう。

・ギアの調整

フロントやリアのギアの歯の数を変えたり、歯の枚数そのものを増やすというものです。
具体的に言うと、9枚〜10枚のギアで構成されるスプロケット(フリーギア;後ろのギアです)を、
より大きな(軽い)ギアで構成されるスプロケットに取り替えたり、
フロントギアをダブルからトリプルに取り替えて、得られるギア比の幅を広げたりとか。
きつい上りがあまりないと、あらかじめ分かっていれば、使い慣れた、いつものギアのままでいいんですが、
たとえば山岳越えなどが頻繁に予想される場合は、変更したほうがいいでしょう。

アウタートップでがんがん目一杯飛ばして走れる機会はあまりありません。
それよりも確実に楽に上りをクリアできるようにするべきです。
12-25Tという、通常よりひとつ大きなギアの入った登坂仕様のもの、
12-27Tという、マウンテンバイク並みの大きなギアを組み込んだものなど、
走る道の性格によってツーリングスタート前に事前に選択しておくべきです。

ちなみに私は、フロント52-39T、リア12-23Tという、
ロードレーサーとしては極々一般的なギアで、
福岡〜大阪を走れました。
ギアに関しては、問題なかったですよ。

・バー角

ドロップハンドルの角度のことです。
一般的には、ハンドルのいちばん下の水平部分を地面と平行にするのですが、
ロングライドでは、少し後ろ下がり気味にしておくほうが楽です。
よく手を置く、ハンドルブラケットの部分(ブレーキがついてるところ)が、気持ち手前に位置がくるので、
ポジションをとったときに少し体が起きて、呼吸が楽になり腰への負担などが軽くなります。
ただしフィーリングも変わってくるので、あまり大きくいじらないほうがいいでしょう。

・タイヤ
できれば耐パンク性能の高いタイヤを装着して、
少しでもパンク率を減らしたいところです。
となると決戦タイヤですが、中のゴムがラテックス製の高級タイヤは機密性が高くないので、
次の日の朝には空気が抜けてしまいます。
フレームポンプで毎朝ぺしゃんこのタイヤにしこしこ空気を入れるのも大変なので、
中のゴムがラテックス製でない「少し安い決戦タイヤ」、もしくは
「少し上等な練習用タイヤ」がいいかなと、個人的に思います。
あ、言うまでもないかもしれませんが、
ツーリング出発前には、必ずタイヤの交換をしてくださいね。
WO(クリンチャー)タイヤでは、内側のチューブだけでなく、
地面に直接接する外側のタイヤの状態も、出発前にチェックしましょう。
それまで装着していたタイヤは、まだ使えそうならスペアに回します。

・ホイール
決戦用でなくても、ノーマルホイールで充分、いやむしろ最適といえるでしょう。
決戦ホイールは互換性がないものが多いので、
もしホイールがトラブルを起こしたときに、まったく対処できないということがあります。
ノーマルホイールはあらゆる場面にそれなりの性能を発揮するし、
何より癖がなく扱いやすいですからね。
私はリムに軽量のMAVIC REFLEXを使い、ストレスをさらに減らしています。
それから、リムのたわみは、出発前にできるだけ直しておきましょう。
これは専門の人に頼むのが、安全かつ確実です。

・ブレーキシュー

これは、出発前に前後とも必ず新品に替えてください。
ツーリング中にゴムが劣化していたり、すり減ってなくなっていたという話をよく聞きます。
とくに雨の中を乗ると、ブレーキシューは消しゴムのようにすり減っていきます。
雨の中を走った後は、必ずチェックしてください。
交換後はブレーキングの感覚も変わるので、チェックしておいてください。
消耗品です。ツーリングに関わらず、普段からチェックする必要があります。
ツーリング後も、しっかり状態を確認してください。

・ワイヤー・チェーン・クリートなど

先ほどのブレーキシューも含め、メンテナンスのレベルですが、
ギアやブレーキのワイヤー、チェーン、バイクシューズのクリートなど、出発前にチェックしておきましょう。
ワイヤーは、錆びたり伸びたりしていたり、1〜2年以上替えてなかったら交換。
ギアチェンジやブレーキングが格段にスムーズになります。
チェーンを交換すると、ペダリングが劇的に軽くなります。
5000kmほど乗っていたら、交換してみてください。
クリートは、ルック製の場合は、欠けていないかをチェック。ガタガタになっていたら、交換。
シマノSPDシリーズの場合は、ネジのゆるみに注意です。
やっぱり、どうせなら、快適にツーリングしたいじゃないですか!?

とにかく、ツーリング中の旅先での部品調達は、ほぼ絶望的と思っていていいです。
だから、出発前に、交換できるところは交換しておいたほうが、トラブル発生の確率も減るので、オススメです。

・バーテープ
これは好きずきですが、新品のを巻くと、気持ちが乗ってきます。
ハンドルを握ったときのフィーリングやグリップも増すので、より気持ちよさがアップしますね。

バイクに関しては、こんなところですね。
とにかく、部品の現地調達は、まったく当てにしないほうがいいです。
私の場合は、広島の安浦町で、運良くロードレースショップを紹介してもらうことができましたが、
かなり幸運で稀な事例であると思っていたほうがいいですね。

続きでは、携行品や装備・ツーリング中の実際などについて、
書いていきます。

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