お風呂の滴り
作:しにを
仁礼栖香という少女は、綺麗な指をしている。
ことさらに意識してまじまじとは見つめたりはしなくても、ふとした折々に
そう感じる。
何かをノートに書き記している、まだ慣れたとは言い難いけれど一生懸命に
料理を作っている、外で手をつないで歩いている、その他のいろいろな時に。
二人でいる時にふと視線を向けたりすると、細く白いすんなりした指に、可
愛い小さな爪に、その動く様に、惹きつけられる事がある。
栖香の指は、本当に綺麗だ。
その手が、栖香の指が、僕に触れていた。
綺麗な手が、相応しからざるものに触れている。
僕の、男性のものに。
洗う為ではあるのだけど、ためらい無く触れ、握り、擦りたてている。
そんな事をさせるのが何かに対する冒涜に思えてくる。
でも、そんな事をされて、さらに僕のものは硬く熱くなっていった。
本当に、まずいほどに。
接触の感触もそうだけど、栖香の手が触れているという事実、その光景だけ
でも、興奮を誘うには十分すぎるのだから。
そして……。
もともとは僕が風呂に入っていたら、お背中を流しますと栖香が言ってきた
のが始まりだった。断わる理由は微塵も無く、僕はお願いする事にした。
背中を流すだけならば、別に栖香まで服を脱ぐ必要はないのだけど、戸が開
いて現れたのは、一糸纏わぬ栖香の姿だった。
察するに、脱衣場から風呂場への移動の過程でつい当たり前のように服を脱
いでしまったのだろう。予想外の姿にちょっと驚いてしまったけど、次の瞬間
には栖香の肢体が描く魅惑的なラインや白い肌に見惚れてしまっていた。
栖香も一緒にお風呂に入ってくれるんだね、そう言うと、彼女の顔に疑問符
が浮かんで、次いで何かに気づいたはっとした顔に変わり、そこへ逡巡の色が
一瞬浮かびかけて、最後に少し恥ずかしそうな顔をして頷いてくれた。
彼女の心中でどんな葛藤があったのか丸わかりだった。
「ええと、その……、せっかくだからご一緒します」
「う、うん」
そのまま回れ右はしないだろうと思っていたものの、あんな可愛らしい表情
で頷かれると、こちらも少しばかりドキドキとしてしまう。
一緒にお風呂というのは初めてではないけれど、誘ってもそうそう毎回は提
案に対して同意しては貰えないので、珍しいと言えば珍しい。嫌がっているの
ではなく、恥ずかしすぎるらしい。なまじ寝室での二人の行為がああだから、
素になってしまう日常の間で裸で二人でいるのが恥ずかしいという理屈で、頷
けるような頷けないような。確かに、痴態でドロドロになったのを洗おうとい
う時にはダメだけど、たまにはお風呂でしたいなあという要求に対してはわり
あい賛同得られやすい気はする。
それなら難易度が高い方は避ければ良さそうなものだが、栖香が困った顔を
してからやっぱり恥ずかしさが勝って、ごめんなさいと言うのが可愛いので、
断わられるの承知でわざと誘ったりしてしまう。栖香には言えないけど。
「新婚さんみたいだね」
何となく口にすると、栖香が真っ赤になった。
他愛の無い……訳ではなく、現実味があるだけに、けっこうな効果があった
のだろう。もじもじとする栖香の反応を見ていると、こちらも何だか気恥ずか
しくなる。
気恥ずかしい雰囲気の中、栖香はこちらに向けていた視線を逸らしてしまい
まず手早く自分の体を洗って、湯船に入ってしまった。
逃げたな。
いつもであればもっと丹念に体を清めている。
元々、香水などつけなくてもどこか甘やかな香りがするのだけど、入念に身
を清める事であの清潔感ある匂いは生み出されるのだろう。
とりあえずこちらとしても都合が良い。頬の照りが取れるまで大人しくして
いよう。背中を洗って貰う前に、手足や前をタオルで擦る。何となく栖香の視
線が向けられているような気がするが、多分正解だろう。そうして湯船に背を
向けて体を洗っている間に、栖香は湯船から出て、そっと背後に立った。
「お背中をお流しします」
事務的に言っているようなのが妙に可愛い。
動揺を隠す時の心の鎧みたいなもの。
美綺あたりであればこんな時、「お背中お流ししますね、あなた」とか色っ
ぽい声を出して反撃しそうな気もするんだが。
「お願いするよ」
はい、という声と共に栖香の手が触れた。
丁寧にしっかりと、それでいて無用に強くして痛みなど与えないように、洗
い始める。背中とは言っているが、それだけでなく周辺も対象としている。
何とも気持ち良い。しかし、これが間違いだった。
どうも後ろからというのが悪いのだろう。当然だけど背後の栖香の姿が見え
ないから、手だけが後ろから伸びで胸に触れるのが妙に意識させられる。思い
がけず近くから声がしたりするのもドキリとしてしまう。
時折何もつけていない胸の膨らみが触れるのなんかは、わざと意識してやっ
ているではないかと思えてくる。柔らかさだけでなくて、先端の突起の感触ま
でが伝わってきたりするし。
そんな時に同時に耳の近くで小さく呼気の音がしたりすると、妙な気分が増
幅されていく。
そんな僕の様子に気づいているのかいないのか、背中については充分に洗え
たと判断したのか、栖香の手が次の目標へと移った。
ここは思いも寄らなかった場所。ためらいなく股間に手が潜る。
止める間もなく、縮こまっている竿やら袋やらといった部分が栖香に捕らえ
られてしまった。
「ちょっと待て。そこはいい。自分で出来る」
「ついでです。動かないで下さい」
ついでなのか、そこは。
反論しようとしたが、気がつくと栖香の口調が委員長モードになっている。
はいと返事させられてしまう口調。ちょっと逆らえいがたい声の響き。
これは従うしかないのかな。別に嫌なわけでは決して無いし。
おとなしく洗われるに任せた。任せたのだけど、これはわざとだろうか。こ
の動き、何ともいやらしいのだけど。愛撫としか思えない。
自然とというか、当然の肉体の反応として、体を洗って貰っていながら、そ
こがむくむくと大きくなっていく。存在感をぐんと増していく我が分身が恥ず
かしい。栖香は何事も無いように袋や竿を洗っている。むしろ洗いやすくなっ
て良いとか思っていそう。
何とか静まらないかなあと、今に限らず大人しくさせたい場面では決して言
う事をきかないその器官を見下ろすが、もちろんそのまま。そうしている間に
も、柔らかい手の感触も止まる事無くこちらに存在をアピールし続けている。
くすりと小さい笑い声が聞こえた。
さすがにこちらの苦境を察したのだろう。文字通り手に取るように。
と、少し手の動きが変わった。そっとなだめてくれる方向ではなくて、その
逆方向へと。
太ももの辺りをタオルで擦ったり、敏感な部分は指で直接ソープを塗りこめ
たりと、やっている行為には違いはない筈なのに、直前までとどこか違う。行
為は同じだが目的が少し変わったかの様な。端的に言えば「愛撫みたいな」の
「みたいな」の部分を取り除くか、薄く薄くしてしまった感じ。
くびれにそって指を何度も這わせて強く擦ったり、先端をぐりぐりと突つい
たりの直球勝負ではないが、それでいて要所要所のストライクになる部分を攻
められている。強い刺激ではなくても、やんわりと気持ちよさが募ってくる様
な、そんな柔らかい攻め方。
馴染みのあるやり方ではある。愛し合っている時に栖香が口や手で、はたま
た括約筋の動きなどで僕にしてくれる事に近しいものがある。単純にこうすれ
ば良いという動きをただ繰り返すのではなく、その都度の様子を感じ取りなが
ら栖香は僕を優しく攻める。あるいは奉仕してくれる。触れている部分の動き
や熱、声や体の反応などから判断して、さらに巧みな動きに変わっていくのが
絶妙極まりない。
栖香が何の経験の無いところからここに到ったと知らなければ、相当な経験
を積んだ熟達の淫技の使い手だとしか思えない。ただ、これは僕だけに向けら
れての行為であって、他の誰かに対しては応用は効かなかったりはする。
ともかく、今、ベッドの上でなく風呂場でされているのもそれだった。洗う
という行為に紛れさせながらも、こちらの反応を掴みながら、手が動き続けて
いる。
本人から激しく異論が出そうだけど、栖香は苛められるのが好きだから、こ
ちらから攻めるのが多いような気はするけど、その逆というのもけっこうある
はある。ねっとりと唾液まみれにさせられて、女の子のように悲鳴じみた声を
上げてしまった事など何回あっただろう。数え切れないくらいある。
逃げても許されない刺激に身を捩りながら、なんでこんなに栖香の責めは凄
いのだろうと頭の片隅で思ったり。実際に二人とも疲れ果てて抱き合って寝て
いる時に疑問を口にした事もあった。
それには、「先生の真似をしているだけです」とあっさりと答えられた。納
得いかない顔をしたらしく、「先生が私の乳首をいやらしく攻め立てて、それ
だけで感じて、感じすぎてしまって、はしたない状態にさせられるのと同じよ
うにしたんです」と補足された。それでもまだ納得できないのだけど。
僕の場合は、栖香を可愛がってあられもない声をあげさせるのが大好きなの
だけど、栖香にもそんなところがあるのだろうか。
などとのんびりと考えていられる状態ではなく、だんだんとのっぴきならな
い段階へと押し上げられていく。
これは、ちょっとまずい。
びくんと腰が動く。
触れている二本の腕の感触すら、こんな時には官能的な刺激になっている。
「ちょっと栖香、ほんとに、それくらいで」
しかし、逆効果。
その悲鳴じみた声に、狼が羊の皮を脱ぎ捨てた。
愛撫っぽくもある洗う行為が、洗うのを装った愛撫になり、今や、ソープを
使った愛撫に進化していた。
ソープ混じりのお湯と、先端からこぼれていたものとが混ざり合っている。
栖香の指はただ触れるよりも摩擦力としては低下していたのかもしれないけ
れど、泡を伴って滑るような動きは圧倒的だった。張り詰めた亀頭を親指がな
ぞり、他の白い指が幹を握っていたけれど、それがぬるんと動いた。
雁首を擦り、裏の筋を擦り、鈴口の回りに刺激を与えた。
追い詰められ、もはや逃れられない。
「待て、待て、待て。待てったら……あああ」
最後は、悲鳴というより、諦観とか脱力の嘆息だった。
あっけなく陥落させられた。
手コキによって最後までイカされてしまったと言うよりも、それ以前の愛撫
の段階でこらえ性もなく高まってしまい暴発した感じ。
射出の勢いが驚くほど猛々しいのが、非常に恥ずかしい。
栖香も恐らくはここまで意図しての行為ではなかっただろう。少なくとも最
初はそんな気持ちは微塵もなかった筈。
純粋に、最初は僕の体を洗ってくれていただけで、その中で不躾に頭をもた
げたものを目にしたから、悪戯っぽい感情を抱いたのだろう。逆の立場だとす
れば、僕もついつい感じ始めて胸の先がツンとしてきたり、股を閉じてモジモ
ジとしている栖香に気づいて、をそのまま見逃したりはしない。絶対に反応を
楽しむに決まっている。
しかし、いきなり臨界突破してしまうのは予想外だっただろう。
事実、手のひらに脈動を伝わり白濁液が飛び出した時、栖香の口からも驚き
の声が洩れていた。
そして呆然としながらも、いやあるいは呆然として思考が止まったからこそ
か、栖香の手だけはそのまま自律的に動いていた。先ほどまでよりも、ある意
味スムーズに。手が今の状況にふさわしい馴染んだ動きを選んだかのように。
射精の瞬間には、握るような形のまま止まっていた手が、幹にそって動いて
いた。根本のほうから先端へと。柔らかくしごき、やんわりと搾るように。
敏感になった性器を刺激しすぎる事無く、絶頂を得て鎮まりいく快感の余波
を引き伸ばし、呼び覚ます、そんな後戯。
口の中で放った時に唇と舌であやしてくれたり、交わって体の深奥へ注ぎ込
んだ際に強すぎず弱すぎず、絶妙に栖香は締め付けてくれる。それと同じで、
何度となく繰り返して、条件反射のように勝手に手が動いているようだった。
雁首のあたりに指が触れ、びくんとペニスが動いた。くびれに対して促すよ
うな指による摩擦。一気に空にするほど白濁液が飛び出したのに、心地よさの
中のスパイスのような刺激で、どこかに残っていたものが先端からこぼれ落ち
てきた。
気持ちよかった。そうと思いつつ、我に返る。
そういうつもりでいた訳ではないのだし。栖香の手も、快楽の道具たる動き
を止めた。二人とも固まってしまった。沈黙のままで。
僕も栖香もその飛滴の弾けた後を見ていた。
何ともいえないやるせなさ。
栖香がどう思ったのかはわからない。
もしかしたらちらりとでも、もったいないとか感じたかもしれない。
こうしていてもと思って、黙って洗面器からお湯をかけた。
排水溝へと石鹸の泡とタンパク質を多分に含んだ粘液が流れていく。
沈黙の中、消えていく水音だけが聞こえる。
「……あの、司さん」
「情けないな」
「え、ええと?」
「自分が情けない。
いかに栖香にあんな事をされたとは言っても、こんなにあっけなく。
少しばかり悪戯されただけで、堪えきれなくなって暴発するなんてさ」
必ずしも嘘偽りではない。全てではないにしても。
確かに心にあった情けなさは、声にも現れていた。
だから栖香も僕の言葉を信じた。
「そ、そんな事はありません」
「でもさ……」
「すみません、私が悪いんです、つい、熱が入ってしまって」
「そうかな」
「そうです」
思った通りに会話が進んでいく。
申し訳なさそうな顔の栖香。言葉だけでなく罪悪感を感じているのだろう。
こちらが恥をかかされたと激昂して乱暴な言葉で責め立てでもしたら、また
違った流れになったかもしれないが、自分の行なった事に対しては、過度に責
任を感じるのが仁礼栖香という少女だった。
さてと……。
ふいに黙った僕に、栖香が心配するような、申し訳なさそうな顔をする。
「ごめんなさい、私…」
「いや、謝らなくてもいいよ」
「でも」
「本当に、謝らなくていいから」
納得はしていない様子ながら、被害者たるこちらの言葉にとりあえず栖香は
言葉を止めた。あくまで、とりあえず。これで終わりにしようとは思っていな
い顔。
それを見てから、さりげない様子で言葉を口にした。
「謝るんでなくてね、そうだなあ……、もしも栖香がすまないと思うのなら、
別な事をして貰おうかな」
「別な事と言っても、何をしたらいいのか」
「ああ、それなら考えがある。簡単だよ、申し訳ない事をしてしまったという
のであれば、それを逆にすればいい」
「逆に?」
「目には目を、歯には歯をと言うと、ちょっと物騒だな。
つまり、僕が恥ずかしい思いをしたのなら、栖香も同じくらい恥ずかしい目
にあえば良い。それでおあいこだろ?」
ごくごく当たり前のように言いながら同意を促すと、戸惑いつつも栖香は頷
く。いや、頷かざるを得ない。何ともおかしな事を言われているのだけど。
この辺りの変な生真面目さが栖香の可愛いところだと思う。
同時に僕とか美綺とかに時につけ入れられてしまうウィークポイントでもあ
るのだけど。ともあれ、同意は得られた。
しかし、栖香を恥ずかしい目に合わせちゃうぞ宣言はしたものの、では何を
したものかと少々迷う。実を言うと具体的な要求あっての言葉ではなかった。
どうしようかな。意外と難しいといえば難しい。
一年という間ではあったが、教師という立場だったし。
いや、それ言うと教師と教え子でありながら淫靡でアンモラルな行為に惑溺
していたのはどうなのかという疑問が浮かんでくるが。
何より倫理観云々はちょっと横に置くとしても、最愛の少女に酷い思いなん
かさせたくない。まっとうな保護意識は身にきちんと存在している。
それに急に羞恥行為をと言っても、浮かんでこないのが普通だろう。
こんな事もあろうかと、予めその手の道具とかを用意している訳もなし。
既に裸だから、脱衣系の羞恥プレイも駄目だし。
いったんお風呂から上がってとか言い出したら、今だからこその雰囲気は消
えてしまって、栖香も冷静になってしまうかもしれない。やっぱりなしとは言
わないけれど、従う行為の範囲は狭められる可能性がある。やっぱり今ここで
何とかしないといけないな。
裸であるのを活かして、ここで栖香に自慰に耽って貰うなんていうのもあり
だとは思う。まずは恥ずかしい部分を自分の手で広げて見せて、奥の奥まで視
線に晒された後で、既に見られただけで濡れ始めている事を指摘されつつ、指
を動かし始める。最頬を赤く染め、途中何度も許しを請う目を向けて、しかし
許されず、諦めと共にためらうように手をと動かして、いつしか見られている
という事が快感に変換されて、指だけでなく蜜液が滴り落ちて、いつしか高ま
りを抑えきれずに……などというのは、凄く良いと思う。
結局、僕の視線を受けながら、真っ赤に充血した部分を指で押し捻り、トロ
トロになった様を見せつけるようにして「エッチな栖香の姿を見て…くださ…
あッ、ああああッッッ!!!」と歓喜を極めてしまう栖香の艶姿。
そんないやらしい声を聞かされ、姿を見せつけられると、たまらず栖香の体
を……、となってしまいそうだな。それだと今回の主旨とは少し外れてしまう。
やはり新しい事、今までしていなくてまだ耐性の無い事がいい。似たような
事は何度もしているし。
では何だろう。
お尻まで捧げられてしまっている関係だとなかなか難しいものだな。形の良
い白いお尻を突き出すようにして、後穴を自ら手で押し広げる姿まで見ている
と、それ以上の行為といってもなかなか浮かばない。
昔は、僕の部屋のベッドで自慰に耽っているのを実は見られていたと知った
だけで、泣き出しそうになっていたのに。
二回目に遭遇した時なんかは栖香は……。
ああ、そうだ。あれにしよう。
「決まったよ」
「何をするんですか」
「僕は何もしないよ。するのは栖香」
「え?」
怪訝そうな顔をこちらに向ける。
ここであえて何気なく答えるように意識をした。
「難しい事じゃないよ。日常生活で当たり前にする事だから」
「だから、何を」
いったん黙って栖香の顔を見つめる。
それから視線をゆっくりと下げていく。
少し赤みをさしてなお白い肌にあって、対照的に薄く翳っている秘めやかな
部分。
そこに視線を感じて、栖香がもじもじとする。
「僕が排出行為で恥ずかしい思いをしたのだから、同じ事を栖香にもして貰う
のがおあいこだとは思わないかな」
「排出? ……って、まさか、まさか」
言いかけて、栖香の顔が赤みが差すのと青ざめるのを同時と言うか凄い勢い
で交互にと変化を繰り返した。
さすがに聡い娘だけあって答えを導き出しているが、同時にそれを否定しよ
うとして混乱しているように見える。
これは手助けしてやらねばならない。
僕の口から端的に、間違いようが無い答えを述べた。
「おしっこ」
あ、やっぱりという顔。
顔色は赤に固定された。
「い、嫌、嫌です。そんなの恥ずかしいです」
「恥ずかしい。いいじゃないか。だからこそだよ」
「でも、そんな変態じみた」
「変態じみたか。そうだね、その通りだ。
確かに変質的で異常で変態的行為なのかもしれない。
けれど、栖香、考えてみて欲しい。
いくら抗いがたいほど可愛いい少女から懇願されたとは言ってもだよ、教職
に就き、寮内においては管理監督すべき立場の者が、自分の教え子の肛門を嬉
々として弄りまくって拡張に励んだ挙句、最後にはそんなところを使って交わ
ってしまって、幾度と無く禁断の悦楽を貪ってきたんだ。一度でも言語道断な
のに、何度も何度も。他の生徒も同じ棟にいるというのに、耽溺して繰り返し
てしまった。何の反省も無く、快楽の虜となってね。
それは、普通の倫理感を持つ者からすれば唾棄すべき行為だと思う。変態行
為だとどれだけ悪し様に呼ばれたとしても、甘受しなくてはならない。確かに
弁護の余地のない背徳の沙汰なんだから。
普通の行為だとして許しがたいけど、さらにアブノーマルな行為、本来は違
う用途の器官を用いての淫行を教え込んできたとなると、さらに非道だと思わ
れるだろうね。
でも、それを今、僕は恥じたりはしない。後悔もしていない。
許されない異端であっても、変態であっても、愛しあった事まで間違いだと
は思っていないから。他の人間がどうであっも、僕達二人の間では、それは正
しい事だった。否定するべきではなかった。そうだろう、栖香?」
「うう」
我ながら詭弁的な物言いだけど、こう言われると彼女は弱い。そもそもアブ
ノーマルたる肛交を最初に提案したのは僕ではなくて栖香なのだし。
それにしても、思い起こすと眩暈がしそうな数ヶ月間だ。
栖香も反射的に当時のあれこれを思い出しているのだろう、きっと。
尻穴奴隷にしてくれと懇願した日の事は絶対に思い出している。
そこら辺をこちらから突付かれると、防戦に回らざるを得ない筈。
だいたいが何だかんだ言って、押しにはめっぽう弱いのだから。
誰かがやらねばならないとか、負い目に対しては何らかの対価で償わねばな
らないとか、そんなシチュエーションには抗えない性質。
強い責任感を持っている事は、栖香の長所を生成する根源ではあるのだけれ
ど、この場合は大きな弱点だろう。
「わ、わかりました」
で、結局は無理難題にも頷いてしまうと。
やったあ。
そしていったん決めてしまうと、内容はともあれやり遂げようという方向へ
気持ちが向かうのだな。
本人の好悪とかの要素は優先度を下げてしまって。
悪法も法なりとあえて毒杯仰いでしまうタイプ。
本当に、これは栖香の魅力ではあるのだけど。
決断をすると、そこから引き延ばし工作には掛からなかった。
そろそろと足が動く。
もう少し世の中にスレてもいいのだろうなあ、とか教師らしく考えつつも、
教師らしくないシチュエーションに胸を躍らせる。
椅子に座った栖香を正面から見つめる。
背筋は伸ばして、姿勢は良い。顔もこちらを向いている。
幾分逡巡していたが、閉ざしていた股が開く。
視線を受けられる角度に開いている。
潔いといえば潔い。白い太股の内側が見える。
黒い陰りはお湯で濡れてはりついている。もともと細く薄く彩っている感じ
だから、こうなると隠す役割を大きく減じてしまう。
そして薄紅の谷間。
栖香のいちばん恥ずかしい部分。いやらしくて、可愛い、秘められた場所。
見るのも触れるのも舐めるのも、何度と無くしているというのに、一向に飽
きる気配すら見えない魅惑の秘処。
そこから、排泄行為をする。
何だか不思議だ。
人という動物の生理的な行為として何も不思議では無いのだけど、こんな愛
らしく美しい少女が、他人の視線を受けつつ実行しようとしているのが信じら
れない。
さあ、いよいよ。
しかしじっと見守っていたが、なかなかそこからの進展は無い。
無情に時間が過ぎていく。
「手伝おうか」
「いりません」
恥じらいの色と、困ったような表情。
それでも許しを求める顔を向けたりしないのが、何とも栖香らしかった。
嫌々やらされているという様子も見せず、むしろ困難に立ち向かおうという
気概が見て取れる。そこには気高い悲壮さすら感じる。
それでいて、しようという行為が、足を広げて丸見えにしている女性器を、
ぷるぷると震わせている事だというギャップが何とも言えない。
何とも被虐的で、困った事に可愛らしい。何よりとんでもなくいやらしい。
さらに時間が過ぎる。
栖香にしてみれば、どれほど長時間に思えているだろう。
でも、心の内にある何らかの抑制は外れない。
ずっと待っててもいいのだけど、それも却って酷に思える。
少し迷って、結局は待ちきれずに手を伸ばしてしまう。
じっと一部始終を見守っていても良かったけれど、触れたいという衝動を抑
えきれなかった。
「ダメ、ダメです、司さん、そんなところ触らないで」
「いいから」
何がいいのか。
力は入れているけど、無意識に止める動きもしているのだろうか。
僅かに開いている陰唇の合わせから指を差し入れると、少し震えのようなも
のが伝わった。
熱い。充血して熱を持っているのがわかる。
トロトロとした粘膜。内からこぼれたもの。
恥ずかしいという気持ちは偽らざるものだろうけど、同時に興奮をして、そ
してここをこんなにしている。
膣口を少し悪戯してみる。触れるだけでビクンとなるのを楽しんで、それか
らさらに上のほうへと指先を這わせる。
何度となく見て、触れている場所だけれど、手探りだけだと今ひとつ分かり
にくい。柔らかい肉で複雑に作られた部分の、小さな穴が見つからない。
だいたいの辺りをつけて弄ると、栖香が小さく声を洩らす。
ここだな。
手で止めようとするのを開いた手で制する。
やわやわと周辺を揉むように指の腹で刺激する。
震えが大きくなった。
「ダメ、だ…めぇぇぇ」
声が掠れている。
けれど、そこに混じっている間違いの無い嬌声の響き。
嫌がってもいるのだろうけれど、それだけではない。
むしろ、今では逆転すらしているだろうか。
粘り気を持った分泌液がいつしか指先から垂れるほどになっている。
ぴくと動いた。
さっきまでと違う。
切迫の色。
わかった。
どういう状態か、目に見えるようにすら感じられた。
決壊が近い。いや、今まさに。
一瞬の栖香の体の強張り、そして弛緩。
僅かに粘膜から、小さな口から浮いていた指先に届いた。
温かい迸りが触れた。
濡らされた手を、さっと離す。
それで邪魔物が消えたように、栖香の中から零れる液体。
いやいや、零れるなんて控えめな状態ではない。
線状に、弧を描くようなラインで風呂場のタイルに弾ける尿液。
堪えていたものを吐き出すような勢い。
「嫌、見ないで。こんなの見ないで下さい」
悲鳴だった。
尻穴奴隷として共に何夜も共に過ごしたのに、ぬちゅぬちゅと排泄器官を快
楽の器官として捧げてくれたのに、栖香がこうも嫌がったり羞恥に身を捩るの
が不思議だった。
そして不思議といえば、何でその姿がこんなに魅力的なのだろう。
真っ赤になって腕の中で震えていてる姿。一度迸らせたものは止まらず、音
を立てて散らしている栖香の姿。
そんな保護欲を掻き立てるような姿に、激しい情欲を覚えるのも不思議だっ
た。いつしか僕のこわばりがさっきよりずっと凄い状態になっている。
放尿と同時に絶頂してしまったかのような栖香の谷間へと、また手を差し入
れた。独特の匂いはあるが、不思議と汚いという感覚は皆無だった。
濡れて熱いそこは、普段服を脱がして触れている時はもちろん、秘め事が進
んで汗や淫液に濡れてきたところを弄るのとも違う感触があった。
股間の部分は、ぐっしょりとしている。ほとんどは上半身から滴り落ちたも
の。そして放尿の残滓。だけどそれだけではなく、ぬるりとした別の液体が感
じられる。
中指がぬめぬめとした粘膜に埋もれつつも、その割れ目の端へと辿り着く。
濡れた恥毛に触れ、固くなった肉芽を包む皮に触れる。
敏感だ、軽い刺激でもあえかな声を洩らす小さなそれを、いつものように指
で転がすように撫でてやり、一方でほころびつつある左右の陰唇に戯れる。
本当に熱く柔らかい。
指を当てるだけで縁から穴へと沈むように潜っていく。
抵抗無いように指が呑まれて、熱を帯びたざらざらが迎え入れる。
圧迫感と同時に中の空間を感じる不思議。
指を軽く曲げ、天井辺りを弄った。
栖香の口から新たに声が漏れた。
それに併せて手が濡れた感触が強まる。お湯ではない新たな粘液。
栖香がこぼしているのは、感じている事の明らかな証だった。
もっと感じさせたい。もっと声を上げさせたい。
指を増やした。抜き差しをしつつ、ざらざらとした部分を指の腹で何度と無
く掻き、刺激する。
がくがくと栖香の体が揺れ、悲鳴が断続的に漏れる。
ぷしゅぷしゅと分泌された液体がこぼれ、弾ける。
体の様子と声で栖香がどうなているのかがわかる。
ここでどうしたら、栖香がより麗しい淫声を出すのか。さながら手に馴染ん
だ楽器を奏でるかのように。
何度かの波の後、きゅうっと指の締め付けが強まった。それに構わず抽送を
続け、膣穴だけでなく、軽く触れただけだったクリトリスにも攻撃を加えた。
「あん、ダメ、ダメ、司さん。
わたし、もう、あ、ああああッッツ」
指も掌も手首までがぐっしょりと濡れた。
熱い飛滴というより、噴出というか。
潮を吹いたのだろうか。
崩れそうになった栖香の体を支えた。
まだ、粘膜がひくひくとしている。それにさっきよりも熱い。
放心したような瞳がとても艶かしい。
腕の中で栖香がぴくんと震える。余韻だろうか。
柔らかい。
何でこう、触れただけでこんなにぞくぞくとさせる肌をしているのだろう、
この可愛い娘は。
自然と、開いている手が息をするたびに微かに動く胸に向かってしまう。
決して大きくは無いけれど、柔らかな丸みは愛らしく形が良い。乳房と言う
よりも胸といった方が相応しい、そんな感じの丘陵。張りがある曲線と突き出
したピンク色の突起。
絶頂を迎えても、すぐさまその先端の勃起が緩んだりはしない。
体自身はぐんにゃりと弛緩しているのに、どこか硬く引きつるような緊張の
残滓がある。
熱を帯びた感触が手のひらに心地よい。
息が僅かに乱れているのが胸からダイレクトに伝わる。
体は清めていたのに、興奮した時特有の甘いような、いやらしい匂いが浴室
に漂っていた。
「栖香、大丈夫?」
「ん……、つ、司さん、わ、私?」
呼びかける声に、ぼうっとした様子のまま返事を返す。
けれど、その自分の返答の声で我に返ったのだろうか。
急に意思の戻った目がこちらを見る。
「司さ…、いえ、先生」
先生という響きが、かつてを思い起こさせる。
それにあの、怖いですよ、その眼?
栖香さん。
「今のはいったい、どういう事でしょうか」
「どうと言われても」
「自分でする事は約束しましたが、あんな真似をされて、手で無理やりだなん
て。私はイヤだとちゃんと言いましたよね」
「うん、聞いたよ。
でも、そのままだといつまでたっても始まらなさそうだったし」
さすがに栖香の嫌という言葉は本心で嫌とは言っていないのわかっているか
ら、などと火に油を注ぐ発言は差し控える。
「それはそうかも知れませんが、本当に恥ずかしい事をさせられているんです
から。そんなに簡単に出来るものではありません」
「うん」
「それに、そのまま指で悪戯されて、あんな恥ずかしい姿を見られて」
「凄く可愛かった」
「え……」
意外な反応。
目を見開いている。こちらの言葉が消化しきれないご様子。
これは、本心から怒っている訳ではないな。
怒っていれば、無用なものには気にせず突っ走るから。
「これで、相殺という事でどうだろう」
「均衡になっていません。どう考えても私の方がより恥ずかしい目にあわされ
ています。違いますか」
「そうだね……」
これは反論が出来ない。
たとえ苦し紛れに言葉を返したとしても、とても受け入れて貰えないような
雰囲気を漂わせている。
怒っていないとしても、詰問状態になった時の栖香は強い。
「ごめんなさい。つい、調子に乗りすぎだ」
素直に謝って頭を下げた。
「反省していますか」
「しています」
顔を上げて、栖香の眼を見て言う。
ごまかしではなく、確かに悪かったという気持ちはある。
それを察したのか、少し栖香の表情から険が取れた。
「反省の印として、その分を埋め合わせする。
恥ずかしい目にあわされて、可哀想な栖香を慰めてあげるよ」
恥ずかしい目にあわせて、可哀想な真似をしたのは誰だろうか。
自分で言っていて突っ込みを入れたくなった。
だが、直接の返事は無いが、栖香は軟化したように見える。
「とりあえず、一緒に温まろうか」
これにも返事はない。
ただし、決して異議あるような態度ではない。
手を伸ばすと、抵抗は微塵もなし。
よっと、体を持ち上げ、湯船へと向かう。
何とかお姫様抱っこをする。
「部屋に戻って、それから……」
栖香の可愛い姿を、声を、反応を思い浮かべる。
その視線から何を受け取り、考えたのだろうか。
栖香が小さく頷く。
「はい」
期待の滲んだ瞳、切なげな息。
湯船につかるとか、寝室へと行ってとか、そんなのは飛ばしてしまい、すぐ
にでも慰める行為をしたくなる、そんな表情を栖香はしていた。
了
―――あとがき
ゲームでも本でも評判を聞いて手を出す場合、頭の中で膨らませ過ぎていて
現物に触れて少しがっかりという事もありますが、「遥かに仰ぎ、麗しの」に
ついては、想像を上回る面白さでした。未体験の方にはぜひやってみて貰いた
いゲームだと思います。
頭の中でキャラに自在に会話させられるほどハマった作品なんて、そうそう
出会えるものではないですね。ちなみに、分校ルートの方が好みでした。優劣
ではなくあくまで好みで。
6人のヒロインの中では一番好きな栖香で二次創作を書いてみました。本編
自体が分校ルートの中でも頭ひとつ抜くほどのエロルートだったので、ちょっ
と変化球気味に。
どうも「かにしの」ならではの話ではなくて、別段志貴と秋葉でも成り立つ
よなあと思ってしまう辺りが課題ですが、お楽しみ頂ければ幸いです。
by しにを(2008/11/24)
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