痴漢電車──這い回る感触

作:ユウヒツ

            



 秋葉は週に一度、電車で学園に通う事にした。それはそれで別に構わないと
思う。あいつのお嬢様ぶりと世間知らずはもう少し直した方がいい。
 しかし、何でまたそのような事をし始めたのだろう。聞いても少し微笑むだ
けで教えてくれない。
 もう一つ心配がある。朝の電車は混雑している。満員といって言いすぎでな
い。
 それに耐えるという事を覚えるのは賛成だが──その、なんだ。満員電車に。
ほら。アレ……痴漢というのが付き物だ。秋葉がそれに耐える。あるいはされ
る。なんだか我慢できない。そういう光景を想像しただけで俺はいても立って
もいられなくなる。
「心配しなくても良いです。この頃は痴漢対策のために女性専用車両というも
のがあるのですよ。私はそれを利用してます。兄さんも案外、過保護なのです
ね」
 何かの折に聞いたとき、こんな答えが返ってきた。安堵はしたのだが──な
ぜか不安は拭う事は出来なかった。



 さわりときた。
 いつもの感触。週に一度訪れるもの。
 触られている。
 思わず、つり革を掴む手に力が入る。
 はじめはセオリーどおりお尻から。痴漢のやり方にセオリーがあるのかどう
か分からないけど。
 さらり、さらり。優しく静かに感触が走る。絹を扱うように。羽毛のように。
感触を感じる。
 はじめはスカートごし。感触は弱い。スカートの布を引きずりまわすように
感触は走っていく。
 ここは女性専用車両。なのに……
 はじめは戸惑っていた。いやだった。何とか振り払おうとした。
 でも、ダメだった。逆らえない。この感触には逆らえない。静かに這いよる
感触。いつしか酔い始める。
 ああっ、感触はお尻の割れ目を這う。上下に静かに往復する。始めはゆっく
りと。そして、だんだん早くと。だんだんと感触は食い込んでいく。奥に食い
込んでいく。
 ああっ……。
 感触はスカートの奥に潜り込んでいく。わたしの少し短いスカートの奥に。
堕落した。この日のためにわざと短いのを用意する。触りやすいように少しだ
け短いのを。関係あるのかどうか分からない。期待に胸が弾む。きゅっと腕で
抱きしめる。自分の胸を抱くように柔らかく。触るまでもない。自覚している。
自分の胸の頂点が固くなっている事を自覚している。
 きたっ……
 感触は太ももを撫でる。始めは外側から。優しく撫でていく。右。左。そし
て両方。まんべんなく感触は走っていく。いったん下まで──ふくらはぎまで
撫でていく。そして、期待の……太ももの内側にいく。優しい感触はじれった
い。もどかしいだけ。強く。強くを望む。
 掴まれる。強く来る。跡が残るほど強い感触。それが這い回る。太ももの外
側、内側、関係ない。押すように先端がお尻の割れ目に来た時は思わず、声が
漏れる所だった。
 はあっー。熱い吐息。体が火照っていく。周りも火照っている筈なのに寒く
感じるのはそこまでわたしは熱くなっているのか。
 這い上がっていく。感触はだんだんと這い上がっていく。太もも、お尻を撫
でられながらも感触は上へ上へと昇っていく。脇腹を撫でられる。背中を撫で
られる。お腹を撫でられる。いつもどおり優しく。
 そして──胸に来る。感触は優しく胸を這いずり回る。わたしの胸を優しく
撫でまわす。いつもそう。わたしの一番触って欲しいところ──ショーツの奥
の前に胸を責めていく。それも執拗に──
 胸の外周を円を描くようになぞる。固い先端の感触。それが走り回る。柔ら
かく食い込むのが分かる。制服の上からでもわたしの胸の形が変わっていく。
もまれている。胸全体を感触が包み、柔らかく、優しく、荒々しくもまれてい
る。けど、乳首には触らない。乳肉全体走る感触の中に乳首は含まれてない。
 ううっ。じれったい。感触はじれったい。早く楽にして欲しいのになかなか
楽にしてくれない。
 ゆっくりと時間をかけて、わたしを責めていく。胸全体が上下左右に揺れて
いる。けど、乳首は触らない。感触が乳肉に深く深く食い込む刻まれる。けど、
乳首には触られない。
 あふぅ。すこし、体を動かしてしまう。肝心のところはわたしは触られてな
い。なのにもうトロトロしている。蕩けてしまいそうになる。けど、そうはな
らない。じわりじわりと責められながらもそうはならない。弱火で炙られる。
感触は火。わたしはお肉。弱火でじっくりと炙られるだけ。とろとろと脂が落
ちるだけ。じっくりじっくりと熱を帯びて行く。はあー。
 するりときた。期待の乳首に感触は責めてきた。やさしくもどかしく走るだ
けの感触は胸の頂点に来た。
 いいっ。制服は意味をなさない。下着は意味はない。自己主張している乳首。
固く尖っている。そこに巻きつくような感触。きゅっと絞られる。何度も何度
も絞られる。ああっ。もれる。抑えようとして抑えきれないわたしの嬌声。固
い先端が弾く。わたしの乳首を弾いていく。だめ、それ以上は……。まとまら
ない。ぐりぐりと固い先端が乳首を正面から押し込んでいく。くるくると回る
ように押し込まれる。だめっ。
 変わっていく。感触が変わっていく。今までは布越しだった。相変わらず這
い回るお尻の感触も。今攻め立てられる胸の感触も服というクッションが存在
していた。ほとんど意味をなさないようでいてもやはり感触を緩和してくれて
いた。
 それが直接来る。
 たまらない。
 静かには這い回る感触。強く激しく蠢く感触。お尻を撫でまわされ、割れ目
に直接走る。胸も揉まれ。乳首は直接いたぶられる。
 ダメ……。もっと──。混濁していく。意識がうまく働かない。全身に這い
まわる感触は撫でまわされながらも上へと上がっていく。下へと下がっていく。
ねえ、どうすればできるの。首筋を撫でられ耳を摘まれ、胸をもまれて乳首を
弾かれ。脇腹を撫でられおへそを責められ。お尻を掴まれて太ももを、ふくら
はぎを、足首を掴まれる。感触が全身を走りつづける。
 抑えられない。ちいさくうめく。声がどうしても漏れてしまう。胸を、乳首
をこねくり回され。耳も優しく愛撫され、わたしの下着はとろとろに濡れてい
る。太ももまで垂れている。わたしが自ら出した液が垂れている。それをなす
りつけるように感触は太ももの内側も這いまわる。でも、それだけしかない。
全身を責められる中、肝心のわたしのアソコには触れようとしない。既に張り
付いている。滴り落ちるわたしの液でショーツは濡れて張り付いている。
 はあー。
 感触は太ももの付け根まで来る。期待でドキドキする。来ない……感触はす
ぐに離れ、焦らすように太ももを撫でる。そのまま膝まで下がり、撫でつづけ
る。熱く火照る体はどこを触られても快感しか呼ばない。指を舐められても、
髪を撫でられても、快楽だけがわたしを襲う。
 けど、それはわたしを嬲るだけ。コトコトと煮込まれて焼かれる。それだけ。
お尻を突き出して振る。
 触って。あたしの一番熱いところを触って。違う。お尻はもういい。胸もい
い。わたしのお○んこを触ってよー。お願い。
 きたっ。とうとう感触がわたしのアソコに来る。まずはじっくりと周辺から。
恥毛の一つ一つを立たせるかのようにゆっくりと撫でる。下に下がって、わた
しのアソコ──秘裂のふちを撫で始める。ああっ。もれる。我慢できない。声
が出てしまう。絶え間なく襲いつづける快楽にわたしははしたなく声を出し続
ける。
 ああっー。ひときわ甲高い声を上げてしまった。感触はわたしのアソコの豆
粒を弾いた。それだけでイッテシマッタ。大きな声が出てしまった。ハシタナ
イ? いいえ、そんな事ない。だって、車両の中全体が嬌声に包まれてるから。
 そう。わたしだけでない。感触に酔いしれるのはわたしだけでない。みんな
そう。この車両に乗る者全員に感触が襲う。全身を嬲り這い回る感触。誰も抵
抗できない。いや、ちがう。週に一度のこの日をみんな楽しみにしている。ド
キドキしながらもこの時間帯に乗る。いやなら一本遅らせるか早めればいいか
ら。
 はあー。優しく嬲る感触。わたしの豆粒をこねくりまわし、ふちを撫でまわ
す。かすかに入れてかき混ぜる。もう、恥も外聞もない。ただ、声を上げて酔
いしれる。相変わらず走る全身の感触に酔いしれる。胸の乳首は固くてびんび
ん。それも感触はこねくり回している。いいのっ。
 固い先端がいくつもわたしのアソコに入り込んできた。四方八方に走り回り
かき混ぜる感触。グチュグチュしている。ピチャピャと水音はわたしの耳に聞
こえてる。
 はあー、もれ出る熱い吐息。片手で掴むつり革に全身を預ける。抑えきれな
い欲情。ふと、前を見ると同じように感触に酔いしれる子がいた。
 名前は知らない。制服も違う子。黒ふちメガネに三つ編みとまじめそうな子。
いつも列車の中で見るたびに単語帳とかを開いている。
 そんな子が淫靡に酔いしれている。蕩けるような感触に身も心も委ねてる。
かすかに口から、あっ、あっ、と鳴いている。
 わたしはキスをした。その子とキスをした。熱い感覚。申し合わせたかのよ
うに互いの舌を嬲り、互いの咥内を舐める。
 熱い──感触と違い、熱い生に溢れている。片手はつり革。もう片手はその
子の胸に行く。意外と思い量感。乳首が尖っているのは服の上からも分かる。
タプタプと乳房を持ち上げると荒々しく掴み、乳首をひねってやった。ああっ、
とうめいている。その子もわたしの胸を責める。ぎこちない。けど、それがい
い。服の上から互いに責め合う。
 あんっ。誰かの指がわたしのアソコに来る。ショーツ越しに優しく撫でられ
る。アソコの割れ目を軽く爪でこすられる。ぬるぬるとした感触。そのまま、
豆粒を親指で押される。お尻にも指が行く。深くお尻の割れ目に食い込む。誰
なの。
 見ると知らないOLがわたしの下半身を嬲っていた。その人は胸をさらけ出
し、わたしと同じ制服を着た子に舐められていた。顔は上気している。そのO
Lの下半身も別な子が責めている。大きく開いた脚の横にひざまついて両手で
後ろから責めている。OLの胸を舐めてる子もお尻を突き出し、別な子に舌と
指を淹れられている。その間も感触は這い回る。
 別なところからわたしの胸を掴む子が現れる。別の子がわたしの耳と首筋を
舌で舐めていく。絡み合う手と舌。わたしも負けじと手を伸ばす。誰かの熱く
潤ったアソコに指を淹れる。誰かの固い乳首に舌を伸ばす。その間も感触は走
りつづけ、嬲りつづけ、責められていく。
 見えない感触──誰かの手ではない。指ではない。不思議な感触。熱を感じ
ない。ただ、感触だけが走る。乳首を前の子に舐められながら感触はわたしの
乳首をひねる。わたしのアソコをOLの指が上下に刺されながら感触は左右に
攻め立てる。二重三重と走る感触。とても信じられない。

 列車は走っていく。車両は淫蕩の饗宴。誰もが服をずりさげ、喘ぎ、すすり、
酔っている。走り回る感触。這いまわる感触。それから逃れるかのように互い
の指と舌を求めていく。
 男がいない性のざわめき。百合の宴。終点まで止む事はない。
 それを秋葉は眺めていた。熱くほとばしる狂宴の中で一人悠然とたたずみ、
微笑んでいた。
 髪は赤い。染めたのではない。生の躍動に溢れた赤い色。風もなくひとりで
に蠢いている。

 赤主・檻髪。

 見えない思念の髪がこの車両を覆う。全ての子に思念の髪が絡んで責めたて
て行く。そこからほとばしる熱くたぎる性の興奮を「略奪」していく。
 秋葉の週に一度の楽しみ。この頃は血の代りに啜ってる。
 列車は走って行く。何も知らずに走って行く。
 この子達の喘ぎ声が外に漏れる事はない。
                             
                              終わり。











 あとがき

 秋葉が痴漢されてたと思った方、手を上げて。
 
 僕の知ってる限りタイプムーンの作品で痴漢電車は見たことありません。ま
あ、確かにやりにくいですよね。誰も電車を使って無いし。某チャットにて馬
鹿話から一つ作ってみました。犠牲者は名もなき少女。一応ヒントとして「わ
たし」という一人称を。秋葉は「私」ですしね。まあ、少し短いですが、楽し
んでいただければ幸いです。
 今度は誰を痴漢しようかな。


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