ある喫茶店にて

作 のち





―――からん、ころん―――

「いらっしゃいませ」

「どうぞ、こちらのお席へ」

「は、あちらの席ですか?」

「あの席は専用席なのです」

「誰の、ですか」

「姉さん、いえ、店主にとって、かけがえのない人の、です」

「ええ、確かに、そういう人でした」

「ここで、私と店主と、そして」

「店主の連れ合いがいたのです」

「はい、いまは、もう……」

「それでも、あの席は、専用席なのです」

「あの席からは、店の様子と」

「私の様子と」

「そして、店主の顔を見ることができますから」

「店主が働いている顔が」

「楽しそうな顔が」

「笑っている顔が」

「見える席ですから……」


「はい……きっと……」







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後書き

 志貴がいなくなった後、第2弾。(第1弾は天抜きで)
 双子の喫茶店では、志貴はどんな風に暮らしてたのか、というコンセプトだったんです。
 そのはずだったんですけど……。

 いつの間にか、変な感じになってしまいました。

 どうも、書いている内に変わっていくのが私の芸風のようで。
 まあ、こういうのもありかな? ということで、このままにしました。

 それでは、お読みくださりありがとうございました。
 
 2003年1月19日


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