天抜き 其の四


百五十一 「しあわせのかたち」  琥珀「志貴さん?     もう眠っちゃったんですか……、可愛い寝顔。     不思議だなあ、こんな事で私に幸せを感じさせる事出来るなんて。     ……。     それにこうやって志貴さんの体温を感じながら眠ると、もっと幸     せになれるんですよ。ふふ、……おやすみなさい、志貴さん」 百五十二 「朝三暮四みたいな」  シエル「いい加減千日手にもウンザリです。で、提案があります」  アルク「ふーん? ま、わたしも不毛な争いは嫌気さしてるし……。      いいわ、聞くだけは聞いてあげる」  シエル「遠野くんの所有権は日替わりにしませんか?」  アルク「えっ?」  シエル「互いに相手には不可侵という事で」  アルク「……また小ずるい手を考えているんじゃないの?」  シエル「いえいえ。まず月曜日がわたし、火曜日があなた。水曜日がわ      たし、木曜日が……、と一週間変わりばんこにするんです」  アルク「うーん、それなら」  シエル「何もおかしな点はありませんよ。      そして月曜日にはまたわたしからスタート。どうです?」  アルク「うん、いいわ」  シエル「では、そういう事で」(足早に去る)  アルク「あれ、なんでだろう、騙された気がする」 百五十三 「女性向ですけどよろしいですか?」作:Blueさん  志貴「なー秋葉」  秋葉「なんです兄さん?」  志貴「晶ちゃんから秋葉へって本を渡されたんだけど何冊か持っていって良いかな」  秋葉「瀬尾から…って、ダメです兄さん」  志貴「でも晶ちゃんは読んでいいって…」  秋葉「瀬尾が何て言ったか知りませんけどダメです」  志貴「…そこまで言うならあきらめるよ(何であんなにむきになるんだろう?)」 百五十四 「洋館には必需品」作:Blueさん  志貴「この家に足りないものがあるとおもうんだ」  秋葉「テレビとか冷暖房器具の事ですか?兄さん」  志貴「それもそうなんだけど…金持ちっていったらアレだろ?」  秋葉「?」  志貴「執事」  秋葉「は?」 百五十五 「男二人寄れば」  志貴「どうしたの、アキラちゃん? さっきからぼんやりして。      ああ、有彦なんかと会わせてビックリさせちゃったかな」  晶 「いえ、あの、志貴さんと有彦さんて、どちらがう」(慌てて口を手で押さえる)  志貴「どちらが、何?」  晶 「な、な、何でもありません」  志貴「そう?」(訝しげに)  晶 「……(どちらが受けが似合うか考えてたなんて、絶対言えない) 百五十六 「湧き上がるような」作:Blueさん  志貴「琥珀さんは自分で薬の調合をしてるんだよね」  琥珀「そうですよ」  志貴「その気持ちで掃除をしてみたら失敗しないじゃないかな?」   後日  翡翠「姉さん!なにしてるの!?」 琥珀「翡翠ちゃん、見ての通りつぼの掃除だけど」  翡翠「…姉さん、なんで笑いながらなの?」 百五十七 「爽快な目覚めかな?」作:Blueさん  志貴「zzz…」  翡翠「志貴さま、お目覚めの時間ですが…」  志貴「zzz…」  翡翠「…朝、朝だよ〜朝ご飯たべて学校に行くよ〜」  志貴「…おはよう翡翠。今朝も着替えてから居間に行くから」  翡翠「わかりました、失礼します。(何故一回で起きるのかしら?)」 百五十八 「豪華なおまけ」  志貴「琥珀さんを選べば、翡翠がついてくる。     翡翠を選べば、琥珀さん、か。     ……微妙だな」 百五十九 「名月や……」  秋葉「さてと、こっちの書類はもういいわね」  琥珀「はい、秋葉さま」  秋葉「後は生徒会のか、やってしまいましょう」  琥珀「こちらのバインダーですね。では……、あれ、翡翠ちゃん?」  秋葉「どうしたの、翡翠、こんな夜に?     え、兄さんが月が綺麗だから良かったら、私も一緒に?     まったく、呑気と言うか、呆れるわ。     人がどれだけ忙しくしているのか全然思いもしないんでしょうね。     兄さんもそんな粋人を気取る暇があったら少しは将来の為に勉強     をなさるとか、いろいろ有意義に過ごせるでしょうに。     で、外は寒くないわよね、翡翠?」  琥珀「……まあ、秋葉さま、嬉しそうに出掛けること」 百六十 「呼び方」  琥珀「志貴さんは、わたしの事は、“琥珀さん”って呼びますよね」  志貴「そうだね、琥珀さん」  琥珀「秋葉さまと翡翠ちゃんの事は名前だけで呼ばれますよね」 志貴「そ、そうかな」(なんとなく話の向きに嫌な匂いを……)  琥珀「これってわたしにだけ心を許していないという事ですか?」  志貴「えっ?」  琥珀「どうなんでしょう?」(満面の笑みのまま) 百六十一 「呼び方2」  志貴「でもさ、琥珀さん」  琥珀「はい?」  志貴「琥珀さんも俺の事、“志貴さん”って呼ぶよね」  琥珀「そうですね」  志貴「それに秋葉は、“秋葉さま”だし、翡翠は“翡翠ちゃん”だよね」  琥珀「そうですね」  志貴「それって……」(琥珀の笑みに、言葉が続かない)  琥珀「はい?」(満面の笑みのまま) 百六十二 「いちばんのスパイス」  琥珀「どうですか、秋葉さま?」  秋葉「美味しいわ、本当に。見事ね、琥珀」  琥珀「ありがとうございます」 秋葉「兄さんが帰ってきてから、メニューが手の込んだものになってきている     気がするのだけど?」  琥珀「気のせいですよ」(やや視線を逸らしつつ) 百六十三 「光景は微笑ましいけれど」  アルク「ねえねえ、志貴、食べてみてよ」  志貴 「うん? なんだ料理なんてしてみたのか」  アルク「へへへ。習ったんだよ」 志貴 「そうか。誰に教わったんだ?」(フォークを口に運びつつ)  アルク「台所で志貴のメイドさんが料理の練習していたんだ。      それでお願いして、わたしもまぜて貰ったんだよ」  志貴 「翡翠?」(ピタリと手を止めて逡巡) 百六十四 「どっちがおまけ?」作:MCさん  琥珀「うーん、惜しいですね志貴さん」  (背後から)  志貴「!」  琥珀「たしかに翡翠ちゃんを選ぶと私がついてきますけど、    私を選んでも翡翠ちゃんはついてきませんよ?」  志貴「……」  琥珀「だからこれはもう翡翠ちゃんを選ぶしかありませんね」(にこやかに)  志貴「………………」     百六十五 「リリパット国」  志貴 「あきれたよ、先輩。カレー好きが聞いて呆れる」(吐き捨てるように)  シエル「自分の愚かさがわからないなんて、同情しますよ」 (挑戦的に) 秋葉 「何なの、あの険悪さは?」(目に隠しきれぬ喜色)  翡翠 「はい、良くは存じませんが、何でもレトルトカレーとかいうものを温      めるのに、水のうちから入れるか、お湯が沸いてから入れるかで言い争      いになられて……」  秋葉 「……何、それ?」 百六十六 「リリパット国・続き」  シエル「遠野くんの言う事ももっともです。ゆで卵添えたりするならお湯の方      がいいですし……」  志貴 「いや、確かに水からの方が味が馴染むというのはあるかも……。      ごめんね、先輩、酷い事言っちゃって」  シエル「いえ、謝るのはわたしの方です。ごめんなさい、遠野くん」  秋葉 「なんでちょっと見ないうちに和んでいるのよ?」  翡翠 「姉さんが」  秋葉 「琥珀?」  琥珀 「あ、秋葉さま、酷いんですよ、志貴さんとシエルさんったら。      わたしが、お皿にあけてラップしてレンジで温めるのはどうですかっ      て訊いたら、二人して異端者でも見るような眼で……」  秋葉 「何でそんなよけいな事を……」    琥珀 「一緒に目玉焼きだって作れるのに」 百六十七 「あるいは一番自分とは遠い他人」  琥珀「これは絶対に似合うわよ、翡翠ちゃん」  翡翠「そうかな……、でも恥かしい」  琥珀「何言ってるの、ぴったりよ。     いいなあ、わたしもこんなの着たいなあ、羨ましいなあ」  翡翠「姉さんがそう言うなら……、試着だけしてみる」  琥珀「うん、楽しみ。わたしは何にしようかなあ。翡翠ちゃんと違って、     可愛い服は似合わないし……。」  志貴「ときどきあの二人って、双子って意識が消えている気がするんだけど」  秋葉「私もそう思います、兄さん」 百六十八 「時に言葉は剣よりも酷く」  晶 「凄いですよ、本当に」(しみじみと)  志貴「家でもけっこうなものだけど、そんなに?」  晶 「ええ。敵と認識した相手には欠片も容赦しませんから。     ねちねちと嫌味から入って、論理的に追い詰めたり、理不尽な言葉で     嬲ったり、反論させて平然と流したり歪曲して返したり……」  志貴「ふうん」  晶 「決して言葉を荒げたりはしないんです。怖い目もしますけど、それよ     り薄っすらと笑いながら穏やかに言葉を口にする時がもう……。     そうですねえ、例えば志貴さんに対してなら、まず日ごろの不満を言     葉の端々に織り込みながら、そして……」(目が冷たい笑み)  志貴「……」(がくがくと震えながらも体が動かない)  秋葉「あら、瀬尾、来ていたんだ。……どうしたの、兄さん?」  晶 「いえ、その……」  志貴「ごめんなさい、ごめんなさい。     こんな役立たずで、いるだけで不快になる哀れな敗残者ですけど、追     い出さないで下さい、お願いです。心を入れ替えますから……」 百六十九 「世間様の評価」  志貴 「……という訳で、先生がいたから今の俺がいるんだ。      先生に会わなければ、きっと狂うか死ぬかしていたと思うよ……」  シエル「どう思いますアルクェイド?」(ひそひそ声)  アルク「ありえない」(小声できっぱりと断言)  シエル「わたしも信じられません。あのアオザキが、そんな真似を……」  アルク「そうね。話半分に聞くとしたって、見ず知らずの子供に魔眼封じを      与えるなんて、およそらしくないわ。あいつはそんな事しない。      きっと志貴ってば記憶を改竄されているのよ、絶対」  シエル「なるほど。あるいはあまりに悲惨なトラウマを植え付けられて、自      分で想い出を捻じ曲げたのかもしれませんね。      可哀想な遠野くん」(哀切な声で)  アルク「志貴……」(涙ぐまんばかりに)   志貴 「青子先生……」(遠く仰ぐように) 百七十 「荒野の果てで」  琥珀「すべての計画を成就して、わたしは真の意味で自由になった。     なのに、笑い方がわからないなんて……」(むしろ哀しそうな顔で)    瓦解し荒れ地となったままの、かつての遠野の屋敷を目にして。     百七十一 「男の甲斐性と言うか」    秋葉「どうですか、兄さん?」  志貴「うん、似合うよ。とても似合っているよ。     秋葉は大人っぽいのも素敵だけど、こういう可愛い服もいいな」  秋葉「そ、そ、そうですか」(恥かしそうに、嬉しそうに)  志貴「……」(溜息)  秋葉「あの、兄さん?」  志貴「……」  秋葉「どうかなさったんですか……?」  志貴「あ、いや、ちょっとね。     こういう秋葉がよく行く店だと、冗談でも買ってあげようかなんて言っ     てやれないんだなって思って」(値札を見て改めて嘆息)  秋葉「え、ええと……」(どう言ったらいいのかと困った顔で) 百七十二 「得るものと失うもの」     更衣室にて  秋葉「何をどうしたら、あんなに……」  蒼香「うん? ああ、羽居の胸か」(秋葉の視線を追って)  秋葉「不公平だと思わない、蒼香?」  蒼香「まあな」(おまえさんと一緒にするなと思いつつ)  秋葉「前見たより大きくなってるし、ずるい……」  蒼香「じゃあ、遠野は羽居みたいになりたいか?」  秋葉「絶対、嫌」(即断)     百七十三 「背に腹」  アルク「ふーん。部屋代も滞納してて、あげく急いで本国に戻らないと行けない      のに、交通費が何故か無いんだ。それは大変ね」(まったく同情皆無)  シエル「……」  アルク「志貴がお金持ってる訳ないし、妹からはけんもほろろに断られるし、他      に借りるあても無し。まさか非合法な真似は出来ない……、と。      で、わたしに何の用なの?」  シエル「ええと、その……」  アルク「ふふ、いいわよ。お金貸してあげても。困った時はお互い様だしね」  シエル「え?」(驚き、そして希望の色)  アルク「もちろん、ただで貸したりはしないわよ。そうね……」  志貴 「それは……、いくら何でもやりすぎだぞ、アルクェイド。      シエル先輩が帰ってきたら、ちゃんと謝れよ」(憤慨し、強い語気で)  アルク「うん、謝る。      まさかあそこまでプライド捨て去るほど、シエルが切羽詰ってたとは思      わなくて……」(ちょっと後悔の色)     百七十四 「必要とされること」  翡翠「志貴さまが一人でお目覚めになるようになったら、わたしがっかりするかしら?」     百七十五 「独り寝の夜は寂しく」  アルク「おはよー、妹」  秋葉 「何度言ったら……、兄さんはどうしたの?」  アルク「うん、まだ眠っているよ」  秋葉 「……?」(怪訝そうな顔)  アルク「ええとね、志貴はもう取られちゃってたから。だから一人で降りて来た」  秋葉 「取られた?」  アルク「うん。窓から入ったら、ベッドで志貴と一緒に寝てたから……。      だから、レンがって……、聞こえないか」   秋葉、鬼の形相で疾走して既に部屋を後に。
  百七十六 「あすなろ物語」
 
 志貴「誰だって向き不向きはあると思うんだ」(言葉を慎重に選びつつ)
 翡翠「はい」
 志貴「翡翠だって万能じゃないし、何もかも出来なくてもいいと思う。
    正直、完璧すぎるとちょっと気後れしちゃうしね」
 翡翠「はい」
 志貴「だから、少々料理がその……」(言葉につまる)
 翡翠「そうですね、志貴さまの仰りたい事はわかります」
 志貴「そ、そうか」(ほっとしたように)
 翡翠「姉さんに比べてまだ未熟だというのは自覚しています」
 志貴「(まだ? 未熟? って事は……」(暗雲とした顔)
 翡翠「……」(なんだか使命感に燃えた顔つき)


   
  百七十七 「ぞくぞくするでしょうね」

 秋葉「そう言えば、屈辱の余り涙すらこぼしそうになって震える兄さんの顔、
    なんてのはまだ見た事がないわね」(うっとりと夢見るように)



  百七十八 「自由と束縛」原案:古守久万さん・文章:風原 誠さん
 
 秋葉「兄さん、今日一日、何をしても自由です。
    屋敷の中であれば、どんなことをなさっても構いません。
    翡翠と琥珀の二人とタナトスに興じようと、
    私に如何様な辱めを与えようと構いません。
    さあ、兄さんは何を望みますか?
    私たちに何をさせますか?
 志貴「じゃ、じゃあ・・・」(イッちゃってる秋葉の表情に後ずさりながら)

    *                      *
 −さんさんと日の当たるテラスで、丸まったレンを膝の上に抱きながら−

 志貴「(あの3人の相手を何一つしなくて良いとは、
     なんて、至福−−− )

     

  百七十九 「平和な一時」

 シエル「どうですか、遠野くん?」
 志貴 「うん、美味しい。
     琥珀さんの玉子焼きも絶品だけど、先輩のも焼き具合も味付けも
     お世辞じゃなくて本当に絶妙で、美味しいよ」(また一つ口へ)
 シエル「そんなに喜ばれるなんて、つくった甲斐がありました」
 志貴 「こっちこそ嬉しいよ、先輩の手料理なんて」
 シエル「……」(遠い目)
 志貴 「どうしたの先輩?」
 シエル「あ、いえ。こういうのいいなあって思って。
     こんなに和やかに食事が楽しめるなんて、なんて幸せだろうって。
     昔は、真っ暗な部屋で待機しながらカレールー1箱で過ごしたり」
 志貴 「カレールー?」
 シエル「ええ。ちびちび舐めながら、三日間耐え忍んで……」(しみじみと)
 志貴 「カレールー?」



  百八十 「目か口か、それとも」

 志貴「なあ、秋葉」
 秋葉「なんですか、兄さん」
 志貴「秋葉の頭のそれってさ……」
 秋葉「……」(不自然な笑み、微かな体の震え)
 翡翠「……」(固く目を瞑っている)
 琥珀「……」(完全に無表情)
 志貴「いや、何でもないよ」(後退りつつ)



  百八十一 「練習の成果は」

 翡翠「志貴さま、お背中をおな……、お流し……、ふぅ。
    もう少しで、言えそうなのに」(頬を染めつつ嘆息)



  百八十二 「嫌がってえらい騒ぎになったり」

 琥珀「あれ、こんな時間にお風呂で何をなさって……!!」(絶句)
 志貴「!!!
    ええと、天井裏にでももぐったみたいで、埃まみれで。
    それで、いつもの姿だと、シャワーだめだから。
    決してやましい事は何も。ね、聞いてる?」(必死)
 琥珀「……」(聞こえているのか、虚ろな目で志貴の手の先を見ている)
 レン「……」(頭とかを洗われ泡だらけで固く目を閉じている。……半裸)



  百八十三 「毒と解毒剤の関係にも似た」

 アルク「この世のあらゆるモノに絶対はありえなくて、必ずそれを上回る天敵
     みたいな存在が対しているものなのよね」
 志貴 「って、俺の事か?」
 アルク「どうだろう」(首を傾げて)
 志貴 「でも、だからと言って天敵同士が理由もなく争う必要はないよな」
 アルク「うん」(柔らかい微笑みで)



  百八十四 「激しく同意」

 晶 「作者と書いているモノの内容は必ずしも関係ないんだから。
    あくまで創作で、別物ですからね」(修羅場でふと我に返り、誰にともなく)



  百八十五 「まあ間違いなく高嶺の花ではある」

 志貴「うん、なんだかんだ言っても上級生とか中心に人気はある。
    うちのクラスなんかでもいろいろと……」
 晶 「そうですよね。浅上にいた頃もみんな怖がってはいたけど、下級生で憧れ
    てた女の子もたくさんいましたもの」
 二人「まあ、本当の姿を知らないから」(期せずして同時に)



  百八十六 「取ってつけたように」

 志貴「あ、もう学校に行くのか。
    ああ、その……、今日は綺麗だな、秋葉」(突然の言葉に自分でも唖然と)
 秋葉「……」(ちらりと一瞥して外へ)

 琥珀「せめて、『今日も』と仰るべきでしたね。まあ、喜んでるでしょうけど」



  百八十七 「いいじゃないか、好きなんだから」
 
 志貴「ごちそうさま」
 秋葉「……」
 志貴「じゃあ、行くかな。いいなあ、秋葉は学校休みで」
 秋葉「そうですね。兄さん、気をつけて行って下さいね」
 志貴「ああ、行ってくるよ」(玄関へ)
 秋葉「……ねえ、兄さんていつも、こんな朝ご飯食べているの?」
 琥珀「ええ、食べ慣れたものがいいと仰って」
 秋葉「ふうん。面白い……」(食べ残しをまじまじと見つめて)



  百八十八 「ペットのお話です」
 
 琥珀「わたしは飼う方がいいですね」
 秋葉「翡翠は?」
 翡翠「その……、飼われる方を」(真っ赤)
 秋葉「なるほどね」
 琥珀「そういう秋葉さまはどちらなのですか?」
 翡翠「……」(ちょっと興味ありそうな表情)
 秋葉「そうね、飼うのも楽しそうだけど……、飼って貰うのも悪くないわね。
    両方……、はダメよね」
 琥珀「それなら、私もたっぷり可愛がって貰いたいです」

 志貴「うん、皆で何の話だい」(唐突に居間にやってきて)
 秋葉「い、い、いつから聞いていたんです」(慌て顔)
 志貴「今、来た処だけど」
 秋葉「兄さんには、まったく関係の無い事です。ね?」(翡翠琥珀、同意)
 志貴「そうか(たしかに兄さんがどうのとか言ってたんだけどなあ)」



  百八十九 「忠誠心」
 
 秋葉「あら、兄さん。お勉強しているのだとばかり……」(少し怖い笑み)
 志貴「いや、その、これは……」(手でひらひらとさせていた紐を背後に)
 秋葉「まさか猫と遊んでいたなどと……」(足元のレンを見下ろし)
 志貴「ちょっとだけ」
 秋葉「もう……。あら、今度は私にじゃれついて。まあ可愛いですよね」
 志貴「そうだろう?」(秋葉の表情が少し和んで、ほっとしている)

 翡翠「あれ、じゃれているのかしら」
 琥珀「ご主人様を守ろうとするも、相手があまりに強大で気合負けして、
    それでも立ち向かいって処かしら。健気ね、レンちゃん」



  百九十 「どっち?」
 
 志貴 「じゃあねえ、カレーのない天国とカレーのある地獄」
 シエル「カレーがあればそこは天国ですから、設問がなりたちません」
 志貴 「なら、アルクェイドと秋葉」
 シエル「難問ですねえ。……でも秋葉さんかな。まだ、人間ですから」
 志貴 「まだって……」
 シエル「今度は遠野くんが答える番ですね。
     そうですねえ、眼鏡をしたわたしと外したわたしでは、どちら?」
 志貴 「え? それは、どちらがいいかなあ。
     普段の先輩もいいんだけど、でも……。いや、まてまて」(真剣)
 シエル「……」(あえて回答を促さず。悩む志貴の姿にすっごく満足そう)



  百九十一 「眠れるお嬢様」
 
 志貴「秋葉……、なんだ、うたたねなんかして。
    そうだ、何か掛けるものでも持って来てやるか。
    それにしても、こうやって見ると秋葉も……」(立ち去る)
 秋葉「秋葉も……、何なのかしら?」



  百九十二 「覗き見」
 
 志貴「ねえ、翡翠」
 翡翠「恥かしいです、志貴さま」
 志貴「少し上げるだけ、ね?」
 翡翠「でも……」
 志貴「……」
 翡翠「ああッ、こんな…、志貴さま……」
 志貴「ふうん、こんななんだ」

 琥珀「きっと扉を開けると、全然何でもない事なんでしょうね。
    騙されませんよ」(去る)



  百九十三 「手料理の味」
 
 志貴「どうかな……?」(不安そう)
 秋葉「……」
 志貴「やっぱり俺なんかの料理じゃ、秋葉の口には合わないか」
 秋葉「いいえ、美味しいです」(にこりと笑う)
 志貴「そうか、よかったよ、秋葉の期待に応えられて。
    ええと、あと一品……」(エプロンをパタパタさせて厨房へ)
 秋葉「嬉しい、凄く嬉しいんだけど……。
    これって琥珀と相談して、琥珀と一緒に買い物に出掛けて、琥珀
    に見て貰って、それで出来たのよね。……複雑」



  百九十四 「一つの考え方に拘る事は、心の自由を捨てる事である」
 
 秋葉「兄さんは、私の小さな胸がお好きなんですよね?」
 志貴「もちろんだよ」(心の底からの純粋な笑みと共に)    
 秋葉「本当ですね」
 志貴「ああ」
 秋葉「じゃあ、無駄に大きな胸なんか嫌いですよね?」
 志貴「え……?」
 秋葉「嫌いですよね、兄さん……」(すがるような目で)
 志貴「も、もち……」(頭が命じても魂が拒んで、言葉とならない)



  百九十五 「こしゅこしゅ」 

 志貴「……ん〜」(湯船に浸かりながら、体を洗う秋葉を見て一つ唸る)
 秋葉「なにか?」
 志貴「あ、いや、その胸を洗ってるタオルなんだが」
 秋葉「はぁ」
 志貴「洗えば洗うほどタオルのほうが綺麗になってたらと思うと、もうっ」
 秋葉「そこまで洗濯板じゃないもん(くすん)」

  西紀貫之さんに、頂きました。もっと増やして『天貫き』コーナー希望。



 小特集・天抜き(3秒で出来る天戯味)
  「四季さま更正計画」

 百九十六ノ一【いや、それ洗脳と言いませんか?】作:天戯恭介さん

   地下室、やけに高級感漂うイスに座る四季
 琥珀「四季さま、志貴さんと仲直りしていただけないでしょうか?」
 四季「フン……冗談はよせ、誰があんな奴と……」
  (ソッポを向く四季)
 琥珀「あはぁ…仕方ありませんねぇ……」
  (懐から怪しいリモコンを取りだしスイッチを押す)
 四季「!!?……ぬぉぅ!?」
  (イスから拘束具が出現、四季の手と足、そして首をロックする)
 四季「どういうつもりだ!!」
 琥珀「あはぁ…更正開始ですぅ♪」(やけに嬉しそう)

 四季「ぎゃあああああああああああ!!!!」(断末魔の叫び)


 百九十六ノ二【一昔前のコカコーラの宣伝とか】作:天戯恭介さん

 琥珀「志貴さん、四季さまが改心してくださいましたよ?」
 志貴「え!?本当かい、それ!?」(本当に嬉しそうに)
 秋葉「四季を……?」(訝しげに睨む秋葉)
 琥珀「では四季さま〜どうぞ〜♪」(入り口に手を差し伸べて)

 四季「やぁ♪志貴君(キュピーーーン)」(タキシードに爽やかな好青年の笑顔)

 志貴・秋葉「…………。」(どうリアクションを取っていいか分からない)
 翡翠「ガタガタ……(恐くて震えている)」


 百九十六ノ三【無意識下による……】作:天戯恭介さん

  (楽しそうに談笑する二人。やや志貴はギコチナイ、そんな二人を見ながら)
 秋葉「それにしても琥珀、よくあんな奴を更正する気になったわね?」
 翡翠「秋葉様…仮にも実の兄にそのようなお言葉は……」
 秋葉「でもあいつは……」(なにかやるせない表情)
 琥珀「秋葉様…昔よりも今です……四季さまが戻ってきてくれたんです
    受け入れて差し上げましょうよ……そしてまた昔のように……」
  (すこし涙ぐむ琥珀)
 秋葉「……琥珀」(どう言葉をかけていいか分からない表情)

 四季「!!ぐはっ……!!おおおおおおおおおおおおおお!!」
  (タキシードを引き千切り突如発狂)
 志貴「!!?…!!」(何が起こったか理解できない)

 秋葉「昔のように……なんですか?」(暴走する四季の餌食になる志貴を見ながら)
 琥珀「………なんでもありません」(すこし残念そう)
 翡翠「無意識下によるストレスですね」(達観したように)


 百九十六ノ四【立派なお人だ……】作:天戯恭介さん

 四季「ぐはっ……やぁっ♪……うおおおおお!!…やぁっ♪
    ……くああああああああ!!」

 志貴「なんか周期が短くなってきてるんですけど……」(包帯グルグルまき)
 琥珀「あはぁ……(汗)また更正するしかありませんねぇ…」
 秋葉「そんなことしなくていいわ……とっとと……」(朱に染まり始める髪の毛)
 志貴「まあ、まてよ…秋葉…その更正をまたやれるのかい?」(琥珀を見つめながら)
 琥珀「はい、志貴さんと秋葉様が四季さまを取り押さえて下されば……すぐに」
  (脱兎の勢いで逃げる志貴と秋葉と翡翠)
 四季「ぬああああああああああああああ!!!!」
 琥珀「あ………」(自分だけ逃げ遅れたことを認識する)

 志貴・秋葉・翡翠(立派なお人だ……)
  (ドアの影に隠れて四季の餌食になる琥珀を見ながら)


 百九十六ノ五【もう君は戻らない】作:天戯恭介さん

 琥珀「志貴様、更正できましたよ〜」(棒読みそして包帯グルグルまき)
 志貴「そ、そうなんだ……そいつはよかった」(前回のことを反省している)
 秋葉「……で?その四季はどこにいるんですか?」
 琥珀「あはぁ♪いますよ、お二人の後ろに」
 秋葉・志貴「後ろ?」

 四季「はぁい♪志貴ちゃま、ご機嫌麗しゅう(ハート)」
  (ピンク色の猫タイツで口に薔薇を咥えながら)

 秋葉「に、兄さん!!落ちついてください!!!」
  (豹変した四季に七夜で襲いかかろうとする志貴を羽交い締めにして)
 志貴「離せ、離してくれ秋葉!!コイツを殺して俺も死ぬ!!」
 翡翠「志貴様、台詞の使い方が間違っています!!」

 琥珀「あはぁ…やっぱり無理でしたか」
 (クネクネと身をくねらせて怪しいダンスをする四季を見ながら)



  百九十七 「犬は喜び庭駆け回り」
 
 アルク「志貴、みかん食べる?」
 志貴 「ひとつ貰おうかな」
 アルク「あ、お湯沸いた。お茶も煎れるね」
 志貴 「お、ありがとう」
 アルク「こたつっていいね、志貴。わたしすっかり気に入っちゃった」
 志貴 「そうだなあ、落ち着くよな」
 アルク「うん」(といって少し深く潜る)
 志貴 (しかし、この部屋とか、アルクェイドにとか、似合わない事おびただしいな)



 百九十八 「ほら、そこの葱を早く入れて」

 琥珀 「秋葉さま、たまにはこういうのもよろしいでしょう?」
 秋葉 「そうね。まあ、賑やかな方が雰囲気が出る…かしら。
     それにしても……」  

 アルク「うん、美味しいねえ、志貴」
 志貴 「ああ、その通りだけど、蟹は殻ごと喰うな、怖いから」
 翡翠 「……」(首を傾げて、何やら調味料を取り出す)
 志貴 「翡翠、いいから。味付けは琥珀さんに任せて。
     先輩は、黙々と食べ続けてるのはいいけど、少しは具も足して下さい」
 シエル「あ、ごめんなさい。ここのところ不意の出費でろくなもの食べていな
     かったもので……」
 志貴 「ってだから、アルクェイド。刺身はそのままでいいから鍋に入れるな」
 アルク「ええっ?」(シエルの真似して大皿を傾けるのを止めて)

 秋葉 「意外と兄さんて、鍋奉行なのね」
 琥珀 「……少々違うと思いますけど」

     
 百九十九 「皆が無言になる一時が良いのです」

 翡翠 「志貴さま、どうぞ」
 志貴 「ありがとう」
 アルク「あ、わたしだって。はい、志貴」
 志貴 「ああ、ありがとう」
 シエル「ここは、身が詰まってて美味しいですよ、はい」
 志貴 「すみません、先輩」
 秋葉 「兄さん、私のも……」
 志貴 「ああ、貰うよ。
     (まあ、ありがたいんだけど……、蟹の身だけ小皿に山盛り出され
     ても、何だか美味しさが半減するんだよなあ)」

     
 二百 「締めはこれでしょう」

 琥珀 「大方お鍋は食べ終わりましたね。それでは……」
 シエル「あ、待って下さい。
     鍋をしてた残りにカレールーを入れると、これがダシが利いて実に
     風味豊かな美味しい……」(力説)
 琥珀 「雑炊にしますね」(まったく耳に留めず)



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