桜の下の乙女たち


8.勝負勘取り戻す!?

パドックを周回する9レース出走馬、手前の白い馬は
ファビラスキャット(父サンデーサイレンス、母は秋華賞馬ファビラスラフィン)。

 この競馬場は中に入るとすぐにパドック(下見所)がある。まだ9レース発走前(メインは11レース)なのでパドックも
そんなに混んでいない。しかしこれぐらいの時刻(14時前)にはここにいないと、肝心のメインレースがまともに見れなく
なり「G1いい席で見たいスよ」(何年か後に見るとわからないだろうな…)と嘆かなくて済む。

 パドックもそこそこに9レース(忘れな草賞)の馬券を購入。間近で見ようと直線コース前に出てみると、もう最前列
にはとても行かれない状態だった。しかたなくコースから少し離れた位置に陣取った。レースが始まると凄い勢いで
馬たちが走ってくる。当たり前だが、やはり”生”の迫力は凄い。やがてゴールを目指して直線の攻防が目の前で
繰り広げられた。ゴールした瞬間、とっさに買った馬券を見た。「当たった!」ついに2002年の初勝利の瞬間である。
しかし馬連490円と1番人気だったので、購入金額600円から110円の損失である。しかし当たったことには変わりない。
幸先のいいスタートを切れた。

 この後10レース(梅田ステークス)は馬券を買わないつもりだった。他の人が馬券を買いに行くのを見計らって、
少しでもいい場所に移るつもりだったからだ。ところが一向に人が減る気配がない。どうやら2人以上で来ている人が
ほとんどなので、馬券を買いに行っても、もう1人が残っているようだ。こういうときは1人だと損してしまう。それならば
と連勝を狙って10レースの馬券を買いに行った。この頃になると馬券売場もかなり混んできた。10レースは内側の
ダートコースを使うので手前の芝コースより見にくい。それでも直線コースの攻防はかなりの迫力であることには
変わりない。声こそ出さないが興奮してくるのがわかる。ゴールしたときに馬券と新聞を握り締めて「連勝だ!」
心の中で叫んだ。馬券を買い始めて約4年、実は2レース連続で当てたのは初めてだった。やはりゲンのいい
場所であるようだ。もっとも400円買って590円だったが。


9.桜の下の乙女たち
 さていよいよ”本番”である。レースの合間に検討を重ねた結果、下のような馬券に落ち着いた。

馬連ながし馬券。この場合8番が2着以内に入り、下の5通りのどれかが2着以内であれば的中。

今回の桜花賞は「本命馬不在の戦国レース」と戦前から言われていた。前哨戦の勝ち馬が全部違うなどあり、スポーツ
新聞の印もバラバラだった。この場合は勝つ馬を探すより、2着に来そうな馬を探した方が早そうだ。(あくまで個人的
な競馬論)そこで白羽の矢が立ったのが8番オースミコスモである。この馬はこのレースまで4着以下になったことが
なく(4戦2勝、2着・3着各1回)、鞍上は今年(2002年)絶好調の後藤浩輝騎手である。相手についてはどれでも似た
ようなものなので、自分の好みで組み合わせてみた。どれが当たっても10倍を超えるので、少なくとも1000円以上は
儲かる計算になる。

 レース直前になると(私を含めた)観客は一種の興奮状態になる。ターフビジョン(馬場内中央にある大型モニター)に
スターターがスタンドカーに向かう画が映し出されると、新聞や公式プログラムを叩いて手拍子が始まる。テレビ中継で
おなじみの光景である。ファンファーレが演奏されると近くだったのかよく聞こえる。スタート地点はかなり遠い場所
だったので、小さくしか見えなかった。

 18頭の「乙女たち(人間でいえば女子高生と言ったところ)」が満開の桜の下を走り抜けていくのが見えた。最終
コーナーを曲がって直線に入って”乙女たち”の叩き合いが始まると、私も声にこそ出さないが「いけ〜、後藤(騎手)
〜」と心の中で叫んでいた。ところが現実には姿は見えず、明らかに違う馬が先頭に躍り出ていた。周りの歓声も
悲鳴へと変わっていく。場内の(ラジオたんぱによる)実況放送もかなり興奮した口調で、
「先頭はアローキャリーだ!、アローキャリーだ!!、ゴールイン!!!」
とっさに馬券を見ると15番(アローキャリー)がある!ところが2着はオースミコスモとは別の馬(ブルーリッジリバー)
だったので、馬券は当然紙クズ同然となってしまった…。

 アローキャリーはG1レース(阪神ジュベナイルフィリーズ)2着の実績がありながら、このレース18頭中13番人気と
かなり見限られていた。2着のブルーリッジリバーも7番人気ということで、馬連34,440円(もちろん桜花賞史上最高
配当)の万馬券となってしまった。余談だが出馬表でブルーリッジリバーの項を見ると、馬主欄に「小林薫」とある。
そう、(これを書いている現在)JRAのCMに出演している、俳優小林薫さんの持ち馬だった。

 馬券確定後、優勝馬関係者の表彰式が始まった。アローキャリー騎乗の池添謙一騎手はもちろん、馬主・調教師も
表彰を受けていた。宝塚歌劇団団員による花束贈呈が終わると、横から背中が大きく開いた白いドレスを身に付けた
女性が現れた。そして「プレゼンターは女優の畑野浩子さんです」と司会者の声がした。実は公式プログラムに
昼休みのトークショーに出演とあったので、おそらくは…と思っていた。ただ残念ながら遠すぎて写真に収めることは
できなかった。それでも肉眼ではあのテレビでよく見る顔がハッキリと見えた。月並みな表現だが、テレビで見るより
ずっとキレイな女性だった。

 ちなみに2000年のオークスの表彰式では、当時JRAのCMに出演していた松嶋菜々子さんがプレゼンターを務めて
いた。このときも現地(東京競馬場)で見ていたが、あまりに遠かったので肉眼ではまともに見えず、オペラグラスで
ようやく顔が見えたぐらいだった。御存知の通り170pの長身なので、周りの関係者より頭一つ飛び出ていたのを
覚えている。

アローキャリー騎乗の池添謙一騎手のインタビュー(3倍ズームでこれが手一杯…)

 表彰式が終わって池添騎手のインタビューが始まった。池添騎手はこれが初G1勝ちとなったが、その前にも
チャンスがありながら(ヤマカツスズランで秋華賞2着など)G1タイトルとは縁がなかった。それだけに相当嬉しかった
のであろう、レースが終わって記念撮影に出てくるときに拳を高々と上げて喜びを表現していた。翌日の新聞によると
レースが終わって検量室に戻ってから、厩舎関係者と握手しながら涙を流していたということだ。


2年ぶりの”生”桜花賞を満喫!
いよいよ最終章へ…