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サンタクロースの真実 |
服部が新一を迎えにバイクで飛び出した時、快斗は工藤邸の隣に在る、阿笠邸に駆け込んでいた。 「取り敢えず、断っておくけど」 珍しく快斗が駆け込んできたと思ったら、その手には血塗れのネコが抱かれ、快斗が口を開くより先に、彼が自分の元を訪れた意味を悟った哀は、盛大に溜め息を吐き、保護者である阿笠により与えられた地下の研究室に彼を促した。 白い無機質な色彩は寒々しく、『女の子がこんな場所に在たらダメだよ』と呟いては、哀に睥睨される快斗は、けれどまったく悪びれた様子はない。 「ハイ、判ってます」 タオルを敷かれたスチールデスクの上にネコを寝かした快斗は、哀の台詞に、神妙そうに頷いてみせた。 新一の為の診察台は有っても、ネコを治療するには広すぎるソレに乗せられはしないから、快斗は哀の指示したデスクの上に、手渡されたバスタオルを敷き、丁重にネコを置いた。 「私は、医師じゃないわ、その事は、判ってるわよね」 ガーゼカストから滅菌カーゼを大量に取り出し傷口に当てると、快斗に圧迫するように指示をして、室内をテキパキと動き回る。小さい白衣を着る姿に、けれど快斗は視野を狭くされる事はなく、『流石』と呟いては、哀に睥睨された。 「判ってます。名探偵の主治医だって」 「あの人に関しては責任があるから。でも私の専門は遺伝子工学と薬理」 「それでもエキスパートに名探偵診れちゃうって事は、判ってます」 「魔法使いさん、私の言葉、ちゃんと届いてる?」 そう軽口を叩く哀の手は休む事はなく、素早く点滴を用意すると、細い血管に特殊な点滴針を刺して行く。 「こんな細いニャンコの血管にサーフロー針刺せちゃうくらい、哀ちゃんが優秀だって事は、判ってます」 「それで?」 快斗の台詞に、哀は大仰に溜め息を吐いた。 「だって、俺もそりゃ簡単なナート(縫合)くらいならできるけどさ、このニャンコの状態は、俺じゃ手におえないから」 「それでどうして門外漢の私ができると思うのか、IQ400ってふざけた数値を弾き出す貴方の脳に、訊いてみたいわね」 「だって、オチビちゃん達がさ、助けて下さいって、駆け込んで来たんだよね」 口ではなんと言っても、ネコの状態を観察し、必要機材を次々引っ張り出してくる哀の横で、快斗はネコを撫で、創部を圧迫している。 「歩美が?」 その瞬間、今の今まで淡々とネコのOPに必要な器材を次々取り出していた哀の貌が変化した事を、快斗は見逃さなかった。 「オチビちゃんがね、なんか助けたらしいんだけど、詳しい事はこれから訊くから。今隣で待っててもらってるんだ。アレだねぇ、子供でも女は女って関心しちゃったよ俺」 新一と哀が今でも大切にしている幼い子供達。人の為に素直に笑って、泣く事のできる魂を、新一も哀も、成長過程で失ってほしくははないと切望し、大切にしている。 「何?」 快斗の意味深な台詞に、哀はネコから視線を外す事なく、問い掛ける。 「貴方、無駄口叩くなら、ココ、剃毛してちょうだい」 ココと、小さい指がガーゼを示し、ポンッと剃刀を放って渡す。 「それが済んだら、消毒」 コレと、二つの薬瓶を快斗の手元に置く。 「イソジンで消毒して、ハイポでOK?」 「逆にしても、意味はないわよ」 「オチビちゃんが名探偵のウチに駆け込んできた理由ってさ、こう言ってたよ。『コナン君ならこんな時きっとこうするってできたんだろうって考えた時、咄嗟に新一お兄いちゃんなら、きっと助けてくれるって』アレだね、子供でも女は女で、見抜く眼、ちゃんと持ってる。あの娘、いい子になるよ」 患部にガーゼを当て、軽く圧迫し、快斗の手は綺麗に剃刀を操り、剃毛を施していく。 その合間にも、快斗は哀に話し掛けている。 「間違っても、手、出さないでね」 「名探偵が江戸川コナンだったなんて俺達しか知らないのに、子供の眼は怖いね。無意識下で理解してるって感じしたよ。言霊って感じで、俺ちょっと関心しちゃったよ」 「言霊?」 「アレ?知らない?言葉には魂が宿るって言うの」 「知ってるわよ」 「だってさ、工藤新一と江戸川コナンって人間は同じ人間なのに、でも俺達以外には別人でさ、それでもオチビちゃん達は無意識下で理解してる。ホラ前に話したけど。名前って、それだけで『力』を持ってるんだって、実感するよ」 「名前に力があるなら、江戸川君は江戸川君として、確立されてた筈じゃない?」 貴方の言葉、相変わらず一人よがりで判りにくいわね、哀は淡如に口を開く。 「それも一つの真実だと思うけどね」 確かに、江戸川コナンはちょっと推理好きな子供として、人格を確立されていた。彼を弟のように可愛がっていた蘭にしてみれば、突然親元に帰ってしまった幼い子供に、それなりの空虚感を持っている筈だった。そしてそれはコナンと行動を共にしていたチビッコ探偵団の子供達も同様だろう。 「オチビちゃん達にとって、コナンはコナンで、今でもちゃんとあの子達の中に存在してて、大切にしてくれてる。俺はソレッてすごい事だと思うよ。それでもさ、やっぱ歩美ちゃんは女だなって思うんだよね」 「珍しく感傷的ね。貴方誰にでも優しいフリしてるから、誰にも興味がないと思ってたわ。工藤君以外にはね」 「服部と同じ事言うね」 剃毛完了、そう呟くと、薬瓶から茶色い綿球を取り出し、ちょっとしみるぞ……と、ネコに囁き掛け、消毒を施していく。 「それで、隣で歩美達待たせてるんでしょ?あとはいいわ」 「甘いね、哀ちゃんも」 「アラ、知らなかった?」 「名探偵以外に哀ちゃん動かせるの、オチビちゃん達くらいだよ」 「そんな事もないと思うわ。今ではもう結構増えちゃったわ。弱味」 「その台詞、名探偵が聴いたら哀しむよ」 大切な者が弱味に転じる意味を知らない快斗ではない。けれどきっと新一が聴いたら、少しだけ困ったような顔をして、哀しむだろうなと思う。 「そうね…」 アノ人、バカだから……。 哀は少しだけ哀しげな顔をして、笑った。 運命から逃げるなと言った、守ってやると言われた。背負うものばかり増えていくのに、それでもまっすぐ正面を向いて立っている精神の強さを綺麗だと思う。その反面、だからこそ哀しいと思う。もっと身勝手で、利己的な人間だったら、自分はきっとこんなに深い罪悪は抱かなかった筈なのにと思い、 「身勝手なの、私ね……」 自嘲的に哀は呟いた。 「それで、歩美達、なんて言ってたんだよ」 新一と服部が工藤邸に帰り着いた時、快斗は慣れた様子でキッチンで珈琲を淹れ、二人を出迎えた。 工藤邸のリビングの空気に、ちゃっかり馴染んでしまっている快斗の姿に、いい加減何をいう気力もなく、新一は汚れたコートを放り出すと、ソファーに腰を落とした。 「それはこっちの台詞。何に首突っ込んだの?顔にも指にも傷作って、コートは泥だらけ」 新一専用のフォンテネーのマグに珈琲を淹れ手渡しながら、快斗は腰を屈めて新一の顔を覗き込む。 「ああ〜〜綺麗な顔にこんな傷作って」 母親譲りの繊細な貌を覗き込み、大袈裟に嘆いて見せる。 「女じゃねぇんだ、こんなの傷のうちに入るかよ」 差し出されたマグを受け取りながら、大袈裟な快斗の台詞に呆れた顔を見せる。 「それで?今度は何に首突っ込んだの?」 「突っ込んだ訳じゃねぇよ」 快斗の台詞に、憮然とすると、 「だったら、何に巻き込まれたの?」 「ネコの迷子や」 未だ快斗の手に有る自分のマグを『よこせ』と引っ張り受け取ると、新一の横で服部が口を開いた。 「ネコの迷子?」 反芻し、視線を新一の隣に腰掛けている服部に移す。 「なんや、仔ネコの飼い主の女の子が、ネコを探して道路に飛び出した時、工藤が助けたんやて」 「フ〜〜ン、っで?」 「でって、なんだよ」 マグに口を付け、憮然としたまま、新一は快斗を睥睨する。 「それで、どうしてネコ探しなわけ?」 チョコンと、新一の足元に膝を付くと、快斗は下から覗き込むように白皙の貌を見上げ、問い掛ける。 「お前ぇ、人の話し何聴いてたんだよ」 鬱陶しいぞ、新一は足蹴にするように足を振り上げると、快斗はネコ科の小動物さながら、笑って剽悍に飛び退いた。 「聴いてたよ。仔ネコの飼い主の女の子が、車道に飛び出した所を助けたんでしょ?それでどうして名探偵が、ネコ探しなの」 ヒョィッと、二人の座る向いのソファーに軽い動作で腰掛ける。 重力抵抗も空気抵抗も感じさせない相変わらずの身の軽さに、新一も服部も呆れた顔をする。剽悍な動きでサッと飛び退き、向いのソファーに腰掛ける動作は、豹のようだ。 「お前ぇ、判ってて訊くな」 嫌な奴と、新一は舌打ちする。 「否ね、取り敢えず、訊いてみたんだけど」 「女の子のお母はんがな、工藤の事知っとったんや」 嘆息を吐き、服部はマグに口付ける。 米花町内では、確かに新一の顔は知られている確立が高く、ネコを探して車道に飛び出し、助けた女の子から泣き付かれたら、確かに新一にしてみれば断れないだろう状況が、服部にも快斗にも理解できる。 奇妙な殺人劇の推理を得意とする新一は、だからこそ警察組織の救世主と呼ばれているのだ。その新一に、ネコ探しの依頼をした母親は、確かに娘の嘆きの深さに、いても立ってもいられなかったのだろう。 「そうだ服部、メガネ」 今更思い出す。女の子を助けて車道に飛び出した時、掛けていたメガネも一緒に飛んでひしゃげてしまった事を。その時、手にしていた新刊もダメにしている。 「アア、また買うようやな」 新一が掛けていたメガネは、服部が以前贈ったメガネだ。事件に遭遇し、即席の変装にと、気休めにしかならねぇと言った新一は、けれど外出時は必ずそのメガネを使用していたから、迎えに行った新一に、最初にメガネがなくなっている事に服部は気付いた。事情を聴けば、まぁそうだろうと納得もした服部だった。 けれど新一がその事に今まで気付かなかったのだから、ある意味、らしいと思えてしまう服部と快斗だ。 「んじゃ今度は俺がプレゼントしてあげる、名探偵にバッチシ似合うメガネ。モノクル直してくれたお礼」 ヒラリと靭やかな仕草で手首が動いたと思った瞬間。閉ざされた掌中が開いた時には、快斗の掌には、見慣れたモノクルが乗っていた。 エッグの事件の時、スコーピオンに撃たれた右目を守って壊れたモノクルを拾ったのはコナンだった当時の新一で、どうしたものかと思案した後、阿笠博士に頼んで、当時使用していた強化ガラスを使用した探偵メガネ同様、強度補強したモノクルを渡していた。 「お前ぇに買ってもらった日には、高くつきそうだな」 肩を竦める新一に、 「せやで、泥棒になんて買って貰わんでも、俺が工藤に似合うメガネ、またプレゼントするさかいな」 「ヘェ〜〜言ってくれるじゃん。だったらクリスマスプレゼントソレに決まり。どっちが名探偵に似合うメガネプレゼントできるか」 「おぅ、ええで」 「お前ぇら、そうして息合わせて、言葉遊びしてるんじゃねぇ」 本題はどうしたよ、新一は二人を交互に睥睨する。すれば、 「冗談じゃないけど」 クルクルとモノクルを指先で回すとパッと消し、快斗はねぇ?と服部を見れば、 「マジやで」 快斗の意味ありげな笑みの前に、服部も笑みを漏らす。 「だったら尚更タチ悪ぃ」 こんな時ばかり息を合わせる二人に、新一は呆れ、次に溜め息を吐く。 息合わせる二人の内心を、気付かない新一はではない。だから深い溜め息が口を付く。 「それで?あいつら何て言ってたんだよ」 話せ、有無を言わさぬ新一の声と眼差しが快斗を射った。 怜悧で理知を映す眼差しは、こんな時は真冬の月さながらの凛然さを増して行く。 その眼差しの深さに快斗は息を飲み、肩を竦めて口を開いた。 哀の元にネコを託し、帰ってきて、待っていた歩美達に話しを聴いた。 歩美と光彦と元太の三人は、蘭と和葉にココアを淹れてもらい、おとなしく待っていた。リビングに姿を現した快斗に、開口一番。『ネコちゃんは?』そう尋ねてきた歩美達の必死な眼差しを思い出せば、やはり感謝してしまう自分の内心を、快斗は意識する。 素直で優しい魂が、コナンだった新一の隣に在てくれた事を。 「おチビちゃん達、公園で遊んでて、いい加減暗くなるから帰ろって時に、チビネコの声聴いたんだって。薄暗がりで人相はよく判らなかったけど、若い男がネコを押さえ付けてて、腹を切り付けてたらしい。最初はネコを押さえ付けて苛めてるだけだと思ったらしいんだけど。なんかね、ネコの声が可笑しかったって思って、男の手からネコを奪おうって持ってたボールやバットで、殴り掛かったわけ」 「……無鉄砲っちゅうか、なんか相変わらずやな」 流石やなと、服部は奇妙な感心をしてみせる。 相手が逃げ出していたからいいようなものの、相変わらずの無鉄砲さは、確かにコナンだった当時の新一が、手を焼いた程度のものはある。そして何だかんだいっても、必要時に先頭切って無茶をしていた新一だから、歩美達を全面責められる立場では当然なかった。 「まぁね、相手が喫驚して逃げ出したからよかったようなものの」 流石に名探偵がコナンだった当時、つるんでいた友達だけの事はあるよ、快斗は肩を竦めてそう笑う。 聴いた時の快斗は、らしくなく眉間に皺を刻み付け、溜め息を吐き、次にそんな無茶はしないようにね、と、窘めはしたのだけれど、きっと聞き入れられる事はないだろうとも判っていた。 「ったくあいつら」 新一も、舌打ちする。 相変わらず後先考えない行動は、まぐれと偶然で救われている事が多い。 危険な状態に陥った事は一度や二度ではなく、コナンだった当時の新一の知識と機転で、危機を脱してきた事は数えればキリがない。けれとチビッコ探偵の彼らは、ある意味で新一と変わらぬ怖い者知らずの面がある。だからこそ、きっとコナンだった当時の新一と、付き合ってこられたのかもしれない。 「まぁしゃあないやん?工藤の友達やからな」 クシャリと、服部の腕が隣に伸びた。 「どういう意味だよ」 睥睨すると、 「そういう意味」 「お前ぇら」 二人揃った口調に、新一はますます憮然となる。 「まぁなんにしても、ネコの腹裂く言うんは、なんら理由が存在するんやないか?」 「虐待兆候って感じでもない気がするけどね」 「根拠はなんだ?」 独語に呟かれた快斗の台詞に、新一は淡如に口を開く。 「人間が突然殺人鬼になる事はない。だから途中経過で残虐性を示す虐待傾向が顕著になるって言うけどね、そういう場合、ターゲットは特定じゃないんだよね」 「特定されたネコだったって事か?」 「なんか話し聴いてたらね」 「思う根拠はなんや?」 「まぁ執着してたみたいだし」 「?執着?」 「動物虐待の報告見ても判るように、第一は目撃者がないって事の筈なんだよね。虐待された後、発見されてるでしょ?」 「まぁ、そうやな」 「それで?」 「オチビちゃん達の話しだとね、確かに暗くなってはいたけど、真っ暗じゃないし。ネコ助けようとしたオチビちゃん達にも、最初はネコを中々離そうとしなかったって」 「離そうとしなかった?」 蒼味を帯びる眼差しが、凛冽な深みを増し、快斗を凝視する。 「そっ、だからちょっとね、執着かなって」 「無秩序型の犯罪って言うなら、そりゃ眼についた獲物を衝動的にってのも有りかもしれないけど、その残虐性を示す過程の可能性の高い動物虐待で、そのパターンはね、考えられないし。加嗜型ならオチビちゃん達は無事な筈ないし」 「んで、特定って事か」 「まぁさ、それは俺より名探偵の分野だし」 俺のは聴いた事からの勘、快斗はそう告げる。 「治安が悪くなったって言うなら、その一言に尽きちゃうかもしれないけどね」 いつ何処で誰が犯罪に巻き込まれるか判らない反面。いつ何処で誰が犯罪を起こしているかも判らない。 明に常軌を逸している人間が、残虐犯罪を起す訳ではないのだ。自分の隣に殺人鬼が在ても、判らないのが地域の密接性を失った現代社会の、ある一種の病理を露呈している。 「今哀ちゃんが治療してるから。終わったら、連絡くれるって」 「どうなんだ?」 「ン〜〜何ともね、簡単な傷なら俺でも診る事可能なんだけど、アレは到底無理。でも傷口は、明らかに腹だけ狙ってたね。鋭利な刃物でスッパリって具合」 「腹だけ…それもまたへんやな。なんか」 新一の隣で、服部も攅眉する。 「まぁこの件は、二人に任せるから」 「アホ。お前もや」 「なんで?」 「嬢ちゃんん所に連れてったのお前やろ」 「お前と服部にそっち任せる」 「なんで俺が〜〜?それ名探偵の分野じゃない」 「バーロー、俺だって手ぇ空いてりゃそうする」 「ネコ探しね」 思い出したとばかりに、快斗は肩を竦め、新一がマグに口を付けた時だった。 丁度話しが一区切り付いた時、テーブルの上に放り出してある新一の携帯が鳴った。 「哀ちゃんかな?」 「ビンゴやな」 「もしもし、灰原、ネコの様子どうだよ」 新一の台詞に、服部と快斗の視線が集中し、 「すぐ来い?オイ、なんだよ」 すぐに電話は切られてしまったのだろう。問い掛けた時には切れた様子で、新一は舌打ちする。そんな新一を凝視し、服部と快斗は顔を見合わせた。 「なんやて?」 「すぐ来いって」 「ダメだったのかな?」 「否、ネコは大丈夫みたいだけどな」 来いと一言で切られてしまった電話は、要件を語られる事もなく、一方的に通話はオフにされた。その淡如さは確かに哀らしいが。普段はもう少し要件は伝えてくる筈だった。 「まぁ行ってみよか」 「別に三人で行く事ねぇよ」 「アホ、俺かてそのネコ視る必要あるやろ。担当俺やねんから」 ちょぉ待ち、そう言うと服部はリビングから姿を消し、すぐに戻ってきた時に、服部の手にしたものに気付いて、快斗は笑う。 「相変わらずだね、ダンナは」 新一に向って軽口を叩くと、 「うるせぇ」 差し出されたコートを受け取り、新一は憮然となる。 「茶化すんやないで、黒羽」 「別に茶化してないでしょ。相変わらずだなって思っただけ」 「お前ぇら二人、残ってろ」 憮然としたままコートを羽織ると、新一はリビングを出て行った。 |