3.暁の越後路
 目が覚めると列車は停まっていた。駅名板には「長岡」の文字が見える。ということは…時計を見ると4時を回った
ところだった。新潟まではあと50分以上掛かる。外はまだ真っ暗で景色を楽しむことはできない。しかし一度起きて
しまうと、なかなか寝られない。時刻表を開いて通過する駅と見比べながらヒマをつぶした。車内はまだ大半の客が
眠っている。

 4時55分新潟に到着。ここで向きを変えて白新線経由で村上に向かう。しかし私は新潟でこの列車から下車した。
荷物をベンチに置いて、改札を出て駅前を少し歩いた。たどり着いた先は、以前(2001年)泊まったホテルの真下に
あるコンビニである。ここで朝食を仕入れて、新潟駅に戻った。10分ほど荷物を置きっぱなしにしたが、何事もなく
元の通りに置かれていた。しかしホームには既に次に乗る列車(長岡行き)が到着している。すぐさま荷物を持って
座席を確保した。

 実はそのまま「えちご」に乗っておけば、終点村上から酒田行き列車で更に北を目指すことができた。しかし白新線
は2001年に乗りつぶしており、同じコースをたどるのは面白くない。時刻表で検討した結果、一度新津まで戻り、
そこから羽越線の酒田行きに乗って追いかけることにした。文章で書いてもよく理解できないと思うので、下に簡略化
したルート図を載せておく。
長岡→新津→新潟→新津→新発田→村上
下手くそな絵になってしまったが、これでわかりやすくなったはず…。

 このルートを見ると、二度通る新津で降りた方が無駄に動かなくて済みそうだが、そうなると新津駅で1時間半も
待つことになる。それに新津駅があまり大きくないのを知っていたので、確実に食料が確保できる新潟まで行って
しまった方が時間稼ぎにもなる。これができるのは(普通列車)乗り放題の18きっぷだからこそである。

朝日に映える米どころの水田。まだ刈り取りには早いようだ。
(撮影場所詳細失念、信越線亀田付近と思われる)

 新潟から20分足らずで新津に到着、駅舎には売店があるだけで、駅前にコンビニは見当たらなかった。ホームで
缶コーヒーを買って、まだ目覚めきらない頭に刺激を与えた。目が冴えてきたところでコンビニでスポーツ新聞を
買い忘れたことに気付いた。売店ではまだ準備中だったが、時間もあまりないので、頼んで新聞を出してもらった。
タバコを1本吸い終わったところで、目的の列車が入線してきた。

 酒田行き列車は2両編成の新型ディーゼルカー(キハ110)だ。実は羽越線自体は全線電化つまり電車が走れる
のだが、村上から先の普通列車はすべて気動車となっている。これは村上の北方(酒田寄り)で直流から交流に
切り換わっているので、電車は交直両用でなければ通過することができない。しかし気動車ならば電化方式は
関係ないので、村上以北は価格の高い交直流電車ではなく気動車で運行している。ちなみに「えちご」からの乗り
継ぎも気動車となるが、こちらは国鉄時代の古い車両(キハ47)を使用している。

 6時16分新津駅を静かに離れ、水田の中を駆け抜ける車窓を眺めながら、新潟で入手した朝食にありついた。
そうこうしているうちに1時間ちょっとで村上に到着した。先ほどの理由から、ここからの列車は本数が激減する。


4.夕日の名所
 村上を出るといよいよ海沿いに進路を変える。しばらくすると朝日に照らされた日本海が姿を現した。この付近は
笹川流れ」と呼ばれる景勝地で、遊覧船から見る陸地の景色が最大の見所である。そしてその玄関口にあたる
桑川駅の前には、「夕日会館」というレストランやみやげ物屋が入った建物がある。ここは西向きに海岸が広がる
ので、日本海に沈む夕日が望めるというのが由来のようだ。今回は朝方なので残念ながら夕日を望むことは無理
だが、順光になる朝方の景色もまた絶景である。

トンネルが多い中、ようやく撮れた笹川流れの絶景。
右写真は今川駅で交換待ちの際、駅の外へ出て撮ったもの。

 今だ!と言わんばかりに、デジカメを構えてひたすら車窓に広がる日本海を撮影した。途中交換待ちでは駅の外に
出て、できる限り海に近い場所で撮影した(上写真)。同じことを考える人はやはりいるようで、2人ほど同じく駅の外
まで出て撮影していた。絶景が続く中、列車は県境を越えて山形県に入っていった。県は変わっても相変わらず
日本海の絶景は続く。

 小波渡(こばと)駅を過ぎると、日本海に別れを告げて庄内平野を突き進む。海が見えなくなった代わりに、黄金色
に光る稲穂のじゅうたんが車窓に広がっていた。水田自体は数多い旅で何度となく見ているが、これほど広いかつ
黄色く染まった田んぼを見たのは、おそらく初めてであろう。時計が9時に近づいた頃、列車は余目(あまるめ)に
到着し、ここで新津からの羽越線の旅が終わった。

まさに収穫間近の、限りなく広がる水田。(鶴岡周辺と思われる)



方向転換!?東の山の中へ