「あっ、やだ。出る。出ちゃう」
 かすかな夕日が差し込む路地裏。人気のない路地裏。少年は始めて味わう感
覚におののきうめいていた。
 半ズボンのチャックを開けられ幼い性器を外気に晒す。──しかも用を足す
ためにではない。
 まだ、皮のかぶった性器。それこそ小さなソーセージ。固さも半端。血が溜
まっているのにどこか柔らかく頼りない。
 初めての体験だ。
 少年のソーセージは咥えられている。少し年上のお姉さん。割烹着を着た可
愛く綺麗なお姉さん。それが汚い自分のソーセージを咥えてる。オシッコを出
すことしか使用したことのない自分のソーセージ。少女の小さな口で咥えられ
る。ずぽっずぽっと口の中に唾が溜められ口から漏れてこぼれている。温かい
口に包まれる。それだけで蕩けそうになる。ソーセージの先端を舌が蠢き這う。
チロチロ走る感触はこの世のものとは思えない。軽くたてられる歯も刺激的だ。
逃げたくなる。あまりの気持ちよさに腰が引いてしまう。たまにソーセージか
ら玉袋に柔らかい指や舌が這うだけで、もうダメになる。ああ、逃げられない。
しゃがみこむ少女はしっかりと少年の腰を掴む。引いて逃げようとする少年の
腰を引き寄せてさらに口で刺激を与える。声を出しちゃいけない。人気のない
路地裏とはいえ誰がいつ通るか分からない。それでもうめくように漏れる声は
止められない。少年のソーセージを咥え、上下に揺れる少女の頭。あどけない
リボンとはミスマッチな光景。ただ、耐えている。甘美な感覚に耐えている。
「ああっ、だめっ。我慢できない。やだ。でるよ。出ちゃうよ」
 とうとう耐え切れなくなった少年。自分のソーセージの奥から先端に今まで
にないモノが集まりあふれ出る。背中全体に何かが走り抜けて頭を揺り動かす。
全身に力が入る。あふれ出る。ソーセージの先端からいつもだすオシッコとは
違う何かが溢れ出す。どろりとしたもの。出た瞬間、力が抜けた。恍惚とへた
り込む。少女は少年のソーセージから口を離して立ち上がる。
 ごくっ。
 飲み干した。少女は少年が出したのをごくりと飲み干す。それでも口から少
女の唾と少年の白いものがあふれ出る。それもまた、テッシュで手際よくふき
取る。
「……おねえちゃん」
 ふらふらと少年は少女に抱きつこうとする。自分の性器──ソーセージは今
だ外に晒したままだ。少しだらりとしている。力無く駆け寄り少女の胸に手を
伸ばす。未だ満足せず求めている。
「ダメですよ」
 少女は少年の懇願をぴしゃりと撥ね退けた。軽い笑顔で手を叩き、ひらりと
身を翻す。
「わたしはご奉仕するだけです。はじめに言いましたでしょう」
 そういって、少女は少年の身支度を整える。熱い吐息を今だ吐き出す少年。
半ズボンの前は未だに膨らんでいる。軽く愛撫すると少女は立ち去ろうとする。
「おねえちゃん」
 少年の物欲しそうな声を笑顔で拒絶し、少女は立ち去った。
 人気の無い路地裏。かすかな夕日が照らしていた。

 
 ……いつからだろうか。琥珀はこのように少年を嬲るようになったのは。
 反動なのだろうか。
 遠野槙久。四季。この二人に長年琥珀は嬲られつづけてきた。
 そのために遠野家に来たのだ。
 性も何も知らない頃から男の暴虐を受けつづけてきた。
 ただ、翡翠を守りたい。その一心で自分を殺した。
 秋葉のおかげで開放された。
 志貴のおかげで解放された。
 それでも……うずく事がある。
 心のわだかまりが残っている。
 しこり。何なのかは分からない。
 ただ、求める。あどけない少年を誘い嬲る。
 何も知らない少年たちに性の快楽を教える。
 はじめは戸惑い、逃げていく。
 けれども知れば求めてくる。 
 ああ、堕ちていく。白いものを汚すかのように。
 そんな喜び。けど、違う。
 琥珀が少年を求める。
 かつての意趣返しではない。
 何かを探すためなのだ。
 忘れ去った何かを。
 少年の肉棒が──ソーセージが知っているのだ。
 琥珀の求める物を。



「痴漢電車──小さなソーセージの逆襲」

作:ユウヒツ





 突然だが、レンは白くなった。
 といっても反転したわけでも真夏の雪の再現というわけでもない。
 単に琥珀がミルクをこぼしたのだ。
 大鍋いっぱいのミルク。
 何かの料理に使おうとしたのだろう。
 バランスを崩し、厨房に入ってきたネコのレンに盛大にぶちまける。
 ぬるま湯状態だったのが不幸中の幸いか。
 バシャ―と盛大な音がした。
 床にミルクの水溜りを作る。
 じゅうたんに大きなしみが広がる。
 ひげの先端からぽたぽたとしずくを垂らしている。
 動かない。
 一瞬、何が起きたか理解出来ないまま佇んでいる。
「ああ、ごめんなさい」
 琥珀は慌ててタオルを手に取り、レンに駆け寄る。
 ふき取ろうとする琥珀の手を逃れて、レンはミルクまみれのままどこかへ行
ってしまった。 
 
「──姉さん、これは」
 翡翠は食堂に入るなり眉をひそめる。
 三時の休憩。おやつの時間。
 少し前までは二人きりの憩いの時間。
 この頃はレンも加わり楽しんでいる。
 しかし──
 テーブルにはドラ焼きとよく冷えた水羊羹。それに熱い緑茶が並んでいる。
もちろん、三人分。
「あはー。江戸前屋さんが新しい味のドラ焼きを開発したというので今日は和
風で攻めてみました」
 満面の笑みで琥珀は言った。ただ、翡翠の表情は硬い。
「……翡翠ちゃん。ドラ焼き嫌いでしたっけ」
 少し首をかしげて琥珀は聞いて見る。
「いえ、わたしは構わないのですが──本日はフランス・ド・アールのケーキ
ではなかったのですか。レンさまはとても楽しみにしてたので」
 翡翠の言葉に琥珀は「ああっ」と声をあげる。
「そういえばそうでしたね。けど、ドラ焼きもおいしいですよ。ケーキは今度
にして、今日はドラ焼きを楽しみましょう」
 チリン。猫の姿のレンが食堂に入る。テーブルの上を見ると何も言わずに身
を翻す。そのまま足早に出て行ってしまった。
「ありゃりゃー、怒っちゃいましたかね、レンさん」
 ポリポリと頭を書く琥珀に、
「そのようですね」
 と、翡翠は同意した。


「あれー、ここはどこでしょう」
 琥珀は周りを見渡し、不思議そうな顔をする。揺れている。自分は一人電車
に乗っている。夕日が差し込む。がたん、がたんと電車の走る音がする。
 不思議だ。自分の格好はパジャマ。大き目のだぶついたレモン色の上着を羽
織っているだけ。下はズボンをつけずに薄い黄色のショーツ一枚。パジャマの
大きい裾が太ももの大半を覆っている。裸足で一歩、歩いてみる。
 これは夢だろう。理解できる。自分はこんな格好でこんなとこに来た記憶は
無い。意識が目覚めたらここにいた。唐突にここに現れたのだ。
 ああ、夢だ。ここは夢。ただ、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚。五感全てが
鮮明に認識できる不思議な夢。いつも見る夢の不安定さがここに無い。非現実
的な認識力がここには存在しない。
 それは──つまり、
「レンさん?」
 このようなことを行うのは琥珀に一人しか思いつかない。夢魔のレン。いか
なる理由か知らないがレンが紡ぎあげた虚構の世界。ここに琥珀を招待したと
いう事か。
 電車は走る。赤い夕日が中を照らす。窓の外はオレンジ色に染まっている。
「レンさ―ん」
 怖い。一人佇む寂しさ。琥珀は声を張り上げる。何も無い。
 空しい沈黙だけが帰ってきた。
 寒い。
 寂しくて寒い。不安が押し寄せる。
 チリンッ。
 鈴の音。振り返ると人型のレンがそこに佇んでいた。夕日に照らされ、こっ
ちを見ている。
「もうー。レンさん。驚ろかさないで下さいよ」
 一瞬、ドキッとした琥珀だがレンの姿を見て安堵の表情を浮かべた。
 レンは無表情で琥珀を見ている。何も言わない。いや、かすかに頬を膨らま
せてみえるのは気のせいか。
「……レンさん」
 少し小さな声で琥珀は声をかける。レンは何も言わずに手を揚げる。電車は
どこかに止まった。プシューとドアの開く音が聞こえる。窓の外は相変わらず
夕日で何も見えないが。
「おねえちゃん」
 突然、琥珀に誰かが抱きついてきた。後ろからむしゃぶりつくように絡み、
背中に顔をこすりつけていく。手はそのまま琥珀の胸に伸ばしていく。
「きゃっ、きゃっ。誰です。何ですの」
 琥珀は驚き、その手を引き剥がそうとする。どこかで聞いたことある声。自
分の胸に伸びる手はまだ、小さい。何とか振りほどき振り向いてみる。そこに
は少し前に琥珀が嬲った少年がいた。パジャマ姿で股間を膨らませながら琥珀
にむしゃぶりついてくる。
 再び走る電車。しかし、すぐに停車する。
「どういうことですの」
 琥珀が訳が分からず少年と向き合っていた。その隙に、
「お姉ちゃん」
 別の少年が琥珀の後ろから抱き付いてくる。
「ひゃう」
 思わず声が出る。新しい少年は琥珀の太ももに抱きついてくる。すりすりと
ほお擦りする。引き剥がそうとする琥珀に始めにに飛びついた少年が琥珀の胸
に飛び込んでくる。顔を琥珀の胸に押し付けていく。
「もうー、なんなんですの」
 琥珀は思わず、声を上げてしまう。電車は再び動き、また停車した。ドアが
開いて別の少年が飛び込んでくる。琥珀はげんなりした顔でそれを見つめてい
た。

「んぐっ、前より固いですね」
 琥珀は目の前に突き出された少年の性器をしゃぶりながら呟いた。まだ幼く
皮のかぶった少年の肉棒。白く大人のようなグロテスクな印象は無い。ソーセ
ージといっていいほど可愛い。ただ、いくつも琥珀の目の前に突き出されるの
はいささかうんざりする。
 電車は幾度と停車し少年たちを招き寄せていた。全て見覚えがある。かつて、
琥珀が弄んだ少年たち。名も知らない少年たちが琥珀にむしゃぶりついてくる。
抵抗は既に止めている。まだ、あどけないとはいえ数人がかりでは抵抗するだ
け無駄だ。
 琥珀は大きく股を開いてしゃがみこむ。パジャマの上着のボタンは全て外さ
れている。寝るときにブラは着けてない。外気に晒された琥珀の胸をいくつも
の手が伸びて触ってくる。形が変わるほど強く掴み乳首をひねってくる。いく
つも突き出されるソーセージを口に咥え、あるいは手でしごく。手は背中、腹、
脇腹、首筋、二の腕。と琥珀の全身を容赦なく這っていく。当然、太ももや膝、
お尻、それに股間にも手は伸びていく。いくつもの指がまんべんなく琥珀に這
い回る。テクなど無い。ただ、触りたいから触る。本能の赴くままに琥珀を触
りつづける。そこに相手の気づかいなど無く。ただ、欲情に任せて襲う。琥珀
はそれを巧みにいなしていく。口の中に広がる肉の味。少し塩味が混じってる。
ペロペロと先端を舐め、少年たちは「あっ、あっ」とうめいていく。長くは続
けない。焦らすように別のソーセージに咥える。唾液にまみれたソーセージは
手でしごく。
「あはー。本当にひとつ、ひとつ、味が違いますね。こうして比べてみるとよ
く分かります。んふっ、それに……触り方も──違いますね。あっ、この子の
触り方は気持ちいいかも。将来有望ですね。あんっ、少し、せっかちすぎます。
ひゃう、どこで覚えてくるんですか、そんな責め方」
 琥珀は冷静に対処していた。少年たちの欲望を正面から受け止めている。か
つて、琥珀は嬲られていた。遠野槙久。四季。文字通り鬼の暴虐。通常の神経
では耐えられないほどの苦痛。人形になることで──我を殺す事で耐え忍んで
きた。それに比べれば少年たちの性の暴走など可愛いもの。数が多いのでてこ
ずるが、こうやって楽しむ余裕も出てきてる。
「ふふっ、レンさんが何を考えているか分かりませんが──せっかくの機会で
すから楽しませていただきますね」
 レンの意図は未だにわからない。なぜ、琥珀をこのように嬲るのか。この頃
、酷い目にあわせたからその仕返しか。どちらにしろ逃れる事はできない。こ
こはレンの領域。ならば、楽しむだけだ。せっかくの機会なんだから楽しく過
ごそう。どうせ、夢の中なのだから。
 ソーセージを咥え舐める。稚拙な少年の責めとはいえ身体は熱く火照ってい
く。乳首は固く尖る。そこにいくつもの指が這い、つまみ、弾く。頭を近づけ
て舌で舐め、吸われ、甘く噛まれる。パジャマは剥ぎ取られ、ショーツ一枚。
それすらもしとしと濡れそぼり用を成さない。股間にいくつもの指が這う。秘
裂にそって指が這う。肉芽も尖っている。それも弾かれる。くちゅくちゅと音
がする。誰かの舌が這う事もある。お尻にも手が伸ばされる。割れ目に指が食
い込み動かしていく。尻を掴まれ強引に揉みしだかれていく。意外な性感。背
中を舌で這われるとゾクリとする。これは知っていた。けど、二の腕も舌で舐
められると気持ちいいのは知らなかった。首筋、耳。そこにも舌が這い回る。
腹、脇腹。おへそも舐められる。これはこそばゆい。
「はふっ、考えてみれば……貴重な体験かもしれませんね──ああっ、だって、
こんな、年端も行かない少年たちにご奉仕されるなんて。あっ、そこいいかも。
──現実世界ではとてもこんな事は出来ませんし。うっ、それは勘弁して。あ
あ、だめ。けっこう、いえ、かなりいいかも」
 掴んでいるソーセージから白い精液が出た。その少年はうっ、うめいている。
別の少年は自らの手淫で琥珀の顔に精液をぶっ掛けてきた。咥えてるソーセー
ジからも噴きだされる。琥珀はふふっ、と微笑むと手についた精液を別の少年
に舐めさせる。顔や胸にこびりついた精液もやはり別の少年に舐め取らせる。
丹念に。口に溜まった精液は近くの少年とキスをして口の中に送り込んでやる。
 果たして嬲っているのはどちらか。レンの意図は成功したといえるのか。そ
もそも、レンは琥珀を嬲るためにこのようなことをしているのだろうか。答え
はわからない。ただ、レンは手を揚げる。電車は再び、どこかへ停車した。

 新しい少年が後ろから手を伸ばしてきた。琥珀の胸を掴む。今までの少年の
触り方とは違う。優しく繊細に。そっと伸ばしてくる。初めての感覚。けど懐
かしい。
「えっ、いや、いやっ」
 初めて、琥珀は身をよじった。今までどんなに乱暴な手つきも受け入れてき
た。けど、違う。今の手からは何とか逃れようとする。本能がそうさせる。
 ちろりと首筋と耳を舐めてくる。アイスを舐めるように優しく柔らかく。身
をよじる。何故か嫌悪感が出てくる。逃れられない。
 いつしか、他の少年たちは離れていく。新しい少年だけが琥珀を愛撫する。
優しく優しく。壊れ物を扱うかのように静かに。胸を揉む手も乳首をつまむ指
もそっと気遣う。琥珀のことを第一に考えて触ってくる。後ろから抱きしめて
くる少年。誰だか分からない。琥珀は今まで嬲った事は無い少年。下のほうに
も手を伸ばしていくショーツ越しに触ろうとする。
「やだっ、やめて」
 顔を真っ赤にして逃れようとする。恥かしい。見られたくない。こんな汚れ
た姿を見られたくない。
「大丈夫だよ」
 懐かしい声がした。力が抜けていく。指が琥珀のショーツに触れる。ジュク
ッ。かすかな水音。撫でていく。優しく優しく。
「……あっ、あっ」
 声が漏れる。何とか抑えようとしても抑えられない声。つままれる乳首。甘
く噛まれる耳。そっとささやられる言葉。
「大丈夫。安心して」
 誰の声だろう。いいえ、知っている。琥珀は知っている。この優しい手を知
っている。温かい指を知っている。柔らかい舌を知っている。安らぎに満ちた
声を知っている。かつての記憶。そう、琥珀の始めてを捧げた少年。
 ──遠野志貴。
「志貴さん……」
 後ろを振り向く。かつての少年がそこにいた。優しい目で見つめてくる。
「見ないで下さい──わたしは汚れてしまいました」
 そっと琥珀は身をよじる。幼い志貴は優しく微笑む。
「大丈夫だよ。琥珀はとても綺麗だよ」
 そういって、キスをしてきた。
 ああ、思えばこれを止めていたかしれない。優しく抱きしめてくる少年のぬ
くもり。琥珀はこれを求めていた。

 遠野槙久は半端な優しさを持っていた。琥珀を一人閉じ込めた。それだけな
らいい。だが、幼い琥珀にこれから何をしようとするかを説明した。ビデオ。
本。その手のものを用意し、琥珀に見せた。槙久にしてみれば心遣いのつもり
だろう。これから行う事を琥珀に説明し覚悟を決めさせる。琥珀も翡翠のこと
を考えれば受けるしかない。
 けれども怖い。無修正で見せられたビデオ。男の大きいアレが自分に入って
くる。グロテスクで見るもおぞましい。逃げたい。けれども逃げられない。拒
めば翡翠が犠牲になる。翡翠にあんな大きなものを淹れられる事になる。守ら
なければいけない。けど、不安。押し寄せる恐怖を琥珀は自慰で逃れようとし
た。
 槙久も推奨していた。自慰で少しでも琥珀がほぐれる事を。だから、琥珀も
必死だった。必死に自慰で逃げようとした。昼も夜も手淫で慰めていた。コク
コクと訪れる日。不安で胸が張り裂けそうになる。
 いやだ、逃げたい。
 その日も一人ベットで慰めていた。今夜抱かれる。槙久にそういわれた。だ
から、必死で慰める。やだっ、やだっ、と呟きながら必死で手を動かしていた。
すすり泣きながらも必死で。
「どうしたの?」
 不意に声が掛かった。ドアからではない。窓から。ここは二階なのに。
 みると、そこに少年がいた。いつも庭で遊んでいる少年。何も知らず無邪気
に遊ぶ少年。翡翠、秋葉さま、四季さまと遊んでいる少年。窓から眺めている
琥珀に「あそぼうよ」と声をかけてくる。
「あっ、あっ」
 琥珀は声が出ない。恥かしいところを見られた。少年は梯子で強引に琥珀の
部屋に入ってきたのだ。
「何しているの。何で泣いてるの」
 少年は無邪気に聞いてくる。琥珀は白いワンピース一枚。ショーツは丸めて
捨てている。穿いてない。
 きょろきょろと見渡す少年。不意に何かを拾い上げる。琥珀の脱ぎ捨てたシ
ョーツ。広げてみてる。
 一気に沸騰した琥珀は瞬時に少年の手から自分のショーツを取り上げる。あ
っ、声を出した少年は驚いて琥珀を見る。しかし、すぐに近くに散らばる一冊
の本を手に取る。写真集。セックスを無修正で繰り広げる本。パラパラと眺め
る。
「──してたの」
 無造作に聞いて見る。琥珀はさらに赤くなる。
「そういえば、何で泣いてたの。何かあったの」
 少年はさらに踏み込んでくる。優しい笑顔だった。琥珀はポツリポツリと漏
らすように話していた。

「──なるほどね」
 少年は頷く。重々しげに見える。けど、どこまで理解してるのか。
「けど、汚らしいものでないと思うよ。僕たちもこうやって生まれてきたのだ
から。お父さんもお母さんもよくしていたし、村のみんなもいろんなところで
やっていたよ……たぶん」
 少年の記憶は曖昧だ。ただ、なんとなく覚えている。霞みのような曖昧な記
憶。ちなみに閉鎖的な環境下では性に対する倫理観というか禁忌が緩い。全て
運命共同体というか家族のような感覚ゆえだろう。
「でも、あんな大きなものが入ってきたら……」
 怖い。小さな自分の身体があんなグロテスクなものに貫かれる。裂けてしま
いそうで不安だ。
「そうだなー。そうだ。ほぐせばいいんだ。ほら、初めから大きなものでなく
て小さいものから徐々に慣れてくる。僕もそうやって辛いものを克服したんだ」
 少年の提案に琥珀は目をぱちりとする。ガチャガチャと少年は半ズボンを脱
ぐ。
「きゃっ」
 おもわず、目をそむける琥珀。それでもちらりと見る。毛は生えていない。
無垢な性器がそこにある。たらりと垂れ下がっている。大人のようにグロテス
クではない。小さなソーセージ。
「ほら、これで練習すればいいんだよ。どうかな」
 少年の提案にそっと琥珀は手を伸ばしてみる。柔らかい感触。少年は「うっ」
とかすかにうめく。すこし琥珀が手を動かすと見る見る大きくなる。固くなる。
それでも大人のようにグロテスクで醜くない。むしろ、
「……可愛い」
 琥珀の呟きになぜか、少年はむっとしていた。優しく丁寧に動かす琥珀の指。
そっと見つめる視線。少年の顔は近づいていく。目の前に少年が迫ってきた。
「……キスしようよ。こういうときはキスから始めるんだ」
 少年のささやきにそっと頷いて。
「──名前、教えてくれる。わたしは琥珀。琥珀というの」
 二人はキスをかわした。少年は「志貴」と名乗った。

 そう、あの時、わたしは志貴さんに抱かれた。このように。
 幼い二人のままごとのような睦み事。けれども確実に琥珀の処女は志貴に捧
げた。幼い秘裂に志貴の小さなソーセージは確かに差し込まれた。
 いつしか琥珀は小さくなっていた。あの時と同じように。ちいさな志貴に捧
げたアノ頃に。
 胸は小さくなった。薄く乳首も赤い点のようになっている。そこに小さな志
貴が口をつけていく。甘い飴を転がすかのように吸い、しゃぶってくる。「ん
ふっ」漏れていく声。うずきが胸の奥から生じる。固い電車の床。いつしか止
まり、床は柔らかいベットのような感触になっている。
 揉まれるほど大きな胸ではない。手は胸に這い、かすかにうごめく。ほんの
少しだけ肉が集まる程度。その中で乳首だけが自己主張をしている。
 もう一度、キスをした。志貴は昔からキスがうまい。蕩けそうになる。それ
だけでキュンとなり、濡れていく。
「……琥珀」
 ささやきながら志貴の舌は下へといく。白く無垢な裸身に舌の跡が残る腹に。
脇腹に。おへそもちろりと舐めなれ、琥珀の一番大切なところに舌が這う。今
とは違い、小さな割れ目のすじ。それでも甘い蜜が溢れている。ペロペロと舐
めていく。拙く優しく丁寧に。志貴は琥珀のあそこを丹念に舐めていく。
「あっ、はっ、ああっ、やだ、いっ、いい。志貴さん……いいです」
 押し寄せるものに必死に耐える。先ほど、少年たちから受けたモノに比べて
なんと繊細。けれども気持ちよさは何倍もの規模。ただ、琥珀はよがり耐えて
いく。うぶな乙女となって、押し寄せるものを必死で我慢する。
 ぺろりと吸われた。それだけで琥珀は全身を固く緊張させる。頭の中に光が
ともる。足がピンと伸びる。
 イってしまった。軽くイッタ。
 志貴はこっちを見ている。琥珀はくすりと微笑むと志貴を寝そべらせる。今
度は琥珀の番だ。
 大きく固くなっている志貴のソーセージ。それが可愛くいとおしく感じる。
優しく咥え舐めていく。
 あの時も咥えて舐めた。ただ、違う。あの頃は何も知らなかった。必死にむ
しゃぶるように舐めていた。今は違う。ツボは心得ている。どうすればいいの
か知っている。身体は幼く戻っても心は違う。なんだか悲しくなる。それでも
精一杯のご奉仕。ペロペロしゃぷしゃぷと舐めてあげる。
 志貴は身を捩じらせる。ともすれば逃げていこうとする腰を掴み必死で舐め
る。咥えて唾を溜めて垂らし、舌で先端や横。玉袋を責める。玉袋を舐めたと
きは「あー」と声を上げて逃げようとした。上唇と下唇でソーセージにキス。
そのまま啄ばんで行く。志貴は「あー、うー、はあっ」とひたすらうめき、身
体をよじっていく。志貴の快楽に絶える姿はみるだけでイキそうになる。
「……もう」
 少し涙目で訴えてくる。このままイカせてもよかったが琥珀は志貴のソーセ
ージから口を離し、寝そべる。大きく脚を開く。覆い被さってくる志貴。固い
ソーセージは熱い琥珀の割れ目にあてがわれる。
「ああっ、志貴さん。志貴さん」
 受け止める。志貴を受け止める。かつても受け止めた。琥珀を気遣い捧げた
少年。確かに琥珀の初めては志貴に。志貴の初めてはたぶん琥珀に捧げた。

 それを封じたのは槙久だ。事が終わった二人の前に現れ、記憶を封じられた。
残されたのはかすかな残照のような思い出。残滓となったかすかな記憶。たっ
た、それだけだ。
 ああ、琥珀が少年を求めてのはこれだった。失われた記憶を求めてさまよう。
そのためなのだ。
 熱いのが貫いている。必死になって志貴は腰を動かしている。かすかな痛み。
けど、それ以上の喜び。失われたものを取り戻した。割れたシャボン玉。崩れ
去った砂上の楼閣。甘く溶けた砂糖菓子。それがしっかりと根を張る。掴んで
いられる。これ以上の喜びはない。
 泣いている。涙を流して泣いている。大きなうねりが押し寄せる。
「──出る」
 志貴の言葉とともに熱いのが琥珀の中を駆け巡った。真っ白になるほど熱い
ものが。

 気が付くと志貴は消えていた。レンも居なくなっていた。どうしてレンがこ
のようなことをしたか分からない。けど、
「ありがとうございます。レンさん」
 琥珀は何もない虚空に頭を下げた。
 その日以降、琥珀は少年たちを嬲る事は無くなった。


「──姉さん、それはなんなんです」
 翡翠はいささか眉をひそめている。大皿に色とりどりのケーキが並んでいる。
イチゴのショート、チョコレート、マロン。いくつものケーキ。それをレンの
前に置かれている。レンはとても嬉しそうにケーキを手に取るとコクコク頷き
ながら食べている。クリームで口の周りはベットリ。服にもついている。
「先日のお詫びですか」
 翡翠の問いに琥珀はニコニコ笑って、
「お詫びでなくお礼です」
 と答えた。
「お礼? なんのです」
 いぶかしがる翡翠に。
「無くしてしまった大切なモノを見つけてくれたお礼です」
 そう言って、琥珀はレンの口の周りについたクリームを指で取った。
 それを本当の笑顔で舐めたのだった。

                               終わり






 





 あとがき

 えーと、懲りずに続けてしまいました。自分の中では五人全員を痴漢電車に
放り込もうと画策してます。
 縛りは三つ、「見知らぬ」相手とする。「プレイ」でなく「行為」を。ダー
ク、陵辱は避けて行く。
 あっ、もちろん痴漢電車の中では忘れてません。
 そもそも、これを書くきっかけはチャットの中のお話。結論として月姫のヒ
ロインたちを痴漢行為は絶対無理。志貴が「プレイ」としてて遊ぶぐらいがせ
いぜい。というものでした。
 いやいや、何だかメラリと燃え上がって構想を始めてみました。なんとか全
員分の話が完成しました。
 次回はアルクェイドの予定。なんと無理矢理の強引。嫌がるのに強制的な痴
漢行為。もし、よろしければ読んでください。少しでも保養になれば幸いです。
 では、次回作にて。


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