胸を熱くするような

作:しにを

 
            

 ※本作は、50万HITのキリ番記念として二見月さんのリクエストで書い
  ております。




「うんん……」

 合わさった唇から声が洩れる。
 水音にも似た湿った吐息がこぼれる。
 いずれも、微かで小さい音。
 僅かの隙間もないほど二人の唇は強く合わせられ、互いを求めあっている。
 だが息苦しくもあるのだろう。
 鼻梁が小さく動いている。

 ようやく離れる。
 互いに去り難くしながらも、唇が遠ざかる。
 秋葉はふぅと大きく呼吸をした。
 相手たる志貴もまた同じく息を吐く。
 
「秋葉はこうするの好きだね」

 まるで傍観者のような言い方。
 しかし決してそれが秋葉だけの事でないとわかる熱意さで、もう一度志貴は
唇を寄せた。
 もちろん、秋葉もそれを拒まない。
 とろんとした眼で応じて、軽く口を近づける。

 くちゅ……、ちゅっ。

 唇が合わさり、そしてまた離れる。

「……だって兄さんですもの」

 恥ずかしそうに、でもはっきりと秋葉は答える。
 志貴はくすりと笑う。
 それでは答えになっていないなと思って。
 そして普段とは違う、ためらう事無く自分に甘える妹の姿を眼にして。

「もしかして兄さんは、私では…んん、ふぅ…………」

 秋葉に皆まで言わせずに、志貴はまた唇を奪った。
 今度は唇を軽くつけて、左右に軽く擦る。
 さきほども同じ事をしたが、先程のキスとはまるで違う。
 まだ乾いていた唇の軽い感触と。
 互いに吸い、舌でくすぐり、歯を使わず咥えあったりもした後の濡れた唇の
感触と。
 本当にまるで異なっている。
 酔ったように志貴は唇を擦り、秋葉もそれに応えた。
 ねっとりと絡むように摩擦が強くなっていて、それがまた二人の官能を高め
ていく。

 キスを交わしながら、志貴は秋葉の着ている物を脱がしていった。
 荒々しい動作ではなく、ゆっくりと丹念な手つき。
 秋葉はそれに積極的に協力まではしないが、まったく抵抗の色は無い。
 むしろあえて自分で脱ごうとはせずに、兄の妹の服を一枚一枚取り去ってい
く楽しみを邪魔しないようにしているとも言えた。
 秋葉も、自分に対する兄の行為を嬉しそうに味わっていた。

 ブラウスは取り去られ、すんなりとした腕や肩の線が露わになる。
 さらに一枚。
 上半身は胸を隠すのみとなる。
 晒された肌を志貴は惚れ惚れと眺め、そして腕で軽く隠している胸をじっと
見つめる。

「可愛い下着だね」
「そう…ですか」

 言葉ならぬ言葉を感じ、秋葉は手を下ろした。
 薄い布地に守られた小さな膨らみが志貴の眼に入る。
 兄の眼が胸をじっと見つめている。
 その強さに、秋葉は無意識に手で隠しかけ、そして気がついたようにまた手
を下ろした。
 志貴の眼を強く意識し、それでも……、いやそれだからだろうか、ブラジャ
ーに覆われた胸を視線に晒したままとする。

「少し今日のは子供っぽいけど、こんなのも秋葉には似合うな。可愛いよ」
「兄さんに……、誉められた」

 子供っぽいという言葉に、少し失敗しただろうかという顔をして、でも最後
まで志貴の声を耳にすると秋葉は小さく弾んだ声で呟いた。
 志貴が言うところの、ひらひらが多いブラジャー。
 シンプルなものを普段つけているだけに、それはより少女趣味に見えたのか
もしれない。
 でも、可愛いと言った時の志貴の顔。
 うわべの言葉だけでない賞賛に、秋葉は嬉しそうに顔を綻ばせた。

 志貴の手が我慢できないと言うように背中に回った。
 少し戸惑うように手が動き、そして指が求めていたものに触れる。
 小さな音。
 しかしすぐに胸を覆う一枚を取り除かない。
 志貴は布地の上から膨らみに触れた。
 優しく指が這う。

「ここも子供みたいだね」

 胸の薄さをからかうような言葉。
 だが、それと裏腹な愛情と熱意を持って、志貴の手は薄い丘陵のラインを飽
く事なく探っている。
 秋葉が小さく声を洩らす。
 志貴の手の向うで、鼓動が早まっていた。
 それを掌で感じ、志貴もまた感極まったように、ああと溜息混じりの声をこ
ぼした。

 もっと前、まだ二人の関係がぎこちない初々しさに満ち満ちていた頃であれ
ば、間違っても志貴はこんな事を愛する妹には言わなかっただろう。
 少なくともこんな軽口めいた口調で言う事は出来なかっただろう。
 そして言われる側の秋葉も、平静にはおれず過敏に反応をしていただろう。
 激昂か、沈鬱か、どちらになるにせよ。
 しかし、兄の言葉に今の秋葉は明らかな笑みを浮かべて受け止めていた。
 胸の小ささは秋葉にとって、今なお消え失せぬコンプックスではあった。
 だが、志貴によって胸を見られ、触れられ、可愛がられてきた。
 何度となく数え切れぬほどに、兄が自分の胸に対しどういう反応を示すのか
を見てきていた。
 だから、もはや秋葉はコンプレックスの源を揶揄されるような真似をされて
も、逆上して我を失う事も、涙ぐみ嗚咽すら洩らす事もなくなっていた。
 秋葉にとっていちばん肝心な相手である志貴が、胸の小ささを気にせず、そ
れどころかを気に入り魅了すらされているという事実、それをを心の底から理
解していたから。
 むしろ、志貴に対しては体の中で誇らしげに見せる事の出来る部分にすらな
っていた。
 
 でも、秋葉は可愛く口を尖らせて見る。
 目は柔らかいままで。

「あら、兄さんはこんな小さめの胸に興味はないのですね」

 小さいと言い切らないのは、僅かな矜持であろうか。
 言いながら、自らブラジャーの端を手にして、すっと引っ張ってしまう。
 志貴の目に、薄くはあっても確かになだらかな膨らみを見せている秋葉の胸
が映る。
 静脈の線が見えそうなほどの白い肌。
 周りとは違った柔らかさを感じさせる様子。
 そして、ぽつんと薄いピンクに色付いている突起。
 白い胸にの中央で少しだけ突き出た蕾のような乳首は、可愛くも艶めいて見
える。

 志貴は慌てて返事はしなかった。
 秋葉もそれを気にしない。
 その、溜息をつかんばかりに見つめる志貴の目こそが、何よりも雄弁な返答
であったから。
 吸い寄せられる様に、また志貴の手が胸に触れる。
 そっと、触れれば壊れるものに近づくように。
 肌に触れると、僅かに指が沈む。
 ほんの僅かだけ。
 確かな胸の感触。
 それをじっくりと味わうように、そろそろと指が動き、掌が肌を撫でる。

「吸い付くみたいだ」

 兄が両の手で胸の膨らみを味わっているのを、秋葉はくすぐったそうにして
受け入れていた。
 幸せそうにして、時にぴくんと反応する。
 しばらくそうしていて、何かに気づき恥かしそうに頬を赤らめる。
 そして志貴を覗うように見る。

「直接触れてないのに、こんなにして。
 可愛いなあ、秋葉のここは」

 指が胸の先端に触れた。
 さっきより明らかに前に突き出ている。
 胸への愛撫で秋葉が充分に反応した証。 
 志貴は指を離し、その色づいた様をうっとりと眺めていたが、秋葉の方に視
線を上げた。
 物言いたげな妹の顔に、どうしたのと首を捻ってみせる。 

「兄さん……」
「何?」
「……」

 言いかけておきながら、秋葉は口ごもる。
 志貴はちょっと待って、そして促す。
 眼には期待の色。

「言わないとわからないよ、秋葉」
「もっと胸の先……、弄って」

 むしろやっと許しが出たとでも言いたそうな熱心さで、志貴はそこへの愛撫
を始めた。
 そっと摘むとゆっくりと乳首に刺激を与えていく。
 さらに秋葉の胸は快楽を得ている徴を強く示していく。

「他には?」
「胸を……」
「胸をどうするの?
 もっと強く摘んであげようか?
 それとも軽くしごいてみる?」
「兄さんのしたいようになさって下さい。
 でも私、兄さんに……、おっぱいを吸って欲しい、赤ちゃんみたいに」

 志貴は頷くと、さらに焦らしたりはせずに妹の懇願をすぐに叶えた。
 何の事は無い、それは志貴自身も望んでいた行為であったから。
 だが自分本位にではなく、あくまで秋葉の言葉によって行うという事に喜び
を見出していた。
 唇が胸の突起を突付く。
 
「はぁ……」

 指とは違う柔らかい感じ。
 呼吸による軽い空気の流れ。
 僅かな湿り気。

 それだけで秋葉は歓喜の声を小さく洩らす。
 志貴はそれを確認しつつ何度もちゅっと口づけを続ける。
 そうしていると、さらに乳首は色づき、もっとせがむように飛び出してくる
ようだった。
 喜びではあってもやや単調な動きに慣れたタイミングで、志貴はおもむろに
口を開き、秋葉の胸の先を口に含んだ。
 乳首を全て薄い乳輪ごと吸い始める。

 加減を完全に熟知している者の、弱からず強からずな吸引。
 さらに吸いやすく突き出たような乳首を唇で挟み、吸いつつ舌でくすぐる。
 とは言え、秋葉の言葉に従った唇で挟み吸う事を主眼とした乳首への愛撫。
 多少の技巧めていたものも加えるが、あくまでそれはアクセント。
 舌を閃かせて、そしてまた、赤子のように無心に乳首を吸う。

 秋葉の吐息と悦びの声が、子守唄のように志貴の耳に入り、心ときめかせる。
 しばらくそうしていて、満足したように、志貴は顔を上げた。
 秋葉もまた何かを堪えるような上気した顔になっている。
 ふと、志貴は何かに気づいたように、また掌全体で秋葉の胸に触れた。
 考え込むように小さく掌を動かし、そして口を開く。

「でも、秋葉。少し大きくなってないか?」
「え?」
「胸がさ。大きくと言うか、前より柔らかく肉がついている気がする。
 ずっと触り心地が良くなってるような……」
「どうかしら? 特に計測はしていないので何とも言えませんけど……」

 元々が元々だから、少しでも結果が大きく感じられるのかな。
 そんな言葉はさすがの志貴も飲み込む。

「揉めば大きくなるってのは俗説らしいけど、少しは刺激されて成長を促すの
かもな」
「さんざん兄さんには弄ばれていますものね」
「うん、文句ありそうだな。 そうか、秋葉は嫌々だったのか?」
「それは……」

 否定しようとして、秋葉は少し頬の赤みをました。
 志貴はそれに気づかない振りで続けた。

「そうかあ、俺はこうしていると幸せだったけど、秋葉はこんなに胸を揉まれ
たり、こうやって乳首摘んだり、少し引っ張りながら転がしたり、そんなのは
全然喜んでなかったんだ。
 それなら、もう……」
「兄さんに弄られるの、私大好きです」

 本気にしたわけではないだろうが、秋葉は慌てた素振りで強く断言する。
 志貴は頷き、秋葉の乳首にまた口づけして舌で先っぽをぺろりと舐めた。
 秋葉が、ああと可愛らしく声を洩らす。

 そして納得したように秋葉の胸を志貴は見つめ、そして何か思いついたよう
に顔を上げた。

「でも、あれだな……、秋葉に子供が出来たら、確実に胸がふくよかになるよ
な」
「子供?」
「ああ、俺と秋葉の子供が授かったらさ。まあ、まだまだそんな訳にはいかな
いけど、いずれは……」

 それでもけっこうあるな、と志貴は頭でなにやら計算する。
 同じ事を秋葉に言われたら男として引くのかもしれないが、妙に熱心な様子。

「兄さんとの子供……」

 いっぽう、うっとりと夢見る表情を浮かべる秋葉。
 蕩けるような笑み。
 輝くような瞳。

「そうですね、将来は……、ふふふ」
「ああ。そうしたら、ここからおっぱいが出るんだよな」

 つんと突付く。

「そうですね。そうなるんですよね……」 
「でも、秋葉はあんなに乳首感じやすくて平気なのかな」

 さすがに自分の身ゆえに、今ひとつ信じられない様子の秋葉。
 志貴の方は、自分の言葉により具体性を考察しているのか、じっとその薄紅
の突起を見つめて呟いた。
 なんだろうと秋葉は首を傾げ、そして志貴の言葉の意を悟った。
 その胸に母乳を求めた赤子が吸い付いたら平気だろうかと、いささか冗談で
はない述懐であると。
 顔が真っ赤になっている。

「平気です。
 それに、私は、そんなに感じすぎるほどでは……」
「ふうん?
 いつもあれだけ感じているのにかい、秋葉?
 今だってこんなだし、そうだなあ、このまま胸を可愛がられるだけで最後ま
でイクんじゃないかと思うけど?」
「そんな事は…………、ありません」

 自問自答し、やや自信無さそうな口調で否定する秋葉。
 志貴はくすりと笑みを口元に浮かべ、そしてあまり面白がる様子を見せない
ようにして新たに言葉を被せた。

「じゃあ、試そうか」
「え?」
「だからさ、胸だけをいっぱい可愛がってあげて、それで秋葉がどうなるのか」
 秋葉はそれだけなら平気だって言うんだろ?」
「それはそうですけど……」
「じゃあ、あの時計が鳴るまで。
 それまでに秋葉が耐え切れば秋葉の勝ち。見事最後までイカせれば俺の勝ち」
「それで私が負けたら、何をされるんですか?」

 とんとんと畳み込むように志貴は言葉を秋葉にぶつけた。
 その為だろうか、即座の否定ではなく、とりあえず話を聞こうというスタン
スに秋葉はなっていた。
 しかし秋葉の質問に、志貴は言葉を止めてしまった。

「ええと、別に何も考えてないけど。
 そうだな……、よし、秋葉に言葉にして口にして貰おうかな」
「何を……です?」

 見るからに身構えた態度。
 何を言い出すのかおおかたの見当はついていますよという顔。
 その拒絶方向の意思表示を無視して志貴は続ける。

「こう言うんだ。…秋葉は、おっぱいで最後までイッてしまういやらしい女の
子です」
「……」
「あれ、嫌がらないの?」

 即座の拒絶や反論が示されない事に志貴はおやと首を傾げた。
 とは言え、賛意でない事も明らかではあった。

「嫌がっても、兄さんはこれまで撤回した試しがないじゃないですか。
 何だかんだで私にいつも恥ずかしい事を言わせようとして」
「そうだったかな?」
「……。
 秋葉は、兄さんのおちんちんが待ちきれなくて自分の指で慰めてしまういや
らしい女の子です。
 兄さんを想うと、ここがこんなになってしまうんです。恥ずかしい奥まで全
て見て下さい。
 私の真っ赤に充血していやらしく濡らした処に、兄さんの大きいものを入れ
て下さい。
 秋葉はお尻の穴を弄られて感じてしまう、恥ずか……」
「わかった、もういい。
 そんな淡々とした口調で言わないでくれ」

 ややジト眼で秋葉は志貴を見つめている。
 志貴は思わぬ秋葉の言葉にうーむと腕組みする。

「では、こんな事は…」
「いや、やって貰う」
「…………はい?」
「恥ずかしがって顔を真っ赤にする秋葉が見たい。
 たどたどしく言葉を口にする秋葉がとても可愛いからさ。
 だからぜひとも秋葉の声で聴きたい。
 その為に頑張って秋葉の胸を可愛がってあげるけど……、勝負するのも嫌?」

 志貴の前で秋葉は少し怖い顔をしていた。
 じーっと志貴を正面から見ている。
 いつもであればそういう状態であれば志貴は何らかの選択を迫られる訳だが、
今は正面から視線を合わせている。
 顔に濃厚にお願いだからと記して。
 そして結局、深く溜息をついたのは秋葉だった。

「もう、いつもそんな顔なさるですから。ずるいです、兄さんは。
 わかりま……、あ、忘れていました、私が勝ったらどうしてくれるんです?」
「それは不完全燃焼で可哀想な秋葉を、好きなだけ可愛がってあげるよ。
 秋葉がして欲しい事何でも言ってくれれば実行してさ」
「……それって、結局兄さんに損は無いではないですか」
「そんな事無いぞ、秋葉の要求は泣くほど厳しいから」

 馬鹿……と小さく呟いてから、秋葉は秋葉は何かを考えるたように少し黙り
込んだ。
 志貴はじっと待つ。
 結論はわかっていると余裕を見せて待つ姿勢。
 そして……、沈黙を破ったのは秋葉の方だった。 

「さっきから兄さんに弄られて高まっていて、こんなに強く意識させられてい
るのですから……」
「嫌じゃないだろう? それはそれで秋葉が悦ぶならいいじゃないか」
「……でも」
「俺は秋葉を悦ばせてあげたいな、ダメ?」
「兄さんは本当にずるいです。
 わかりました。……秋葉の胸を可愛がってください」
「うん」

 始めるよと囁き、志貴は改めて秋葉の胸に手を伸ばした。
 どんな事をされるのだろうと秋葉は体を硬くする。
 しかし、秋葉の意に反して志貴の手つきはそっと触れるだけだった。
 
 さっきまでの胸への愛撫よりずっと弱く、風が撫でるように軽い。

 志貴は指先で、薄い乳輪を円を描いてなぞり、乳首の根本に当たる部分をつ
んと突付いた。
 優しく、軽く。
 しばらくその羽のような愛撫が続いた。

 じらすつもりだろうか。
 秋葉はそう思ってちらりと志貴の表情を覗うが、志貴は嬉しそうに秋葉の胸
に触れている。
 
 志貴の指がまた違う動きに入る。
 決して単調に機械的に動いている訳ではない。
 指先であちこちに触れ、一転して掌で胸を覆い、いずれも細心の注意を払っ
ているように秋葉には思えた。
 志貴の思うままに強く、激しく弄ばれる事も秋葉は好んでいたが、こうして
優しく扱われるのも決して嫌いではなかった。
 弱すぎると思える刺激も、ずっと繰り返されるとじんわりと内から熱が起こ
るような快感が湧いてくる。
 強烈な愛撫とはまた違うふわふわとした感覚、むずむずとする感覚。

「あ、ああッッ」

 少しだけ軽く志貴の爪があたった時、チクと甘い痛みが秋葉の乳首に響き、
自分でも驚くほど甘い声が洩れた。
 志貴もまた、びっくりしたように手を引っ込みかけ、そして秋葉の反応を確
かめ指を戻す。

「気持ちいい?」
「はい」

 そう、と嬉しそうに志貴は笑みを浮かべた。
 さっきの兄さんと別人みたい、そう秋葉は心中で呟き、胸の先に集中してい
る指先からの快感に小さく呻き声をこぼした。
 
「秋葉、どうされたい?
 どうしたら秋葉をもっと喜ばせて上げられるかな?」

 変な言葉。
 今兄さんとは、勝負しているのよ。
 そんな事、訊かれたって……。
 そう心中で思いつつも、秋葉は口を開いていた。

「今のままでも痺れるみたいで、気持ちいい……。
 でも……」
「でも?」
「もっと強くして欲しい。指で胸の先を摘んだり、そのまま転がしたりして欲
しいです、兄さん……」
「ああ、してあげるよ」

 志貴は秋葉の指示に従った。
 軽く触れるだけだった手に、少しだけ力が込められ、胸の膨らみを押した。

「は、ふうぅ」

 柔らかく丹念に弄られていた体には、それだけでも新鮮な刺激となった。
 掌に当たる乳首が擦れる感触が秋葉を喘がせた。

 それだけで終わりではなく、志貴の行為は始まりにすぎなかった。
 志貴の手が、指が、さっきまでとはまるで違う動きを取る。
 軽く摘むようにしながら親指と人差し指を上下に動かしてみたり。
 先端の本当の頂上部分を爪で掻くようにくすぐったり。
 胸全体をまた味わう動きの中で、掌で乳首を押し、捻り、擦ってみたり。
 
「どう、秋葉」
「ああ……、胸が蕩けそう。背中までズキン…て、痛いんじゃなくて、響くん
です。凄く気持ちいい」
「うん。もっとしてあげる。それに、他の事もいくらでもするから、言ってご
らん?」
「もっと、根本を引っ掻くみたいに」
「こう?」
「は、ふぁぁ、はい、気持ちいい」

 何もしていない太股がもじもじと動く。
 背中だけでなく、こちらも感じているんだ。
 志貴は何度となく交わった経験から察した。
 胸を攻めていたのに、クリトリスが撫ぜられたみたいと泣き声を上げて、事
実ひとりでに包皮がめくれそうなほど硬くしていた事が何度かあった。
 それに、下着もぐっしょりと濡らしているんだろうな、志貴は秋葉に聞こえ
ない程度に呟いた。
 直接は見えない。
 でも何ともオンナを感じさせる匂いが強く感じられる。
 志貴の想像の通り、下半身を晒せば、とろとろに濡れて谷間を光らせている
筈だった。

 強く、弱く、秋葉の言葉に従いつつもようやく志貴は秋葉を翻弄する動きを
加えていった。
 身悶えし仰け反る秋葉を、志貴自身も興奮を露わにした眼で見つめつつ、胸
の起伏を、健気な突起を、指で責め、可愛がる。
 そして、秋葉が乱れた呼吸を整えているうちに、新たな刺激を加えた。
 先程すでに試していた事を、再びなぞる行為ではあったが。

「や、あ……、兄さん、うぅ、はぁ…ッッ」

 背中に手を回し、少し汗ばんだ体を抱くようにして志貴は秋葉の胸に顔を寄
せた。
 あいにく顔を埋めるべき谷間はなかったが、頬が触れると滑らかな肌と、か
すかな柔らかな弾力が心地よい。
 そして志貴はおもむろに乳首を口に含んだ。

 秋葉から悲鳴とも嬌声ともつかぬ声が迸る。
 ここで初めて強い刺激に我に返ったように、秋葉は素直に身を委ねず、耐え
ようと身をよじった。
 あれほど声を出していたものを、無理やり抑えている。

 それならと志貴は口での愛撫を開始した。
 口に含んだ乳首をちゅっと吸い、しゃぶる。 
 そこまではさっきと同じだが、後は異なっていた。
 ほとんど無心に乳首を吸う事を主体にした愛撫とは違い、ひたすらに秋葉を
一時すら落ち着かせず刺激の波に漂わせる動き。
 唇と舌を、歯と口の内側を、およそあらゆる部分を駆使する口戯。
 対象とするのも片方の胸だけではない。
 右、そして左。
 強く吸ったら、優しく舌で労わり、また唇で擦る。
 舌が側面を舐め、頂点のすぼみをちろちろと這う。
 歯で軽く甘噛みをして、小さく悲鳴が上げさせる。
 舌で強く乳首を陥没させる様に押し込もうとする。

 そしてまた、今度は逆にアクセントとして軽く優しくただおしゃぶりをして
みたりもする。
 意外にも、他で耐えるように唇を噛み締める秋葉が、この時は気を緩め、あ
っけなく喘ぎ声を洩らしたりもする。

「これで、秋葉は最後までイクと思ったのになあ」
「やっぱり、勝負は勝負ですから。
 勝って…んんん、兄さんを反対に弄んで上げます」
「それも魅力的だけど……、よし、これなら、どうかな」

 志貴は起き上がると体の向きを変えた。
 膝立ちで秋葉を跨ぐ形にして、秋葉の背に枕を押し込んで、中途半端に上半
身を起こした形にさせる。

「兄さん、何を……、えっ?」

 志貴は、ジッパーを降ろすと、隆々としたペニスを取り出した。
 既に、先は濡れて下着を汚していた。
 邪魔とばかりに全て脱ぎ捨ててしまう。
 上半身のみ裸となった秋葉とは対照的な姿。

 秋葉は志貴が何をするのかという疑問を抱いていた筈だが
それよりもすでに硬く大きくなっているペニスをじっと見つめる。
 他のものなど何でもないと言わんばかりに。

 志貴は膝立てでにじり寄った。
 秋葉は黙って何をするのか、見守っていた。
 秋葉の目の前にペニスがそびえる。
 志貴は秋葉の強い視線に、これ見よがしに二、三度ペニスをしごいてみせた。
 そして、やや辛そうに反り返ったペニスを前に倒す。
 そして突き出た格好のペニスで、つんと突いた。
 秋葉の胸の膨らみ。
 秋葉の薄桃色の先端部。
 秋葉のつんとした胸の突起。

「ああ、兄さん、こんな……」

 ペニスが胸を突付き、擦るのを、秋葉は眼を見開き身動きできず受け入れる。
 刺激自体は、むしろ指で突くよりもぎこちなく調節は効いていない。
 しかし、指には無い物を持っていた。
 その膨れた亀頭の太さ。
 じわりとした熱っぽさ。
 ねちょりと胸に残る粘液、先走りの雫。

 何より、そのあまりにも強烈な視覚的効果。
 熱く激しく噴出する、熱くてどろどろして粘っこく喉に絡む薫り高く眩暈の
しそうな精液。
 それを射出する器官が胸に触れているのだ。
 いつ飛び出すのだろう。
 あんなに膨らんで、震えていて。
 それにこんな間近で、男の人の興奮した匂いが強く鼻をくすぐって、それだ
けで……。

 それだけで頭がいっぱいになっているのを感じ、秋葉は頭を振る。
 でも、またじっとそれを見つめてしまう。
 胸の細胞の一つ一つが眼であり鼻であり耳であるように、触れたペニスの感
触を触覚だけによらず脳に溢れさせていく。

「兄さん、こんな、ずるいです……」
「そう?
 なら、止めようか?」

 志貴自身も滑らかな肌に亀頭を擦りつける行為に、その感触に高まっている
のだろう。
 最初よりもずっと多く、鈴口を濡らしていた。
 また、とろりとこぼれそうな露を、器用に左胸の突起の先に擦り付ける。
 ねばっとした感触。
 細く亀頭と乳首とが糸を引く。

「くぅ……ッッ」

 口の中がからからになった感触なのに、生唾が湧いてくる。
 それを飲み下す音が、不自然なほど頭に響く。
 志貴はどうするのと問う顔で、まだ胸の先に腺液を擦りつけている。
 
 ついに、秋葉の口からは「やめて下さい」という言葉は出てこなかった。
 志貴は、返事なしを是認として、またペニスの先での胸弄りを続ける。

 秋葉はせめて声だけは抑えようと、口を閉じた。
 志貴は気にせず、独り言じみた言葉を洩らす。

「秋葉の乳首、凄く気持ちいいよ。
 舌で念入りに先っぽを舐められるのも好きだけど、あれよりも硬くて。
 かといって、指先で鈴口を苛められる時と違って爪がないから、硬すぎる事
はなくて。
 うん、面白い感触。
 それにペニスでこんな事するのが、凄く興奮するよ」

 志貴の言葉は、同時に秋葉の思いでもあった。
 ふっと身構えた秋葉の力が抜けた。
 志貴は不思議そうな顔をして、それでも動作はそのまま休もうともしない。

 そして、意外にも先に終わりに近づいたのは志貴だった。

「あれ……」

 焦りにも似た顔になり、動きを止める。
 そして、秋葉の顔を見て、胸を見つめる。
 上気した明らかな高まりの顔と、これ以上ないほど硬くなって突き出た乳首。
 秋葉の表情にやめてしまうのですかという問い掛けを志貴は読み取る。
 志貴は動きを続ける。

 どうしたのだろうと志貴を見つめた秋葉は、その腰のびくつきで終わりの近
さを悟った。
 だが、黙って志貴の攻めを受けて、時折、我慢しきれずに押し殺した声を洩
らす。
 そして、限界を悟ったのだろう、志貴が顔色を変えるのを見ると、押し付け
たペニスを離そうとするより先に、秋葉は志貴をとどめた。

「兄さん、いいです、そのままで……」
「でも……」
「そのまま気持ち良くなってください。
 私の胸で兄さんは、最後まで……イキそうになっているんですよね」
「ああ、秋葉の胸が気持ちよすぎて、もう我慢できなくなっているんだ」
「私の胸で……」

 志貴の言葉は志貴が思っているよりも、秋葉を強く陶酔へと向かわせていた。
 秋葉も男女の愛撫として胸でペニスを挟み込むやり方があるとは知っていた。
 たわわに実った果実のような膨らみがあってこその淫戯。
 どう足掻いても自分ではそうして兄のペニスを喜ばせて上げられない事も涙
が出るほど理解していた。
 それだけに、まったく違う形であるとは言っても、そうして志貴が自分の胸
で感じ、ペニスを震わせている、そして最後まで到りそうだという事実は、と
ほうもない歓喜に秋葉を誘った。

「秋葉、秋葉、ああああッッ」

 ぐいと、乳首を潰すようにさらに強くペニスが突き入れられる。
 しかし、埋もれるべき乳房の柔肉に乏しい秋葉の胸は、突き出た乳首がその
まま鈴口を押し返す。
 秋葉が乳首を破裂寸前の熱いペニスの先で突かれる感覚に呻くのと同じよう
に、志貴もまた鈴口の敏感な部分も秋葉に押し広げられ嬲られるぞくぞく感を
与えられていた。
 受けているものに違いはあっても、それは共に尋常でない痛みにも似た快美
感であった。

 最後の最後という瞬間の到来を感じとり、志貴はギリギリのところで腰を少
しだけ引いた。
 あと少し遅れれば、圧されて噴出した精液が、秋葉の胸と言わず、髪や顔や
すべすべした腹へも飛び散っただろう。
 あやうく隙間を作り出す。
 それで塞がれた穴が開かれたように、志貴の先端から激しく精液が噴出した。
 直前まで広げられた鈴口からの激しい吐精。
 乳首を弾くような勢いで迸る。

 びゅく…びゅくびゅくびゅくッッ。

 秋葉の痛みすら覚えそうな狭い、それでいていざ入ると柔らかく包み蕩けそ
うになる秘裂の奥。
 そこに突き入れ、甘美な摩擦とぬめりとで高められた訳では無い。

 ほっそりとして長い白い指で包まれ、ピアノの奏者の如き運指でペニスの敏
感な部分を擦られ、突付かれ、そして握られ、その指使いの妙に酔わされた訳
では無い。

 いつもの凛とした声と、秘め事の際の甘い鳴き声をこぼす口が、ためらう事
無くそして愛しげに怒張の先に口づけして、舌を這わせ、うっとりと口にペニ
スを含み、喉奥までにも飲み込もうとする、そんな見ているだけで頭が沸騰し
そうな淫技を受けた訳では無い。

 胸の先に自分でペニスの先を擦り付け、突付き、その可憐な先端の感触を堪
能し、その仕打ちに甘い声を洩らし、切なげな吐息を洩らすのを耳にしただけ。

 しかし、志貴は満ち足りていた。
 もちろん射精の瞬間が快楽の頂点ではある。
 だが、今は結果として精を迸らせただけで、その前で既に精神的な射精を済
ませていたような、そんな圧倒的な満足感と喜びが志貴の体中に満ちていた。

「兄さん、ああ、私も……、イク、あ、あああぁぁッッッ」

 一方、秋葉も先程から絶頂近くをさ迷っていた事に変わりはなかった。
 軽い高みで体を何度も強張らせたり弛緩させたりを繰り返していた。
 でも、それらよりずっと強く、びくんと秋葉の背中が反る。
 志貴の終わりよりは遅かっただろうか。 
 でも、僅かな差。
 あるいは、その奔流を胸に浴びた事が、引き金となったのだろうか。
 ともあれ、志貴の精液を受け止めながら、秋葉はエクスタシーを迎えていた。
 蕩けるような、幸せな表情で。
 
 腰がふわふわと頼りない。
 志貴はよろけぬようにしながら膝立てのまま、少し秋葉から離れた。
 秋葉は、上半身を後ろに崩れさせ、後ろ手で体を支えていた。
 まだ余韻に浸っているのか、意志が薄れた顔。
 呆けていると言っても良いその無防備な表情は、しかし端整な造詣にあって
は魅力を減じる事無く、むしろ眼を惹きさえした。
 事実、志貴は秋葉の顔をうっとりと眺めている。
 自分の手で絶頂に導いた少女の姿、それを眺めるのは、何とも言えない喜び
があった。






 しばし静かな時が流れ、やっと秋葉は己を取り戻す。
 それは劇的では無いにせよ、じっと眺めていた志貴には眼を奪うに足る変化
だった。
 秋葉は兄の視線ににこりと笑みを浮かべ、そして胸に弾けた志貴の悦びの果
ての有り様に視線を移した。 

「ふふふ、兄さん。
 私、もう胸から母乳を出したみたい」

 乳首の先を白濁液で濡らした様、それは確かにそう見えなくもなかった。
 粘着性があり、斜めになった体からも流れ落ちようとしない。
 が、秋葉はそれを指で突付くと、微妙なバランスが崩れたのか、水気が多い
部分がつうーと下へと伝おうとした。
 秋葉の指が素早くその動きを止めて、そのまま曲げた腹の部分ですくうよう
に動いた。
 胸を離れた人差し指は、ねっとりと精液に塗れていた。
 それが口元にと近づいていく。

「んん……」

 迷わず秋葉はそれを口にした。
 指がすっぽりと消えた。
 口がもごもごと動く。
 志貴には、見えぬ口中がどうなっているのか想像できた。
 自らの経験の演繹として。
 指や他のものを……、志貴には頬の感触、舌の動きが感じられる気すらした。

 指がちゅぷんと姿を現す。
 てらてらと濡れているが、さっきまでの白濁液は消えている。
 秋葉の喉が小さく動いた。
 今のを嚥下したんだ。
 志貴もまた、ごくりと生唾を飲み込んだ。

「美味しいミルクです、兄さん」

 ミルクと言うよりアルコールを含んだ乳酒ででもあるように、秋葉は陶然と
した眼になっていた。
 唇と舌とで拭い取った指をまたもその濃厚なミルクに浸す。
 そして口へと運ぶ。
 一度、二度ではなく。
 繰返し、何度も。
 白濁液で塗れた薄ピンクの乳首が綺麗にされ、質の異なる白い肌が露わにな
るまで。

 志貴はその間、口を挟めず、秋葉がうっとりと精液を口にし、くちゅくちゅ
と身に響く音を口から洩らすのを
眼と耳とで味わっていた。
 ようやく、全てを舐め終え、ふぅと秋葉は溜息をついた。
 それは満足というよりむしろ、もう終わっちゃったと言いだけな嘆息のよう
に志貴には思えた。
 呆然としていた事に気づき、秋葉の目を捉えた。

「子供用のミルクを秋葉が全部飲んじゃダメじゃないのか?」

 僅かな残滓があるのか、広げた手に舌を伸ばしていた秋葉が答える。

「そうですね。
 兄さんもお飲みになりたかったですか?」
「……遠慮する」

 さすがに想像するに嫌なものがあった。
 顔を顰めかけた志貴に秋葉は品良く笑い声を上げた。

「美味しいのに……。
 それでですね、兄さんがお飲みにならないのなら、残りを頂かせて欲しいの
ですけど……?」

 残りと言っても、と志貴はすっかり跡形も無くなった秋葉の胸を訝しげに見
つめた。
 秋葉は無言で待っている。
 何をと言いかけ、志貴は秋葉の視線に気づく。

「ああ、あげるよ」
「では頂きますね」

 志貴は膝立てで歩くと、秋葉の前に少し下向きになったペニスを出した。
 たらりと、ねばつく糸が垂れかける。
 秋葉は顔を近づけ、舌を伸ばした。
 つーーっと、赤い舌の上に白濁液が落ちる。

 見せつける様に、直接舌で受け止めた精液を口に入れる。
 わざと音を立ててぴちゃぴちゃと舐める。
 そんな真似をしているのに、口に入れているのはキャンディーとかでなくて
精液なのに、なんでこんなに愛らしく見えるのだろう。
 志貴は目の前の少女を不思議そうに、しかし愛情を湛えた眼で見つめた。

 秋葉は口の中のものを味わい尽くすと、顔をさらに近づけた。
 手が、そっと先程自分の胸を蹂躙したペニスに添えられる。
 柔らかい秋葉の手、その熱っぽい視線。
 志貴は秋葉の手の中でびくんと動いた。
 大きさも増していく。
 秋葉は特に動かず、ただ好ましげに兄の高ぶりの様を見つめていた。

 「ふふ、私の匂いがついていない、兄さんだけの匂い……」

 うっとりと鼻を小さく動かす。
 ああ、と志貴は頷く。
 精液に塗れたまだ歓喜に震えるペニスの後始末をする事は少なくないが、大
抵の場合は秋葉の愛液と混ざってどろどろとしているか、根本までねっとりと
甘い匂いの唾液を絡ませている。
 単純に腺液と精液だけで亀頭をぬらぬらとさせているのは、確かに珍しいの
かもしれない。
 
 喉が小さく動く。
 今しがたの残滓を口中で味わい嚥下した証。

 そして、次をと求めるようにまだ縮みきっていない快楽の余韻に震えるペニ
スを舌が突付く。
 亀頭のぬめりを、鈴口のどろどろを舌でこそぎ、すくい取る。
 何度も飽く事無く繰返し、吐精の跡が消え去った時には、志貴のペニスはま
た先ほどの質量を取り戻していた。
 秋葉の舌にむしろ志貴の方から押し付けるように突き出し、さらに紅唇の輪
に切先を潜り込ませる意図を見せる。
 しかし、秋葉は最後に亀頭を強く舐めあげると、ふうと大きく息を吐き、顔
を離した。
 やや名残惜しげな風を視線に残して。

 志貴もちょっと残念そうな顔をするが、無理強いはしない。
 秋葉が横たわり近づくのに、向きを合わせる。
 二人寝転んで顔を合わせる形。

 乳首への攻めに悶えていた顔とも、顔を上気させペニスの後始末をしていた
顔とも違う。
 澄ましたような、いつもの文句ありげな様子の表情。
 
「私の負けですね」
「ああ、そうだったな」
「本当に言うんですか」
「秋葉は都合悪くなって約束破るような事しないよな?」
「もう、さっきはあんなに優しかったのに。
 そんな意地悪な顔なさって」

 そう言いつつも秋葉は身を起こした。
 志貴は寝たままで顔を秋葉に向ける。
 一瞬視線が交差する。
 愛する少女の、しかし恥ずかしげに告白する様をわくわくと待つ志貴の視線。
 兄の理不尽な言葉を、それでも頬を赤く染めて口にしようとする秋葉の視線。
 しかし、秋葉の顔にほんのわずか笑みにも似たものがかすめただろうか? 

「秋葉はおっぱいを兄さんに弄られるだけで、最後までイッてしまういやらし
い女の子です。
 だから……」

 口ごもりはしないが、恥ずかしそうに言葉を発する秋葉。
 無意識にか、手が胸に触れる。
 志貴は黙ってそれを見つめ、聞き逃すまいと耳をそばだてていた。
 秋葉の言葉が終わらない事に少し、奇異の表情。

「これだけでは全然満足できません。もっと胸だけでなく体中を、秋葉の全て
を可愛がってください。
 お願いです……、兄さん」

 言いながら、体を動かす。
 仰向けの志貴の方に、上半身を傾ける。
 羞恥の表情が、艶めいたおねだりの表情になっている。
 志貴はその表情に息を呑んだ。
 目が自然と惹き付けられる。

「胸だけじゃ足りないんだ?」
「はい。もう可愛がってもらえるないのですか?」
「ううん、俺だってまだまだ全然物足りない。もっと秋葉を抱きしめて、秋葉
の中に入れたい」
「私も、兄さんにいっぱい抱いて欲しいです」

 改めて志貴は秋葉の体を引き寄せる。
 まったくの抵抗無く、秋葉の体が志貴の腕の中に寄り添う。

 秋葉が物問いたげに、唇を軽く開く。
 志貴の眼にちらりと紅い舌が映る。

 何を望んでいるのか、言葉には頼る事無く志貴は感じ取り顔を近づけた。
 唇が合わさり、息が絡み合う。
 まだ、ツンと尖っている乳首が、志貴の傷痕に軽く触れる。

 もっと感じようと志貴は強く抱き締めた。
 秋葉が溜息を洩らし、体から力を抜いた。

 くるりと二人の前後が変わる。
 秋葉の体がベッドに横たえられ、志貴は覆い被さりかける形。

 二人の眼が合った。
 共に同じ色を浮かべている。
 
 そして―――
 秋葉は志貴を迎え、
 志貴は秋葉に体を重ねた。

 相手と触れ合い一つとなる喜びと。
 強い愛情と。
 互いへの想いを、溢れんばかりにしながら。


  ≪了≫
 
 
 



―――あとがき。

 本作品は、西奏亭50万HIT記念として書いております。
 元々は自分用に書き掛けていたのですが、キリ番を踏まれた二見月さんより
偶然にも「まったりとした秋葉ものきぼー。あえて二人だけに絞って限界まで
濃厚な愛欲話」といったリクエストをして頂きまして、それならよりいっそう
アクセルを踏み込んで書いてしまえ……といった創作過程を経ております。
 
 全篇ベッドの上で胸で秋葉ですね。
 プロットも何もあったものじゃないなと言う。
 まあ、秋葉派の妄想垂れ流しと笑って見逃してもらいたいものです。
 
 しかし記念作品がこれ……、ある意味いちばん“らしい”ですけどね。
 お楽しみ頂ければ幸いです。

  by しにを(2003/5/27)



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