陵辱夜

作:しにを

            




 愛し合う二人であれば、多少の逸脱行為も受け入れられるだろう。
 相手から思いも寄らぬ事を求められても、愛の営みとして許容できよう。
 痛みを伴う。羞恥を生じさせる。快感とは言えぬ感覚に浸らされる。
 乱暴に道具のように扱われ、ただ一方的に欲望を吐き出される。
 そんな行為であっても、それが愛する者からの行為であれば、強い悦びとな
る事もありえる。欲求に応える事自体が喜びにもなろう。
 しかし、それが望まぬ者からの行為であればどうか。
 まったく逆に、ただ手を握られただけでも嫌悪や苦痛を覚え、恥辱や絶望を
招くかもしれない。
 では、その混同の場合はどうか。本来ならば―――
 




 間桐桜にとって衛宮士郎は憧憬の対象だった。
 まっすぐであり、優しく、眩しく見える存在。
 士郎にとって桜は、妹の如く思っていた少女。
 身近な可愛い後輩であり、守るべき人だった。

 そんな二人の関係を知っている者が眼にしたら、それは異様と映っただろう。
 深夜の一室で繰り広げられている、その光景。
 その二人の姿。 

 桜を押し倒すようにして重なり合っている士郎の体。
 その体勢自体が尋常ではなかったが、士郎の様子は目を疑うものだった。
 何一つ身に纏っていない。
 服を脱ぎ去り、士郎は下着すら着けていない。
 股間には隆起した性器の異相。
 見ただけで分かる体の熱っぽさ。
 どういう状態かは一目瞭然だった。
 そして情欲を露わとしていて、隠そうともしていない。

 一方の桜の方は全裸ではなかった。
 まだ。
 そう、まだ。かろうじて。
 ある意味、裸であるよりも煽情的な姿となっていた。
 脱がされた服は、持ち主の手の届かぬ所に散らばっていた。
 その為、普段は見えぬ肌が露わとなっている。
 腕や背や、脚や腹。
 女性器を不躾な視線から守る下着、最後の薄い一枚はつけられていた。
 しかし、豊かな胸を彩る薄布は、ほとんど意味をなさなくなっていた。
 可憐な乳首が完全に見えるほどに捲り上げられている。
 自分自身ではなく、別な手によってなされた行為。
 当然、士郎である。正しく外すほどの余裕が無かったのか。
 絶望的な桜の抵抗故の、陥落の遅滞なのか。

 良く見れば、薄いレースがところどころ染みになっているのがわかる。
 待ちきれずに布ごと、口に含もうとしたのか。
 唾液を垂らしつつ舐め上げたのか。
 胸を露出してからも同じ行為は続けられたのだろう。
 白い透ける肌のところどころが、白っぽい唾液にてらてらと光っている。
 胸の隆起の頂点、薄ピンク色の部分もまた湿りを帯びていた。

 正気を取り戻して欲しい。
 そういう思いだろうか、桜は士郎に呼びかける。
 か細い声で「先輩」と呼ぶ。一度でなく何度も。
 しかし士郎はそれに気付いた様子すらもほとんど無い。
 確かに過度な乱暴を振るっている訳ではない。
 恫喝めいた言葉も叩きつけられてはいない。
 しかし桜を優に上回る力を持つ士郎が行動を抑圧するように被さっている。
 何より普段の様子とは豹変した態度で迫っている。
 それが桜にどれだけの恐怖を与えただろうか。
 裏切られたと萎縮し、泣きそうになっていただろうか。
 士郎が力づくで腕を掴み、体を押さえ込んでいないのは、ただ不要だったか
らかもしれない。
 多少の抵抗を桜が見せていても、士郎が情欲のままに振舞う事への枷とはな
らなかった。
 むしろ、いたいけな姿はよりいっそうの興奮を掻き立てたかもしれない。

 士郎の唇が桜の頬に触れる。
 ちろりと舌が触れると、桜は過敏に反応した。
 手が触れるのとは違う濡れた異物の感触。
 粘性のある虫が這ったような、生理的な悪寒を感じさせてもおかしくない。
 しかし、桜は逃れられない。士郎の手があった。
 いったん顔を上げ、桜の顔を自分へと向けさせた。唇が近づく。
 桜の眼が薄く閉じる。出来る唯一の抵抗、あるいは逃避。
 さすがに士郎も注視を強要させようとまではしなかった。
 どちらでも同じだと思っただけかもしれないが。
 マシュマロのように柔らかい桜の唇を奪った。
 士郎の顔に満足そうな表情が浮かぶ。

 存分に唇の感触を味わい、歯の隙間をこじ開けるように士郎の舌が桜の口に
侵入する。
 顔を背けようにも、依然として桜の顔は手で押えられていた。
 舌と一緒に生温かい唾液が注ぎ込まれても、桜としては受入れるしかない。
 喉が動く。吐き出す事は出来ず従い、嚥下した証。
 さらに自分の舌を舐られ根本までを弄られても、ただ身動きせずにそのまま
でいるしかない。
 ただ蹂躙され、士郎の舌と唾液とを否応無しに味わわされるだけ。

 ようやく士郎が顔を離し、唇は解放された。
 それでもまだ、未練がましく桜との間に唾液の糸が伸びていた。
 口を嬲られ息苦しかったのだろう。桜は大きく喘いだ。
 しかし、その無理からぬ肉体の動きは、士郎の次なる興味を引く羽目になっ
たようだった。
 呼吸によって、胸が揺れていた。
 僅かな上下の動きだったが、大きな胸がたわむ様は、男の情欲を刺激して止
まない。
 士郎の両の手が、桜の二つの乳房を急襲した。
 遠慮も無く、本能のままに動く。
 不躾な手の動きで、胸は大きく形を変えられていた。
 丸みを帯びた曲線が無残に歪められる。
 ぎゅっと握られ、押し付けられつつ横に縦にと動かされる。
 そんな胸への仕打ちに、桜の口は耐え難く開いた。
 しかし助けを呼ぶように発する声は掠れて意味をなさない。
 ただ、乱れた喘ぎとなって洩れるのみ。

 士郎と肉体でのつながりを持つ事、そうした関係になる事は、決して桜にと
って忌避すべき事ではなかった。
 むしろ喜ばしい事であっただろう。
 恋慕の想いを胸に秘していたのだ。
 二人の未来を想像をした事もあった。
 士郎に愛されている自分を夢見た事もある。
 もっと端的に、報われぬであろう自分を慰める為の糧として脳裏に描いた事
もある。
 唇を優しく合わせ。
 肌を晒して、視線を受けて。
 逞しい掌が胸の膨らみに触れて。
 そうしたひとつひとつが心の喜びであり、体の悦びとなっただろう。
 その想像は恥ずべき事ではない。
 ささやかなる慰め。
 それが現実のものとなった。
 今、士郎の唇を感じ、手を感じている。
 体の熱さを、匂いを感じている。
 桜は喜んでいるだろうか。
 通常ならば、それはYESだっただろう。
 ただ、それはあくまで合意の元で行われればこそ。
 一方的に、意志を踏みにじり、相手を省みず。それであればまったく意味は
異なってしまう。
 むしろ、強く強くマイナスのベクトルへと向かうだろう。
 裏切られ踏みにじられたのだとすれば、想いが深ければ深いほど。

 乳房の先に強い刺激を感じ、桜は声を出した。
 敏感な部分を噛まれれば、悲鳴じみた声があがるのもやむを得ないだろう。
 しかし、士郎はそれをどう解釈したのだろう。
 何度となく繰り返す。
 強く吸い、蕾のような乳首を歯で押し潰す。
 豊かな胸も同時に掴み、指を食い込ませている。
 柔らかく形を変える為に、痛みなど感じないように思えるが、それは間違い。
 神経の通っている部分を強く掴み、押し潰しているのだ。多少であれば快感
にもなろうが、男の手で好き放題にされて大丈夫な訳はない。
 意志によらぬ蹂躙であればなおの事。
 嫌悪と痛みがどれほど襲っているのだろうか。
 いやいやをするように桜は首を振り、綺麗な髪を乱れさせる。
 声をあげ、自分の窮じている状況を伝えようとする。
 無駄ではあっても。 

 ただ一枚、残されていた下着が脱がされる。
 ここまで体を好きにされ、桜の抵抗は弱々しくなっていた。
 もう、どれだけ泣こうとも、許しを乞おうとも無駄、そう諦めが体に満ちて
いたのかもしれない。
 もどかしく士郎は小さなショーツを桜から剥ぎ取っていく。
 柔らかそうな恥毛、合わせ目が盛り上がった裂け目が露わにされる。
 そうしながら、士郎は既に下着が濡れてると指摘する。
 さらに言葉で嬲り恥辱を与えようと言うのか。
 意に染まぬ行為であっても、体を嬲られ続ければ、男女の別無く体は性交の
準備を整えてしまう。それは体の機能であり、必ずしも意志にはよらない。
 好まなくともアルコールを取れば酔ってしまうように。
 しかし、その事実を指摘されれば、恥ずかしさを感じるのも確かだった。
 事実、桜は頬を赤くして羞恥に耐えていた。
 
 下半身を全て裸にされ、さらに桜は大きく脚を広げさせられた。
 女の力で抗おうとも、士郎の力には適う術は無い。
 濡れて光る谷間が全て晒される。
 何もかもを許せる恋人同士であれ、そんな処を間近に見られるのに平静では
いられない。
 視線を向けられ、本来はありえぬ視線の熱さを感じ。
 微かにかかる息に、触れられる以上の激しい刺激すら感じ。
 それでも、愛する人が望むから全てを見せるのだ。
 そうでなければ、ただそれは露出の苦痛でしかない。
 見られる事への泣き出しそうな恥ずかしさでしかない。

 さすがに、繊細な部分をいきなり無造作に指で貫いたり、かき回すような真
似はしない。
 そうして苦痛を与える事は士郎の本意ではないのか。
 あるいは、ソフトに刺激を与える事により、桜が反応する事の方が望ましい
のかもしれない。
 桜に女である事を否応なく認識させる、恥辱に身悶えさせる。
 そちらの方が好みであるのか。

 粘膜を士郎の指が這う。
 染み出る透明な液を絡ませながら。
 水のようでずっとねっとりと糸引く桜の蜜液に浸しながら。
 
 指で広げられる。
 恥ずかしい部分のさらに深奥までを覗かれる。
 それは羞恥すら超えて、肉体的な恐怖心すら起こさせたかもしれない。

 士郎の顔が密着するほど近づく。
 淫液にまみれた性器を見つめ、鼻をうごめかす。
 そんな恥ずかしい部分の匂いを嗅がれていると知って、桜の腰が動いた。
 身を捩り、逃れようとする。
 しかし、もちろん逃れられなどしない。
 視覚、嗅覚、あるいは聴覚をも満たし、さらに士郎は桜を貪り続ける。
 舌が這った。
 ぴちゃと粘質のある音が響いた。
 そして桜の悲鳴じみた声が響いた。
 自分でもよくわからない部分、間近に見る事は難しい秘処。
 そこを男の舌が這いまわり、音を立てて分泌液を啜っている。
 どれだけ気持ち悪く、どれだけ嫌悪が高まっているだろうか。
 いつしか、桜の声に濡れた響きが加わっていた。
 すすり泣くが如き声。
 それでもなお、士郎の舌は動きつづけていた。
 桜の下半身に顔を埋めるようにした格好が変わる。
 顔を上げると、士郎は桜の腰を掴んで引き上げた。
 桜の体が折れるように体勢を変える。
 下半身が上がり、上半身が体を支える形。
 自分の秘部が見えるような角度。
 舐められ、弄られている様が余さず見えてしまう。

 士郎の指が秘裂を押し広げるようにして挿入された。
 狭く、濡れていてもなお、容易には入らない。
 桜の体が苦痛を訴えるようにもがき動く。
 堪える表情。
 しかし頓着する事無く、士郎は欲情の行動に没頭していた。
 奥までまで指を入れて感触を味わっている。
 濡れて熱く、そして強く締め付けられる、文句のつけようの無い快感。
 指ですらこうである。ならば欲望の滾りを突き入れればどれだけ気持ちよい
だろうか、そう否応無く想起させる膣の様。
 さらに交合の感触を事前に味わうが如く、士郎は手を動かした。指を抜きか
け、爪が見えかける辺りで今度は深く挿入する。
 抽送を繰り替えす。
 ぎこちなく士郎の指を受け入れていた桜も何とか、順応しようとする。
 痛みであれ、苦しみであれ、人は馴染もうとする。
 その一定のリズムの動きが途絶えれば、むしろ異常と認識する。
 動きをぴたりと止めた士郎に、桜は安堵の表情を浮かべず、怪訝そうな顔を
向けた。それはまるで淫らな行為を中断されたのに不満を持ったようにも、見
えなくもない表情。
 それがまるで事実であるかのように、士郎は指摘した。
 無理に揶揄したり、貶めたりする言葉ではない。
 ただの事実として。
 桜がどれほど反応しているか、止められてどう体が反応しているかを。
 
 答えられずに桜が黙っていると、士郎はおもむろに体勢を変えた。
 猛りに猛っている強張りを見せつける。
 欲しいのかと問う。
 桜が言葉を発しないのを別に気にはしない。
 もとよりどう答えようとも、いいように解釈してしまうのだろう。
 さんざん指で弄りまわしていた桜の膣口へあてがう。
 柔らかく綻び濡れ光るのが、蠱惑するようにも見える。
 さすがに桜は無心ではいられず、そこを見つめていた。
 指などよりずっと大きな異物。それが我が身を汚すのを。
 先端が膣口に入り、角度を確かめる。
 そのまま士郎は桜の中へ挿入を開始した。
 強く、一気に。
 可憐な花弁を散らし、巻き込み。
 細い谷間を割らんばかりに押し開き。
 蹂躙の結果に満足そうな吐息を洩らす。
 
 ギシギシとベッドが悲鳴じみた物音を立てる。
 容赦無く士郎は抽送を続けていた。
 桜の体は引き摺られ、押され、士郎の動きに従うだけ。ただただ快楽の蜜壷
としての機能を果たすのみ。
 もはや抵抗も何も無い。
 士郎は、構わず腰を振る。あまりの快感に中断など思いも寄らぬ様子。
 桜の下半身に叩きつけるように繰り返す。

 士郎の息が乱れた。
 規則的かつ自在に強弱をつけていた腰の動きが、少しぎくしゃくとしたもの
になった。
 下半身全体が痺れるような快感に満たされているのだろう。
 その頂点、終局は近い。
 桜も抱かれながら士郎の変化を感じ取っているようだった。
 ここまで来れば、ようやく終わる。
 それだけが、桜にとっては救いであったろう。
 美しい肌や髪を、男の情欲の果てにどろどろに汚されるか。
 あるいは避妊も何も無く、ただ快楽のままに膣奥深く吐精されてしまうか。
 そのどちらにしろ、桜が臨むのかと言えば甚だしく疑問であったが。

 そして、士郎は桜を白く染め上げた。
 







 浴室。
 湯を張った湯船からは湯気が立っている。
 疲れや心労を解してくれそうだった。
 すぐにでも吐精により汚れた体を清めたいであろう。
 しかし、桜は座ったまま動かない。
 あるいは、長かった行為からようやく解放された喜びに浸っていたのかもし
れない。
 体中を好きにされ、勢いのままに深く貫かれたのだ。
 ずっと想っていた人からであっても。
 いや、それだからこそ、事が終わってからの余韻も大きいのかもしれない。
 放心状態にあるというのが正しいのかもしれない。
 男の匂いのする白濁液塗れのまま、桜は自分を抱きしめるようにじっとして
いた。

 ようやく我に返ったように、桜はお湯をかぶった。
 一度ならず、二度、三度と。
 全てを洗い流したいのだろう。
 触れた感触も、貫かれた跡も。
 記憶すらも。

 しかし、それは終わりではなかった。
 それで終わりとはならなかった。
 ゆっくりと、浴室の戸は開いた。
 その音に、桜は顔を向ける。
 驚きがあった。
 しかし、それだけではない。
 予期していたのだろうか。
 何かの色が、目に浮かんでいた。

 そこに陵辱者がいた。
 全裸のまま、士郎が立っていた。
 あれほどの射精をしていながら、その股間には先ほど以上に荒ぶった男根。
 それを見るだけで、士郎の意図は明白だった。

 桜の小さい声がこぼれる。「まだ…」とただ一言。
 その後には何が続いただろうか。
 まだ、許して貰えないんですか。
 まだ、満足していないのですか。
 まだ、先輩は私を犯すのですか。
 どうであっても、この先を正しく予期していたのではないだろうか。
 許可を求めるそぶりすら見せず、士郎は入ってきた。

 ああ、と桜は声を洩らした。
 
 そのまま事に及べば、まだ精神的には楽であったかもしれない。
 しかし、士郎が行ったのは違った行為だった。
 桜の体はソープの泡に包まれていた。
 腕も胸も腰も。
 その体を這い回るのは、士郎の手だった。
 性交の跡を留めた体をそのままにまた快楽の道具とするのではなく、いちど
洗わせる。
 汚れた体を殊更に清める事で、桜に恥辱を与えたかったのかもしれない。
 いや、単純に泡塗れで滑る桜の肌を楽しんでいただけかもしれない。
 胸を掴み力をかけられ柔肉がこぼれだす様を、お湯を流しながら太股を撫で
摩る感触を。
 ベッドの上とは違う濡れた体で泡と共に触れられて、桜は翻弄されていた。
 そんな様子を素直には出せず、堪えている。咽び泣くのを必死に堪える表情。
 それを知っているのかどうか、士郎の手は隅々まで走る。
 桜の秘部を探り、お湯とも違うぬるみの感触を指摘する。
 両手を広げて全身で抱きしめる。
 洗うという動作を伴いつつ、存分に桜の体を味わい堪能していた。

 ようやく士郎の手が引っ込む。
 しかし一通り体を弄られたことで桜は解放された訳ではなかった。
 行為に返してのお返し。
 おずおずとボディソープを手に垂らし泡立てつつ胸に塗りたくっていく。
 座って促す声に、桜は士郎の背に抱きついた。
 胸が潰れる。まっすぐに士郎の背中を押しつつも滑る。
 そのまま上下に桜は動いた。
 押し付けられた胸は圧迫による摩擦感を、泡によって減じさせつつ、士郎の
体を擦り上げていく。
 両の手も、何もせず休ませては貰えない。
 士郎の胸を撫でるように擦り、より硬く大きくなった股間のものにも触れさ
せられる。
 泡塗れにした両手が士郎のペニスを包むようにして汚れを落していく。
 幹を擦り上げ、亀頭やくびれの部分は指先で柔らかく撫で摩る。
 袋を掌で包むようにして二つの睾丸を揉み洗う。
 
 多大な快感を伴う奉仕をしばし堪能した後、士郎は桜の名前を呼んだ。
 桜は、士郎にお湯を掛けているところだった。
 丁寧に、泡を洗い流す作業中。その手を止めて、桜は士郎と目を合わせた。
 士郎は座ったまま桜と向き合い、僅かに視線を下に向けた。 
 もう一度桜の名前を口にした。名前だけで、他に指示すらない。 
 それだけで察しろと云わんばかりの様子。

 ペニスだけが天を向いている。
 意図は明白だった。
 桜は士郎を跨ぐようにして立った。
 頬に羞恥の色。
 下から全裸の姿を眺められているのだから、それも当然だろう。
 すんなりとした脚、濡れて肌に貼り付く恥毛、赤くなった襞。
 見上げる事により、さらに重量感を感じさせる乳房。
 どこに対してであれ、視線を感じれば平静ではいられないだろう。

 そして、桜の恥辱は視姦で終わる訳ではない。
 これからが始まりだった。
 諦観を隠しているのだろうか。
 ゆっくりと、しかし無駄に迷う事無く桜は士郎のペニスに触れた。
 指で反り返りを抑えるように向きを固定する。
 そこを目掛けて腰を下ろしていく。
 士郎が命じたのはその行為。
 挿入せよと。
 受身ではなく、自ら男のものを受け入れろと。
 ペニスの先が粘膜に触れる。
 先が潜っていく。
 新たに赤黒く張りつめた亀頭を濡らしていく。
 腰が沈むにつれてペニスが呑まれる。
 深く深く自ら桜は貫いていく。
 ぶるぶると小さく体が震えていた。
 さらに重心を落とし、これ以上は無理と言う処まで深く沈めた。

 体の中心を自ら貫き、力尽きて崩れてしまいそう。
 しかし、そんな桜の様子に斟酌せず、士郎は次を望んでいる。
 言葉こそないが、それを察して桜はのろのろと動き出す。
 貫かれ、押し広げられた膣口。
 全てを埋めきっている士郎の強張り。
 それが動き始め、今度は離れようとする。
 桜が腰を上げている。
 結合は容易に解けず、腺液を潤滑油としてようやくずるずると動いているよ
うだった。
 ただ、それが限りない快感を士郎に与える。
 しばらく、士郎は桜に身を委ね、一方的な奉仕を受けていた。
 しかし、それでも足らなかったのか。
 桜の腰を掴むと上下に動かし始めた。さらに動きの加速を促すように。
 堪らず桜の口から悲鳴が洩れる。
 動きに途切れがちになりながら、言葉にならない声を断続的に吐き出す。
 それは、士郎が桜の中に精を迸らせるまで続いた。
 士郎の手がぐいと桜を引き寄せた。
 あまりに強く深い一撃に桜はうめき、体を仰け反らせた。
 構わずに桜の狭道の奥へと、突き当たるものの感触を感じつつ、士郎は精を
放った。
 先ほどの交わり以上の吐精の勢い。
 桜の膣内で士郎の肉棒が跳ね回る。 
 中まで汚された事を感じたのだろう、桜の動きが止まる。
 士郎もそれ以上は奉仕を強要せず、絶頂の余韻に浸ように止まっていた。息
のみが荒い。
 桜の眼は虚ろ、死んだようにぐたりとなった無残この上ない姿。

 秒針が幾らか動き、それからやっと桜は瞳に光を戻した。僅かに。
 先輩、先輩……、呟きを洩らす。
 この期に及んで、救いを求める声ではあるまい。
 あるいは、それは今の士郎に対してではなく、憧憬の中の士郎に対してだっ
たかもしれない。
 士郎が身を動かし、結合を解く。
 桜はのろのろと立ち上がり、士郎から離れようとする。
 まだ体が痺れているようにぎこちない。
 その股間から垂れや散るもの。
 ぽたぽたと体からこぼれるお湯に、白濁の粘液が混じっていた。
 士郎の精液と桜自身の分泌した愛液。
 欲望が桜の中に吐き出された証。
 下にこぼれ流れていく。それを桜の眼が追っていた。
 どんな感慨が、どんな悲嘆があっただろうか。
 
 






 お湯が流れる音。
 二人で入るには、やや手狭となる湯船。
 しかし、そこに士郎と桜は二人で入っていた。
 士郎に背を向け、しかし腕の輪の中に桜はいた。
 必要以上に密着している。
 いや、させられているのか。
 殊更に動きは無いが、否応無しに桜の腕や横腹、腿や腰が士郎に触れる。
 その密着を逃れる術が無い。
 そして、桜は自分の後ろに触れるものを感じていた。
 漲ったモノ。
 今更ではある。
 この夜の間に桜に触れ、抉り、突き刺さった凶悪な器官。
 それが、硬直している。
 つまりは、まだ性交可能であると強く主張している。
 過度には押し付けられていないが、触れている。離れない。
 そして、とうとう士郎が動いた。
 胸を手が弄る。
 より密着度が増す。
 湯船で火照った肌がさらに熱を帯びさせられる。
 始まり。さらなる何かの始まりを告げている。

 まただ。
 まだ終わらないのだ。
 ここでだろうか。
 それとも、別の部屋、別の寝台へ移るのだろうか。
 桜には分からない。

 ともあれ、続く。
 まだ朝は来ない。
 悪夢は覚めない。
 夜は、陵辱の夜は……、まだ終わらない。


 











―――あとがき

 終わらないので、ENDマークは外してみました。 
 士郎酷いや、というお話のようですが……、元より陵辱系の話など書けない
身ですので。
 やたらと「だろう」とか「しれない」とかが多用されていて、なおかつ妙に
語り手による主観的判断が多い文章。直接的な台詞がない。……てな辺りに着
目頂けると、ありがたいなあと思います。
 もっとも、完成前の書き掛けを見て頂いた方からは、仕掛けが見え透いてい
るというコメントを頂いたりしていますが。
 別に、文字通りに陵辱モノとして読んで頂いても、それはそれで全然構わな
いです。

 お読み頂きありがとうございました。
 いろんな意味で、不快になられた方はすみませんです。

 BY しにを(2005/8/1)


二次創作頁へ TOPへ