もとはるさんの小部屋


 もとはるさんと言う方は、私にとって生涯越えられぬ壁です。  普段は新潟の某市で責任ある仕事をなされている温厚かつ有能な御方で、そ れがインナースペースでは驚くべき世界を構築されています。  その才気に溢れた文章は私の憧れです。方向性が違うので正面切って勝負し ようという気にはなりませんけれど。  私と共通する嗜好もそうですが、私が興味の薄い分野、ドール、眼鏡、幼女 などについても造詣が深く、「ロリとペドの定義的差異はわかるけど観念とし ての違いがわかりません」と言う私に、飽く事無く高邁なる知識の伝授をして くれたりと、その凄さは接すれば接するほど深く心に刻まれていきます。    本サイトの7万HIT記念として、そのもとはるさんより寄稿頂きました。  あいにく私はこの元のゲームを知らなかったので、簡単に紹介文でも頂けな いかとお願いして、改めて送られたのが下記の文章です。  おいおい、ボーイ、うちは『月姫』関係なんだぜとも言いたくなりましたが、 彼の特技である、他人にゲームや本などを買わせたくなる特技が発揮されたモ ノだったので、評論+二次作品という形式で掲載しました。もとはるさん、あ りがとうございました。                  (しにを)  
 よそ様から顧みられる機会の少ない好キャラクター、好ゲームをアンオフィシ ャルかつ妄想過多に掘り下げてみようという趣旨のこのコーナー。  前回のネロ・カオス@月姫に続き、今回取り上げるのは、ソフトハウスmaple より2001年10月に発売された18禁ゲーム「Hotel ergriffen」です。  キーワードは「印象」。  どことも知れぬ路地、いつとも知れぬ刻、書割めいた街並みをたどり行き着い た先、少女娼館「Hotel ergriffen」。  そこでプレイヤーを待つ3人の少女たち。  肢体の魅惑、重ね合う肌と肌、触れ合う肉の快楽を約束する、黒の少女パメラ。  いたずらめかせた挑発と情熱、心を絡め取る誘惑を体現する、紅の少女ヒルデ。  汚されることを拒絶する峻厳な聖性、不可侵性を具象する、碧の少女フィオナ。  定められた5夜の逢瀬を1夜ずつ誰とともにするかによって(5夜連続で同じ 少女、とっかえひっかえ好きな少女、1夜だけよそに浮気とか、選択は自由)、 熱夢の時を過ごし、少女ごとに存在するエンディング(現実回帰エンド、終わり 無き夢エンド、バッドエンド)を迎えゆくことになります。  油彩のようなタッチで描かれる大槍葦人調の肋の浮いた少女像。  独特な語り口で紡がれる濃厚な行為の描写。  無人のホテルという夢幻感を煽る舞台設定。  全体に横溢するこのクセの強い独特な雰囲気は、決して万人受けはしないでし ょうが、波長の合った者達には美酒にも似た酩酊を味あわせてくれるはずです。  本編に登場する三人が三様に表わす「少女」のペルソナ。これは全体ですでに 三位一体的に完成されているのですが、自分にとっての理想の少女像を追求する という意図のもとに、第4のヒロイン・蒼の少女レテを設定し描いてみたのが、 「流るる涙はレテの水」です。  その水を飲むことで前世の記憶を拭い去り、転生する魂は新たな生へ出発する という冥府を流れる河レーテ。ヒロイン・レテの名は、お分かりのように、この 「忘却の河レーテ」より取られています。  「最も美しい時、最も多感なる時で、時を止めてしまえたら。人生にとって意 味ある一日だけをヴァリエーションを変え永遠に繰り返すことができたなら」  これは人が一度は抱く究極の願望のひとつかもしれません。しかし、それを幸 福と呼ぶべきでしょうか。  眠りにつくことで一日の記憶がリセットされてしまう少女。彼女にとって昨日 の出来事とは、覚醒の間際に見た思い出せぬ夢の漠たる印象のごとくあやふやな ものに過ぎません。今日の自分と明日の自分に連続性を見出せぬなら、それはす なわち今日の自分の死を意味するのではないでしょうか。たった一昼夜の生の間 に少女のできること、それはただ恋をすること。たとえ自分は明日の朝に消えて も、恋を語った相手のこころに想い出として留まり続けるなら、それは消滅では ありません。ゆえに少女は恋を囁きます、全身全霊を傾けて。  ただし、まばゆ過ぎる光が人の眼を痛めてしまうように、強すぎる想いは人の 精神を苛まずにはおきません。レテの鋭利なる想いを、その鮮烈なる魅惑を受け とめた相手は、終結させることのできない恋の余韻にこころ惑うこととなります。 想いをふりむけるべき相手は追憶のなかにしか存在しない恋。その惑乱を回避す る方法はひとつ、眠りの前に流されるレテの涙を口にして、逢瀬の記憶そのもの を自らも忘却に沈めること。しかし、そうして覚める朝が、夢より覚めた現実 (うつつ)のものであるかは保障の限りでありませんが…  作中の「たゆたう肢体は〜」の一節、中国志怪小説とかにある「実はものすご くえちーなシーンが書かれているんだけど、並んでいるのは一見すると関係の無 い美辞麗句」というのに憧れ、習作としてやってみたのですが、結局単なる自己 満足に終わったか……  さて、このようなサイトの最果てまでをお読みいただいたみなさまへ、感謝。  お見限りでなければ、またいつかこっそりとお会いしましょう。それでは。  ちなみに、メーカーのOHPはこちらです。
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