降り注ぐ喜びに

作:しにを

            




 世界で二人だけになる事。
 手を伸ばせば届く範囲だけで世界の全てが構築される事。

 本来は似ているようでまったく違う事だった。
 でも、今の志貴と秋葉にとっては自分達以外の全ては無意味となっていたし、
乱れるシーツの海だけが無限の広がりを持っていた。
 志貴の中で秋葉以外の存在は、すっかり消え去っていた。
 秋葉は志貴への感覚だけで、なにもかも満たされていた。

 荒々しく体を欲しいままにして。
 繊細に体中を隈なく撫で回して。
 指先を触れるだけで喜び震えて。
 全てを欲して我を忘れて貪って。
 ただ愛し、ひたすらに愛されて。

 今夜は、志貴が秋葉を積極的にリードしていた。
 ほぼ一方的に秋葉を可愛がり、快楽の波に狂わせていた。
 嬌声と喘ぎ、吐息による淫らにして心溶かす音声を、まるで楽器を爪弾くよ
うに自在にかき鳴らしていた。
 それを聞く者はいなかったが、演奏者たる志貴と楽器たる秋葉とは気にせず
夢中になっている。そして、共に忙しく興じつつ、自らの美曲に高まっていく。

「ああ…あんッふ……、兄さん、ああ、にいさ……」

 急に調子を変じたように秋葉の声が高まり、途絶える。
 喉をのけぞらせたまま、呼気が強まり、乱れる。
 紅潮した肌が汗ばみ、光る。
 艶やかで、それでいて獣のような凄愴さも垣間見える姿。

 快楽の波に、軽く達してしまったのであろう。
 しかし、そうと見て取っても、志貴の手は演奏を止めようとはしない。
 むしろ、より技巧的に、さらなる秋葉の喘ぎ声を導き出そうと試みる。
 ぴちゃぴちゃと湿る音が、緩急を付けつつも大きくなる。
 刺激の強さに我慢できないのか、嬌声に悲鳴じみたものが加わった。
 意味をなす言葉とはなっていない。
 声で意思を伝えられないからか、手がもどかしく動く。
 志貴の頭に伸びた手、髪にぐしゃと指を差し入れた手にぎゅっと力が加わる。
 やんわりと志貴の頭を押すように。
 脚を大きく開かせ、その間から下半身の恥ずかしい部分へ顔を埋めたままの
志貴の頭を押すように。
 はたして力づくで離れぬ兄の頭を押しやろうとしたのか、別の意図があった
のか。それはもしかしたら秋葉自身にもわからないかもしれない。
 ともかく、志貴に動きを止めさせ、いったん顔を上げさせる事にはなった。

「どうしたの、秋葉?」

 優しい問い掛け。
 秋葉と志貴の視線が合う。
 穏やかな志貴の言葉に対し、秋葉の顔はかあっと赤みを増す。
 
 口の周りを中心に、志貴の顔はてらてらと光っていた。
 鼻の頭や頬までも、濡れている。
 さらに見れば、唇から何かの液が滴り、顎までを濡らしてさらに下の方まで
伝い落ちている。
 ぐっしょりとして、ぽとぽとと垂れているのもの、志貴自身の口から洩れた
唾液もあるだろう。
 でもほとんどは……、それを頭の中とは言え具現化する事は秋葉に激しい羞
恥を起こさせる。
 それを知ってか知らずか、志貴が口元を手で拭いつつ、言葉を発する。

「それにしても、こんなに濡れるの珍しいね。秋葉の愛液でぐしょぐしょだよ」
「ッふぅ……」

 直截的な志貴の言葉に、秋葉の口からも声にならぬ声が洩れる。
 少なくとも否定の言葉を出す事は出来ない様子。  
 口を拭っただけで、志貴の指は露を滴らせる程に濡れてしまっていた。
 その事実、それと見つめている志貴の眼が、秋葉に激しく羞恥を起こさせる。

「恥ずかしがってるの?」
「……」

 口を噤み、秋葉から答えは無い。
 志貴は、目に見えて赤味が増した妹の頬を眺める。
 口元に小さく笑みの形が浮かぶ。
 だが、秋葉を笑おうとは志貴はしていなかった。
 むしろ、秋葉を宥めるように言葉を口にした。

「俺は嬉しいけどな。こんなに秋葉が感じてくれるなんて。
 本当に、とても嬉しいよ」

 言いながら、顔を近づける。
 恥ずかしそうにしている秋葉へ。
 しかし秋葉は、表情を変えぬままに、抗おうとも逃げようともしない。
 拭ったとはいえまだ自分自身の分泌物に濡れた兄の顔が、ゆっくりと近づく
のを待つ。嬉しそうにして、心持ち迎え入れる動きで。
 甘い蜜に濡れた唇が触れ合う。
 
 滴るような、湿り気を帯びた音がこぼれる。
 唇を擦り合わせる音。
 互いの唇で、唇を感じあう音。
 志貴が、柔らかい唇の合わせを割って、秋葉の口に舌を差し入れた音。
 おずおずと、歯を口蓋を貪る兄の舌に秋葉の舌が応える音。

 舌を絡ませ合うキスが長く続く。
 吐息と唾液が混ざり合う。
 どちらも離れようとしない。
 時折、つまった息が洩れ、どちらかの頬が動いたりもする。
 舌が互いを行き来し、唾液を送り、啜りあうのが外からでもよくわかる。

 くちゅ…ちぅ……、ちゅ、ぴちゃ……んふぅぅ。
 呼気と、水音だけが部屋に満ちていく。
 
 いつまでも飽く事無く、舌を絡ませあい、相手の舌による喜びを感じている。
 もう、何もかも混ざり合い、溶け合っている。
 互いにシェイクするカクテルのように。
 それに酔う。液体の行き来だけで酔ってしまう。
 今の二人には、激しいい口吻ゆえの息苦しさですら、共有しているという一
点において甘美な事だった。

 この蕩けるような秋葉の表情を、志貴の他には誰も見た事は無いだろう。
 共に屋敷で暮らしている琥珀や翡翠。
 学校で親しい友人達も。
 溢れんばかりの感情の吐露。
 自分の全ての好意を捧げるかのような風情。
 世界中で志貴だけのものだった。

 そして志貴の顔もそううだった。
 柔和で優しい顔を向けるのは、決して秋葉に対してだけではない。
 他の親しい人たちにも、同じく笑顔を見せる。
 でも、何かが違う。
 眼の輝き、僅かな表情、顔を向ける時の意志の強さ。
 一番近しい、誰よりも愛する少女にだけ向けられる情を露わにした顔。
 それは秋葉だけのものだった。
 
「秋葉は、恥ずかしい?
 俺に本当の秋葉の姿を見られる事が、嫌?」
「恥ずかしいけど……、兄さんに隠すものなんてありません。
 えっちで、兄さんの指や舌が触れるだけで感じて、こんなにはしたなく濡ら
して、それでも兄さんをもっともっとと求めるのが、秋葉ですから」
「うん、そうだね。でもね、はしたなくなんてないよ。少しも恥ずかしい事な
んかじゃないんだから」
「本当?」
「もちろん」

 甘く言葉を交わしての、睦み合い。
 けれども、決してその場だけの言葉ではない。
 二人とも嘘偽りなく、心を晒していた。

「だったら、もっともっとおねだりしてしまいますよ?」
「いいよ。じゃあ、期待に応えて、もっと秋葉のここをとろとろにしようかな」
「はい、兄さん」

 志貴の視線を感じながら、秋葉は、開いていた脚をもっと大きく開く。
 濡れそぼった媚肉がさらに開き、奥からまた、透き通った粘液が滴り落ちる。
 言葉とは相違して、顔には羞恥の色がある。
 それでも隠そうともせず、自分の秘められた部分を曝け出し、志貴を待って
いた。
 志貴の視線が張り付いたのを感じ、ひくひくと震わせながら。

 溜息をついて志貴は秋葉の姿を見つめた。
 おかしくなりそうな雰囲気、可愛い表情、艶かしい姿態。
 何度見ても感動を誘う、魅惑の姿。
 どこを見ていたらいいのか迷うようにさ迷った視線が、最終的にいちばん秋
葉の雌を示す部分に落ち着いた。

「こんなに可愛くて、触れると壊れそうなほど繊細なのに。
 俺のがちゃんと入るんだよなあ。
 いやらしく全部飲み込んで、それだけでなくて、あんなに俺を虜にして。
 秋葉の花びらも何も、抵抗できないほど魅力的だ」

 言葉に偽り無く、引き寄せられるように志貴は秋葉の前に座り込んだ。
 渇きに苦しんでいた人が、清涼なる湧き水に顔を埋めるように、こんこんと
こぼれる甘露の源泉に顔を埋めた。 
 さっきまでの愛撫によって、秘裂の粘膜だけでなく、太股の根本や、大陰唇
の周り、ふっくらとした恥丘と、そこを彩る恥毛の茂みも、何処もかしこもぐ
っしょりと濡れていた。
 秋葉のとめどない分泌液と、志貴の唾液によって。
 簡単に拭っていた志貴の口も、頬も、またそれらの汁液に塗れる。
 だが、志貴は何ら気にする事無く、舐めすすり、舌を這わせる事に夢中にな
っていた。

 膣口と、そこのぴらぴらとした陰唇に、舌を差し入れ、たっぷりと戯れたり。
 弾けそうなほど勃起した敏感な肉芽を、皮の上からゆっくりと舌先で突付い
たり舐めあげたり。
 時にどんな具合かと、包皮を捲り上げようとしてみたり。
 大陰唇と恥丘の細い繊毛に悪戯して、唇で摘んで引っ張ってみたり。
 飽く事なく、志貴は、隅から隅までくちづけし、舌で舐め回す。
 秋葉の匂いに包まれ、次から次へと分泌される蜜液を、すすり味わうのも素
晴らしかった。
 それに、何か違う事をやる度に、耳から官能を刺激する秋葉の声や甘い吐息
がこぼれるのも何とも言えなかった。

 そのまま幾らでも志貴はそうやっていたかもしれない。
 しかし、どれだけ口戯に耽った後だろう。
 か細い、秋葉の声に、志貴は動きを止める。

「兄さん、おかしくなっちゃう。お願い、すこ…少しだけ、止めてください」

 息を荒げ、秋葉はそう呟いていた。
 言葉を裏付けするように、体はぴくぴくと小さく震えている。
 
「うん、もう、いいの。じゃあ……」
「あ、ああ」 

 志貴は、素直に深く差し入れていた舌をゆっくりと抜いた。
 粘液に塗れた舌は、ぎゅっと締め付けられていた。
 その収縮した管から栓を外したように、秋葉の蜜液がこぼれ出る。
 ただでさえ口の周りをぐっしょりとさせていて頬や顎の方まで濡らしていた
が、さらに押し寄せてくる。

「ん、んん……ッ」

 喉を鳴らす。
 唇を押し付けて、志貴は秋葉を飲み干す。
 わざと、音を立ててすすり込むと、はたして秋葉が羞恥の声をあげる。

「兄さん、そんなの……」
「だったら秋葉が止めてくれよ。
 こんなに後から後から。ほら……」

 志貴は口の周りを指先で拭った。
 そのまま、こちらに視線を向ける秋葉に向かって、これ見よがしに手を閉じ
たり開いたりして見せる。
 ぐっしょりと濡れた手から水よりも粘度が高い液が垂れた。
 指と指の間に粘つく糸がきらきらと光っているのが二人の目にはっきりと映
った。
 軽いからかいの顔。
 その兄に、兄の表情に、秋葉はどぎまぎとし羞恥の色を浮かべる。
 が、それによって志貴がさらに言葉責めに至る前に、返答してしまった。
 否定や反論でなく、素直な肯定。
 
「だって、兄さんの舌が……、凄いんですもの」
「気持ち良かった?」
「はい、とっても。おかしくなるくらい気持ち良かった。
 私の感じるところを全て知っている兄さんの舌が、あんなに優しくしてくれ
るんですもの。
 今日は焦らして意地悪しないで、可愛がってくださるんですね」
「ふうん、心外だなあ。
 俺はいつも秋葉を可愛がっているつもりだけどなあ」
「そう言って、恥ずかしい事をさせたり、私からおねだりさせたりするじゃな
いですか」
「そんな時の秋葉が可愛くて仕方ないからな。そう言うのは嫌?」
「そんな事…兄さんが喜んでくださるなら……」

 少し嬉しそうに見える表情でごにょごにょと言う秋葉。
 普段とは違う姿。いつもの凛とした姿とは、同じ少女とは疑わしくなるほど。
 まあ、どちらも秋葉だけどと志貴は考える。
 乱れ、声を上げ、何も考えられなくなった姿も、遠野家の当主たる姿も。 
 が、そんな場違いな思考は本当に可愛いな、秋葉は……という想いに上書き
されていく。

「今日は俺ばかり楽しむより、秋葉を喜ばせてあげたいんだよ」
「……」
「次はどうして欲しい?
 ここかな、それとも……」

 言いながら志貴は手を伸ばし、柔らかいお尻の肉をぐにぐにと揉んでみせる。
 細身の躰なのに、こういう処は女の子らしい丸みを帯びていた。
 その言い難い柔らかさを好きに味わい、形を好きに変えるのは志貴にとって
たまらない喜びだった。
 ひとしきり楽しむと、一転して反対側、今まで舐めすすっていた秘裂の上に
志貴は指を走らせる。
 濡れてぺたりとした恥毛を脇に従えた先端。
 小さな陰核とそれを覆う包皮。
 さっきも舌で弄んでさんざん秋葉に声を上げさせた部分。
 すっかり膨らみ、少し指で皮を動かせば、自然に捲りあがってしまいそうな
姿になっている。
 その可愛い突起をちょんちょんと突付いてみせる。

「んん…ぅぁ。兄さん、少し…強…す……ふわッ」

 包皮はそのままに、指が先端から根本へ動く。
 そして指の腹で擦るように撫でると、秋葉は息も絶え絶えに声を出した。
 剥きあげて摘んだり、ぎゅっと潰すのにも負けないほどの刺激。
 丹念に根本から擦ったり二本の指でしごいたりするだけで、秋葉は乱れて最
後まで達してしまいそうな程だった。
 名残惜しげに、優しくもう一度だけ硬くなった膨らみを撫ぜると、志貴は指
を離した。
 秋葉はまたしても息を乱している。    

「じゃあ、こっちかな」
「う、何を、兄さん……」

 今ので新たな分泌液が滴るのを指で受けながら、志貴はしばし秋葉が落ちつ
くのを待っていた。
 頃合良しと判断したのだろうか、細い腿に手を掛けた。
 秋葉の下半身をぐいと引き寄せる。
 腰を掴んで顔を近づけるのは、志貴のさっきからの行為と同じであったが、
今度は角度が異なっていた。
 秋葉を裏返すようにして、丸みを帯びた尻を正面に持ってきている。
 その二つの膨らみの奥まった部分。秘裂のいやらしさに、決して見劣りしな
い後ろのすぼまり。そこに顔が近づけられている。

「可愛いなあ、秋葉のここは」

 白いお尻は先ほど荒々しく扱った跡を少し残している。
 ほんのり赤みが残っているのが、芸術品のような姿に無機物ではなく、温か
みのある肉だと感じさせていた。
 見て楽しむものでなく、触れて悦びに浸れるものでもあるという、淫猥さが
存在していた。
 志貴は遠慮なく、二つの丸みを割った。
 開かれる谷間。
 蜜液を湛えた泉は先ほど堪能した。
 その上、潤いにやや欠ける窪み。
 白い肌にある、薄い薄い紅。
 
 くちゅり。

 指が触れた。
 泉に浸かり、こぼれた滴りを絡め取った人差し指。
 秋葉自身の潤いを持って渇いた窄まりを探り出す。

「兄さん、嫌、そんな処……」

 秋葉は必死に身を捩って、背後の兄の方を振り向く。
 志貴は顔を上げて、その妹の視線を受けた。

「なんで嫌なの、秋葉?」
「だって、そんな処……」
「そんな処?」
「汚い…です……」

 消え入りそうな声。
 僅かに視線が志貴のそれとずれる。

「ふうん?」
「ひゃんん、ああッ」

 一端離れた指がまた、秋葉の後ろの穴に触れる。
 それもさっきのように少し突付いただけとは違い、明確な意図を持って動い
ている。
 穴の縁、少し盛り上がった部分。薄いシワ。
 その二つからなる陰影の部分。
 指を擦り込ませるように、志貴は手を動かす。
 ゆっくり、ゆっくりと。
 機械的にでなく、多大な関心を持って、そして細心の注意を持って。
 数秒這い回り、また離れる。
 その指をしげしげと志貴は眺める。
 真っ赤になった秋葉の視線に気づかぬように。

「汚くなんてないけど?」
「兄さん」

 少し大きな声。
 咎めるような、でも強くは怒り切れないでいる声。
 いつもの日常雑多での事ならばその程度でも恐れ入る志貴だが、今はまった
く痛痒に感じていない。
 それどころか、すっかり気に入った様子で、また指を秋葉の不浄な部分へと
差し入れる。
 秋葉の抗議の声に構わず、指で薄い筋のような線を撫でまわす。
 それだけで、秋葉の声は止まる。本気の抵抗には到らず、文句の言葉を吐く
口からは、切なげな息が洩れるだけ。

「ちゃんと綺麗にしているんだろう、秋葉?」
「もちろんです」
「前のあれからは特に……。違うかな?」
「いつもつも念入りに洗っています。だっていつ兄さんが、あんな……」
「なら平気だろう、秋葉」
「平気なんかじゃありません。でも、兄さんは私のお尻の穴を指でほぐしたり、
舌で舐めたりするんですもの。
 そんな処をいつ弄られるかもしれないと思ったら、そのままになんてしてお
けません。ふぁ…んんッッ……」          
                
 話の途中で、志貴が秋葉の声に呼応するように指を動かす。
 穴の縁を内側からなぞられる感触に、秋葉は声を震わせる。
 文句が言い難くなる分だけ、目に咎める色が強く出る。     
 その声無き抗議に志貴は微笑む。
 少しだけ、指の動きを止める。
 どんな事であれ、愛する人の言葉には従うと言わんばかりに。
 
「秋葉を喜ばせてあげたいんだよ。
 また、ここを弄ったり、舐めたり、可愛がっちゃダメかな?」
「え……」
「そうだなあ、今日は秋葉の肛門を重点的に可愛がってあげる。
 前のあそこにするみたいにいっぱい弄って、キスして、中まで舌を入れて。
 シワの一つ一つまで全部舌で濡らして……。
 秋葉がもういいって言うまで、ふやけて、とろとろになって、それでも舐め
てあげるよ」
「……」

 志貴の提案に、秋葉は答えとなる言葉を口にしなかった。
 肯定であれ、否定であれ。
 ただ、そのうっとりとした顔。
 そして、早くも反応するようにぴくぴくと動く、後ろの窄まり。
 触れていない秘裂までも、新たな分泌液に濡れている。
 志貴もまた、しばらく間を計るように黙った。
 そして、一言。

「……嫌?」
「その……、して欲しいです。
 兄さんに秋葉の後ろの穴、いっぱいいっぱい可愛がって貰いたいです。
 こんな事言うの、はしたないと思うけど、私……、抑えられません」

 恐る恐る、秋葉は逸らしていた視線を兄に向けた。 
 恥知らずと思われなかっただろうか。
 もしかして今のはからかいの為の引っ掛けの言葉で、みすみす誘いに乗って、
馬鹿な事を言ってしまったのではないだろうか。
 そんな不安が顔に表れている。
 だが……。
 その秋葉の不安の顔は、安堵と喜びにすぐに取って代わった。

「うん、素直な秋葉は本当に可愛いな。
 ご褒美に、たっぷりと可愛がってあげるから」
「嬉しい」

 今、志貴はベッドで上半身を起こして、俯けになった秋葉の腰を掴んでいる
ような姿勢だった。
 
「秋葉、もう少しお尻上げてくれるかい。
 秋葉の可愛い処がはっきりと見えるようにね」
「はい、兄さん。こうですか?」

 志貴が手で動かすまでも無く、秋葉は従順に体を動かす。
 猫が伸びをしつつも、下半身だけを後ろに突き出すような形。
 潤んだ秘裂も、後ろの窄まりも志貴の目に何隠す事無く晒す姿。

「いいよ、凄い迫力だな。
 お尻がこんなに突き出てるから、何もしなくても秋葉のが良く見える。
 穴も少し開いているよ」
「そんな事、言わないで下さい」
「おっと、逃げちゃダメだよ。こんな風にお尻が震えるのも可愛いけどね。
 恥ずかしがってるけど、本当に凄く可愛いよ。
 なんで秋葉のものって何処もかしこもこんなに綺麗で可愛くて、そしてやら
しいんだろう。
 俺を虜にする為に、どこもかしこも出来ているみたいだ、秋葉の体って」
「兄さん……」

 独白めいた、素直な感嘆。心からの賞賛の言葉。
 それ故に秋葉は絶えがたく真っ赤になる。
 幸福感を伴った恥ずかしさ、喜びに。
 しげしげとそんな処を見られている羞恥が、兄の熱意を引き出しているとい
う歓喜に変わっていく。

「髪も、耳も、唇も、胸だって魅力的だし、手の指先も爪の形も非の打ち所が
ないもの。
 こんな秋葉と、平気で触れ合ってこんな事までしているなんて信じられない
くらいだ。本当に、夢じゃないかと思うくらい。それも、とびきりの夢」
「夢なんかじゃありません。私の頭からつま先まで全部兄さんのものです。
 兄さんが好きになさる事の出来ない部分は、一つもありません。
 それに、私だって夢見ているみたいです。こんなに、兄さんに可愛がって貰
えるなんて」
「秋葉……。じゃあ、遠慮なくこの可愛い処を味わってみるよ」
 
 改めて志貴の指が秋葉に触れる。
 ぴくんと秋葉は震えたが、そのままでいる。
 ゆっくりと指が窪みを、そしてその周りの環を描くような膨らみを探る。 
 シワの一筋一筋を逃さぬように。

 指の粘りのある潤みが塗られていく。
 しばらく、そうしていると、志貴は指を秘裂に差し入れた。
 たちまち新たな蜜液に塗れる。
 それをまた、秋葉の後ろへと塗りたくっていく。

「どう、秋葉?」
「くすぐったくて、少しむずむずします」
「いきなりだと、いけないからね」

 指の動きが変わる。
 水気によってふやけたシワと穴の縁を撫ぜる動作に、少しだけ力が加わる。
 押す動き、あるいは揉みほぐす動き。
 肛門の周りがマッサージするように指圧され、また穴の周囲を外側からも内
側からも指がこねくり回す。

「ああ、じんわりと感じる」
「すこし柔らかくなってるよ、秋葉のここ。
 ほぐれて、これなら……」
「ひゃ、ああッッ」

 少し悲鳴を帯びた声。
 もぞもぞとお尻が動く。
 背中が仰け反る。

「秋葉、じっとする」
「ごめんなさい、兄さん……。でも、指が」
「うん? 抵抗無く入ったぞ、秋葉」

 人差し指の第二関節ほどが、秋葉の中に入っていた。
 それだけで、さらに動かしはしないが、秋葉の体は指をを中心とする様に震
える。

「むずむずして変な気分です」
「ふうん。なら、こうしたらどうかな?」

 志貴の指がくるりと半回転した。
 指を呑む放射線の薄い皺が一片に寄り、そこから弧を描く。

「あ、兄さん、そんな…」

 悲鳴を気にせず、志貴は今度は逆に回す。
 指を飲み込んだ穴が中から擦られる。
 異種の感覚。

「う…ああん」

 そして、その回転の動きに馴染んだと見ると、志貴はさらに指を突き入れた。
 決して無理はしない。
 秋葉の顔は苦悶の色を見せるまでは至らない。
 ただ、異物感による消化しきれぬ感覚に悶えているだけ。
 ゆっくりと縦の動きが始まる。
 抜き差し。 
 潜っていた関節がぷくりと穴から抜け出て、爪が薄く濡れて姿を現す。
 最後までは秋葉からは離れず、それどころかすぐさま奥へと戻っていく。 

 息が乱れている。
 体は酸素を求め、大きく息を吸い吐く事を望んでいるのに、それがままなら
ない。
 喉から空気が洩れるような音さえする。
 のぞった白い喉が、動く。

 けれど、表情には苦しげな色は無い。
 一見苦痛に耐えるような眉間の皺も、決してそれだけではない事を示してい
る。手はそのままに、志貴は体を捻って秋葉のその表情を求めた。

「秋葉」
「にい…さ……ん?」

 確かに感じている。
 そう見て取って、志貴は強い充実感を胸に満たしていた。

「もっとしてもいい?」
「兄さんのお好きなように、好きに…なさ、ああっ、あ…好きになさってくだ
さい。
 秋葉の体は全て兄さんのものです」
「うん。そして、俺の全ては秋葉のものだよ」
「兄さん……」

 志貴がまた、顔を近づけ、秋葉もまたそれに応える。
 何度目になるかわからない、くちづけ。
 軽く触れ合って分かれるが、その僅かな接触だけでも、二人の胸に喜びが湧
く。

「でも、これだけじゃ辛いかな。
 こっちも……」

 言いながら志貴は、空いた手で秋葉の脚に触れた。
 すべすべとした腿の内肉を撫でさする。

「綺麗な脚だなあ。
 歩いたり走ったりしている姿も見惚れるけど、こうして触れるのも堪らない
よ、秋葉」
「くすぐったいです、兄さん」

 実際にくすぐったそうな顔。
 でも、賞賛に喜びと、僅かな誇らしげな顔。
 その細くすんなりと延びた脚は、密かに自負している部分であったから。
 自慢の部分だと知ってかしらずか、志貴は心地よさそうに、腿を撫でまわし、
頬ずりしたりもする。
 しばし撫でまわすと、今度は腿から小さなお尻の肉を味わうように揉み、そ
の谷間へとまた指を潜らせる。
 再び、秋葉の急所である部分を両手の指で愛撫し始める。
 ほぐれてきた肛門と、蕩けきっている膣穴とを。
 決して強すぎぬ程に、秋葉に断続的な刺激を与え続ける。
 秋葉が何度となくゆるやかな快楽の波に揺さぶられるのを、志貴もまた喜び
を持って楽しんだ。
 そうして、何度かめの小休止の後。
 志貴は関心を一点に向かわせた。

 浅く潜らせた中指はそのまま。
 膨らんだ肉芽を弄び、軽く押している人差し指もそのまま。
 でも、動きが止まっていた。
 存在感のみを残して、それ以上の加減も変化も生じない。

 ただもう一方の手は休んでいなかった。
 右手の指は絶え間なく動いていた。
 可憐な穴の周囲を何度も何度もそっと指で摩ったり。
 ほぐれてきた処を指で行き来させたり。
 シワをなぞり、突付き、震わせ。
 時には肛門から近距離にある、もう一つの魅惑の狭穴の方へ指を滑らせたり
もする。
 その、蟻の門渡りの部分への指戯も、秋葉をいたく喜ばせた。
 濡れそぼった秘裂に辿り着くと、指をそこに浸し、とろとろと指を塗らせた
粘液を、後ろの穴へと塗り込めたりもする。
 指の活躍に対し、唇や舌も決して遊んでいる訳ではなかった。
 さっきは谷間に顔を埋めての愛撫を繰り広げていた。小さなぴらぴらとして
小陰唇と舌で戯れたり、可愛く頭をもたげた敏感すぎる突起を優しく、時に荒
々しく舐めつついたり、薄く柔毛の生え始めた一体を、ぐっしょりと濡らした
りしていた。
 だから、今度は後ろを中心とした攻めとなっていた。
 指で下拵えしたところを舌で丹念にならし、さらに淫蕩にほぐれ解けていく
のを楽しんだり。
 微かな悲鳴を聞かない振りして、舌を伸ばして、狭すぎる穴に潜らせようと
したり。
 指で大きく広げて、舌をねじ入れようとするのには、さすがに秋葉が止めて
と懇願したので、渋々と撤退した。
 それでも、ぽっかりと空いた穴を可愛いと囁きながら眺め、唾液を塗りこめ
ようと舌で縁をなぞったりを、加減を図りつつ繰り返す。

 ともあれ、志貴による前後双方への可愛がりは続いていた。
 されている秋葉も強弱の刺激に悶え、悲鳴を洩らし、そして何より悦びの声
を上げている。
 しかししている側の志貴も、それ自体が至福の行為であるように、指を動か
し、舌を動かしていた。

「ああ、兄さん、兄さんの舌が……」

 ぴちゃぴちゃと言う音が響き渡るように感じられる。
 綺麗にしてはいる。
 きちんと洗い、清めてはいる。
 でも、その不浄の部分。
 そこに愛する兄の舌が優しく触れている。
 それも熱意をもって。

 この気持ちよさより違和感が強い刺激が、極上の快美感に転じていく。
 蕩けるような快感。
 この自分ではわからない場所がとろとろになってしまったような感覚。
  
 本当にどうなっているのだろう。 
 少しだけ我に返ると、秋葉は不安にはなる。
 こんなに、マッサージするように優しくほぐされ、舌で柔らかくされ、挙句
広げられて。
 しげしげと自分で観察した事など無い。
 綺麗に洗っているとは言え、排泄器官。
 志貴の言葉とは反し、見苦しくグロテスクなのではないだろうか。

「ふ、ううんッッ」

 意識をそこに向けていたからだろうか。
 突然の刺激の変化に声が洩れた。
 熱く柔らかい舌がすっと引いて。
 代わりに、痛みかと錯覚するほどの何かが走った。

「これでもまだ、きついな、秋葉の中」
「兄さん、何を……」
「指を一本入れただけだよ」
「うん…、変です」
「苦しくはないよね」
「は…はい、でも……」

 志貴の指が動いたのが感じられた。
 そうされるのは初めてではないとは言え、異種の感覚に自然と声が洩れる。

「力を抜いて、秋葉」

 志貴の声に従おうとするも、体は強張り、力が入ってしまう。
 それでも、いきなりの挿入ではなく、従前にほぐしてからの行為。それ故に
志貴の指は完全に阻まれる事は無く、隘路をじりじりと進む。
 排出されるべき道を逆流される事による違和感が強くなる。
 それでも、秋葉は志貴の行動を拒絶しはしなかった。
 息を乱しつつも、受け入れようとする。
 志貴はその様を見て、できるだけ優しく指を動かす。
 出し入れをする。

「凄いな、粘膜が指に絡んで……」

 志貴の賞賛の言葉に、秋葉の何処かが快美を覚えた。
 それがスイッチの切り替わりのように、ふっと秋葉の力が抜ける。
 まるで掴まれているような締め付けが緩んだのを、志貴は感じた。
 これならと、指を動かすと、そう苦労なく出入りする。ぬめぬめとした粘膜
が心地よく指を擦りあげる。
 その動きに慣れたのか、違和感とは別の何かを感じているのか、秋葉の反応
が変化していく。
 肛門だけでなく、膣口への指戯を加えているのもあるだろう。
 堪えきれずに洩らす声は、苦しさや悲鳴を溶け込ませたものではなく、悦び
の成分を色濃く湛えていた。

 志貴は存分に秋葉の後ろの感触を楽しむと、いったん指を抜いた。
 指一本だったとは言え、抜いた後は痕跡を残していた。
 少し中から捲れた様子。
 僅かに開きを見せる穴。

 じっとそこを見つめ、志貴はまた指を伸ばした。
 今度は人差し指だけではなく、中指も添えられている。
 息を乱して突っ伏したままの秋葉が見たら、今度は二本入れるのかと驚いた
かもしれない。
 しかし、志貴の意図は挿入ではなかった。
 二つの指先を秋葉の後ろの窄まりの縁に置く。
 そのまま、指を開く。
 指だけではなく、小さな穴が開いていく。
 今の今まで指を受け入れていた隘路を、志貴は覗き込んだ。
 くすんだ色をした外部とは一変した、ピンク色が見えた。
 
 排泄口だけではなく、その奥までを晒され、さすがに秋葉は驚愕する。
 それとなく押えを強めた志貴に抗おうとする。
 志貴はその抵抗もさばきつつ、じっと眺める。

「こんな処も綺麗なんだな、秋葉は」
「はうぅぅ」

 声が息と共に、普段は外からは見えぬ部分をくすぐる。
 感覚器はほとんど無いはずなのに、敏感に秋葉は反応した。
 それに賞賛の言葉が、快楽の波となって秋葉をさらに溶かした。 
 単純な快楽の量だけで言えば、とっくに絶頂に到ってもおかしくなかった。
 やはり緊張と、こんな不浄の処で気持ちよくなるだけならともかく、最後ま
でイってしまう姿を志貴に見せられないという内心の歯止めゆえだろう。
 もう少しの処で秋葉は逡巡した。
 しかし、それはもう少しで達してしまうという法悦の境を、さ迷う事でもあ
った。しだいに快楽の波に頭が融けてしまう。
 海の波打ち際で、確かに両の足で立っているのに、まるで流されているよう
な錯覚を覚えるのにも似たふらつき。

 しかし、恥ずかしい姿を見せられないという矜持と共に、確かに相反する想
いがあった。
 全て見せてしまいたいと。
 兄の愛撫で狂ってしまう様を。
 排泄器官を嬲られているのに、あさましくも快楽の頂点に達してしまう様を。
 本当の隠さぬ様を。
 そうなってもいいと思う。でも、抗う。それもまた快美に繋がっていた。

 僅かな志貴の指の動きの変化が、快楽の為でない器官でを性器と変えていた。
 このまま指の動きを少しばかり強めれば。
 そうでなくとも、ただ時間を待てば。
 秋葉は絶頂に至る。そう志貴は見抜いていた。
 同時に、その葛藤も志貴にはきちんと見て取れていた。
 それで、志貴は指を離しはしないものの、動きはずっと弱めてしまった。
 秋葉は小さく息を吐いていた。

「ねえ、秋葉」
「は、はい」
「今はさ、こんなにきつくて指一本でも苦しいかもしれないけど」
「もっと慣れたら、こちらでも秋葉としてみたいな」
「私と……?」

 まだ指の感触は頑として残っている。
 動きによる刺激の余韻も燻っている。
 だから、秋葉の頭は霞みが掛かったように、自分でも頼りなく感じていた。
 志貴の言葉もすぐには飲み込めない。
 頃良しと見るまで、辛抱強く志貴は待った。
 
「ああ、ここでも秋葉と結ばれたい。
 秋葉の全てが知りたい。秋葉の全てが欲しい」
「でも、入るのですか、兄さんのものが」
「大丈夫、いきなりは無理だけど。いろいろ準備すれば。
 それでも痛いかもしれないし、秋葉には嫌で堪らないかもしれないな。
 それだったら、絶対に無理矢理にとか、秋葉が駄目だって言ったら強制はし
ないから、安心して」

 酷な事を言っているな、と志貴は内心でちらりと思う。
 初めて二人が結ばれた時。あの時もかなりの痛みを秋葉に与えたのを忘れて
はいなかった。
 その後、何度も体を重ね、今ではほとんど無理をさせずに結ばれるに到って
いるが、後ろもそうだとは限らない。
 膣道よりずっときつい締め付け。
 けれども、それでも志貴は秋葉に望んだ。
 愛する少女の全てが欲しいと言う欲求を、そのままに告げる。
 エゴではあっても、同時に自分のダイレクトな欲望を秋葉が望んでいるのを
知っていたから。

「平気です。すぐには無理かもしれないけど、きっと、ここでも兄さんを愛し
てみます。
 それで、兄さんが喜んでくれるなら」

 はたして、秋葉は笑みをもって答えた。
 後ろの窄まりへの愛撫ですら抵抗を見せていたのとは、別人のように。
 しかし秋葉の中では矛盾はない。志貴もまた、不思議とは思わない。

「うん、ゆっくりでいいさ。
 まずは、指で練習だね」

 そう言って志貴はまた、ゆるゆると指を動かした。
 まだ、きつそうで、志貴は決して無理をしないでゆっくりゆっくり動かして
いた。

「そら、秋葉、想像してごらん。
 いつも秋葉が触ったり、しゃぶったりしているペニス。秋葉の中を貫く俺の
が、今、こうして秋葉の後ろの穴から出入りしているんだ」
「兄さんのものが……」
「そうだよ、秋葉に締め付けられて、でも直腸に潜っている。
 秋葉の前の穴に入れたのとは違ったきつさだ、でもとても気持ちいい」
「兄さんが喜んでいるのですね」
「凄くね。少し、力を入れてみて。閉じる感じ、わかるかな。
 ああ、そうだ。こんなにされたら、俺のはどうにかなっちゃうな。
 今度は緩めて」

 秋葉は志貴の言葉に素直に従う。
 志貴が囁く言葉を頭の中で転がし増幅させながら。
 指だけではない、何かを感じながら。

「うん、少しこなれたみたい。出し入れがスムーズた。
 こんな風に、俺のが秋葉のお尻を出入りするんだ。
 そして……」
「……そして?」
「そして気持ち良くなって、もう我慢できなくなって、ぐいって秋葉の奥に突
き入れて。そしたらどうなるかな」
「兄さんが膨らんで、熱いのをいっぱい、私の中に」
「そうだよ。秋葉の中に射精するんだ。秋葉のお腹をいっぱいにね」
 
 言いながら、指を強く挿入する。
 秋葉は、もはや難なくその衝撃を受け入れる。
 きつく締め付けて、それでも肛門もその先も、志貴の指を、いや志貴の硬く
大きく膨張した怒張を受け止めて飲み込んでいく。
 そして、ペニスに後ろを貫かれ、激しく精液を注ぎ込まれ……。 
 その擬似的な感覚だけで、秋葉は果てを迎えた。

「ああ、アアッ、兄さん。何、これ。
 お尻なのに、あああ、ああああーーーーッッッ」

 これまでも何度となく、志貴との交わりで最後まで達していた。
 志貴と抱き合いながら交わり、犬のような姿で後ろから貫かれ、寝そべった
志貴に跨りながら自ら挿入し、その他幾つものやり方で結びつき悦びに果てた。
 しかし、今のはそのどれとも違う異種の行為であった。

 がくんと体が崩れる。
 志貴は慌てて体を支え、そっと秋葉をベッドに寝かせる。
 淫液とは違ったぬめりに濡れた指をそっと拭う。
 そして絶頂の余韻に、いつも以上に脱力した秋葉の背に、体を重ねる。
 汗ばんだ体が合わさる。
 不快感は微塵も無い。

 しばらく満たされた沈黙が続いていた。
 互いの息遣いを聞くともなく、耳にして。
 触れ合った体から、鼓動を感じて。
 
「嬉しいな」
「え?」

 その静寂を志貴のぽつりと呟くような声が破った。
 兄の言葉に、秋葉が我に返る。

「また、秋葉を喜ばせてあげられた」

 独り言めいた言葉。
 しかし、その言葉にどれだけ強い感情が込められていただろうか。
 秋葉は正しく理解した。
 もちろん自分自身の快もあろうが、遠野秋葉に悦びを与える事に、遠野志貴
は喜びを感じている。
 排泄器官を弄ぶような真似。
 でも、それで快感を与えた事に、こぼれるような喜びの顔をしている。

 その理解が劇的な化学反応のように、秋葉の体をおかしくした。
 軽く達するのにも似た、小規模な弾け。
 でも、肉体よりも精神の歓喜の破裂。 
 びくんと、体が痙攣したように動く。

「秋葉?」
「ふぁ…に、兄さん……、ぎゅってして、抱いて」
「あ、ああ。こう?」

 腕の中でぴくぴくと痙攣したように動く秋葉を、志貴は驚きで見つめる。
 絶頂後の長い余韻に浸る秋葉は何度も見ている。
 脱力してベッドに横たわっていたりを、兄の胸に寄り添っていたり、今のよ
うに腕の中に秋葉を抱きしめていた事も何度もあった。
 ただ、こんなに激しい反応を示しているのは珍しかった。
 まるで立て続けにイッたみたいな……。
 そう考え、志貴は思い違いに気がついた。
 秋葉は、絶頂後の後戯として兄の腕を求めたのではなく、これからまた達し
そうになっていたから、確かなものにすがり付きたかったのだと。

 間近で秋葉の官能の姿を目にし、絶頂の震えを腕に感じ、志貴は優しく抱擁
を続けていた。敏感になった体には軽く抱いているくらいの方がいいかな、な
どと思いながら。
 瞑っていた秋葉の目が開く。
 まだ夢見ているような放心の表情。
 志貴の目を見つめ、呟く。

「変です。私、兄さんの言葉だけで、軽く……」
「イっちゃったの?」
「わかりません。そうかもしれないけど……、自分でもどうなったのか。
 ただ、なんだか心から嬉しさが溢れたみたいで、とても幸せになりました」

 言葉の通り笑みを浮かべた表情。
 ただ、無垢に微笑んでいるだけではなく、そこには肉体の快楽の残滓が混ざ
っている。
 志貴ならずとも見惚れてしまう、秋葉の艶のある雰囲気。
 思い出しているように、ああと声を洩らす。
 満足そうな溜息。
 そして、目をぱちぱちとしばたくと、声の調子を少し変える。
 自分自身に向けられていた心が外へ向けられた様子。

「ねえ、兄さん。ところで、さっきから私だけ兄さんに喜ばせてもらっていま
すけど」
「そんな事ないぞ。秋葉を喜ばせて、どれだけ俺が幸せか……」
「普段はそんなに真顔で話さないのに、でも……、嬉しい。
 でも……。ではですね、言い方を変えて、逆に言った方がいいですね」
「逆?」、
「兄さんばかりずるいです」
「へ?」

 意外そうな志貴の顔。
 くすりと秋葉はおかしそうに笑う。

「兄さんばかり、好きな人を喜ばせて、幸せにして。自分だけずるいです」

 わざとらしく口を尖らせて見せる。
 言葉自体は、文句と志貴への非難であるのに。
 なんで秋葉の言葉がこんなに喜びを生ませるのだろう。
 これだけで充分すぎると志貴は思った。 

「私も、兄さんを喜ばせて、幸せにして、それで自分も幸せになりたいです」
「そうだな、俺ばかりずるかったな。ごめんな、秋葉」
「そんな顔して謝るのなら、許してあげます」

 ぎゅっと志貴は秋葉を抱きしめた。
 汗ばんだ肌が、それでも滑らかさを感じさせる。
 秋葉の髪の甘い香りが志貴の鼻梁を擽る。
 満足そうに志貴は息を吐き、それから秋葉に言った。

「でも、やっぱり今日は秋葉を喜ばせる日だから。
 ……そんな顔するなって。だったら、二人でお互いにするのはどうだ?
 俺が秋葉を、秋葉が俺を。それならいいだろう?」
「はい」
「じゃあ、こんな形はどうかな。秋葉、ちょっと四つん這いになって。そう」

 秋葉が四足の犬のような姿になり、ベッドとの間に空間を作り出した。
 そこに、仰向けの格好で、もぞもぞと志貴が潜って行く。
 ある程度秋葉の体に潜ると、後ろ手に枕をあてがい、完全には横たわってし
まわないように体勢を整える。
 秋葉はそれを見て、四つん這いで後退りをした。
 さらにお尻を高く上げ、自ら濡れた谷間とこれから愛撫を受ける肛門とを突
き出し、近づける動作。
 恥ずかしそうに、しかし期待に溢れた様子で、兄のやりやすい様にと従って
いた。

 仰向けの志貴に秋葉が体を重ねる形。ただしも二人の頭と足は逆向き。
 互いに、相手の性差の姿を目の前にする姿。
 志貴は秋葉の谷間に顔を寄せているのは同じだが、秋葉もまた志貴の強張り
に対していた。

 体位が少し変わっての新たな刺激。
 依然、指は浅く潜り内粘膜を弄っている。
 もう一方の手は、また蜜液を滲ませた秘裂を優しく撫でている。
 間近に息が掛かるのを感じて、秋葉は身震いした。
 自分から兄への奉仕を言い出したのに、何もせずにただその快感に浸ってし
まいそうだった。

「私も兄さんの……」

 あえて言葉にして、気持ちに活を入れる。
 行動にも移る。両手でそっとそそり立つ兄のものを包み込む。
 それは大きく、硬くなっている。
 掌に伝わる血の熱さ。
 動くではなく、ただ掌中の大切なものの感触を味わう。
 でも、志貴のものは大人しくじっとしていない。
 白い柔らかい手で、挟まれただけで、志貴の高ぶりは増していた。
 志貴の意志によらぬ動きだろう。
 びくんと脈打ち、根本からペニスが跳ねた。

「こんなに……。
 そうですよね、今夜はまだ、兄さんは何もなさっていませんもの」

 呟き、秋葉は手を動かした。
 両手で包んだまま、ゆっくりと上下に摩擦を起こす。
 舌で舐め上げられる感触、膣内できつく締め付けられる感触。それらに比べ
ればずっとささやかな軽さしかない。
 それでも滑らかな肌との触れ合いは、志貴の下半身を甘く溶かすかのようだ
った。

「なんて硬い……」
「秋葉の手が柔らかいんだよ」

 うっとりとした秋葉の呟きに、少し恥ずかしそうに志貴が返す。
 根本から先端までの硬直を、秋葉は飽かずに動き回る。

「ふふ、こんなに濡れてきました」

 先端の傷口のような裂け目から、とろりと液体が滲み出していた。
 透明な水みたいな染み出し。
 秋葉は、愛しそうにそれを見つめ、顔を寄せた。

「兄さんの、雄の匂い」

 腺液の匂いを厭わず嗅いでいる。
 指が、そっと触れた。
 それほどの粘度はないが、小さく糸を引く。

 志貴の顔をそっと見て、言葉を発しないままに秋葉は次の動きを取った。
 ペニスの根本を支えるようにして、ためらい無く、膨らんだ亀頭を口に含む。
 
「んん…ふぅ……」
「あ、くうッ」

 秋葉と志貴の口から声とは違う音が洩れる。
 悦びと興奮を示した秋葉。
 局所的な快感に呻き声を上げる志貴。
 しばらくは口に含んだまま、感触を味わうように秋葉はじっとしていた。
 頬が軽くすぼまっている。

 志貴もまた、熱く濡れたペニスが受ける快感をゆっくりと受け入れていた。
 秋葉の舌や唇を感じる。
 自分のペニスを喜びをもって咥えている姿を目で楽しんでいた。

 少し閉じかけていた目が開く。顔は下向きになりつつも上目遣いに目だけが
志貴を見つめる。
 志貴は微笑み、手を秋葉の頭に乗せた。
 いい子だと誉めるように、軽く撫ぜてやる。

「ん、ふう……んん」

 秋葉が声にならない呼気を洩らした。
 そして、それを開始の合図とするように、動き始めた。
 根本にあった手が再び、幹を上下し始める。
 半ばを咥え取られてしまっているが、残りの部分を両手の指で弄っている。
 顔も動いていた。
 唇の輪がきつめに志貴の幹を締め付け、そのまま上下に動き始める。
 すぐに、湿った音が擦れから生じ始めた。
 何度も往復を繰り返すと、口から姿を現した部分は、ぐっしょりと濡れ滴る
姿に。
 くびれを小刻みに唇で擦り上げ、時には離れる寸前迄先端まで移動する。
 充血した亀頭全体がてらてらと輝いている。 
 そして、脈打つ長大な幹から手を下へとずらしてしまう。
 途中まででは満足できないように、唇を幹の根本まで滑らせて行く。
 小さな口の何処にと、疑わしくなるほど深く飲みこんでしまう。

「秋葉、無理するなよ」

 志貴が声を掛けるが、多少苦しそうにしながらも秋葉は止めない。
 ペニスの先端は舌と頬の柔らかい感触から、上口蓋の少し硬いでこぼこを擦
り、再び柔肉に触れていた。
 秋葉の喉奥に敏感なペニスの先端が触れていた。
 
 息苦しく、えづきそうにもなっているだろう。
 しかし、口中の圧倒的な存在感、志貴のものを口に収めている事実に、秋葉
は間違い様の無い満足感を浮かべていた。
 ペニス全体が何処かしら秋葉の口に触れている。
 息をする度、僅かに動く度、様々な肉が志貴のペニスに触れ、違った感触を
伝えていく。
 どこがどうなっているのかは、あまりに多彩で志貴自身にもわからない。
 全体を通して、まるで温かい口の中で融けているみたいだと思うだけ。
 腰全体がじんわりと脱力するような温かさ、快美感。 
 しかし、さすがに、それ以上は秋葉も動く事が出来ないようだった。
 下手に動けば、とんでもない真似をしそうでもあった。
 
 早く、と思う。
 熱い精の迸り。
 兄の快楽の証。
 口に広がる幸せを、秋葉は求めていた。
 もう、とっくの昔にどろどろとした白濁液がとめどなく溢れていても良さそ
うなものだった。
 しかし陶酔の直前で、秋葉の願いは叶えられない。
 上目遣いに志貴の顔をちらりと眺め、秋葉は不思議の感を抱いた。
 まだ、満足していない訳ではなさそう。
 それどころか、もう我慢の限界といった愉悦の極みの表情。
 それなのに、耐えている。
 苦悶の色すら垣間見せながら、最後までは達しまいとしているように見える。
 口の中で漲り脈打つ肉棒は、先触れの腺液をとろとろとこぼしていると言う
のに。

 どうしてと秋葉は問わない。
 嫌がってはいないのだ。それなら、我慢できなくなるまで続けるのみ。
 ならばと、、執着し続ける事無く秋葉は唇の拘束を解き、口を開ける。
 喉を突くようにして口に溜まっていた唾液が糸を引いて落ちた。
 すでに粘度のある液に覆われているペニスにをさらに濡らし滴り落ちる。
 根本を支える秋葉の指と掌をも濡らしていく。
 しかし気にする事無く、新たな潤滑材をもって幹をしごき上げて始めた。

 口も遊んではいない。
 喉元深く呑み込む事には満足したのか、今度は違った動きで志貴のペニスを
味わう。
 横咥えするように幹に唇がつき、ちゅっと吸っては根本へと近づいていく。
 その可憐な唇の児戯ような仕草は、しかし官能を刺激する快美を生じさせる。
 唇自体の感触、舌の動き。
 艶やかな髪がさらさらと性器や足に触れるのも、くすぐったさと共に気持ち
よさを生み出す。
 皺だらけの袋にも、まったく迷う事無く舌を這わせる。
 掌で探り、中で転がる柔らかい玉を、慈しむように弄ぶ。
 ぬめぬめとした舌が這う感触は志貴の背筋にぞくぞくとしたものを送り込む。

「秋葉」
「何ですか、兄さん」
「そんな処まで、いいよ」
「お嫌ですか」

 言いつつ答えを促すように舌がまた動く。
 志貴の性器の下、不浄の場所に秋葉の顔が触れるほど近づき、舌を穴に触れ
させている。

「嫌じゃないけど、こんな処……」

 反論したくなるが、そうすると今まで志貴自身が秋葉を宥めすかしていた言
葉がそっくり返って来るだろう。
 でも幾らなんでも秋葉にそんな真似を…
「うあッッ」

 思わず志貴の口から悲鳴が洩れる。
 舌先でむずむずするような落ち着かない刺激を与えていた舌先が、急に強く
動いた。今までは恐る恐ると言った様子で触れるだけだったのとは、雲泥の差
があった。

「ふふ、兄さんの可愛い声を聞けましたから、これくらいにします」
「秋葉」

 見上げた悪戯っぽい笑みに、志貴は安堵と軽い敗北感を覚えていた。
 これでは駄目だなと気を入れ替える。
 こちらが秋葉を振り回すくらいでないと。そう考える。
 よし、とある事を思いつく。
 
「ねえ、秋葉。
 ひとつお願いしたいんだけど、いいかな?」
「何ですか?」
「聞かないと答えられない?」
「え……。いえ、兄さんが仰る事なら、兄さんが喜んで下さることなら、なん
でも。
 でも、痛い事とかは、許して欲しいです」
「そんな事はしないよ。ええとね……」

 志貴の言葉が止まった事に、訝しげな表情をしたが、秋葉は殊更に急かす事
無く、次を待った。
 兄さんはどんな顔をしているのだろう、そう少しだけ思う。
 余程の事を言おうと決意を固めているのか、あるいは躊躇しているのか。
 言葉の通り、志貴が望むなら何でもする心の用意はある。これまでだって、
秋葉にとっては不可解な要求を聞いたり、恥ずかしさを押しやって命ずるまま
の行動を取ったりしていたのだ。
 でも、僅かに不安を見せて、秋葉は志貴の沈黙に耐えた。

「お願いと言うのはね、秋葉がおしっこする処を見たいんだ」
「また……ですか。 
 まあ、兄さんが見たいと仰るのなら」

 安堵。
 そして、安堵した事実に、秋葉は内心溜息をこぼす。
 異常な行為だ。
 本来ならばそんな事を言われたら、いかに志貴の言葉とは言え逆上するなり、
冷たく拒否しても当然だった。
 たとえ拒絶したとて、志貴もまた無理強いはしない。

 しかし、過去の歴史が……。
 懇願され、望まれ、期待の目で見られ、そうして従ってしまった実績が。
 羞恥の感情は決して薄れていない。
 けれど幾ばくかの慣れが、そして志貴の悦びの表情が予想できるのが、秋葉
の抵抗を薄めてしまう。

「なんで、こんなのを見たがるのか理解できませんけど……」

 僅かに恨めしげな響きが声に混じっている。

「してる時の秋葉がとても可愛いから」
「卑怯です、兄さんは。わかりました、言ったからには従います。
 でも、どうしましょう」

 此処はトイレでも浴室でも無い。
 あるいは外へでも連れて行くのか。
 しかし、志貴は立ち上がる様子が無い。
 では、もしかしてまた、バケツか洗面器でも用意しているのか。
 そう思って見回してもされらしい趣向の為の容器もない。

「うん? ここでそのまますればいいんだよ」
「ここって、まさか……。ダメです、そんなの。ベッドでなんて」
「毛布当てておけば平気だから」

 事もなげに志貴は答える。
 普段の会話よりも力強く意志力に満ちているように思えるのは、秋葉の気の
せいだろうか。

「でも」
「兄さんが仰る事なら、兄さんが喜んで下さることなら、なんでも」

 秋葉の先ほどの言葉。
 それを志貴は歌うように声にした。
 僅かに秋葉の口調が再現されている。

「う、うう……」
「ダメなのかなあ、秋葉?」
「わかりました」

 問答をしても無駄だというのは良くわかっている。
 異常なシチュエーションではあるが、そもそも兄の前で排泄行為を行うとい
う点では、あまり変わらない。

「嬉しいよ、秋葉」

 弾んだ声を出すと、志貴はもぞもぞと動き始める。
 秋葉の腰を軽く抑えつつ、体を捻り、位置関係を調整する。
 結果、志貴は上半身を半ば浮かせて、片手を背後に支えている姿勢。
 秋葉は四つん這いになったままで、下に志貴の体。
 
「そのまま上半身は下につけちゃって、膝で……そう」

 志貴の言葉と手での指示に従う。
 腰だけを立てたような姿で、片足を上げて志貴の肩辺りに置かれている。

「いいよ、良く見える、秋葉の可愛い処。
 うん、いつでもいいよ」
「……」
「毛布もあるから、ちゃんと受け止める」
「……」
「あ、少し、ひくひくしている。素直だな秋葉は。わくわくするなあ」
「……」
「あれ、止まっちゃった。どうした、秋葉?」

 無言を保っていた秋葉だったが、堪りかねた様子で声を上げる。

「せめて、そんなに間近で見ないで下さい」
「秋葉だって後ろの穴をあれだけ観察したんだから、それで釣り合いが取れる
ってものだよ」

 それなら、兄さんはその前にさんざん私のを……。
 そんな文句を言おうとしたのだろう。
 しかし機先を制するように、志貴は、秋葉の粘膜の一点を、ふうっと強く吹
いた。
 手で触れたり、舌で舐めるのとも違った感触、刺激。
 それで、秋葉は意識的にせよ、無意識にせよ、止めていた関門を破ってしま
った。

 くちゅ…ちょろ…ちょろろちょろちょろちょろ……。

 周辺の粘液、志貴の唾液と自身の愛液からなる詰まりを押し流すように、最
初は粘性のある音。
 そしてか細い、気をつけてなければ聞き逃すほどの水音。
 間近でわくわくと見守る志貴が、それを逃す筈はなかったが。
 今の今まで外側から刺激していた小さな穴から、とめどなくこぼれだしてい
る尿液。
 真水のように澄んだ色。
 開いた尿道の内まで覗けそうだった。

 うっとりとその眺めに魅せられたまま、志貴は毛布を手に取って、尿の滴り
の先にあてがった。
 さすがに、ベッド全てを尿に濡れ浸らせる訳にもいかなかったから。
 単なる排泄液。
 それ自体が汚れ害がある訳ではないが、決して清らかなるものではない。
 自分が排泄したものに対しては、何ら感慨など持ってはいない。
 けれど、それが愛する秋葉のものである。
 そう思うと、この湯気立てるような液体がまるで別の何物かに思えてくる。
 少なくとも、手に触れたとて、まったく汚いなどとは思わない。

 秋葉の羞恥、そしてこんな秘められた行為までを眼にしているという事実は
志貴を興奮の極に誘った。
 震えつつも放尿を続ける秋葉の可愛らしい部分、それと同じ位、志貴は顔を
背けている秋葉の、それでもわかる頬と首筋の赤味が差した様を、眺めて深い
満足を味わっていた。

 さらに、それだけではなく。
 軽い、悪戯を思いついた顔。
 体をもぞもぞと動かす。
 そして、湿り気を多く含んだ毛布をずらす。
 くぐもった水の流れの音が、僅かに高まる。 

「秋葉」
「は、はい?」
「何処に当たっているか、わかる?」
「え?」
「俺の胸に秋葉のが……」

 その声が、いったいどんな働きをしたのか。
 凄まじい勢いで、秋葉が強引に首を捻った。
 あさましい格好で股を開き、兄の目の前で放尿をしている。
 その事に対する羞恥の思い、それが直前まで浮かんでいた。
 しかし……。

 劇的だった。
 身悶えしている。
 漏れ出ている処が、開いた尿道口が、ぎゅっと力が入っているのが志貴には
っきりとわかる。
 ばちゃばちゃと乱れ、弾ける尿液。
 止めようとして止められない様子。
 そうしつつも体が跳ねるように動く。

「秋葉、暴れるなよ、どうした」
「いや、いやです。
 私、そんな、兄さんを……」

 叫び声。
 志貴に言っていると言うより、どうしようもない内心を吐き出すような声。
 悲痛な声。
 途切れ、声に嗚咽が混じっている。
 怯えすら含んだ恐慌状態。

 どうしたんだろう、と志貴は呆然とする。
 これまでも秋葉とはいきすぎた事をして泣かせてしまった事もありはしたが、
その場合はやり過ぎたという自覚がある。
 でも、今回は……?
 確かに、こんな恥ずかしい真似させているけど、初めてでもないのにと志貴
は戸惑う。

 そうこうしているうちに、秋葉の中が空になったか、勢いが弱まり意識的に
止めるに到ったのか。
 乱れ飛んでいた尿がほとんど止まり、ちょぼちょぼと滴るだけになっていた。 
 滴が断続的に、志貴の体と布団とを濡らす。
 だが、最初に尿を浴びせていた胸にだけはかからない。

 志貴も秋葉も会話となるような言葉を発しない。
 ただ、秋葉のしゃくりあげるような声とも呼気ともつかない音だけが部屋に
ある。
 志貴は上半身をずらして、手を伸ばした。
 本当であれば、体ごと反転して、秋葉の顔を覗き込みたい処であるが、今は
背を撫でるに留める。

「ごめん、秋葉。
 調子に乗って、何か、酷い事をしちゃったんだな。謝る。本当に、ごめん」

 音が全て止み、静寂となってから、志貴はようやく言葉を口にした。
 返事は無いだろうと思った。
 悲しんでいるのか。怒っているのか。
 いずれにせよ、秋葉は沈黙をしたままだろうと。
 しかし、答えは予期に反してすぐに返った。

「謝るのは、私です。
 私が兄さんに謝らなければならないんです」
「秋葉?」

 志貴の声は強張っていた。
 あまりに冷たい秋葉の声の響きに。
 外を拒み、刃となるような、氷の冷たさではない。
 それならば、怒りの現れとしての冷たさであれば。むしろ志貴はほっとした
かも知れない。
 謝れば良い。怒られ、罰を与えられても、それで許して貰う。
 だが、今の秋葉の声は、悲痛に凍りつきそのままばらばらになりそうな脆弱
な冷たさであった。
 自ら冷気を放つのではなく、凍りつき冷たくなっていく死体の如き冷たさ。

 志貴は、慌てて身を起こした。
 下になった志貴が動いた事により、ずるりと崩れそうな秋葉を支えながら。
 そのまま、胸に抱く。
 温かい。その陶然の事実に信じがたいほど安堵する。

「秋葉、なんで秋葉が俺に謝らなくちゃならないんだよ」
「兄さんを汚しました」
「汚したって、今のは俺が無理やりやらせたみたいなものだし。
 秋葉が謝る事なんて、何もないんだぞ」

 強く、諭すように志貴は秋葉に向かって言った。
 心から。
 けれど、秋葉は志貴の目をじっと見て、視線を落した。
 その目はまだ志貴が望んだ色を浮かべていなかった。
 訝しげに志貴が秋葉の視線を追う。
 秋葉が軽く身を引いたので、上半身の密着は解けかけている。
 そこを見つめ、さらに秋葉は手で触れた。
 志貴の胸を。
 自分の尿が浴びせられた場所を。
 志貴の胸にある大きな傷跡を。
 
「でも、兄さんの、傷跡をそんな、私の穢れたおしっこで……」

 小さい声に、信じがたい想いが詰まっていた。
 ああ、と志貴は初めて納得した。
 秋葉がこれに対してどれほどの思いを抱いているか、忘れてはいないまでも
意識を希薄にしていた。
 悔恨であり、後ろめたいモノであり、同時に誇りでもあり、何よりも大切な
思い出でもある。
 志貴自身にとっても、秋葉との繋がり、深い絆である徴、聖痕とも言うべき
もの。

 そして、背中が一瞬で凍りついたような寒気を覚えた。
 自分が何をしたのかを悟って。
 秋葉にどんな真似をさせたのかを悟って。
 己の聖域を、自ら踏みにじらせる所業。

 泣いてはいない。
 かえって涙を零している方が、感情を露わにしている方が、志貴としては対
処しやすかったかもしれない。
 とりあえずなだめ、落ち着かせるという、対処療法的な行為が自然に取れた
だろうから。
 
「ごめん、秋葉」
「……」
「そうだな、考えなしだった」
「……」

 秋葉の両頬に手を添え、まっすぐに秋葉を見つめる。
 常の光のない眼が志貴の目線に絡む。

「でもな、秋葉、ひとつだけ考え違いしているぞ」
「考え…違い?」
「秋葉にとってはとんでもない事かもしれないけど、俺にはこれが汚いなんて
意識は微塵も無い。
 秋葉の体から出たものだもの、全然変な事しているつもりはないよ。
 むしろ清められたと言っても良い位だと思う」
「兄さん」
「でも、そう言わずに秋葉にこんな事をさせて、悲しませて、ごめんよ、秋葉」

 強く、強く抱きしめた。
 そして、愛撫というより、子供をなだめるような優しさで、秋葉の背や腕、
脇腹へと手を滑らせた。
 全身を隈なく撫で摩るように。

 しゃくりあげるような声がした。
 肩の辺りに触れた秋葉の顔。
 そこが濡れる感触。

「秋葉は全然悪くなんてないからな」
「に…にい……さ……」

 互いの存在だけを感じて、二人はそのまま動かずにいた。
 今だけは世界に二人だけしかいないように。

 抱擁を解くまでどれだけ経っただろうか。
 ようやく、僅かに離れ、顔を見合わせた時、志貴は心からの安堵を浮かべた。
 まだ、泣き顔の跡はある。それでも最悪の部分は越えたと志貴は感じていた。

「しかし、考えてみると、凄い格好だな」

 わざと軽口めいて言葉を口にする。
 志貴が秋葉の尿を受け、そのままに秋葉を抱きしめ。
 とりあえず、風呂にでも行って二人で温まろうか。
 良い考えに思えた。
 と、そんな考えに同意するように、秋葉がぶるっと震えた。

「体、冷えちゃったかな」
「え……」

 何気なく声を掛けると、志貴の言葉に秋葉は妙な反応をした。
 どこか、慌てた様子。

「どうした、秋葉」

 無言で、秋葉はもじもじとしている。
 まだ、何かあるのだろうか。
 それは、あれだけの慟哭をすぐに消し去るのは……。
 
「違うんです、兄さん」

 志貴の表情を見て、今度は秋葉が声を上げる。

「その、何と言うか……」

 説明しかけて、しかし果たせず、下を向く。
 困った雰囲気。
 下と言うより、秋葉が見つめているのって……。
 考えも無く、志貴の手が動いた。
 腿から濡れた股間へと手が入る。
 ぴちゃとさっきの名残が手をさらに濡らす。

「ぅああッッ」

 小さく声が洩れた。
 秋葉の声。
 志貴がどうしたのと問うように秋葉を見る。
 秘裂に触れた手はそのまま止まっていた。
 秋葉は軽く身悶えした。
 恥ずかしそうに。
 そして少し苦痛を堪えるように。

「さっき無理矢理止めたから、まだ残ってるんじゃない?」
「……はい」

 ごにょごにょと秋葉が答える。
 よりいっそう恥ずかしさを増した様子で。

「そうか。なら、我慢しない方がいいよ。
 さっきの続きをしよう」
「な、何を……」
「あのままじゃダメだから、ちゃんと終わらせよう。
 な、秋葉?」

 志貴の言葉に何を感じたのか。
 秋葉は頷く。

「わかりました。兄さんが仰るのなら」
「うん、そうだなあ」

 ちょっと志貴は考え、迅速に体を動かした。
 秋葉の背を抱くようにして、そっとベッドに横たわるよう促す。
 丁重に優しい仕草で。
 逆らう事無く、秋葉は志貴のエスコートに従った。
 脚を大きく開かせる。
 そして、志貴はその間に入るようにして四つん這いになった。 
 柔らかい枕が、秋葉の腰の辺りに潜り込んだ。

「や、兄さん。こんな……」
「こうした方が良く見えるだろう?」

 平然と志貴は秋葉に答える。
 僅かな傾斜ではあるが、腰を上げられた事によって、秘められた部分を自ら
突き出すような形。
 今日だけでも、志貴の視線を受け、指や舌でもさんざん触れられた部分であ
るが、それでも羞恥が皆無となる訳ではない。
 快楽と陶酔の中で弄られ可愛がられている時なら、どれだけあからさまにし
ていても判断力が麻痺して平気でいられる。むしろ今のように冷静さが大半を
占めている時に、赤みを帯びた唇やその奥を見せている方がはるかに恥ずかし
い。

「ほら、残りを出して」

 さっきのように、存在自体ははっきりと感じられても視覚からは外れた体勢
ではない。
 自分のこれからする姿も、それを見守る志貴も、はっきりと見える。
 期待に満ちた目で、火照った頬をした顔を見られるのも、濡れた秘裂の奥を
凝視されるのも、共に居たたまれない程の抵抗がある。

「さあ、秋葉」

 優しく誘う声。
 ちょっとだけ、普段からは考えれない兄の顔に、文句のある表情をぶつける。
 しかし、秋葉には逆らおうなどという気持ちは無かった。
 下腹に力を入れる。
 微妙な筋肉の動きで、腿の根本が少し張る。
 鮮やかに赤く充血している柔肉の襞の奥、小さく盛り上がった部分が目に見
えぬほど僅かに動く。
 そして、湿った性器の窪みを新たに濡らすように。
 ちょろちょろと秘裂から残尿が滴り落ちた。
 秋葉の目に、志貴の手がそれを受けるのが見えた。

 それを胸元でひっくり返す。
 傷口に尿が滴り落ち、そのまま腹から隆起したものの上にまで流れる。
 前面を尿で濡らした姿。

 秋葉は自分にとっての聖痕が、他ならぬ自分の排泄物に染められるのをじっ
と見つめた。
 まだ、抵抗はある。
 拭い取りたくてうずうずする。
 けれど、同時に。
 異端の、認めたくない、喜びを。
 確かに感じていた。

「よし、おしまいだね」
「そうです」
「うん。恥ずかしい真似させて、ごめん。でも、嬉しかった」

 さすがに返事が出来ず、秋葉は顔を真っ赤にするだけ。
 どうやら、うまく解決できたかな、と志貴は判断する。

「じゃあ、お風呂へ行こうか」
「はい。あッ」

 秋葉が身を起こすより先に、志貴は秋葉の腰と脚とに手を伸ばした。
 ベッドとの隙間に潜り、そのまま秋葉を持ち上げる。
 驚いた顔で秋葉は志貴を見て、じっとしていないといけないと身を固める。

「よっと」
「重くないですか」
「ちっとも……とはいかないけど、何とかお風呂までは頑張るさ」
「重くなったらおろしてくださいね」
「わかりました、大切なお姫様。手を首に掛けてくれたら、少し楽かな」

 秋葉は上半身をもたげ、志貴の首を抱くように手を回した。
 二人の顔が近づく。
 視線が合い、ほとんど同時に顔を近づける。
 ちゅっと、ほんの触れ合うだけのキス。
 微笑みあい、志貴は歩き始める。

「やっぱり、風呂まではきついかな」
「言い出したのは兄さんですよ」
「階段、怖いなあ」
「うーん、そうですね。では、そこまで。
 でも、こうされるの凄く嬉しいものですね。兄さんには悪いですけど」
「いや、俺も腕の中に秋葉がいるのって、堪らないものがある。
 よし、何とか階段もクリアしてみよう」
「はい」

 志貴が力を入れ、歩き始める。
 その空を移動する振動、兄の腕を、秋葉は幸せそうに感じている。
 そっと志貴の胸板に頬を付ける。
 志貴もまた、腕の重みを大切そうに支えつつ、足を進めていた。











 温かいお湯で満たされた湯船。
 まずは軽く互いの体を流し合おうと、志貴がスポンジに手にとった時、奇妙
な表情をした。
 戸惑ったような色。
 秋葉はどうしたのだろうと志貴を見つめる。
 そして、ああと頷く。
 さっきの自分のような仕草。
 少し困ったような表情。
 すぐに察しがつく。

「兄さん、もしかして、おしっこしたいのではありませんか?」
「う、うん」
「別に隠さなくともよろしいではないですか」
「いや、少し冷えたからかな」

 弁解じみた言葉を口にする志貴。
 それを見つめて数秒。
 秋葉の瞳に何かが宿っていた。
 
「兄さんにお願いが」
「さっき自分も見せたんだから、俺がしている処を見せろとか言うんだろ」

 冗談めかした顔、言葉。
 しかし秋葉は素でか、意図的にか真顔で頷く。

「よく、おわかりですね、さすが兄さん」
「冗談だろ」
「とんでもない」

 志貴の表情が少し強張る。
 それに際し、秋葉は落ち着いた表情でまっすぐに応えている。
 日常での姿に良く似た関係。

「……」
「……」

 無言の対峙。

「本気なんだな」
「ええ」
「まあ……、秋葉が見たいって言うなら。おあいこだしなあ」
「はい、兄さん、ありがとうございます」

 こんな事で礼を言われてもとぶつぶつと志貴は呟き、頭を左右に動かす。
 どこか寝ぼけを振り払うかのような仕草。
 そうしながら、じゃあどうしたものかなと言わんばかりにきょろきょろとす
る。

「ああ、兄さん」
「うん?」
「おあいこと言うのなら、もう一つありますね?」
「もう一つって……」

 戸惑いの表情。
 秋葉は口元だけで微かに笑い、言葉を続けた。

「さっき、私は兄さんの体におしっこを掛けてしまいました」
「そうだな」
「……」

 秋葉は、その先を続けない。
 謎めいた表情で志貴を見つめている。

「……まさか」

 秋葉は志貴の驚愕の表情に、得たりと言った会心の笑みをこぼす。

「察しがよろしいですね、兄さん。そうです、私に掛けてください。
 兄さんのおしっこを私の体に、顔に……」
「馬鹿」

 ぎょっとした顔で志貴は叫ぶ。
 しかし、その反射的な拒絶反応を秋葉は予想していたのだろう。
 平然として、志貴を見つめたまま。

「本気です、兄さん」
「出来る訳ないだろう、そんな事」
「でも、兄さんは、私のお腹をいっぱいになるまで注いでくださるだけでなく
て、腿の間や、お腹に出すのもお好きではないですか。
 それどころか、私の顔にめがけて射精なさったり、終わった後に頬や髪にこ
すりつけたり。それと同じです」
「違うだろう、それは」
「違いません」

 きっぱりとした断言。
 出る処は同じだって、排泄物である尿と精液は違うだろう、そんな当たり前
の事を口にしても微塵も揺るがないような態度。

「前は、それだって兄さんは嫌がっておられました。
 秋葉を汚す真似は出来ないって。
 でも、今は……」
「それは、そうだけど」
「私は嬉しいですけど、兄さんは抵抗あるのでしょう?
 でも、して下さって、兄さんも興奮なさって、それと違いありませんよ」

 またしても、言い切る言葉。
 そして、一転して、懇願の表情に変わる。
 魅惑的な視線、惹きつけられずにはいられない雰囲気。
 それに、おねだりの声が加わる。

「汚されたいんです。
 兄さんに私の体を……、ああ、考えただけでぞくぞくとします」
「待て、秋葉。
 幾らなんでも異常だよ。こんなに綺麗な髪がおしっこなかで汚くなるなんて、
俺は嫌だよ」

 少し秋葉は考える。
 こんな異様な行為を省みてくれる事を志貴は願った。

「じゃあ、その代わりに私を汚したら、洗ってくださいませんか?
 兄さんの手で、私の体も髪も全て……」

 そうじゃないだろう、そんな事をしても、汚した事実が差し替えされる訳で
はない。
 志貴はそう言おうとしたが、その前に秋葉の表情が変化した。
 どこか、沈鬱さを混ぜ込んだような表情。

「さきほど兄さんを汚した罪を、償わせて下さい」

 秋葉の言葉は志貴の胸を貫いた。
 志貴によって秋葉が抱いている罪悪感。
 必ずしも罪の意識だけではないだろうが、完全に否定し続ける事は、秋葉の
傷ついた心をそのままにする事にになってしまう。
 普段であれば、志貴はどれだけ秋葉が懇願しても、そんな事はしなかっだろ
う。
 しかし、今の状況が、志貴に異端の決心をさせた。

「さっきの事に罪なんてないよ。
 だから、これも贖罪の為の罰ではない。
 でも、秋葉が望むなら。さっき恥ずかしかっただろうけど、俺の為にしてく
れたお返しを。
 それなら、今回だけ……、してもいいよ」
「ああ、兄さん。嬉しい、嬉しいです」

 異様で、おぞましくすらある光景。
 だが、当事者たる二人は、違和感と拒絶を持っていた志貴ですら今は、心を
同じくしていた。
 望むものへ、望まれる行為を。

 震えながら、志貴は、己のものの方向を定める。
 普段はさほど手順など意識しない排泄の行為を、どこか遠くから間接的に体
を操るが如くぎこちなく行う。
 立ったまま、ペニスの根本を持ち、秋葉へと向ける。
 そう、これから放出される尿のラインの先に、秋葉の顔を置く形。
 頭の芯が痺れるような感覚を志貴は覚えた。

 一方、秋葉は、正座を崩したような形で、座していた。
 顔を上に向けている。
 これから来るべきものを、うっとりと待ち望んでいる。

「いくよ、秋葉」
「はい、兄さん」

 緊張の声と、弾んだ声。

 志貴の体が、数秒硬直する。
 心中で、体内で、いかなる葛藤があったのか。
 体の強張りが少しほぐれた。
 そして……、志貴の腰がぶるっと震え、尿が迸った。
 勢いは激しくないが、確かな迸りとして、前へと弾け飛ぶ。
 流れは弧を描きつつ下へと落ちていく。

 放出の刹那の、取り返しのつかない事をした絶望感にも似た痛み、衝撃。
 志貴の胸が確かに痛みを感じていた。
 心の痛みだけでなく、体にも変調があった。
 脳が命じた排泄の流れに対し、心のどこかがとっさに中止を命じたのだろう。
 排尿器官にも、ズキリとした痛みが走った。

 しかし、それでも。
 いったん止められたが故に、より勢い良く。

 尿が迸った。
 汚されざる者へ。
 志貴の愛する少女へ。

 髪に弾け、額から滴り、形の良い鼻梁や唇すら濡れていく。
 虚無が志貴の心を侵食していく。
 しかし……。

 しかし、そこで志貴は見てしまった。
 こちらを見る目を。
 秋葉の目を。
 煌く目を。
 歓喜に打ち震える、秋葉の瞳を。
 見てしまった。

 尿自体はほとんど出てしまった。
 残りも、もはやちょろちょろとしか出なくなる。

「ああ、兄さん……」

 熱っぽい声。
 汚液に塗れてなお、まったく魅力を減じない姿。
 翠の黒髪にきらめく雫、それが尿であるなどとはまったく信じられない。
 何より、美酒に酔ったかのような常ならぬ陶酔の色。

 そこで、思いもかけぬ体の反応が起きた。
 志貴自身も驚く、反応。
 添えていた手を弾く勢いでペニスがぐんと屹立する。

 なんて事、志貴は呆れる。
 今、秋葉の柔らかい手で包まれているとは言え、それは補助的な働き。
 秋葉に向かって放尿した事。
 綺麗な秋葉の髪を濡らし、人形のような美貌を汚し、透けるほど白い肌を黄
色く泡だった汁に塗れさせる。
 それがとんでもない行為という意識は濃厚にある。
 狂いにも似たこの状態から少しでも醒めたら、自分を嫌悪するであろう行為。
 何よりも大切な、誰よりも愛しい、美しき少女をこともあろうに己の排泄物
で汚す行為。
 だが……。
 その事実。
 とんでもない事をしたという後悔。

 しかしそれは、相反するモノを身に生じさせた。
 否定したかったが、志貴は素直に認めた。
 それは―――
 喜び。
 秋葉を汚した事。
 何とも言えない征服感。
 全身を白濁液に塗れさせるのにも似た、でもそれとも非なる確かな喜び。
 より昏いであろう喜び。

 そして、そんな目にあっているのに、なんて嬉しそうな顔。
 淫らに頬を染めてうっとりとした表情の秋葉。
 何とも艶かしい姿。
 もっととせがむように秋葉が上目遣いで志貴を見ている。
 ごくりと意識せず志貴は唾を飲み込む。
 そして、体はもっと鋭敏に反応する。
 さらに血液が集まり、そそり立っていく。
 
 ああ、と自覚する。
 秋葉を汚したくない。
 誰よりも愛している少女を、もっともっと愛してあげたい。
 可愛がり、大切にして、何ものからも守ってやりたい。
 ずっとずっと抱きしめていたい。
 それも本心であり、何ら偽りは無い。

 ただ、同時に。
 その大切な少女を自ら汚した事に、恐れと共に興奮を覚える自分がいる。
 信じがたい喜びと共に、どうしようもない次の衝動を持つ自分がいる。

 さらに。
 今度はもっと。
 色濃く、自分のものであると、刻みたい。
 秋葉をもっと己の色に染めてやりたい。

「秋葉」

 その名前を呼ぶだけで、秋葉には兄が何を望んでいるのかを理解したようだ
った。
 握った手が絶妙な強さと速さで動く。 
 ペニスが脈打ち、そして……。

 一瞬、いやそれよりも短い、何分割にもされた刹那の時。
 激しい痛みの如き刺激が志貴の内部で起こった。
 排尿に使用した器官を、瞬時に射精の用途に転じた為の歪みであろうか。
 もっともそんなものに志貴は引き留められなかった。

 より漲って上を向こうとするペニスを強引に、上気した秋葉の顔に向けた。
 それが危うく間に合ったと言うほどに、間髪をいれず。
 尿に塗れた秋葉を癒すように、あるいは逆にさらなる異端の化粧をするよう
に。
 破裂しそうなペニスが、驚くほどの勢いで精を迸らせた。
 躊躇いも無く、恋人の、妹の、愛しい顔へと白濁液が弾け飛ぶ。

「ああ、兄さんの、兄さんが……」

 体内での切換えはされたとは言え、今の今まで排泄の用途に使われていた器
官に秋葉は顔を近づけた。
 浴びせられた尿で滑らかな肌は汚され、艶やかな髪も濡れて乱れている。
 無残にして惨めな姿となるべき筈の姿。
 ただ、輝くような顔、恋する乙女の貌。
 唇を愛する男性へと向ける仕草は、志貴ならずとも見惚れる美しさを誇って
いた。
 無惨なまでの汚液による陵辱にも、まったく影響されない。

 その花の様なる唇が、躊躇いも無く放尿の後を留めた志貴の隆起に触れる。
 秋葉が近づく間にも勢いのある白濁液は迸り続け、秋葉の顔をさら染め上げ、
開きかけの唇の間にも飛び込んでいく。

 驚くほどの大量にして、粘性の濃い、固まりのような白濁液。
 顔に付着し、受け止めきれずに、垂れ落ちていく。
 腰から下が全て骨も肉も何も、その精のエキスに変じたが如き放出感と虚脱
感。
 何より圧倒的な快感。

 呆けた顔で秋葉はぺたんと座っている。
 虚ろな顔。
 ただそこに悦びの残滓と、体の火照りが見て取れる。
 尿水に塗れ、白濁液を散らされ。
 先の異臭を漂わせた姿をさらに汚された姿。
 それでなお、まったく魅力を損なう事の無い、秋葉の玲瓏なる姿。

 息を呑んで志貴は秋葉を見つめていた。
 無惨な筈なのに、その姿がいっそうに秋葉の美しさを際立たせている事に。
 太陽のように光り輝く美しさとはまた別の、月光の如き闇の中でも煌とする
輝き。
 清らかにして妖しい、取り込まれるような魅力。
 一日中眺めていても飽きる事の無い、愛する人の姿。
 
「兄さん……」

 秋葉の顔に理性が戻る。
 ゆっくりと瞳に光が戻る。
 一瞬にも満たない間、戸惑った不思議そうな表情になる。
 何がどうなっているのかがわからいかのように。
 そして、ああと気付いたように、秋葉は志貴の顔に目線を向けた。
 志貴と視線がぶつかり、絡み合う。

 月の雫のような少女が満ち足りた顔で自分を見ている。
 疑うべき何も無い愛情、それに満ち溢れた顔で自分を見つめている。
 喜び。
 こうしている事の、そして相手を目の前にしている、ただそれだけで湧き起こ
る強い歓喜。
 志貴の心を泣きそうな程の心の動きが渦巻く。
 自分の中にいる存在のあまりの強さ。
 あまりの輝き。

 秋葉、秋葉、秋葉。
 
「愛している。愛しているよ、秋葉」
「え、兄さん……」

 急に抱き締められ、秋葉は戸惑った顔をした。
 衝撃と反射的な喜び。
 そして、自分の姿に気がつく。
 尿と白濁液に塗れた姿。
 自分にとってそれは兄に染められた悦びの跡であるが……。
 躊躇。
 離れようかと一瞬体が動きかける。

 だが、止まった。
 まったくそんな事を気にしていない志貴を見て。
 よくはわからないが、自分を求めている志貴を感じて。
 秋葉も志貴の背に腕を回した。
 よりいっそう、幸せな顔をして。

「秋葉……」
「私も、私もです。兄さんを愛しています。誰よりも。
 ううん、兄さんを、兄さんだけを……」 

 抱擁。
 肌と肌の間にある、体液の滴り。
 しかしそんなものは問題とならない。
 互いを抱きしめている、抱きしめられているという事実だけで、陶酔に至っ
ている。
 背に回された腕の感触。
 唇。
 愛情に満ちた瞳。
 満ちてこぼれだす満足感。

 しばし時の止まった如く、志貴と秋葉は抱き合ったままだった。

 互いに過不足無く堪能し、同時にその抱擁は解かれた。
 何度も何度も形を変えて交わった先ほどの行為の後にも浮かばなかった、至
福の表情を互いに浮かべている。

「汚れちゃったな」
「兄さんもですね」
「まったくだ」

 しかし、秋葉は嫌悪の色も無く、肩から胸にかけての志貴から浴びせられた
残滓を両の掌で触れた。
 引き伸ばすように、擦りつけるように、体のラインに沿って下へと動かして
みせる。
 排泄物だと言う事を知らないかのように。
 むしろその匂いを擦りつけるような行動。

「兄さんがこのままでいろと言うなら、お望みのまま従いますけど……」

 思わせぶりに志貴を見る。
 志貴は、あえて無反応。ただ、次の言葉を待っている。

「秋葉を綺麗にして下さるのですよね?」

 誘うような、甘えるような声。
 志貴は瞬時に頷く。

「もちろん。体の隅々まで綺麗にしてあげるよ」
「嬉しいです」
「秋葉は?」

 今度は志貴が問うた。
 腹にこぼれた自分の体液を指で突付く。

「私も、兄さんの体を洗って差し上げます。
 どこもかしこも、一生懸命綺麗に致します」
「うん」

 まずは秋葉からだと言う志貴の言葉に、秋葉は少し頬染めて頷いた。
 ざっとお湯を掛けて、あらかたの汚れを流してしまう。
 そしてボディーソープを手に滴らせ、志貴が近づく。
 
 どこをどうするのか。
 洗い清めるだけなのか。
 それとも……?

 胸に伸びた兄の手に、秋葉はぴくりと反応した。
 今日はまだほとんど触れられていないところ。
 僅かな膨らみを探り、つんと出た突起を掌がかすめて行く。
 思わず声が出そうなほどの、感電したような刺激。
 けれど、秋葉はそのまま素直に身を委ねた。 
 黄色がかった尿液と、粘りのある精液が、ソープの泡立ちに取って代わって
いく。
 汚れが流されていき、清潔感ある泡がきらきらと光る。
 秋葉は満ち足りた溜息を洩らしながら、志貴の奉仕を受けていた。

「気持ちいい?」
「はい、とっても」

 芸術品を扱うように、ゆっくりと的確に志貴は秋葉の肌に手を滑らせていく。
 優しく、そして愛情に満ちた仕草、力の入れ方。
 そうしている事が至福である、喜びである。その事がはっきりとわかる態度。
 ただでさえ、志貴の手が肌を這うのは秋葉にはくすぐったい気持ち良さを与
えていた。それに、兄から奉仕されている喜びも加わっていた。
 けれど、その二つによる快美感にも増して、志貴の心を感じて無上の幸せを
秋葉は感じていた。

 腕から肩へ。
 背中から脇へ。
 二つの柔らかい膨らみを。
 腰から腿のラインを。
 縦横無尽に志貴の手が石鹸の泡を秋葉に塗りたくっていった。
 が、突然その手が軽快さを止めた。
 ちょうど後ろから、秋葉の胸の下辺りを両の腕でかき抱くような形。  

「綺麗にするの、もう少し後でもいいかな?」
「え? あ、はい」

 石鹸の泡、背に当たる胸板。
 それに別の接触が加わっていた。
 硬く、熱いもの。
 秋葉は、志貴に体を寄せた。
 背を完全に預けてしまう。

 志貴は胸に手を回したまま、秋葉の体を受け止める。
 秋葉の背とお尻がもぞもぞと動く。
 当たっているそれの感触を確かめているように。

「もう、兄さんたら」
「秋葉が悪いんだぞ、こんなに綺麗で、洗ってるだけで変な気分にさせるから」
「申し訳ありません。
 それはお詫びしないといけませんね。まずは……」

 後ろ手に秋葉の手が動いた。
 躊躇い無く、また大きく隆起したそれ、志貴のものに手を伸ばす。
 泡だった手が、ベッドでとは違った感触を志貴に伝える。

「うわ、なんだか、凄く気持ちいい」
「これでそんな事を仰っていると……」

 秋葉が、くるりと体を半回転させた。
 志貴の腕の中で向かい合いになる。
 それでも志貴のものを収めた手はそのまま。志貴のペニスに柔らかい快感を
伝えつづけていた。

 眼と眼とが合い、志貴は腕中の宝物を抱く手に力を加えた。
 石鹸の泡を僅かな境として、体が密着しあう。
 その薄膜は、むしろ触れ合う肌の感触を際立たせてくれていた。

「そう言えばさ、気づいている、秋葉?」
「何をですか?」
「さっき。秋葉があまりに凄くて出しちゃったけど、ずっと我慢してたんだ。
 秋葉だけ果てちゃって、俺が一回も射精しないで終わるのもいいかななんて
思ったんだけどね」
「そんな、訳のわからない事を……」
「なんでだろう。いつも俺ばかり好き放題しているからかな」

 手を止め、志貴は首をかしげた。

「そんな事を考えていたのですか、兄さんは。。
 まあ、どうして貫いて下さらないんだろうとは、少し不思議に思ってはいま
したけど」
「秋葉の中に入って、我慢できる訳ないからなあ。
 鉄の自制心で途中で止めようとしても、秋葉は離してくれないし」
「そんな事は、あり…あるかもしれませんけど。だいたい兄さんが、何もせず
に終われる筈がありません。何が鉄の自制心ですか」
「うん、反論できないな」
「ええ、こちらは何より正直です。今だって……」

 秋葉は言いながら、手の力を僅かに強める。
 まったく揺ぎ無い漲りが秋葉の握った手中で動く。

「だからさ」
「はい」

 それだけで、問い掛けと答えの会話が成立した。
 もう何度目かもわからない抱擁と愛撫。
 志貴がいったん秋葉の背後からの腕の輪を解く。
 秋葉の手が逆手になっていた志貴の屹立をぎゅっと強くしごき、離れる。
 秋葉が振り返る。
 さあ、どうぞと誘う微笑み。
 まだ泡だらけの中から見える白い肌が艶かしく志貴を惹きつける。
 志貴は頷き、秋葉の体に自分の体を重ねていった。

 溢れんばかりの熱意と共に。
 今日初めての挿入だからではなく、秋葉との情交自体が初めてのように。
 秋葉もまた、同じように志貴を迎えていた。

 馴染みの体、馴染みの肌。
 何度も体を重ねたが故の、分かり合った感覚はある。
 けれど、同時に別のものも二人は共有していたから。
 初めてのような感激。
 初めてのような互いを欲する心。

 それはそのままだったから。
 いや、ずっと大きくなっていたから。

  了
 















―――あとがき

 ええと、何人の方が最後までお付き合い下さったでしょうか。
 長いし、単に延々と寝台遊戯を繰り広げているだけだし。
 何より、かなり人を選ぶようなアレですし。
 風呂場のシーンが無ければ、まだかろうじてハートウォーミング風味で終わ
ったかもしれないのに。

 けっこう前からちょこちょこと書いていて、自サイトの百万HIT記念とし
て、仕上げてみました。
 構成とかもあまり留意せず、自分へのご褒美で好きに書いたようなものです
けど。
 秋葉は、何度書いても、何を書いても楽しいです。書きやすいし。
 最近はどうも同じような姿しか描けないので、もっと怖い秋葉とか、背筋を
きちんと伸ばしたお嬢様とか、いろいろと描ければと思います。
 いつか、満足がいくものが出来るといいのですが。

 これからもよろしくお願い致します。

 
  by しにを(2004/2/8)



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