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『ご奉仕にはご褒美が不可欠』

by クラザメ


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「アルクェイドさん、本当にお奇麗ですね」

はあ、と琥珀さんが感嘆のため息を吐いた。

「そ、そうかな?」
「ええ、そうですよ。
スタイルはよろしくて、肌も白く染み一つないですものね」
「あ、ははは、何だか照れるな」

まるで恋する乙女の如き熱い視線付きで誉められ、
当のアルクェイドは、身体をもぞもぞとさせる。

他愛のない平和な会話が流れる遠野家の応接室、
今夜のお茶会は、恐ろしいと思える程に和やかだった。

夕食が終わり、自分と秋葉、琥珀さんと翡翠の四人で居る処へ、
予告も無しでアルクェイドが遊びに来たと言うのに、この平穏さは何だろう?

アルクェイドが視界へ入った途端、激しく血圧を上昇させる秋葉が、
軽く嫌みを言った後は物静かに紅茶を嗜んでいた。

それどころか、アルクェイドと琥珀さんの話にちゃんと耳を傾けている。

諍いが起こらない様に、また起こってしまったら、何とか止めようと腐心する常を思えば、
人生全ての奇跡が、この瞬間に集中しているかの様に思えてしまう。

勿論、そんなことを表に出して薮蛇にはなりたくないから、
ただ幸運に感謝するだけだ。

だがしかし、話題は黒髪か金髪とどちらの見た目が良いかになってしまった。
こうなると、やっぱり対決するのは秋葉とアルクエイドである。

「春夏秋冬、四季の移ろう日本の風土には黒髪が似合っています。
春の青葉、夏の高原、秋の紅葉、冬の雪、黒髪ならばよく映えます」
「え〜金髪の方が、逆に異国情緒があって素敵じゃない」
「異国情緒じゃなくて、単なる違和感だと思いますね。
日本人が愛する閑寂な色彩に、金はあいません」
「そんなこと言って、妹だって洋館に住んで、洋服着てるじゃない。
和風な要素なんてあんまりないわよ」
「何も私の事を引き合いに出しているわけじゃありません」
「そうかしら?
妹が自分の優位を証明している様にしか聞えなかったけどね」
「気の所為でしょう」
「気の所為かしら?」

段々と二人の口調が硬くなり、
火山の鳴動を連想させる。

その内、どちらかに賛同を求められる。
おそらく、その解答が噴火の引き金になるのだろう。

情けないけど平和が一番だ。
その前に、ここは空気となって部屋を出てしまおう。

「志貴様、どちらへ?」

でも後ろに控えていた翡翠には、当たり前だけど見付かった。

「ああ、ちょっと―――――え、え〜と、紅茶のお代わりと茶請けを取りに、ね」
「それでしたら私が‥‥‥」
「い、いいよ、直ぐなんだから」

だって応接室を出るのが目的なんだから。
で、結局は翡翠も付いて来る。

そして調理場で殊更ゆっくりと時間を掛け、
屋敷が揺れる様だったら翡翠と二人で居ようと思う。
琥珀さんは、自分でなんとかする筈。

しかし幸いなことに暫く待っても、そんな事態にはならない。

そうなると、あまり席を外していたりしたら、
今度は避難の為の不在自体が騒動の原因になるかもしれない。

判断に迷うけれど、準備も終わっているし帰るとしよう。

「もう少し待った方が、よろしいのではないでしょうか?」
「え、な、何が?」
「いえ、何でもありません」

初めから、翡翠は分かっていたようだ。
主人を護る為か、先に立って応接室にも向かってくれる。

こんなにも健気な翡翠、いざとなったら自分が護らねばならない。
そう決意を持って進んだ。

しかし応接室に近付き廊下に話し声が聞こえても、それはまだ平穏な響きだった。
少なくとも命の遣り取りはしていない。

翡翠と用心して入り口の陰から応接室の様子を窺い、
やっぱり今夜は、幸運の女神の寵愛を一身に受けているのだと確信した。

「妹、擽ったい」
「あ、すみません」
「ううん、良いよ」

中で展開されているのは意外な光景だった。

どこをどうなったのか、金黒論争は止んで、
なんと秋葉がアルクェイドの金髪を玩んでいる。

それも掻き毟るのではなく、親し気に羨望の眼差しでだ。
容姿は違うが、まるで仲の良い姉妹の様子であった。

「金髪の髪質が悪いというのは嘘だったんですね。
絹糸みたいに滑らか‥‥‥普段はどんなお手入れを?」
「えと、特に気を使ってないけど‥‥‥たぶん普通よ?」
「え、そうなんですか?
何か特別なシャンプーかトリートメントでも使っていらっしゃるのかと思ったのに‥‥‥」

秋葉の指先で流れるアルクェイドの髪。
それは柔らかな木漏れ日が、そのまま髪へと姿を変えたような美しさを持っている。

なのにアルクェイドは、一種冒涜的な答えを返した。

「ううん、トニックのリンスインシャンプーだよ」
「ト、トニック‥‥ですか?」

髪に関しては、特に手間がかかる秋葉が顔を引き攣らせた。
リンスインシャンプー、しかもトニックとは恐らく秋葉が予想していた対極だろう。

「バーゲンセールで安かったから試しに買ったけど、
とっても具合が良かったから、それからはずっとそう。
トニックだと洗った後に、すーすーして爽快なのよね」
「は、はあ‥‥‥」

長い黒髪を美しく保つ為、相当の労力を必要としている秋葉には信じられない事実。
前に聞いたら、簡単に洗って乾かすだけでも一時間近く掛かると言っていた。

それに比べてシャンプーとリンスを同時に行ってしまうアルクェイド、しかもすーすー付き。
髪の長さが違うとは言え、反則に近い。

「はあ、トリートメントもしない髪で、こんなにもサラサラなんてずるいですよ」

琥珀さんも、世の中の不公平を嘆くような口振りだ。

まあ何にせよ、離れていて正解だ。
これならば大丈夫、そう安堵して部屋へ入ろうとした瞬間、
アルクェイドの口から恐ろしい台詞が飛び出るのだった。

「あ、特別なトリートメントしてるわ」

やはりそうですか、秋葉と琥珀さんの視線を受けてアルクェイドが続ける。

「精液!」

とんでもなく場違いな単語が飛び出し、
アルクェイド以外がその場で凍り付いた。

このお姫様、何かと勘違いしているのか?
髪の話が何でまた‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥あ、いや、ま、まさか?

「口でするとき志貴の精液をかけてもらってるから、それがトリートメントになってるのよ。
ほら精液って、亜鉛とか沢山あるって言うし、なによりも蛋白質だもんね」

そんな気はしたが、やっぱりだ。

あっけらかんとアルクェイドは、とんでもない事を話してしまう。
口で事におよんだ時、自分達がどんな結末を迎えるかを、実例を持ち出し、事細かに説明してくれる。

羞恥の欠片もない話っぷりは、いっそ見事とも言えるけれど、
あっけにとられていた秋葉と琥珀さんの雰囲気が、徐々に嫌な感じに変化し、
そして隣にいる翡翠までもが、近寄り難い空気を身に纏い始めては、こっちも笑ってもられない。

「それは良いお話ですね」

微笑する秋葉、しかし笑っていない瞳は酷薄な色に染まっている。
鬼火のような薄ら寒い色。

不味い。
絶対に不味い。

後でどうなるかは分からない、だが今は逃げるしかない。
また調理場へ――――――いや、いっそ屋敷を離れて乾家へ避難しよう。

なのに踵を返したところで、翡翠が堂々と部屋に入ってしまった。
自然、入り口へと集まってしまう視線。

ひ、翡翠〜〜っ?!
ブルータス、お前もかっ!と内心卒倒するが、もちろん後の祭り。

「あら翡翠‥‥‥‥それに兄さんも」

炎さえも凍らせる秋葉の視線に射抜かれてしまった。
胸中で葬送曲が重々しく演奏される。

「兄さん、いまアルクェイドさんから、とても興味深いお話を聞いていたんですよ」
「そ、そう」
「ええ、そこで兄さんにも詳しく伺いたいのですが、よろしいですか?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥はい」

幸と不幸、運と不運は、必ず釣り合いを取るよう、世の中設定されているのだ。
この時、それを嫌という程に思い知った。
 

「あ、あのさ、何もここまでしなくても良いだろ?」

後ろ手に縛られ、床に転がされている現状を控え目に訴えてみた。
殆ど罪人か、人質状態である。

なのに秋葉は、こちらが悪いと言わんばかりの態度。

「兄さんが逃げ出そうとするから、こんな不本意な真似をしなくてはならないんですよ」
「不本意って、その割りに随分と楽しそうな様子だったけど?」
「知りません、兄さんの錯覚でしょう」
「はあ‥‥‥で、何をするんだ?」
「分かりませんか?」

逆に訊ねられてしまった。
そりゃ、何となく予想はつくんだけどな。

「いまこの場で、私の髪を兄さんのでトリートメントしてもらうんです」

悪い予感ほど良く当たるものだけど、
それでも、一縷の望みに縋ってしまうもの。

「‥‥‥‥冗談?」
「何が冗談なものですか。
なんです、それとも嫌だとでも?」
「嫌とは言わせない感じで聞かないでくれよ」
「あら、大切な妹の髪を労ってくれる気持ちは、少しもないんですか?」
「そんな無茶な」
「無茶なんて言ってません!」

鼻息も荒く、秋葉お嬢様は暴走中みたい。

「まあまあ、男の方には、ぴんと来ないかもしれませんが、女にとっては髪は大事な物なんです。
ですから素敵なお手入れ方法があるならば、直にでも試したくなるんですよ。
と言う私もよろしくお願いしますね」

琥珀さんの強引な論理。

「志貴様‥‥‥‥‥‥‥」

呟くだけの翡翠。
でも何を望んでいるかは、痛いほど伝わって来る。

「う〜ん、こんなのも楽しそう。
ね、志貴?」

唯一味方になってくれる可能性のあるアルクェイドは、
何を考えているのか―――たぶん何も考えてないけど―――面白がっていた。

「では決まりですね」
「う、うわっ?!」

問答無用、秋葉がズボンを引き降ろしてしまう。
続いて下着も剥ぎ取られ、四人の前に晒される自分。

「兄さん、行きますよ」

秋葉は傍に跪き、そのしなやかな手で股間を弄り出す。
少し冷たく感じる指が、幹の根元を掴み強めに上下する。

滑々な秋葉の手は心地好い。
指と指の間が丁度良い凹凸となって、
こんな状況だけど息子は順調に強張ってしまった。

「大きくなってきましたね。
もっと強めにしますか?
それとも少し濡らしますか?」

強引なくせに、根本的な部分では想いを寄せてくれる秋葉。

そんな可愛さも手伝い、段々と周囲が見えなくなってしまう。
白い指の動きに没頭して、このまま秋葉の手に放ってしまいたくなる。

「気持ち良いですか、兄さん?」
「秋葉の指、気持ち良いよ」
「そ、そうですか」

目許に朱を散らす秋葉。

もう良い、頭を秋葉だけにして快楽に溺れてしまおう、
そう決意した矢先―――――。

「妹、そうじゃないよ」

アルクェイドの声が割って入った。

「かけてもられるのは、口でご奉仕上手く出来たときのご褒美よ。
ごしごし手で扱いちゃ、ご奉仕とは言えないわ。
もっと隷属するような被虐の雰囲気が何と言っても大切なの。
そうだよね、志貴?」

ちゃんと覚えたでしょ、と得意気なアルクェイド。

ああ、お姫様は何て余計なことを!
良い雰囲気だったのに、秋葉の顔が引き攣っているじゃないか。

「あは〜、志貴さんも実に健全な男性ですね。
非常に濃いのがお好きなようで、ある意味尊敬です」
「そんなのでされても、何とも答えられないんですけど」
「いえいえ、隠すことはありませんよ。
全部分かってます。
つまり私達全員で、ご奉仕しないと志貴さんは満足しないと言うことですね」
「ど、どうしてそうなるんでしょうか?」

とか言いつつ、四人が傅き奉仕する様を想像してしまうのは、我ながら堕落の極み。
だから見透かした様な琥珀さんに、何の反論も出来ない。

「そうね、髪を奇麗にしてもらうんですから、
ここは兄さんのお望み通りにするのが筋でしょう」

一石二鳥です、と秋葉。
でも縄は解いてくれないんだ。

これを以って、天然成分のトリートメントと奉仕の交換が開催されるのに決定した。
全員で行う案も提出されたが、公平さに欠けると却下され一人ずつ順番に行うことになる。

「先ずは私が‥‥‥」

その一番手は、意外にも翡翠になった。
ご奉仕はメイドの本分、とは翡翠の弁だ。

「志貴様」
「あ、うん、よろしく」

間の抜けた返事にも平静に、でもメイド服に隠されていない肌を上気させ、
翡翠は普段の侭ままの使用人らしい、きっちりした動作で開いた脚の間に跪く。

「し、失礼いたします」

目を閉じ、やはり恥ずかしいのか、声を震わせつつ翡翠の頭が股間へと下がって行く。
こっちが転がっているから、翡翠は平伏する姿勢になる。

「んっ‥‥‥」

僅かな吐息を漏らし、翡翠の唇が開く。

躊躇いを彷徨う舌先に乗せ、
それでも強張りは、ゆっくり頬張られた。

翡翠色の瞳が開き、問い掛ける様な視線をくれる。

「翡翠の口、熱くて良い感じだよ」

お世辞ではなく、翡翠の口内は良い具合だ。

体温はさして自分と変わらない筈なのに、
剥き出しの部分が蕩けそうに熱い。

それに口の中全てが絶妙な感触を持っている。
舌の弾力、内頬のぬめり、喉奥の柔らかさ、そして歯の硬さ、
異なる感触が重なり合って、何をされなくても快感を与えてくれる。

「志貴様」

仄かに頬を緩め、安心したみたく翡翠の頭が動き出す。

「うわっ」

つい腰が踊ってしまった。
摩擦が開始されると、快楽が倍加したのだ。

上顎と舌が密着し、吸い立てられながら奥へと飲み込まれる。
強張り全てへと、擽ったさを極限まで濃くした様な感覚が襲った。
無論、吐き出される時も、それは同じ。

敏感な粘膜を、初めて触わられるみたいな表現し難い快感だった。

翡翠の頭が振られる回数は、まだ二桁に達していない。
なのにもう射精の予感で、ぶら下がった袋が収縮してしまう。

「ひ、翡翠‥‥っ」

更には翡翠の舌が、縦横に幹を清め始めた。
技巧を凝らすのではなく丁寧に、どこにも触れない場所を残さない様に舐めたてる。

献身とも性感の昂ぶりとも取れる熱心さで、一心不乱に翡翠は口交する。

「ひ、翡翠、や、やるわね」
「翡翠ちゃん‥‥できますね」
「な、なんか、凄いね」

翡翠の姿に怯まされた三人の呟きが、遠く聞こえる。
いや、しゃぶられる快感でアルクェイド達を一時忘れていた。

翡翠も周りの声など聞こえないみたく、口での行為を休めはしない。

「はぁ‥‥‥ん、む‥‥‥‥‥んふっ‥‥‥」

唾液を掻き分け、伸ばされた舌の上を自身が滑る。

翡翠の頭が下がり、また咥え込まれる時、
今度はぬめる舌が捩じられ幹の横を舐めて行く。

右に左に、裏側の筋、先端の括れ、
翡翠は舌を一往復毎に違った場所へと擦り付ける。

「しき‥さ、ま‥」

掠れた翡翠の呻き。
それと、じゅるじゅると唾液を啜る音が耳に忍び込む。

律義に仕えてくれる翡翠のメイド姿とは、俄かに結び付かない卑猥さだ。
その口が奏でるとは信じられない水音。

だからこそ、どうしようもなく興奮を齎した。

「ひ、翡翠、もっと吸ってみて」

欣喜に上擦った声で望むと、
翡翠の手が太腿に掛かり、身を乗り出して更に咥えられ、
唾液にまみれた舌の運びが一段と早くなった。

螺旋を描いて絡み付く翡翠の舌。
舌が吸盤の如く張り付き、それでいて甘美に滑る。

心臓が破裂しそうな性悦。

ああ、翡翠はどうなのだろう?
口唇で肉棒を扱き、翡翠も股間の茂みを湿らせてくれてるのか?

馬鹿な思考だ。
しかし昂ぶった脳には、酷く魅力的。

だから願ってしまう。

「翡翠も‥‥んっ‥‥してみせて」
「!」
「ね、しゃぶって感じる翡翠が見たいな」
「し、志貴様」

驚きに翡翠の顔が、火の出るような真っ赤な色になる。
開いてしまった口からは、涎が盛大に垂れている。

「こっちは縛られてるから、翡翠が自分で弄ってみて」

それでも重ねて頼めば、こちらの欲望を優先してくれるのが翡翠。
左手で体重を支え、空いた右手をおずおずと股間へと忍び込ませる。

やがてメイド服のスカートが微妙に揺れようになった。

「ん、ふぅう‥‥‥っ!」

翡翠が、甘い吐息を鼻から漏らす。
粘った音も聞こえる気がする。

翡翠の内から、悦楽が滲み出しているみたいで艶めかしい。

「翡翠、気持ち良い?」
「‥‥‥」

小さく肯き、翡翠は逃げるみたいく口での愛撫を再開した。
自分の状態を知られるのを恥ずかしがり、こちらに考える暇など与えない激しさで。

「んぁっ!」

しかし、時折生じる舌の乱れは、翡翠の快感の証だった。

それは舐め砥がれそうな舌使いに不規則な動きを加え、
こちらをいよいよ追い詰める。

「ひ、翡翠、も、もう‥‥‥‥‥え?」

放ってしまおう、下半身に力を篭めた後一歩のところで、
気持ち良い口内から放り出されてしまった。

でも翡翠の潤んだ瞳に見上げられ、
ぞくぞくと快感が背筋を這い上がり、最後の堰を決壊させる。

「っ!!!」

大きく震えた切っ先から、塊みたいな白濁が飛び出した。

「は、あぁ‥‥‥志貴様の」

間近の翡翠へ放物線を描き、粘液が降り注ぐ。
赤面するくらい粘っこい腺液は、翡翠の髪をべたべたにする。

「とっても温かいです」

翡翠の指が髪を梳き、着地したばかり粘液を塗りのばす。
いやらしい汁が、奇麗に切り揃えた髪へ擦り込まれて行く。

さらさらだった髪は、白濁でところどころだまになってしまうが、
翡翠は恍惚として、その行為を止めはしない。
髪に染み込ませるようにしている。

いや、ここまでやるとは思わなかったから、かなりの迫力があった。

「翡翠‥‥‥」
「志貴様、ありがとうございます」
「お、お粗末さまでした」

恭しく礼をする翡翠。
何か違うけど、ちょっと感動してしまう。

「さ、さて、一番搾りは翡翠ちゃんに譲りましたが、
二番目の適度な濃度の方が味を楽しめて、私は好きですから、
お次は私でよろしいですね?」

硬直していた三人で、琥珀さんが逸早く立ち直った。

今まで翡翠が占めていた場所へ、するりと入ってしまう。
秋葉とアルクェイドは、半分魂が抜けているみたいで見送るだけ。

ただ、一つ指摘したい。

「琥珀さん」
「はい?」
「味を楽しむの?」
「は?‥‥‥‥‥‥あ、ああ、飲んじゃ駄目ですね〜。
髪に塗るのが本来の目的ですから」

まあ、今更だけど。

「それでは、翡翠ちゃんに負けないよう頑張りますね」

琥珀さんが三つ指をつく。
和装だから、それは似合っていた。

圧倒されていた状態から回復し、琥珀さんも調子が戻ったみたいだ。

「お手柔らかにね」
「ご褒美をいただくのに、それは可笑しいですよ。
第一、ちょっとやそっとだと、お情けを頂けないんじゃないですか?」
「そんな人を性豪みたいに‥‥」
「ふふ、違いました?」

こんな軽い遣り取りが、琥珀さんならの魅力。

「あは、エッチな匂い」
「えと‥拭かなくていいの?」
「なに言ってるんです、こんな美味しそうなのに勿体無いですよ」

琥珀さんの唇が先端を擽った。

口づけは一度では終わらず、強張り全体へと拡大する。
それも穏やかな接触から、段々と吸引する強さになりながらの口づけ。

少しずつ強まる唇、進めば進むほど快感が増すのが分かるから、
その期待感で、いやが上にも性感が昂まる。

「うふ、翡翠ちゃんの味がしますね」

琥珀さんが一回りする頃には、硬度を完全に取り戻していた。

「でも、やっぱり志貴さんの味」
「どんなの?」
「そうですね、栗の味みたいです」
「え、実の方?
栗の花じゃなくて?」
「はい、実の方です。
ほら、生のままの栗って渋皮もあって美味しくないじゃないですか。
でも砂糖で煮込めば、深い味わいの甘さになりますよね?
志貴さんのもの同じです。
私には玄妙な甘味に感じるんですよ。
この場合、甘くするのは愛ですけどね」

悪戯っぽい琥珀さんの微笑み。
男冥利に尽きる台詞だけど、直球過ぎて頬が熱くなった。

「照れてますか、志貴さん?」
「ちょっと‥‥‥‥いやかなりかな」
「本気ですよ?
ええ、それは今からご奉仕で証明しますね」

琥珀さんが口を大きく開いた。
勃起した真上に位置取り、静かに唇が降りてくる。

口腔へと挿入される、でも唇は触れていない。
琥珀さんに入っているのに、琥珀さんには接触してない不思議な状態にされた。

しかしこれ、琥珀さんを十分に感じる事が出来る。
口でされる呼吸、温かい息が羽毛の軽やかさで濡れた分身を撫でるからだ。

「は、ふ‥‥‥」

一分、二分、開きっ放しの口から涎が落ちるのも構わず、
琥珀さんは口に収めるだけで、じっと動かない。

絶妙に調整された呼気が、纏わり付く生々しい感触。
強張りから潤いが蒸発して冷たさを感じる直前、琥珀さんはまた息を吐き生温かくする。

まるで空気の手で愛撫される気分で、
快感は無くならないのに、決して頂点に達しはしない。

もどかし過ぎた。
焦れて仕方ないのだ。

「ね、ねえ、琥珀さん」

我慢出来ず、琥珀さんに求めてしまう。
なのに唇は触れもしない。
ちょっとだけ息を強めてくれるだけ。

どくどくと、刺激を渇望して脈動する一物。
とんでもなく出したいのに、その切っ掛けを与えられない焦燥。

狂ってしまうかも、本気でそう思った。
だから、やっと琥珀さんが次の行動に移った時、脳天を突き抜ける快楽を感じた。

「く、くぁっ!!」

琥珀さんの舌が、ぞろりと舐めたのだ。

根元から先端へと、ゆっくり這って上った。
乾いた大地に雨が染み込むように、餓えた肉棒に快楽が浸透する。

存外乾いていたか、琥珀さんの舌がざらざらとして、得も言われぬ悦楽だ。
琥珀さんの唾液も沁みる感じが何とも言えない。

そして、そろそろと顔を上げると、琥珀さんは尖らせた口から涎を滴らす。
ゆっくり蜂蜜を塗すみたく塗り付け、強張り全体が唾液に覆い隠されると、
琥珀さんは、窄めた唇を被せるようにして肉棒を飲み込んだ。

「んっ‥‥ふはぁ、如何でしたか?」

桜色の唇を涎で汚した琥珀さんが、顔を上げた。
すっかり上気した色っぽい顔だ。

「翡翠ちゃんとは逆にしてみましたけど」
「こ、琥珀さん‥‥‥」
「ふふ、だいぶ良かったみたいですね?」

ちろりと、舌を覗かせて唇を舐める琥珀さん。
それがどんな効果を齎すのか、琥珀さんは良く知っている。

「あの‥‥琥珀さん」
「あは〜、そんな物欲しそうな顔をなされなくても、
今度は最後までお待たせしませんよ」

相当情けない顔だったのだろう。
琥珀さんが、さも可笑しそうに笑う。
ただ最後に見せた艶笑みが引っ掛かった。

「さあ、出しちゃってくださいね」

半開きになった口唇へ、張り詰めたものが吸い込まれた。
それまでの焦らす動きはなくしで、唇と舌が存分に嬲ってくれる。

先ずは輪になった唇が肉茎を扱き、その愛撫を潜り抜けると、
次には舌が、さらなる巧妙な動作で唾液を塗り立てるのだ。

最後には喉にまで擦り付けられ、
そこの粘膜の輪も口唇と同じく先端部を歓迎してくれる。

直前の淫戯に、性感が破裂しそうになっているから、
凶悪な程の気持ちの良さで、頭が真っ白になる。

「んっ‥‥‥はぅん‥‥‥しきぃしゃん‥‥むぅ、ん」

琥珀さんも翡翠と同じく自慰を始め、くぐもった艶声を上げていた。
自分の興奮、それを張っている胸を太腿に押し付けて教えてもくれる。

舐められる部分を震源としていた快感は、全身で同等の強さになり、
一番弱い部分へと殺到した。

即ち、蠢く琥珀さんの口の中だ。

「で、出るよ‥‥琥珀さんっ!」
「ん、んぅ」

その瞬間、琥珀さんが歯を使った。
柔軟な粘膜に、その存在を忘れていた硬質な感触が、危険な怖気で幕をひく。

「わ、あっ?!」

噛み切られた様な錯覚。
性熱で溶けていた躰に浴びせられる冷水。

それでも一旦走り出した欲望は停止しない。

強張り内部の管、
そこを腺液が通り抜けるのを奇妙に明確さで認識しながら、派手に精液をぶちまけた。

「んぁあん‥‥‥!!」

暴れる強張りを口から放し、琥珀さんが白濁を髪で受け止める。
輝く天使の輪が途切れ途切れになった。

一度目と殆ど同量だった。

「あぅ、ん――――」

一息吐いていると、琥珀さんは洗顔でもするよう顔に手をやった。

何だろうか?

ぼうっと見ている前で、琥珀さんは小悪魔の顔になると、
もごもごと口から白濁を吐き出すのだ。

「やっぱり甘いですね。
んふ、このまま本当は飲んでしまいたかったんですけど、髪につけないと駄目ですね」

そう言って、琥珀さんは濁液を髪へと絡めて行く。
それも見せ付ける様に‥‥‥‥‥。

「こ、琥珀さん」

こっちは、ただ妖艶な仕草に見惚れるだけだ。

「ありがとうございますね、志貴さん」

軽く口づけされても、かくかくと肯くだけ。
間抜けなこちらへ、琥珀さんは茶目っ気たっぷりの笑顔を向けてくれた。

余韻も褪めない後なのに、縁側で日向ぼっこしている感じになる。
これもまた琥珀さんの魅力だな。

「って、に、兄さん!
ぼけっと何をしてるんですかっ?!」
「うわっ?!」
「そうよそうよ、まだ残っているんだから、しゃきしゃきしなさいっ!!」
「わ、分かった、分かったよ」

自分達も琥珀さんに魅せられてたんだろう、と言うのは飲み込んだ。
翡翠、琥珀さんと、濃密な情事を見せられて、二人とも嫌に力が入っている。

「妹、どっちが先にする?」

訊ねながらも、入れ込んでいるのが明らかなアルクェイド。
今にも飛び掛かってきそうな様子である。

しかし秋葉は、そんなアルクェイドを冷静に見て言った。

「アルクェイドさん、お先にどうぞ」
「え‥‥いいの?」

てっきり先を争うつもりでいただろう、アルクェイドは拍子抜けしている。
ちなみに自分もそうだと思っていたから、意外だ。

「ええ、遠慮なさらずに」
「じゃあ、お言葉に甘えて、お先ね」

最後で時間を気にせずやるつもりですね、と琥珀さんの呟きは、
この際聞かなかったことにするのは、遠野家でのお約束であった。

「えへへ、志貴〜」

猫科のしなやかさでアルクェイドが、ぺたんと膝をつく。
頬を薄赤くし、微妙に首を傾げている。

「よろしくね?」

ちょこんと頭を下げるのは、掛け値なしに愛らしい。
本来ご奉仕とは対極のアルクェイドなんだが、この美姫が案外一番似合っているかもしれない。

「翡翠も琥珀も凄かったけど、私のご奉仕はこれよ」

言うが早いかアルクェイドは、白い上着を脱いでしまった。
またもブラを装着けていなくて、たわわな乳房があっさりと露わになる。

整った、しかも弾けそうに瑞々しい白桃の様な二つの膨らみ。
球と球で造形される胸の谷間は、深く切れ込んでいて実に蠱惑的だ。

雪肌にも違和感のない薄い色彩の乳輪、先端の突起も透き通る薄紅色であり、
そんな清純な装いが、反対に妖しい性美となっている。

「お胸でご奉仕してあげるね」
「う、うん」

腕でさらに強調される膨らみに、またも硬くしてしまうが、
アルクェイドの胸は抗い難い存在だ。

「ま、待ちなさいっ!!」

それでは、と身構えたら、何故か秋葉が吼えた。
何やら般若の形相である。

「な、なによ、妹?」
「貴方、口でするのに何で胸なんて使っているんです!
そんなの反則です、とことん卑怯じゃないですか?!」

こんなのに規定などあるのか甚だ疑問だが、秋葉お嬢様は譲らない。

「姉さん、卑怯なんでしょうか?」
「はあ、ご奉仕なんだから卑怯もなにもないと思うけど‥‥‥‥‥」

至極もっともな琥珀さんの意見にも、秋葉は恐ろしい剣幕。
怨念の塊と化したみたい。

「卑怯は卑怯なんですっ!!」

激昂する秋葉、理由は個人的にあるんだろうけど、
確かにアルクェイドの胸は卑怯とも言える。

「だって胸に挟んで舐めてあげるんだから、ご奉仕から外れてないわよ。
それとも何?
口以外は絶対に使っちゃ駄目なの?
手はそえるだけで、擦ったりするのは厳禁?
それって変な理屈だよ、妹」
「くっ!」

こう返されては秋葉も反論出来ない。
そもそもが妬ましさの部分から来ているのだから、まあ当然だな。

「なあ秋葉」
「わ、分かりました、好きになさってください!
その代わり、私の番にも好きにしますからっ」

安っぽい捨て台詞。

でも不吉だ。
次に、秋葉の好きにさせたら、どんな事になるんだろう?

う〜ん、秋葉の事だから―――――。

「志貴、いまは私の番なんだから、ちゃんと集中して」
「あ、悪い」
「いいわ、他の事なんか考えられなくしてあげるんだから」

アルクェイドの口から唾液が滴らされた。
一物は既にどろどろだけど、アルクェイドなりの所有印なのかもしれない。

「少し腰を浮かせて‥‥‥」
「こうか?」
「うん、それくらい」

勃起が直角に起つ様にすると、アルクェイドは下胸に手をやり、
持ち上げるようにして乳房を寄せる。
そして上から胸を被せるように、強張りを胸の根元、谷間の底へと埋没させた。

そこは搗き立て餅みたいに柔らかで、絹よりも良い滑り心地で一杯だった。
アルクェイドの体温と鼓動が、分身に心地好い。

「志貴のずきずきしてる。
胸が火傷しそうに熱いし、私の胸で興奮してる?」
「ああ、挟まれてるだけで溶けちゃいそうだ」
「ふふ、嬉しいわね。
じゃあ先ずは、胸だけで擦ってあげる」

動き出すアルクェイド。
どろどろの強張りが、滑々の白い胸肉の合間を往復する。

アルクェイドの胸は、他の何物でも得られない極上の感触。
挟んだ肉茎へ最大の快楽を与えるように設計された柔胸、そんな具合だった。

「どう?」
「信じられないくらい‥‥いいよ」
「粘々してるから、胸が纏わり付くもんね。
だんだん乾くと、もっとニチャニチャするわよ」

アルクェイドの言う通り。
生乾きの体液は、まるで膠みたく胸と強張りを接着していた。

特に張り出した部分と幹は、アルクェイドの肌との摩擦感が強烈だ。
密着し、そして剥がれて分身を嬲って蕩けさせる。

「そろそろ早くする?」
「ん、頼むよ」

アルクェイドが、胸を波打たたせる程に動き出した。
柔乳の先端部は激しさに追従できず、一拍遅れて上下している。

胸の谷間では、糊でも捏ねているような音がする。
これは無数の擦り傷が出来ているだろう。
しかし、なまじ胸が柔らかいだけ、幾ら擦られても快感だけしか感じない。

「つぅ‥‥っ!」
「あ、乾き過ぎたね」

んん、と滴らされるアルクェイドの唾液。
少々ちりちりするが、それもまた性感を高める。

塗っては乾き、乾いては塗り、何度も繰り返すうちに、
アルクェイドの唾液は濃縮して、胸の奥を擽られるような独特の甘い匂いを醸し出す。

「んぁ‥‥‥志貴ぃ」

揺れるアルクェイドの肢体。

発汗して桃色に輝く柔肌、密やかな吐息、
何もかも匂い立つような色香に溢れている。

居ても立ってもいられない。
強張りは漲り、赤黒く硬直していた。

欲望が澱となって脳髄をふやかし、このまま胸へと強張りを突き刺せたら最高だろうと、
半ば真剣に考えてしまうほど躰が性感に火照っている。

「な、なあ――――」
「ん?
もうお口が欲しい?」

からかう口調ながらアルクェイドは小細工などせず、
その朱唇で陰茎の先を捉えてくれた。

「ア、アルクェイド‥‥」

唇も最高だった。
しっとりと濡れて儚い砂糖細工の様な感触は、絶叫したくなる。
口内から舌が伸びて舐められると、ほとんど気絶しそうな快感だ。

「感じてる志貴の顔って可愛いね。
なんか見ているだけで、幸せって思える。
だからもっと見せて‥‥‥‥」

自分の胸に顔を埋めて、
ちゅぱちゅぱと、アルクェイドが強張りを吸い立て始める。

唇が括れの部分を密封していた。
アルクェイドの中の先端は、真空に吸引されているみたいに感じる。
そこに血が集まり、内側から爆発しそうに気持ちが良い。

挟み込んだ両胸も、上下別々、小刻みに動かされて幹を刺激する。
爛れる快感は、女陰に挿入したのと遜色無い。

「そう、その顔、とっても好きだよ。
志貴が私を苛めるのも、こんな気持ちなのかな?」

アルクェイドは恍惚となっている。
その白皙も淫蕩に紅潮して、汗に艶めいていた。

「ねえ、私も自分で胸を揉んでるんだから、凄い感じてる」

見せつけるアルクェイドの双乳、
確かにその頭頂の蕾みは甚く勃起ち上がっていた。

「志貴の中に入りたい気分よ」

夢見るように囁くと、アルクェイドは尖らせた舌先を錐として鈴口をねぶった。

「ちょ、ちょい、こ、これは―――」

敏感な内粘膜を、アルクェイドの柔軟な感触が蹂躙する。
痒痛と裏返しにされる不可解な感覚。

「私の‥‥ん‥‥舌が志貴に入ってる‥‥あぁん、すごく気持ちいい。
はふぅ‥‥い、いっちゃいそう‥‥‥あっ、し、志貴」

穿りながらアルクェイドは、自分自身こそが感じていた。
あたかも浅口に挿入している舌先が、本当に自分の陰根である如く感じている。

「志貴の‥‥はくっ‥‥し、志貴‥‥締め付けるの‥‥や、やあっ!
わたし‥‥あ、あぅ‥‥‥搾られる‥んっ――――!!」

アルクェイドの髪先がふるふると震えた。

さながら初穂を摘まれ風情で、
アルクェイドは、抗し難い快楽に翻弄されていた。

やがて白い美影が、悦びに打ち震えて大きく仰け反った。

「あ、あぁ‥‥は、はひぃんんんんっっ!!」

細く長い嬌声に喉を詰まらせ、
麗しい姫君は、あっけなく昇り詰めてしまった。

ぱたりと伏せてしまう金髪の姫。

「アルクェイド?」
「‥‥‥‥ん」

気怠い調子でアルクェイドが頭を上げる。
顎にまで涎で汚れている顔は、ばつが悪そうだ。

「何か私が先にいっちゃったね」
「いや、こっちも良かったけど?」
「ご奉仕なの忘れちゃったわ。
でも今度こそ、ちゃんと頑張るね?」

また体勢を整えると、アルクェイドが胸と唇を使う。
絶頂を極めたからなのか、強張りに密着する肉は信じられない柔らかさだ。

「舌を入れる?」
「舐めてくれる方が良いな」
「うん、ふやけるくらいに唾液を絡めて舐めてあげる」

それは直に実行された。
口で舐められながら胸で揺すられる。

胸で扱きつつ、見え隠れする先端を口唇で輪くぐりを経験させられ、
快感が頂点へと疾走する。

「あむっ‥うぅ‥‥んはぁっ」

喘ぎながらアルクェイドの口淫戯は続く。
緩急をつけ、こちらを感じさせようと心をこめて愛撫してくれる。

胸の谷間への潤滑剤も、自分の股間から掬い取った粘液に変わり、
二人の行為は、荒淫の極みに達した。

「んふ、私と志貴の味」

旨そうに肉棒をしゃぶるアルクェイドからは、理性が飛んでしまっている。
そして、言うまでもなく自分もまた同じだった。

「じゃあ最後の仕上げね」

アルクェイドは、二本の指を口に含み唾液で濡らすと、
豊満な乳房の突起へと塗り付ける。
いやらしく自分の蕾みを唾液に光らせ、それで強張りの表面をなぞるのだ。

「あんっ!‥‥‥またいっちゃいそう。
志貴、はやく射精してね」
「くっ!
言われなくても、これじゃもたないよ」

こりこりした蕾みで先端を弄られる快感は、歯を食い縛っても耐えられるものじゃない。
ぞわぞわと全身の産毛が逆立つみたいだ。

剥き出しの先端に感じる乳首は、甘美過ぎる。
張り出しの裏側の付近に嵌め込まれれば、もう駄目だ。

「っ‥‥で、出る!」
「志貴、いって‥‥‥ん、一杯かけてっ!」

目眩く快感、下半身が痙攣して勝手に精を放っていた。
自分でも笑えるくらいに白濁が弧を描く。

「あんっ!」

粘液は、狙ったみたくアルクェイドに降り注いだ。
上向き加減だったので、半分以上が美貌を穢す結果になる

不遜にも姫様の顔を精液塗れにした背徳の悦びで、
一滴残らず出るみたいだった。

「ああ、濃いよ―――」

アルクェイドの白い肌と比べて酷く濁った腺液が、その顔をゆっくり滑って落ちる。
甘い蜜でもあるかのように、白濁は美しい口へと消えて行く。

「あ、飲んじゃった。
髪に塗るんだったのにね」
「別に良いだろ、そんなの」
「トリートメントなのにな〜。
今の失敗って事で、もう一回頑張って良い?」
「いや、こっちが頑張れないよ‥‥‥」

躰が空っぽな感じだ。
沸騰していた血液が、腺液と共に排出されたのか怠い。

「志貴さん、三人分濃厚な精液を出してれば、怠いのは当たり前ですよ」
「あ、やっぱりそうですか‥‥」
「いえ普通は、こんなに出ませんけどね」
「だって志貴だもの。
普通じゃないわよ」
「あは〜、そうかもしれませんね」
「だから、二人で変に完結しないでもらえますか」

けらけらとアルクェイドと琥珀さんが笑う。
完全に獣扱いだ。

しかし翡翠までも――――。

「志貴様は、精力が優れていますから」
「翡翠、それって誉めてるの?」
「???‥‥‥はい」

首肯する翡翠だけど、
微妙に間違っている気がする。

「そこで和んでいる場合じゃないでしょう!」
「秋葉」
「秋葉、じゃありません。
真打を忘れてもらっては困りますっ!」
「は、はは、つい」

実は忘れてないのだ。

今までに無かった状況に燃え過ぎて、このままするのは辛いから、
有耶無耶にしてしまいたいと思っていたりする。

だが、これでは無理そう。

「兄さん」
「は、はい」
「私にも‥‥お願いします」

口を尖らせて拗ねる秋葉は、やはり美少女だった。

それに照れて髪を払う仕草は、いつも通りなのに、
何処か期待したような艶色が窺える。

「あ〜あ、また大きくしてる」
「やっぱり獣ですね〜」
「志貴様‥‥‥‥」

って、外野は静かにして欲しい。

「随分とやきもきさせられました」

ふわりと黒髪を漂わせ、
汚れた床に秋葉は優雅に正座した。

「そ、そうか?」
「まったく兄さんは‥‥‥‥‥。
でも、私をこんな気持ちにさせるのは、兄さんだけです」
「秋葉」
「私、嫉妬深いのかしら?」

ため息混じりの呟き声で、秋葉が自嘲する。
その寂しげな妹の姿に、幼き日の姿が重なった。

「あのさ、秋葉‥‥」
「良いんですよ」

自分でも何を言いたいのか分からなかったけれど、
それも秋葉に遮られてしまう。

「ただ私をもっとかまってください。
それだけで十分なんですから‥‥‥‥ね?」
「ああ、分かったよ」
「本当かしら?
兄さんは律儀そうで、案外約束を破る人ですからね」
「あ、それを言われると辛いかな」
「ですから」
「?」
「取り敢えず、その躰に私を刻み込んであげます」
「あ、あの秋葉さん‥‥?」

豹変する秋葉に呆然とする。
でも、見学者達は肯いていた。

「うんうん、突っ走るのが妹らしいね」
「あは〜、ご愁傷様ですね」
「私は使用人ですから、主に関して何も申せません」

冷汗が背中を流れた。

「髪の手入れですから、私は髪を使わせてもらいます。
これならば一挙両得ですから」
「髪?」
「そうです、兄さんも好きですよね?
私の髪で色々とするじゃないですか?
でも、今回は私が主導権を持ってますよ」

秋葉が妖靡に微笑んだ。

こちらの視線を受け、秋葉は自身の髪を梳いてみせる。
さらさらと流れる黒髪、まるで黒い水のように何の引っ掛かりもない。

最後に一房、掌に残る黒髪。
白い秋葉の手に、光沢を持った黒い髪。

「ほら‥兄さん」

秋葉の手が、下からあてがわれた。
髪の毛が強張りに触わる。

そして、そっと握られ巻き付かれた。

「私の髪、どんな感じですか?」

秋葉の髪は一本一本が絡まることもなく、十分に潤いを内包していて滑らかだった。

それで外周を巻かれ、粘液に濡らされ、秋葉の掌に包まれている。
何か単一ではなく、実に複雑な感触だった。

「ああ、もちろん気持ち良いけど」
「ま、まあ当然ですね」

お嬢様然と胸をはる秋葉、でも喜色が滲み出しているのは隠せない。
素直に喜んでも良いだろうに、なかなか難しい妹君だな。

「なに笑っているんです」
「う゛?!
そんなに、ぎゅうぎゅうするなよ」
「変なことを考えている兄さんが悪いんですよ」
「わ、分かったから‥‥‥」

秋葉が手を緩める。
ぶつぶつ言いながらも、白い繊手が上下し始めた。

動かされると、やはり変わった刺激なのが際立った。
秋葉の髪は艶やか印象そのままで、手で直にされるよりも柔らかい感触がある。
腺液もそれを助長している。

しかし髪の毛自体は意外と硬度があるもので、少し力を篭められると、
表面に食い込み、それで上下されると鑢で削られている感じだ。

快感は強いが、まさに削られているような気がした。
特に乾いてくると、先端部は時に痛みと逆転したりもする。

「剥き出しの部分には、しない方が良いですか?」
「うん、他ならば丁度良いからさ」
「では、先は舌で舐めてあげますね」
「よろしく―――ぅうっ?!」

秋葉の手がずらされ、先端が舐められた。
それが、とてつもなく気持ち良い。

「あ、止めなくて大丈夫‥‥‥いや凄く秋葉の舌で感じるだけ」

こちらの反応に驚き驚止まりかけた秋葉へ、大慌てで促す程だった。

多少は本当に削られていたのか、
葉の舌が外皮を通り抜け神経を直接舐めているみたいだ。

絶え間無く、ねっとり甘い快感が背中を駆け抜ける。

「ふぅ、ん‥‥‥ん、ん、む‥‥‥はぅ、ん‥‥‥ぁ」

秋葉の舌が、ゆるゆると強張りを舐め回す。
舌全体を剥き出しの部分に張り付け、離れないように凹凸を弄って行く。

刺激が強くならない様に配慮して、なるべく唾液で満たしてくれているのも、
逆に点在する擦傷を嬲るが、その感覚も堪らない。
じりじりと崖淵へと追い立てられるみたいな、際どく危うい快感。

そして黒髪での愛撫も、幹だけに限定すれば妙なる物だった。
痛覚と性感のぎりぎりの狭間で、絶頂への道程で一番美味しい部分かもしれない。

だから節操もなく寸刻で昂ぶってしまった。

「秋葉、もう出るよ」
「んむ‥‥‥は、はあ、はあ、まだですよ。
まだ私の髪の醍醐味を味わっていませんから」
「え?」
「外側を擦っただけで満足しないでください。
私の髪なんですよ?」

秋葉の双眸が妖靡に煌いた。
それに伴い、漆黒の髪が熱せられた鉄の如く色を変える。

暗赤から紅へ、じわりじわりと赤味を増し、
しまいには真紅へと秋葉の髪は生まれ変わった。

「あの‥‥‥秋葉?」
「苛めたりしませんよ。
ただ兄さんの快楽の元に触れてみたいんです」
「それって‥‥‥?」
「そう兄さんのここ、です」

紅い髪が数本、蛟の様に蠢き自分の力で強張りを登る。
先端に辿り着くと、鎌首を擡げて目指す先には―――――――。

「ふふ、兄さんの中」

鈴口へと髪が潜り込んだ。
ぞろぞろと止まることなく、奥へ奥へと進んでしまう。

「く、くうぅっっっ!!!」

それまでとは全く別種の刺激に全身が硬直した。

たかだか数本の髪の毛、縒り合わせても大した太さにもならない。
しかし自分の排液以外は絶対に何も通らない場所に、それは恐るべき異物感だった。

アルクェイドに浅瀬を舐られたのとは根本的に違う。

「ちょ、ちょい秋葉っ!」
「穴はあいているんですから全然平気ですよ。
あんまり暴れないでくださいな」
「無理に決まって‥‥‥だ、駄目だって!」
「ほら、舌で慰めますから」
「ぅぅっっ!!」

尿道への侵入はそのまま、付け加えられる舌での愛戯。

「な、なんだ、これ‥‥‥」

湿潤で滑らかな舌の愛撫、未開の粘膜を逆流する髪での掘削。
内側と外側で、あまりにも対照的な刺激に訳が分からない。

「あむぅ‥‥兄さん、良くないですか?」
「なんか両方がごっちゃになってるみたいだ。
痛いのか痒いのか、気持ちいいのかも区別できない」
「気持ち良いんですよ。
だって兄さんのこんなになってるもの」
「あ‥‥‥」

驚いた。

断言する秋葉に咥えられたものは、滑稽なくらい滾り、
自分の雫が盛り上がっていた。

「落ち着いてみてください。
そうすれば、ちゃんと気持ち良いって分かりますから」

秋葉が優しく強張りに舌を這わせる。
先端の雫を伸ばして全体に広げて回る。

「んっ‥‥もっと秋葉を感じてください。
私の舌、私の髪、私の匂い、私を全部‥‥‥‥‥」

秋葉は子守り歌でも聞かせる穏やかさで囁き、
我が子を舐めてあやす様に肉棒へと快楽を抽入する。

「うあ、ぁ‥‥‥に、兄さん」

秋葉がしゃぶりつく様を眺めていると、混乱は徐々に治まった。

髪は挿入は止まり、いまは舌の感触が大勢を占めていた。
慣れたのか異物感は、嘘みたいに消えている。

ただ舐める舌先が先端にかかり、その拍子に髪が振動するのが響く。
ごく僅かだけど尿道へと届き、何となく切なくなる。

それは満たされない切なさだ。
平気だと解かり、好奇心も芽生えている。

「動かしてみますか?」

こちらの葛藤を察した秋葉に先取りされた。
肯くのを確信している表情。

「うっ‥ちょっとだけな」
「はい、ちょっとだけですね」

気恥ずかしい。
けれど、秋葉はそれ以上追求せずに応えてくれた。

「あ、なか‥‥」

秋葉の意志で、強張りの内側の髪が動く。

「もしかして刺してる?」
「毛先を曲げました‥‥ちょっとだけ」

秋葉は嘘を吐いてないんだろう。
しかし結構効いている。

「うっ‥ちくちくしてるよ」
「粘膜が薄いんでしょう、さすがに敏感ですね」
「そんな感心してないで‥‥‥」
「はい、お口でのご奉仕ですね」
「い、いや違うって――――うっ!」

突つくのを止めろとは、言わせてもらえない。
内側での責めを継続しつつ、秋葉の口に包まれる。

「んっ、兄さん」

有るか無いのかと言った尿道内壁の粘液を、
秋葉の毛先は容易に突破していた。

手加減されて刺さってはいないが、
細いだけに先端の圧力は相当で、無防備な内側には強烈過ぎる。

「あ、秋葉っ」

紅の針に突かれ鋭痛が発生した後は、その部分が充血して霜焼けが出来たみたいに感じた。
ずきずきと疼き、しかも手が使えたとしても触わることも不可能な場所にある。

痛痒点が自分の内部に存在すると言うのは、七転八倒ものだった。
なのに秋葉は全身全霊で淫戯に邁進する。

髪を一本ずつ別個に動かし、奥へ進むもの、半ば抜き出されるもの、
かと思えば互いに絡み合い螺旋の軌道で内側を削る。

内膜は次第に秋葉の髪で制圧された。

「あふっ‥‥ん、兄さんの悶えるのが髪に伝わって来ますよ。
ふふ、髪で快感は奪えるのかしら?」

淫艶とした微笑みを浮かべる秋葉は、実際快楽を略奪していても不思議でない。
紅の髪に競う如く肌を上気させ、双眸を欲情に潤ませているのだから。

「ねえ、兄さんの気持ち良いの‥‥ふぁ‥‥く、ください」

秋葉は、愛し気に一物へと頬擦りして自らの顔を穢す。

舐め回す口許も、目蓋も、鼻筋も、
顔中が粘液塗れになるのも構わない‥‥‥‥いや、べとべとにして秋葉は悦んでいる。

「に、兄さぁん‥‥あ、ああ‥‥汁が、どんどん溢れてる‥‥ん、美味しぃ」

普段すました妹の痴態が、強張り全てに加えられる刺激を盛り上げた。
押し寄せる絶頂の波、そこで目に映った紅い髪。

粘液に濡れた顔とは対照的に奇麗なままで、何故か酷く穢したくなった。

「あ、秋葉‥‥髪にかけるぞっ」

言い終わる前に睾丸が引き攣っていた。
嬲られた管を熱い物が奔流となって通り沁み、恐ろしい快感が湧き上がった。

「ふぁあ、兄さんの精‥‥‥」
「で、でる―――ない?!」

秋葉の手は特に押えていない。
腺液が強張りを登る感覚もある。
なのにその先端からは透明な雫が玉になっているだけ。

「髪で出口を塞いだんです。
出すのを我慢すると快感が増すんですよね?
兄さんの中でおさえたら、きっと信じられないくらいに良くなりますよ」

なんと出口に栓をされてしまった。
数本の髪なのに、それだけの力があるのだ。

もっとも、悠長に考えている暇などない。
不可逆の流れは、新路を探して暴れているのだ。

もう、喘ぎすら出ない。

「兄さんの尿道、精液で広がってる‥‥‥私の髪が漬ってますよ」

細い管の中、粘った腺液に泳ぐ紅髪。
それは、暴発を無理矢理塞き止められる苦痛の中でも、はっきりと快感を齎した。

「凄いですね。
こんなに赤黒く勃起して、血管が破れそうに脈打っている。
兄さん、気持ち良いですか?」
「あ、あきは―――――っ」
「ふふ、いいですとも。
出してください、秋葉に‥‥‥‥‥兄さんの種液を」

するりと抜ける紅い糸。
それに結び付けられていた様に、白濁した腺液が噴出した。

「‥‥‥っ!!!」
「んくっ‥‥ああ、兄さんの匂いがたくさん」

秋葉の髪で粘液が飛び散った。
朱色に白濁で、髪は桃色へに傾倒する。

「あ、はぁああ‥‥‥!」

秋葉は性悦の吐息を大きく漏らし、歓喜の表情で自身を掻き抱く。
密やかに震える肢体は、まるで情交での絶頂の様だ。

射精に導くことで、どれだけの官能を得ているのだろうか?

「あふぁ‥‥ん」

吐息はため息になり、ぺたんと秋葉が座り込む。
その髪は、元の漆黒へと戻っている。

それを見届け、こちらは疲労感にまかせて目を閉じた。

「‥‥兄さん?」
「寝てないよ。
幽体まで一緒に出そうだったから疲れただけ」
「そうですか」
「しかし髪を入れるなんて、なんで思い付いたんだ?」
「ああ、それは部屋のこ‥‥‥い、いえ、何でもありませんっ!」
「部屋のこってなに?」
「い、いいじゃないですか。
そ、それより、こんなのはお嫌でしたか?」
「誤魔化そうとしている気もするけど‥‥‥これは変な癖になるかも」
「良かったと考えてよろしいんですよね?」
「まあ偶には、って位にしてくれよ」
「偶には、ですね」
「で、いい加減に手を解いて欲しいんだけど?」
「は?」
「は、じゃなくて‥‥‥‥いや何でこっちを跨ぐ、どうしてそこに腰を下ろす?」

てっきり終わって自由の身になると思ったのに、
秋葉は別の事に及びそうな雰囲気が満々。

「あの‥‥‥するの?」

当たり前だと言わんばかりに、しとどになっている秋葉が触れた。
自身の粘液と、どっこいどっこいな蜜が強張りを熱く濡らす。

「んふっ!
こ、こんなに硬いままでするも何もないじゃないですか。
私の中に入りたくて‥‥あん‥‥うずうずしてますよ」

腰を捻る秋葉。

愛撫をしてないのに花弁は綻び、誘い込むように先端をいらってくる。
疲労感など打ち払う、痺れる様な快感にまたも滾ってしまう。

「ほら」
「は、はは‥‥‥」
「いきますよ、兄さん」

秋葉が腰を落とす。
零れる淫水が幹をつたい、遅れて熱い粘膜に包まれる。

「って!
黙って見てれば、ずるいわよ妹!
そもそも、いつの間に下着脱いでたのよ?!
最後で良いとか言って、初めからこれを狙っていたのねっ!!」

もう我慢していられないとアルクェイドが吼えた。

「知りません。
敢えて解説してあげれば、成り行きでしょうかしら?」
「確信犯は皆そう言い逃れるのよ。
妹以外は、ご奉仕を守っていたのに根っからの意地悪小姑ね!」
「貴方、姑の使用方法が間違ってます!
はたまた妄想癖ですか?!
大体、私の髪は長いんですから、ちょっとやそっとじゃ足りません。
少しずつ射精してもらっても、斑にしか塗れないじゃないですか。
だから兄さんのを私の中に溜めて万遍なく行き渡るようにするんです。
ちっとも当初の目的を外れてませんから悪しからず」
「胸もお尻もぺったん平坦で、直接するしか無いのは仕方ないとしても、
好き勝手にするのはダメダメよ」
「あ、貴方こそ未だに自慢気に胸を丸出しして‥‥こ、この露出狂っ!」
「ふん、それは持たざる妹の被害妄想よっ!」
「いちいち無いって付けないでくださいっっ!」

そんな状況ではないだろうが、想像するとくるものがある。

自身の秘部から白濁を指に絡め、
それを黒髪に塗りたくる秋葉と言うのは、実に淫靡な光景ではないだろうか?

いや、挿入れられたまま言い争われている現実からの、
情けない逃避であるのは自覚しているけど‥‥‥‥‥‥‥‥‥はあ。

「秋葉様、アルクェイド様‥‥‥そ、その志貴様がお困りしてますので、どうか」

控え目に翡翠が乞うても、唾を飛ばし合う二人には届かない。

アルクェイドは実力行使で秋葉をどかそうとし、
対する秋葉は意地でもどかないと下半身に力を篭める。

暴れる二人に、もう折れそうである。

「まあまあ、お二人とも、
このままだと大事な志貴さんのものが大変なことになりますよ?」
「あの琥珀さん、大事ってどちら側に掛かってます?
本体を心配してくれていると信じてますよ?」
「あは〜、そもそもどちらが本体だか怪しい気がしますけど?
それは置いておきまして、今度は秋葉様から逆順に進めば、
足して割った濃度も全員が同じになりますし、
ご奉仕に制限は無くすと言うことで、万事よろしいのではないですかね?」

琥珀さんの提案。
取り敢えず秋葉達の動きが止まる。

「う〜ん、また妹と琥珀に挟まれちゃうんだ。
最後か最初が良いけど、今度は好きにできれば良いかな」
「いま兄さんと繋がっているんですから、このまま終われません。
後に見せ付けられるのは不満ですけど、全員が終わったらまた考えることにして、
それで行きましょう」
「で、では、わ、私が‥‥ぞ、存分を、あの、さ、最後でしょうか?」

アルクェイド、秋葉、そして翡翠、まるで予定調和の如く話は素早く纏まった。
初めのご奉仕なんとやらは、殆ど前菜の扱いにされている。

しかし、琥珀さんの提案には大きな問題があった。

「あのさ、逆に進んだとしても、
一回一回どんどん量が少なくなるんだから、割っても平等にはならないよ?」

また変なことで戦闘開始とならない為、親切心で言ってみた。
なのに女性陣から、一様に白けた視線を向けられてしまう。

「志貴って時々意味不明な事を言うよね」
「兄さん、底無しの自覚が足りないようですね」
「私の見るところ一番搾りから志貴さんのは、ちっとも薄くなってませんよ」
「志貴様は、ご自分を過少申告されています」

言い方は違えど、内容は同じ。
皆に無尽蔵な欲望の塊と認識されていた。

何でこんな時ばかりは、意見が一致するのやら―――――――嘆息。

 
(終了)


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