オマケ其の弐

貴方という重さ





「あっ…ぁぁん…んっ…んっ…桃…せんぱぁ…」
 左右に思いきり割かれた白い下肢。その間には桃城の体躯が収まり、緩やかな律動を
刻んでいる。胎内を出入りする確かな牡のカタチに熱を煽られ、リョーマは嫋々の嬌声を
上げることを余儀なくされる。
 互いの腹に挟まれ、幼いリョーマ自身からは粘稠の愛液が滴り落ち、互いの腹を汚し
ていく。泣きじゃくる程愛撫された胎内は、抵抗一つなく牡を受け入れ、濡れた卑猥な音
が、室内に響いている。
「あッ!ぁん…ッ!」
 細すぎる足首を握り、グッと更に開かれ、胎内に桃城の熱情が押し込められて来るの
に、リョーマは甲高い嬌声をあげ、褐色の肌に爪を立てた。
「リョーマ…重いか?」
 華奢すぎる未成熟な躯を組み敷きながら、桃城は幼い胎内の奥の奥に、擦りけるよう
に昂まる自身を押し込め、耳朶を甘噛みしながら、問い掛ける。
「ぁんん…」
 情事の最中だけ囁かれる名前と、情事の最中にしか聴くことのできない桃城の低い甘
さを帯びた声。それだけでリョーマは簡単に快楽を煽られ、嫌々と緩慢に首を打ち振るう。 
「ホラ」
 突き上げる律動で上へと動いていく躯を、更に番う為に細腰を引き寄せ容赦なく昂まる
牡を打ち込めば、白い胸元を綺麗に逸らし、リョーマは身悶える。
 組み敷いた生き物は、力任せに抱き締めれば、折れてしまいそうに細く薄い。けれど其
処にひ弱さを感じさせる、脆弱なものは一切ない。あるのは、発達途上の伸びやかな若
々しさだけだ。
「…やぁぁんっ……ダメェ…」
 充血し、爛れていく胎内の敏感な場所を思う様擦り上げられ、リョーマは桃城の下で絶
頂に顫え上がる。
「イッ…ちゃ…出ちゃぅ…」
 快楽の涙で歪む貌を、桃城の肩口に埋めながら、リョーマは嫌々と細い首を振り乱す。
細腰の奥の奥を嬲っていく絶頂の予感。けれどたった一人で達することを、リョーマはい
つも嫌う。
「リョーマ…」
「ヒィ…」
 胎内で緩やかな律動を刻んでいた熱が、不意にきつく抱き締められたかと思った途端。激しい動きに変化するのに、リョーマは掠れた悲鳴を上げ、桃城の背に爪を立てていく。ギリッと、爪の奥に肉の食い込む感触に、更に煽られる。たった一人の男に征服される
甘い懊悩が、背筋を走り抜けていく。
「忘れるなよ」
 欲情に掠れていく声をリョーマの耳元で繰り返せば、それだけでリョーマは悶絶を余儀
なくされ、肌が粟だっていく。そのしっとり汗ばむ肌を愛しげに撫でながら、桃城は律動を
益々激しく変化させる。緩やかな動きから、力強い抽送に変化する桃城の動きに、半開
きに開かれた口唇から、甲高い嬌声が迫り上がる。
「俺にだって、お前は重いって」
 体重の重さではないのだと、桃城はリョーマの胎内にきつく自身を押し込めながら、噛
み付く威勢で喘ぐ口唇を塞ぎにかかる。一切の反駁など許さないとでも言うかのような口
吻に、リョーマは息苦しさと同時に、胎内の牡を締め付けるように、激しい動きを繰り返す
男の腰に、靭やかな下肢を巻き付けた。










「やっ…まだぁ…」
 胎内で想いを遂げた桃城がゆっくり出て行くのに、リョーマは舌足らずな声でそれを押
しとどめる。数度の吐精で脱力しきった腕を持ち上げ、桃城の背に回すと、桃城は少しだ
け困った苦笑を覗かせ、汗ばむ柔髪をしっとり梳き上げた。
「重いだろう?」
「重いよ」
 声が掠れているのは、散々に喘がされた証拠だろう。その掠れた甘さを残す声で、リョ
ーマが即答するのに、桃城はやはり苦笑しかできない。
「また、欲しくなるからな」
 だからもう抜くぞと言外に滲ませる桃城の科白に、リョーマは熱の籠った眼差しで睥睨
するが、それは挑発にしかならず、益々桃城は苦笑するしかなかった。
「ゃっ…まだぁ…ぁん…ッ」
 未だ小刻みな痙攣を繰り返している内部の柔襞の動きに逆らい、萎えた桃城が出て行
くのに、細身の躯はビクンと顫えあがった。
 萎えた楔が胎内から出て行けば、未だ熱の失せない肉の入り口から、トロリとした感触
で、桃城の精液が白い内股を伝い落ちていくのが生々しく判る。その生温い感触に、リョ
ーマは身を顫わせ、吐息が朱に染まる。
「でもお前、軽すぎだぞ」
「重かったり軽かったり、どっちな訳?」
 抗う隙も与えられず、気付けば躯は桃城の腕の中に閉じ込められているのに、リョーマ
はその手際の良さに呆れながら、生温い吐息を吐き出して笑う。
「あんだけ食って、何処に行っちまうんだ?」
 回り巡った噂の顛末を36コンビから聞かされ、リョーマに口実を与えられてしまった桃
城は、部活の帰り道、問答無用でリョーマにファミレスでパフェとホットケーキを奢らされ
る羽目に陥った。
 目の前でフルーツパフェを喜々として完食され、次にパフェじゃ腹は膨れないと、ホット
ケーキを平らげられた桃城は、胸焼けをおこした程だ。そんなリョーマの体重は、やはり
軽いと思わずにはいられない。
「あんたと違って、俺はちゃんと消費してるの」
 こうして食後の運動だってしてるでしょ?と、意味深に笑うリョーマに桃城は呆れ、クシ
ャクシャと汗ばむ髪を掻き乱して行く。
「そいや英二先輩に言われたぞ。お前またなんか言ったな?」
「別に。桃先輩が俺の体重当てたの面白がるから、大石先輩は、菊丸先輩の体重当て
られるのか、訊いただけですよ」
「お前……」
「その八つ当たりが、あんたに行っただけ」
「お前に甘すぎるって、八つ当たりされた俺の人権は、一体何処にあるんだ?」
「あんたの人権なんて、俺のもんに決まってるでしょ?」
 何を今更と嘯くリョーマに、桃城は緩やかな笑みを見せ、
「お前、俺の体重判るか?」
「だったらあんたは、菊丸先輩や、不二先輩の体重は判るの?」
「……なんでそういう話しになるんだ?」
 レギュラーの中でも、とりわけ36コンビと呼ばれる英二と不二が、リョーマを可愛がって
いるのは、部員誰の眼から見ても明らかだ。
 英二の八つ当たりと、部活後、奢らされる羽目に陥ったリョーマの理由とを考え併せれ
ば、リョーマが部活時、英二と不二の二人に、何を言われたのか判らない桃城ではなか
ったから、深々溜め息を吐き出したとしても、罪はないだろう。
「タラシのあんたは、別に俺だけじゃなくって、他の人間の体重も判るのかと思ったけど?」
 違うの?リョーマは桃城の腕の中で身動くと態勢を入れ替え、真上から精悍さを深めて
いく面差しを見下ろした。
「お前以外の重さなんて、興味ないし、意味もないだろう?」
 至近距離で見下ろされ、桃城は緩やかな笑みを漏らすが、それがあまりに鷹揚として
いて、リョーマはタラシと呟き笑う。
 淫蕩な気配を残しながら、綺麗に笑う人形のような貌。けれど其処に宿る魂は、無機
質なものではなく、手にする重さはたかが40キロと、笑い飛ばせるものは、桃城には一
切なかった。腕にすれば馴染んでいく肌の感触と比例して、その存在の重さは身の裡で
増すばかりだ。
「あんたはもっと、ダイエットした方がいいよ」
 重くって仕方ないから。リョーマは嘯き笑うと、意味深な忍び笑いを漏らし、真下にある
桃城の造作に顔を近付ける。
「ねぇ?」
「ん?」
 吐息が触れる程近寄った綺麗な面差しを眺め、節のある長い指先が、瀟洒な輪郭を撫
でる仕草で触れれば、リョーマは益々忍び笑いを深めていく。
「あんたの重さなんて、精々60にも満たない重さでしょ?」
 鍛え上げられ、絞り込まれている肉体。実際の重さなど、感じてしまった重さに比べれ
ば、軽いものだろう。
「俺には、こっちの方が、重いよ」
 雛人形のような忍び笑いが、次にはクスクス悪戯気に笑い、白い下肢を伝う桃城の放
った愛液を指先で救いあげると、リョーマは濡れた舌先で、挑発的に白い液体を舐め上
げた。






 タンパク質やブドウ糖で構成される液体が、何より重い。
あんたには、きっと一生、理解できないだろうけどね?




「ねぇ?」
 告げた科白の意味に、何処か瞠然としている桃城を愉しげに眺めると、リョーマはクス
クス笑いながら、桃城に口吻た。



オマケ其の壱
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