天抜き 其の参


 百一 「認識」        志貴「よく考えてみると、毎朝、幼馴染に起こしてもらってるんだな」  百二 「乙女の園」       志貴「だからさ、何処かの山奥とか孤島から出れない訳でもないんだから、     男子校だからって恋愛対象を同性にしなくたっていいと思うけど?」  晶 「そうですか?」(不服そうに)  志貴「じゃあね、逆を考えてごらんよ。浅上の生徒だって、まさか女の子     どうしで恋人関係になったりは……」(晶の表情で口ごもる)  晶 「……」(何を当たり前な事を、という顔)  志貴「……ええと」(言葉が出てこない)   百三 「宴の後」        アルク「志貴ー! あれ、なんでみんなして眠っちゃってるの?       ああ、お酒の空き瓶の山……、なるほど。      ずるいなあ、わたしのいない処で楽しい事しちゃって。      それにしても妹ってば、志貴にこんなに寄り掛かっちゃって。      どかしちゃおうかな……、まあ幸せそうな寝顔に免じて見逃すか。      そうだ、わたしも志貴と寝ちゃおうっと。      ええと、ついでだから志貴のメイドさんも引っ張ってと。      これで良し、うん。おやすみ、志貴……」  琥珀 「よいしょっと。もう、風邪ひいちゃいますよ……、      って、毛布を取りに行っている間に一体何が?」  百四 「完全なる支配」        秋葉「兄さんたら、兄さんたら、兄さんたら……」  琥珀「秋葉さま、お気持ちはわかりますが、少しは落ち着かれては」  秋葉「落ち着いているわよ」  琥珀「私を睨まないで下さいな」  秋葉「そんなの自由でしょ」  琥珀「……どうです、秋葉さま。そんなに志貴さんの行動にご不満でしたら     少々策を講じてみては?」  秋葉「と、言うと?」  琥珀「秋葉さまの力で、志貴さんをベッドで寝たきりで指一本動かすのすら     秋葉さまのお許しが無ければ叶わぬようにしてしまうんです。同時に、     わたしのお薬で精神抑圧を行い、抵抗力も根こそぎ奪ってしまって、     軽い洗脳状態にしてしまうというのは、如何でしょう」  秋葉「そうなると?」  琥珀「完全に秋葉さまに従属する従順な僕に。逆らう事はおろか、秋葉さま     なしでは何も出来ぬほど頼り切って……」  秋葉「……」(嫌悪と陶酔が半々)  琥珀「あの……、冗談ですよ? 何を言うの、と叱責頂かないと、あの?」  秋葉「え……」(慌てるが、残念そうな色濃厚)  琥珀「それでは、洗濯でもして来ます。     ……秋葉さまってやっぱりディーブだわ(小声で)」  百五 「機能美」        志貴 「……」  アルク「何、志貴? そんなに胸をじいーっと見つめて」  志貴 「いやさ、アルクェイドって堕ちた真祖を狩る為に生み出されたって言ってたよね」  アルク「そうだよ」  志貴 「人為的って言葉は変か、でも強くなるような何かをされたって」  アルク「最強の存在でないと意味が無いから、それがどうかしたの?」  志貴 「大きい胸って邪魔にならないのか、戦いの時って?」  アルク「え?」  志貴 「髪もさ、今は短いけど腰よりももっと長く伸ばしていたんだろ?」  アルク「志貴は、もっとわたしの胸、小さいほうがいいの?」  志貴 「とんでもない」(即座に)  アルク「じゃあ、いいじゃない」  志貴 「そうだな」(やや腑に落ちない顔)  百六 「それは言わない約束でしょ」        シエル「大丈夫ですか、遠野くん?」  志貴 「一眠りしたら、だいぶ楽になったよ」  シエル「よかった。もう、風邪ひいてるなら無理してデートしなくてもいいんですから」  志貴 「でも、あんなに先輩楽しみにしてたしさ」  シエル「それはそうですけど。まあ、おかげで遠野くんの看病できたし……(小声)      それより、おかゆ作ったんですけど、食べますか?」  志貴 「うん、少し食欲も……」(やや胡乱な顔)  シエル「どうしました? わかった。カレー味じゃないですよ」  志貴 「そ、そうか。先輩の事だからてっきり、ははは」  シエル「あたりまえですよ。体調が悪くて舌が馬鹿になっている時にカレーを食べても      味がよくわかりませんからね」  志貴 「微妙に観点が違うんだけど……」  百七 「起源」        ネロ「してアカシャの蛇よ、貴様は何故、永遠を求める?」  ロア「しれた事、つまり……」(次が出ずやや狼狽)  ネロ「つまり、なんだ?」  ロア「まずは質問をしたそちらから述べるべきであろう、混沌よ」  ネロ「ふむ、一理あるな。我が目的は……」(言葉につまる)  ロア「……」(沈思)  ネロ「……」(黙考)  ロア「とりあえずこの深遠なる問いに対する答えは、次に会った時に話そう」  ネロ「そうだな」(目にやや安堵の色)  百八 「おまえは今まで食ったパンの枚数を」        志貴「なあ、秋葉」  秋葉「なんでしょう」  志貴「変な質問だけど、おまえの頭の中で俺って殺された事あるよな」  秋葉「……とんでもない質問ですね」  志貴「でも、あるだろ」  秋葉「あたりまえです」  志貴「……あたりまえか。で、何度くらい?」  秋葉「そうですねえ」(ぶつぶつ言いつつ、無意識に虚空に0を幾つも刻む)  志貴「……」(訊くんじゃなかったという顔)     百九 「希望の泉」        シエル「さあ、出来ましたよ、遠野くん」  志貴 「うん……」  シエル「どうしました、不思議そうな顔して。夏野菜のカレーじゃないほうが」  志貴 「いやいや、大丈夫です。先輩のカレーなら保障済みです」  シエル「じゃあ、よそいますね」  志貴 「お願いします(なんで先輩、鍋を見つめながら百面相するんだろう?)」  百十 「権力への意志」        シエル「つまりは、羊は羊であれば良いと考えるのですね、あなたは」  秋葉 「違うとでも言うのですか。誰もが羊飼いになる必要は無いでしょう」  シエル「同時に狼になって他の羊を襲う事も無いと」  秋葉 「鎖も檻も無く、それでも逃げずに牧草地にいる。何が悪いのです」  シエル「羊が外の過酷さを知り、そして留まるのはいいでしょう。      でも秋葉さんの言うのは、選択も真実も奪っての押し付けの幸せです」  秋葉 「不幸せになる権利ですか、馬鹿馬鹿しい」  シエル「それの何がいけないんです」  琥珀 「何だか険悪になりつつも白熱してますね」  志貴 「最初は、浅上で生徒会活動されてるんですよね、とか和やかだったのに……」  百十一 「それ単体なら」   琥珀「ああ、無い。どうしたんだろう」  志貴「どうしたの、慌てて?」  琥珀「いえ、たいした事では無いんですけど……」  志貴「あ、そこの魚のフライ、一つ貰ったんだけど」  琥珀「え、つまみ食いなさったんですか?」  志貴「ごめん、揚げたてで美味しそうだったんで……」  琥珀「いえいえ、いいですよ。良かった、誰が食べたのかわかって」(凄く安堵)  志貴「……もしかして、何かマズイものでも入っていたの?」(嫌な予感)  琥珀「大丈夫ですよ、体に何の害もありませんから」  志貴「そうか、変な心配しちゃったかな」  琥珀「でも、あれを食べたのなら、サラダの中のニンジンは食べちゃダメですよ。     いいですか、絶対にダメですからね」(恐ろしいほど真剣な顔)  志貴「う、うん……」  百十二 「脛に傷持つ自覚」         秋葉「普通の女の子、というのがわからないのよ」  晶 「はあ……」  秋葉「まあ瀬尾が変に思うのはわかるけど、自覚はあるのよ、一応」  晶 「……」(下手に同意してはいけないと考えている)  秋葉「それで、少し瀬尾を参考にしようかと思って」  晶 「え?」  秋葉「普通の女の子の興味ある事とか、休日に何をするのか、とか教えてくれる?」  晶 「あの、その……」(だんだんと追い詰められた顔で)  秋葉「どうしたの?」(にこやかな笑みで)  晶 「すみません、遠野先輩。わたし、普通じゃ……。     うわあああーーーんんッッ」(ぶわっと涙を流しつつ走り去る)  秋葉「え……、なんなの、一体?」  百十三 「呟き」   志貴「でもまあ、なんでも知ってて隙が無くて、何も世話を焼く必要が無い……。     そんなアルクェイドはちょっと味気ないだろうしな」(軽く嘆息しつつ笑み)   百十四 「料理の腕」         晶 「あまり上手じゃないですよ」  志貴「そうなの」  晶 「はい。せいぜい目玉焼きとかカレーやシチュー。サラダとか、他には……」  志貴「なんだ、いろいろ作れるじゃないか」  晶 「でも、これくらいじゃ恥かしいです」  秋葉「……」(羨望の目)  翡翠「……」(尊敬の眼差し)  晶 「え、え、な、何でしょう?」   百十五 「足していけば」         志貴 「アキラちゃんのつくったの食べてみたいな。カレーライスとか」  晶  「そんなに自信は……」  志貴 「作ってくれないのか」(わざと寂しげに)  晶  「あ、あ、作ります。志貴さんが食べてくれるなら、毎日だってカレー作ります」  シエル「いいお話ですねえ」  百十六 「それに伊達だし」作:Blueさん        志貴 「眼鏡っ子ってやっぱり年下だよな」  アルク「それじゃあシエルは?」  志貴 「…女教師」  晶  「じゃあ私が眼鏡かけます!」  秋葉 「瀬尾はそこまでして人気を上げたいのかしら?」  晶  「遠野先輩これには訳がぁ…」  秋葉 「えぇゆっくり聞かせてもらうわ」  晶  「ぁぅぁぅっ。志貴さ〜ん」  志貴 「…2人ともどこから出てきたんだ?」  シエル「そんな事より私が眼鏡っ子じゃないってどーゆー事か説明してくださいね遠野くん(怒」  百十七 「いや他の面々だって」   琥珀「鉛筆、Tシャツ、枕、ベルト、湯呑み、傘、ベッド、靴、お皿……」  秋葉「何をぶつぶつ言っているの?」  琥珀「いえ、つまらない事なんですけど、目につくものに『志貴さんの』ってつけると」  秋葉「兄さんの?」  翡翠「志貴さまの?」  琥珀「とたんに何でもちょっぴりいやらしく響くんですよね」  秋葉「……」  翡翠「……」  琥珀「ね?」(二人の反応を見つつ) 百十八 「クーラーとかあるのか」   志貴「あのさ」  秋葉「何です、兄さん?」  志貴「みんな暑くないの?」  秋葉「……」  琥珀「……」  翡翠「……」  志貴「い、いえ、何でもないです」(妙な圧迫感に冷や汗) 百十九 「金欠少年の夢」作:Blueさん        有彦「なー遠野、やっぱ無理だと思うぞ俺は」  志貴「無理だと思っているうちはいつまでたっても無理なんだ」  有彦「だからって宝くじ1枚じゃ無理だと思うぞ」  志貴「……」 百二十 「過不足なく」   琥珀「そうね、翡翠ちゃんの言うとおりだと思う」  翡翠「うん」  琥珀「ミルクを温めて少量のお砂糖を加えるだけでも、立派なお料理。     志貴さんも喜んでくれると思うわ     でもね、温めるだけ、他の事はしちゃいけないの」  翡翠「……」(ちょっと不服そう)   百二十一 「見えすぎる哀しみ」   アルク「むう、妹はわたしの事とやかく言うけど」  秋葉 「私は至極真っ当な事を言っているだけです」  アルク「じゃあ、訊くけどね、妹は志貴を幸せに出来るの?」  秋葉 「言うまでもありません」  アルク「本当に、わたしより幸せに出来るんだ」  秋葉 「え……」(いろいろ考えている)  アルク「どうなのよ」  秋葉 「……」  アルク「ほら、見なさい。      そんな、偉そうな事言ってたって結局……」(秋葉の表情に気付く)     「ごめん、言い過ぎた。ああ、泣かないでよ、ね?」 百二十二 「闇からの声」         晶 「志貴さんの声って、わたしには凄く魅力的なんです」  秋葉「そう、あまり意識しなかったわ」  晶 「電話だと顔が見えなくて耳に集中するから余計に」  秋葉「なるほど」  志貴「ただいま、ちょっと寄り道して遅くなったけど……、何してるの?」  秋葉「お帰りなさい、兄さん」(目をつぶったまま)  琥珀「お帰りなさいませ、志貴さん」(目をつぶったまま)  翡翠「志貴さま、お帰りなさいませ」(目をつぶったまま) 百二十三 「お姉さん」         琥珀「どうしても志貴さんには秋葉さまのお言葉って、妹というか年下から     言われる言葉という意識があると思います」  秋葉「それは、そうでしょうね」  琥珀「だとすれば、秋葉さまの言葉が正しければむしろ無意識に反発を」  秋葉「……一理あるわね」  琥珀「言っても詮無きことですけど、お姉さんであればよかったのかも」  秋葉「お姉さんって、私が? 兄さんより年上」(少し嫌な顔)  琥珀「そうですよ。弟の為にあえて心を鬼にして厳しく躾けを行ったり。     時には優しく蕩けるほど甘やかしてみたり。     叱ったら、姉さんなんか嫌いだ、とか言って跳び出した志貴さんが、     ごめん姉さんとか言って謝ったり、落ち込まれた秋葉さまを心配そう     な顔で元気づけたり。     想像して、ご覧に……、うふふ」  秋葉「……」(完全にトリップしている) 百二十四 「札束ですよ?」         琥珀「特に意味のない質問ですけど、一万円札十枚と、千円札百枚では、     どちらをお選びになりますか」  秋葉「? 一万円でしょ。かさばらないし」  琥珀「なるほど、では志貴さんは?」  志貴「当然、千円札」  琥珀「やはり(性格というか人間性が出てるなあ)」 百二十五 「鬼の居ぬ間に」   琥珀「でも、秋葉さまも昼間屋敷をわたしと翡翠ちゃんだけにするなんて。     うふふ、どこか抜けていますねえ」  翡翠「……」(一緒にして欲しくないなあ、と思っている)  百二十六 「有限であること」   アルク「ただの人間になったこと、本当に後悔していないの?」  シエル「ええ、もちろんです」  アルク「そうなの」  シエル「いろいろ新鮮ですしね、今まで麻痺していたものが戻ったり」  アルク「ふーん」  シエル「風邪気味で具合を悪くして遠野くんに付きっきりで看護されるな      んて、今までならなかった事でしたし」(冗談ぽく)  アルク「ずるい……」(本気で)  百二十七 「無限であること」作:A140さん  アルク「……いいもん、志貴の子どもで我慢するから」  シエル「えっ」  アルク「どんな子かなぁ〜、『アルクおねぇちゃ〜ん』とか言って、いつも      私の後についてきたりして」  シエル「なっ…」  アルク「そして今の志貴くらいになったら、おねぇさんが教えてあ・げ・る      とか…」  シエル「な゛っ…」  アルク「双子だったりしたら、ダブル!倍増!!ってかんじ〜?      でもシエルの子じゃないかもね(ニヤリ)」  シエル「な゛っ………」(本気で後悔し始める)  影で蒼崎青子さん、ウンウンと大きくうなずく。   *「有限であること」の続きとして頂きました。感謝です。 百二十八 「記憶にございません」   秋葉「本当に、忘れてしまったのね」  七夜「はい。秋葉さま」(やや、語尾が濁る)  秋葉「いいのよ。いろいろあったけど、それは過去の事だもの」(優しく)  七夜「そう言って頂ければありがたいです」  秋葉「(そうよ、忘れてくれたなら、その方が良い事もいっぱいあるし)」  七夜「……?」(どこか不安そうな目)      百二十九 「不満の言葉」   秋葉「兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さん     の馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、     兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さん     んの馬鹿、兄さんの馬鹿。嫌いになんかならないけど……、兄さんの     馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの……」 百三十 「無意識の本音」作:やすさん  秋葉「(兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さん の馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、 兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さん んの馬鹿、兄さんの馬鹿。嫌いになんかなれないけど……、兄さんの 馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの馬鹿、兄さんの……)」   *「不満の言葉」の絡みで頂きました。感謝です。 百三十一 「汚されちゃった」     一子「うう……、頭痛い……。     あれからどうしたっけ。     記憶とんでるなあ、いたた……。     え?     ……。     ……。     …………なあ、責任取った方がいいかな?」  志貴「……」(声も無くさめざめと忍び泣き) 百三十二 「はじまり」  秋葉「もしも兄さんが帰ってきた時に、『お帰りなさい、兄さん』とか言って    駆け寄って抱きついたりしていたら……。そうしたら事態は変わっていた    のかしら? ふふ、まさかね」(自嘲気味に) 百三十三 「譲れない想い」  秋葉「……」(鋭い目で)  翡翠「……」(正面から受け止め動ぜず)  志貴「……」(どうすればいいんだ、と言わんばかりの顔)   テーブルに割れた皿、そして血を滴らせている志貴の指先。 百三十四 「同一人物?」  志貴「……で、こっちが乾有彦。小学校の時からの腐れ縁」  晶 「は、初めまして、乾さん」(べこり)  有彦「ああ、よろしく。浅上って事は秋葉ちゃんの後輩かあ」  晶 「……秋葉ちゃん?」  有彦「秋葉ちゃんも可愛いけど、やっぱりお嬢様学校は違うなあ」  晶 「遠野先輩が……、可愛い?」  有彦「秋葉ちゃん、ちょっときつい処もあるけど、おしとやかだし」  晶 「おしとやか? 遠野先輩がおしとやか?」  有彦「なあ、遠野、なんでこの娘、俺がなんか言う度に驚いて変な顔するんだ?」  志貴「何て言ったらいいのか……」 百三十五 「個人教授」  秋葉「兄さん、もうすぐ定期試験でしたね?」  志貴「そうだな」  秋葉「もし成績が下がるようなら……」  志貴「まさかこづかい削減とか言い出さないよな?」  秋葉「そこまではしません。     ただ、何か手立ては考えないといけないなと思ったんです」  志貴「ふうん?」  秋葉「ただ勉強しろってうるさく言っても効果は小さいでしょうし。     考えたのですが、家庭教師はどうでしょうね」  志貴「家庭教師?」(ちょっと嫌そうに)  秋葉「優しい綺麗な女性にマンツーマンで教えて貰うのなら、兄さんも」  志貴「う、それは向学欲が高まるかも」  秋葉「わかりました。では、そういう事で準備しましょう。     私、頑張りますから」(意気揚揚と去る)  志貴「え? えっ?」(呆然と秋葉を見送る) 百三十六 「真・個人教授」作:A140さん  秋葉「兄さん、もうすぐ定期試験でしたね?」  志貴「そうだな」  秋葉「もし成績が下がるようなら……」  志貴「まさかこづかい削減とか言い出さないよな?」  秋葉「そこまではしません。     ただ、何か手立ては考えないといけないなと思ったんです」  志貴「ふうん?」  秋葉「ただ勉強しろってうるさく言っても効果は小さいでしょうし。     考えたのですが、家庭教師はどうでしょうね」  志貴「家庭教師?」(ちょっと嫌そうに)  秋葉「優しい綺麗な女性にマンツーマンで教えて貰うのなら、兄さんも」  志貴「う、それは向学欲が高まるかも」  秋葉「わ・」 知得留「わかりました。では、早速頑張りましょう。     私、頑張りますから」(フランス映画風のBGMと同時にいきなり現れる)  志貴「え? えっ?」(知得留に引きずられていく)  秋葉「えっ?」 百三十七 「義妹」  秋葉「ときどき思うんです。兄さんと本当に血が繋がっていたらって」  志貴「そうなの?」  秋葉「ええ、今みたいな恋人関係とは違った」  志貴「わからないでもないけど、血が繋がってないから秋葉とこういう関係に     なれた訳で……」(語尾がもにょる)  秋葉「わかっていませんね。     血が繋がっていようがいまいが兄さんとはこうなるんです。ただ、もっ     と背徳感があって素敵だったかなって……、兄さん、何処へ行くんです?」 百三十八 「スコットランド人」  志貴「思えば数え切れないほど秋葉を怒らせたよなあ」  秋葉「そうですね」  志貴「でも、その都度許してくれるんだな、秋葉は」  秋葉「それは、ずっと兄さんに怒った顔見せている訳にも……」  志貴「それで安心感があるかもしれないな。最後にはって」  秋葉「でも兄さん、私は幾らでも兄さんのした事を許しますけど」  志貴「うん?」  秋葉「どれ一つとして忘れてはいませんから」(きっぱりと)  志貴「……」 百三十九 「ディープと言うか」  志貴「でも秋葉、やっぱり兄妹プレイわざわざするのってさ……」 *百三十二〜百三十九は秋葉誕生日迄の一週間日替わり更新しました。 百四十 「ひなたぼっこ」  翡翠「あら、志貴さまの……、ひなたぼっこ?     暖かくて気持ちの良い陽気だもの。少し……」  志貴「あれ、琥珀さん、何を……、え?」  琥珀「ちょっと静かになさってくださいな。ほら、あれ」  志貴「翡翠? うわあ、和むなあ」  琥珀「でしょう」   縁側にちょこんと座って眠っている翡翠とその膝で丸まっているレン。 百四十一 「確かにある意味万能」  シエル「翡翠さんの料理には味付けに少々難があります」  翡翠 「はい」  シエル「味付けに不安がある時はカレー粉を使うんです、大量に」  翡翠 「カレー粉……?」  シエル「困った時のカレー頼みという格言がある位です。少々味が狂っていてもうま     くまとまりますよ。肉じゃがでも、お味噌汁でも、お寿司でも、天婦羅でも」  翡翠 「なるほど」(非常な尊敬の目でシエルを見つめながら) 百四十二 「幸せそうな顔を見るのがなんとも」  志貴「ほら、アキラちゃん。焼きたてのパイだよ」  晶 「わあ、美味しそう。いただきます」  志貴「アキラちゃんが来るって言ったら、琥珀さんが用意してくれたんだ」  晶 「さくさくのパイ生地とクリームが、絶妙」  志貴「よかったね。そうだ、チーズケーキも冷やしてあるから、持ってくるよ」  晶 「わああ」(満面の笑み)  秋葉「餌付けって言葉が浮かんでくるわね」 百四十三 「鍛錬とは重ねる事なり」  さつき「さてと……、うん、いい出来。これなら誰に見せても恥かしくない。      でも、遠野くん喜んでくれるかなあ。      そもそも、渡せる……、ううん、渡すの、今日こそ。      簡単だよね、食べてって言ってこうやって手を前に……。      ……。      ……。      もし渡せなくても、今朝頑張った分、料理の腕上がったものね。 百四十四 「目覚め」  志貴「翡翠は朝、どうやって起きているの?」  翡翠「はい?」  志貴「だからさ、いつも早起きしているだろ。凄いなと思って」  翡翠「ええと」  志貴「コツがあったら教えて貰おうかなって」  翡翠「あの、その……、すみません」  志貴「何で頬を赤らめて逃げるんだろう……」 百四十五 「でも実際にやる訳ではないから」  シエル「うん? ああ、アルクェイドが連れてた使い魔。      別に怯えなくてもいいですよ、今は志貴くんがマスターなんですから。      でも、遠野くん、夢魔の力でいかがわしい淫夢を見たりしているのかしら?」  レン 「……」(無反応)  シエル「もしかして、×××とか、××××とかしてしまったり……」(赤い顔)  レン 「にゃ」(肯定と取れそうな仕草)  シエル「え……。でもまさか×××とか、なかんづく××とかは、まさか」  レン 「にゃあ」(肯定)     シエル「遠野くん、あなたって人は……。でもまさか×××するような」(蒼褪めた顔)  レン 「にゃー」  シエル「今日は帰りましょう。遠野くんの顔、真顔で見られそうにありません」  レン 「……」 百四十六 「昼食のひととき」  有彦「なあ、遠野、なんでおまえ弁当にしないんだ?」  志貴「ん、どういう意味さ?」(パンを齧りつつ)  有彦「昼飯代削ってまでして、こづかい捻出する涙ぐましい真似してるだろ。     弁当持ってくればまるまる浮くだろうが」  志貴「うーん、そうだけど……。もしも秋葉にバレたら」  有彦「秋葉ちゃんの方が出掛けるのは早くて、帰りは遅いんだろ?     いくらでもごまかせるだろ、そんなの」  志貴「そうなんだけど。でも……」(ぶつぶつと独り言を洩らしつつ激しく葛藤)  有彦「……よくわからんが、苦労してるんだな」(軽い同情顔) 百四十七 「続・昼食のひととき」  有彦「おい、いい加減にしないと昼休み終わるぞ」  志貴「やっぱり、お弁当持ってくるのはダメだな」(晴れ晴れした顔で)  有彦「そうか。でも、そんなに妹が怖いのか?」  志貴「いや、そっちは何とか誤魔化せる手段は幾らでもある」  有彦「じゃあなんでよ?」  志貴「秋葉に隠し事をしている事を知られつつ、琥珀さんにお弁当を作って貰う……。     そんな弱みを握られる真似してたらどんな酷い目に会うか」  有彦「……つくづく、苦労してるんだな」(強い同情顔) 百四十八 「人の器量と言うか」  志貴「うーん」(思案顔)  琥珀「どうしました、志貴さん?」  志貴「秋葉が唐突にこづかいくれたんだ」  琥珀「あら、良かったじゃないですか。何をお悩みなんです?」  志貴「だって、ぽーんと一万円札だよ、手の切れそうな。     いったいどんな裏があるのかと思うと、怖くてさ」  琥珀「はあ」(強いて言えば可哀想なものを見る目で) 百四十九 「持久戦だか何だか」  アルク「もう、今度は絶対に志貴に負けないんだから」  志貴 「勝ち負けのあるもんじゃないんだけどなあ」(服を着つつ) 百五十 「ソウルフード?」  琥珀「では、今日は夕食はご用意しなくてよろしいのですね?」  志貴「うん、有彦の処に行くから」  琥珀「そうですか。では、明日はその分も美味しいもの作りますね」  志貴「期待しているよ」  琥珀「行ってらっしゃい」   志貴、外出。  志貴「中華反転マークIIに行くとかならまだしも、新発売のインスタント     ラーメン食べてみたいから、なんてとても言えないよなあ」
二次創作頁へ TOPへ