楽屋裏のtea time









星の明かり




「俺はさ、星なんかじぇねぇ。ただのヒトだよ。ヒトで在たい」
 喜びも悲しみも知っているただのヒト。          

「知ってるよ。名探偵が、ヒトだってね」
 足掻いて苦悩して、それでも眼を逸らす事なく正面を向いているただのヒト。

「それでも、工藤は星なんよ」
 自分には、自分達には。

「んじゃお前ぇ新星発見して、俺の名前登録してくれ」

「……意味ちゃうで……」

「『一つ星を君にあげる』服部なら、そんな寒い台詞吐きそうだねぇ」

「黒羽〜〜けったいな台詞吐きまくってんのは、自分やろ」

「『出会いたくない恋人』とか、『世紀末の鐘が鳴る前に』とかな」

「名探偵〜〜」                     
 過去、新一に告げた台詞の数々だった。

「詐欺師でナンパ。正解ね」

「哀ちゃんひどい〜〜」

「ほんまの事やん。ゲロ吐きな台詞吐き垂れる奴って工藤から聴いとったで。何考えてんねん」

「『飛び続けるのに疲れて、羽根を休めていた、魔法使いですよ。お嬢さん』、お前ぇ歩美にそう言ったんだってな」

「……鳥肌もんやな…」

「歩美は喜んでたみたいだけど。聴いた時は眩暈起こしたわね」

「お前案外ナルシスト?」

「んな事ある訳ないでしょ?可愛い子には、サービスするのが俺のモットーなの」

「まぁ確かに、小生意気で、可愛かったでしょうけどね」

「そりゃ言えとる。めっちゃ可愛いない、こまっしゃくれたガキやったからな」

「…もしかしなくても、俺の事かよ」
 服部と哀の台詞に、新一は途端憮然となる。

「アラ、よく判ったわね」

「小生意気で、でも眼が離せなくってねぇ」
 気付いたら、惹かれていた幼い子供。どんな星の中ででも、探し出せるその輝き。

「お前、闇鍋決定」
 ビシッと、快斗に指を突き出し、新一は笑い告げる。

「人に指向けたら、いけないんだよ〜〜」
 『ET』と、快斗は突き出された指に、自らの人差し指を合わせて笑う。ファーストコンタクト、快斗がケラリと笑うと、新一はゲンナリ指を弾いた。

「ねぉ名探偵さ、星の明かりって知ってる?」

「いっっつも妙な事言うんは、お前やな黒羽」

「でもそれをいつだって気付いてるじゃない服部」         
「だから貴方達、悪友なのよ。探偵と怪盗が悪友なんて、工藤君の回りは、変な人達ばっかりね」

「……嬢ちゃん、自覚あるん?」

「私は、星に湛えて見蕩れたりしないわよ」
 貴方達、少し夢見過ぎよ、哀はそう笑う。

「星の光はどんなもんも透かして、本当の心に届くんや」
 だからこそ、星なのだと、服部はひどく穏やかな笑みを刻み付けている。

「閉ざしてしまった人の心の奥にね。だからこそ見つけ出せる真実」
 マグカップをクルリと回すと、ポンッと、星のボーキャンディー。

「ハイ」

「お前ぇッ!俺はガキかよ」                         

「ん〜〜丁度持ってたから」
 新一に差し出しながら、ボーを持ったままクルクルとキャンディーを振り回す。

「黄色の星だけどね、金に見えるでしょ?金の星」
 だから名探偵にあげると笑うと、新一は呆れたように半ば自棄になってソレをひったくる。

「地に輝く金の星。天なら届かないけど、工藤はこうして触れる事はできるんやから」
 天に在るより綺麗で、そうして綺麗だからこそ痛々しい、静謐に輝く星の明かり。

「貴方達、やっぱり夢みすぎよ」
 誰の心にも届く星の明かり。そうして人を照らす分、傷付いて行く金の星。星の在処も光も知っている自分は、きっと幸福なのだろう。

「お前らの方が、星だよ」     
 優しく強い、勇気をくれる星。立ち尽くす自分を包んでくれる優しい人達。

一際輝く星だからこそ、誰もが魅せられ、そうして災いを呼ぶ凶星だと、快斗の知り合いの夜の魔女は語った。関わるなと。
 星は人の過ちすら呼び寄せる者だと。
服部には告げている言葉。きっと気付いているのだろう。だから託された言葉が在る。
その為には、もっとよく視て、聴いて、守りたいのなら。

 星は、己の回りの者達に、深く静かに働き掛ける力を持っている。
だからこそ、新一の何気ない言葉に、心を澄まして。彼の持つ澄んだ心も疵も痛みも血も。
それは祈りで願いに似ている。きっと服部はもっと辛いと、快斗は思う。
                        
「そんなら俺は、キャンディーより甘い、ココアでも淹れたろか」
 懐かしい過去が甦る優しい倖せの色。

「湯気は倖せの色。名探偵らしい台詞」

「お前らってさ……」
 薬箱みてぇ。
新一は、彼等を視て、クスリと淡い笑みを漏らした。
優しく触れてくる想いは心地好く、包まれる。
倖せな一時は、こんな些細な時間なのだろう。きっといつか振り返って、笑える時が来れば、それが倖せになる。どんなに辛くても、大切な人達との倖せな思い出が存在すれば。



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