コーナー設置3wayマルチ駆動スピーカの製作

                                         2013/9/18  記石田
                                         2014/1/12 追記
                                         2014/9/15 追記
                                         2015/12/29 Wavelet追記

久しぶりにメインスピーカを更新しました。

 前のスピーカの設置位置は壁から離して部屋を横に使う置き方を基本にしていましたが、某所でのコーナ設置にヒントを得て新しい置き方を試してみました。その結果、好結果だったので、以前の小型2WayにMIDを追加したオーソドックスうな3Wayに変更しました。


  スピーカのセッティングをルームシミュレーター(StndWave2)でみると、従来使われる部屋の縦使いでスピーカを壁から離したセッティングでは下の左の図のように低域に大きなディップができてしまいます。実際の設置テストでも低域の厚みが削がれた軽い音になってしまいます。

  そのため中央の図の様に従来の縦配置を使わずにスピーカを部屋に対して横配置にするこの現象はかなり改善できます。しかし、スピーカをコーナ目いっぱいに寄せた配置だと、右図の様に部屋を縦使いにしても低域の大きなディップは横配置よりも少ないくらいに改善され低域がフラットに出ることが解りました。。

(左が壁から離した縦配置、中は横配置、右がコーナ縦配置)



 実際にはシミュレーションのように我が家のサイズでは40Hzあたりで少し低域のピークは出ますが、それ以上はあまり大きな暴れも少なく、40Hzあたりさえ抑え込めばあまりブースとせずに低域はフラットな特性になりそうです。

 今回使うスピーカは3Wayでも比較的小型のシステムなのでコーナ配置だと更に隅に隠れ、スピーカ自体が目立たずに済むのも良いですね。
スピーカユニットは従来サブスピーカとして使用していたAT-Dynaの2Wayに新たにATCのMIDを加えた3Wayです。

 詳細な ユニット構成は

LOW  AudioTechnology 5I52    アメリカのカスタムユニットメーカ製、ソナスなどにも使用されている強力ウーファ。磁石強化版。
MID   ATC SN75-150S       ATCの有名なMID、Superバージョンは強化磁石でサイズはウーファより大きい。現在は単品販売はされていません
HIGH  Dynaudio Esotar T-330D マーリンのエクスカリバーなどにもつかわれていた、弦の艶が出て奇麗な音色との定評のソフトドームツィータです。

  ウーファのエンクロ―ジャは約17Lのバスレフでポート共振は約40Hz(その後約33Hzに変更)、ウーファユニットは昔のネットワーク時代の名残でタイムアライメント用に30mmほどバッフル面から手前取付になっています。同じエンクロ―ジャにマウントされたツィータは磁石裏に真鍮3kgのデッドマスが付き。MIDは今回別のエンクロ―ジャに取り付け、ウーファの上に載せる形です

  スピーカベースには3cm厚の大理石ボードを敷き、軸をリスニングポイントに合わせるよう前を持ち上げています。足には黒檀ブロックを使用し、ダイヤモンドフォーメーションにしています。
 更にベース、高低エンクロ―ジャ、中域ユニットをベルトで固定(現在はステンレススチールワイヤ+ターンバックルに変更2014/03/27)、一体化による質量増による振動低減とユニット間の剛性強化により立ち上がりの良い音が出るように図っています。


 アンプ系詳細は別途HPのシステム図を見て頂くとして、基本的に各スピーカは各々バランス(BTL)ドライブで駆動しています。(ツィータは現在シングルドライブ)

 測定はOmniMICを使用し、基本リスニングポイントで行っています。まず最初はインパルス波形での極性の確認し、正相になっているのを確認します。

 それから高域のフィルターを掛けない状態でタイムアライメントを取ります。今回はMIDがショートホーンのため30mmほどボイスコイルが下がっているのでその分の調整と、ウーファのリングが少し厚すぎるのでその分の10mm程度の補正で済みました。

 次に各ユニットクロスオーバー周波数の検討のためにフィルターを掛けない素の周波数特性を見てみます。

 特性上はLOW-MIDのクロスは300から4kHzぐらいまで、MID-HIGHのクロスは1kHzから9kHzぐらいから可能ですが、余裕を見て最初は350Hz、3kHzとします。(市販のセットは350,3.5kHz)

 この辺はウォータホールの共振周波数などを参考にします。MIDは高域は伸びていますが、4,5kHzに若干共振が有るようでので、あまり高域は使わない方が良さそうです。

 低域でのピークや左右の誤差などはEQで微調整し、フラットかつ左右の特性差を無くすように調整します。ただしあまり無理なブースとはしない様にするのが基本ですが、結果はリスングポイントで


 この様な感じになりました。スピーカ間隔は約3m、スピーカセンターからリスニングポイントまでも約3mです。目盛は5dBですから、30Hzから12kHzでほぼ±4dBぐらいには収まりそうです。
これが基本で、ここから聴感で微調整してゆきます。
 その後クロスは400Hz,2.5kHzに修正。

注)この後、ポート長を変更して低域は30Hzぐらいまでフラットに伸びています。

  この時歪特性はリスニングポイントで平均的な音圧レベルの80dB再生で




となりました。紫色のグラフが聴感上重要な3次歪で40Hz以上の全体域でほぼ0.1〜0.3%程度となり、特に目立ったピークもなくかつ低域での上昇も見られずにかなり優秀といえます。(ニアフィールドでの測定を追加)


 設置場所の全体の様子は左の写真をご覧ください。小型の為あまりスピーカが出しゃばらずに威圧感が無いのが良い点です。これでも30Hzまで充分出ているので、最初考えていた大口径ウーファの必要性はあまりないかもしれません。オルガンやグランカッサなども充分に再生できています。

 いろいろ試聴を始めていますが、スピーカの間隔は横配置とほぼ変わらないので音場は広く、床置きですが高さも出るので再生のスケール感も充分な大きさがあります。当初心配した奥行きも結構出ているようで、アライメントの調整で窓を突き抜けて音像が広がります。

  これで今まで上手くいかなかったスピーカの縦配置がこれで可能になったと言えそうです。

  部屋へのスピーカの縦配置が可能になるとスピーカからリスニング位置までの距離が取れ、音量も出せるので臨場感が出やすくなりました。またスピーカをコーナに寄せることができるので、部屋全体が広く使えるようになります。使い勝手としてやはりこちらの方が優れていると言えるでしょう。

 この部屋の背面は丁度続きのキッチンと連結しているので背面も自由空間となり、よりリスニングに最適な空間的活用が図れそうです。

 

 

 

 

 

 

追加データ(その後の調整後のデータ)

 リスニングポジションでの周波数特性(クロス 400Hz 2.5kHz)赤 Rch 黒 Lch

 最近は高域のうるささが減ったので更にフラット目に近い状態であわせこんでいます。

ニアフィールドでの歪率(60cm) 青 総合 赤 2次歪 紫 3次歪

いずれも100Hz以上での3次歪は-60dB(0.1%)以下
Rch



Lch

 

Waveletによるユニット間のタイムアライメント調整

 当初はインパルスによるアライメント調整をベースにしていましたが、それではどうも問題が大きく、
最近はWaveletを使って調整するようになりました。
 そのため当初の急峻なフィルターは大域外のずれが大きいことが解り−12dB/octを中心にフィルターを組直しています。

 OmniMICではスピーカのこのタイムアライメントの測定に視覚的に解りやすい下図のようなWaveletを用いた測定が出来ます。

上のグラフで赤色の漏斗型のところが波形の頭になります。周波数が低くなると1波長が長くなるので裾野が広がるのはそのためです。
そのため低域はあまりよく解りませんが、中高域ではディレイやフィルターの設定を見ながら調整することが出来ます。
これが ずれていたり曲がっていたりして各ユニットのタイミングがあっていないと問題点の箇所が解りやすいです。
また壁など近接に反射などがある場合もグラフからわかります。

Rch リスニングポジションでのインパルス応答

 調整後の最終的なインパルス応答波形です。



スーバーツイータとしてリポンツイータ(バイオニアPT-R5)を追加。内蔵ネットワークは使わずに別設計を外付けで使用。設計値のクロスは14kHzで、LC2段の4次バターワース。 2014/03/29

実測でも一応効果はあり、15kHzで4dBぐらいアップしていますが、最近ではそのままではきついのでサイドに向けアンビエンスに使用しています。