クソ親父
あんたの息子に生まれた事を、後悔した事を数え上げたら、キリがない。
それくらい、俺はあんたの事が憎かったよ。
何をしても、俺の背後には親父の名前が付き纏った。
俺がどれ程努力しても、結局『流石、越前南次郎の息子』って言われただけで。
俺の存在は、何処にもなかった気がしていたのに。
でも本当は、それは親父のテニスに対する劣等の裏返しだったんだ。
繰り返し観てきた、親父のプロ当時のビデオ。
その天衣無縫さに、本当は憧れてた。
あれ程強くなれたら。
自分を信じて。強く在れたら。
その強さが、妬ましかった。
そのくせ、どうしようもなく焦れる程。親父のテニスに憧れてた。
今なら判るよ。
俺は、本当に愛されてた子供だったんだって。
今なら判る。
日本に戻って来た事。
突然何で帰国なのか、何で日本の中学に入学なのか。
本当は知ってたんだ。
俺の為の帰国だって。
でも素直になれなかった。
今更テニス後進国の日本で、学ものなんてないって思ってた俺は、実際其処で大切なものを沢山教えられて。
本当に、沢山の大切なものを教えられた。
ありがとう
こんな事、今じゃなきゃ言えないし、書けないから。
親より先に逝く事が、親不孝の最たるものだって知ってるけど。
俺は今なら素直に言える。きっと今だから素直に言える。
先立つ不幸をお許し下さい。
なんて、俺らしくないけど。
俺、テニスをやってて良かった。
青学に入学して良かった。
沢山の大切なものを、見付けられた。
大切なものを、教えて貰った。
それはアメリカに居たら、何一つ見付けられなかったものだと思うから。
だから俺、今この言葉しかやっぱ言えない気がする。
ありがとう
そして
先立つ不幸を、お許し下さい。
俺は親父と母さんの子供に生まれて、倖せだったよ
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