はずの文字が見えない。近くで声が聞こえた。「中央特別自由席は売り切れです。」……やはり遅かったか。 中央特別自由席(2002年は1600円)は文字通り真ん中、つまりネット裏の特等席と言える場所である。それ故に 一番最初に売れてしまう。ましてこの日は日曜日であり、地元関西の高校が出場するということで観客が倍増 した。毎回中央特別自由席で観戦してきたが、今回はしかたなく3塁特別自由席を購入し、球場入りした。 空席を見つけ、ようやく座席を確保した。しかし残念ながら、銀傘の柱がちょうどピッチャーマウンドとバッター ボックスの真ん中に入る形になってしまった。俗に言う見切り席だったようだ。それはさておき、走り続けてきた ので、体中から汗が噴き出してきた。上着を脱いでTシャツ1枚になったが、体の火照りは全く収まる様子は なかった。黒いTシャツの色が変わっているのがわかるぐらいだ。買った弁当をかき込む様に食べ、”その時” を待った。 ファンは多いと思われる。智辯学園(奈良)−智辯和歌山(和歌山)、(←この字が正当)そう、甲子園史上初の 智弁対決である。両校とも甲子園ではすっかりお馴染みだが、意外にも1度も当たっていない。組み合わせ の妙と言えよう。 3回、3本のヒットで二死満塁から岡崎の走者一掃タイムリー二塁打などで4点を先制。5回にも3点を加え、少々 一方的な展開になりつつあった。8回裏、無死二塁で「バッター松山君」とコールされた瞬間、観客席から大歓声 と拍手が挙がった。松山哲也外野手は智弁学園の主将であり、今大会注目の選手だったが、県大会直前に 左足を骨折して、ベンチ入りしたもののスタメンからは外れていた。右打席に入りファウルで粘った9球目、 左ひざ裏への死球を受けてしまった。ケガした左足だけに場内がどよめいたが、足を引きずりながら一塁へ 全力疾走する姿にまた大歓声と拍手が挙がった。これをきっかけにこの回2点を返し、9回も1点を入れ、二死 一、二塁と追い上げたが、序盤の失点が響いてここで力尽きてしまった。7対2とこれだけ見れば智弁和歌山の 完勝と言えるが、終盤”兄の意地”で粘りを見せたことで、僅差の試合のような雰囲気で観戦することができた。 史上初の智弁対決は予想に違わぬ”接戦”で幕を閉じた。ちなみにこの試合の観客は4万人だったそうだ。 ベスト4を独占する可能性が出てきた。既にこの時点で、尽誠学園(香川)が前日ベスト8入りを果たしている。 この後の試合が楽しみになった。それにしても曇りで日差しがないとはいえ、風が通らないせいか蒸し暑くて しょうがない。アイスコーヒーでも飲みたいところだが、後で返ってノドが渇いてしまう。かと言ってカキ氷では 余計な味(シロップ)が付いているので、これまたノドが渇いてしまう。そうなると普通の水が欲しくなる。しかし コンビニは大混雑で水の確保どころではなかった。 ではなく、ただ砕いた氷が入っているだけである。ストローで融けた水を飲むのだが、そのままではなかなか氷が 融けない。そこで顔や首筋などに当てて、蒸し暑さを和らげるのに用いた。これなら氷も融けるので一石二鳥だ。 特に首筋を冷やすのは熱中症防止に効果があるので、こういう屋外では非常に重宝する。 やっと汗と体の火照りが収まった。しかしまだ1試合終わっただけである。これから先が非常に長い。しかし 最後まで見届けるのが、高校野球ファンとしての務めである。 |