天抜き 其の四十三






 二千百一「日常」

 志貴「さて、そろそろ寝るかな」
 秋葉「そうですね。消灯時間も近いですし」
 志貴「静かな一日だったな」
 秋葉「本当に」
 志貴「ん……、何で不思議な気分になるんだろう」
 秋葉「奇遇ですね、私もです。却って不安を誘うと言うか」
 志貴「そうそう、そんな感じ」
 秋葉「こういう日があっても……、いえ、これが普通なんです。
    そうですよね、兄さん」
 志貴「そう…なのかなあ」



 二千百ニ「箸の使い方」

 桜   「ライダーも随分上手くなったわね」
 士郎  「ああ。そこら辺の奴よりずっとちゃんとしてる」
 ライダー「ありがとうございます」
 士郎  「そう言えばセイバーは何で箸が使えたんだ」
 桜   「先輩が教えたんじゃないんですか?」
 士郎  「いや。そうか、セイバーは前にも現界してるものな」
 セイバー「いえ、シロウ。和食など食べたのは今回が初めてです」
 ライダー「ではどうして」
 セイバー「自分でもわかりませんが、こう、自然に……。不思議ですね」
 一同  「(いや、セイバーなら)」



 二千百三「影踏み遊び」

 セイバー 「踏んだ方が負けですか、なるほど」
 ギル   「わかった、始めるが良い」
 パーサーカ「■■■■■■!」



 二千百四「相殺可能?」

 凛   「エクスカリバーやゲイボルクもあんた投影できるのよね?」
 アーチャ「やろうと思えば可能だ」
 凛   「なら、どうしてやらないの?」
 アーチャ「モノは完全に再現できたとしても、それを振るう技量で劣るからな」
 凛   「まあ、そうよね」
 アーチャ「何より、正面きってそんなものを持ち出すと……」
 凛   「持ち出すと?」
 アーチャ「相手の強さの桁が変わる。誇りを汚された怒りでな。
      凄まじいぞ、あれは」(しみじみと)
 凛   「経験済みな訳ね」



 二千百五「鍛錬の結果」

 藤ねえ 「どう?」
 士郎  「うまい」
 セイバー「ええ。これはなかなか」
 藤ねえ 「お姉ちゃんが本気になれば料理くらい上達するんだから」
 士郎  「ああ」
 セイバー「素直に認めましょう。確かに素晴らしいです」
 士郎  「しかし、普通の料理でなくて、美味いお好み焼き丼を作るか。
      藤ねえらしいなあ」
 


 二千百六「自己認識」

 橙子「ときどき、無性に笑いがこみ上げてくる事がある」
 鮮花「何でです?」
 橙子「わたしが弟子など取って教えているという事実を省みるとだ」
 鮮花「……どう返せば良いのだろう」
 


 二千百七「用が足りれば何でも着るような」

 式「うんん、あれは洗濯だし、着替え、何かないか。うーん、ん?
   秋隆か、それとも幹也が忍ばせたのか、これ……」



 二千百八「台所にて」

 小次郎 「ふふ……、真剣になるのは良いが殺気すら漂わせてはな。
      作られる料理も味気なくなるのではないか」
 キャスタ「いいから、野菜でも切っていなさい」
 小次郎 「やれやれ」
      シュタタタタタタタタターーッッ



 二千百九「お手伝い」

 士郎「そんな付きっ切りでなくても、ときどき様子見てればいいだけだから。
    灰汁はまとめて取るし、大鍋で焦げ付く心配もないしさ。
    見ていて面白い? まあ、それなら……。火は弄らないこと」



 二千百十「協力し合えば世界を狙える集団」

 橙子「……能力はともかく、そういうやる気が皆無だな」
 凛 「どうかしら。一人獅子身中の何とかになりそうだけど」
 志貴「協力って時点でアウト」



 二千百十一「俺より強い奴に会いに行く」

 アルク「そこぉぉぉッッッ、連打キャンセルの超必殺…」
 シエル「甘いッッ! 見切っています。食らいなさいッッッ」

 志貴 「意外だな、あの二人がゲームするなんて」
 琥珀 「志貴さんが不在でお待ちの時に接待プレイを。気にいられたようです」

 アルク「足払い、足払い、立ち上がりで中キック」
 シエル「姑息な。受身からのッッッ」

 琥珀 「わ、凄い。さすがに尋常でない反応スピードですね、お二人とも」
 志貴 「それより、あれでコントローラーが壊れないのが不思議だ」



 二千百十ニ「お姫様だし」

 志貴 「そう言えば、アルクェイドって洗濯はどうしてるんだ?」
 アルク「洗濯って?」
 志貴 「着替えた後で……え、そこに溜めて?
     う…うわあああああああ」



 二千百十三「あたま山」

 志貴「直死の魔眼で直死の力だけを殺す……?」



 二千百十四「抜けば珠散る」

 士郎  「そう言えば、藤ねえが剣道習い始めた頃にさ、俺にも教えるって
      言い出したんだ」
 セイバー「それはタイガらしい。微笑ましいではないですか」
 士郎  「一方的に叩かれただけの気もするけどな。
      それで、ある日真剣勝負って事になったんだ」
 セイバー「ふむ。それでどうしました?」
 士郎  「どこでどう間違えたか、真剣を持ち出してね」
 セイバー「え?」
 士郎  「懐かしいなあ」
 セイバー「……タイガらしい」



 二千百十五「さてね?」

 凛   「一度見た物は複製可能かあ」
 アーチャ「まあな」
 凛   「逆に言うと、複製出来たと言う事は、一度は本物を目にしたと」
 アーチャ「その通りだ」
 凛   「ふうううん」
 アーチャ「聞きたいかね、それらの由来?」
 凛   「そうね……と言いたいけど止めとくわ。
      正気で聞いちゃいけないような気がする」
 アーチャ「残念だな。……極めて正しい判断だが」(幾つもの剣を消しつつ)



 二千百十六「重箱」

 士郎  「一人分だと思った、か。ふーん。そうか、これをねえ、ふーん」
 セイバー「…………」



 二千百十七「腕を振るう」

 琥珀「あ、志貴さん、もうすぐ出来ますからねえ」
 志貴「うん。ああ、いい匂いだ」
 琥珀「今日は新しい料理にチャレンジしたんですよ。味の保証はしかねますが」
 志貴「琥珀さんのなら心配ないよ。
    そう言えば、琥珀さんは特に得意料理ってのはあるの?」
 琥珀「得意料理ですか、それはどういう意味合いにおいてですか?」
 志貴「ん……、その、どういう意味合いと問われるのが良くわからない」
 琥珀「……」
 志貴「……」
 琥珀「志貴さん、もうすぐ出来ますからねえ」
 志貴「うん」



 二千百十八「選択の余地」

 琥珀「生でそのまま食べられる素材、種類は少なく。
    煮炊きなどの火は使わず、調味料は一切使わない。
    量はきっちりはかって、とにかく余計な事はしない。
    と言う管理方法で作ったんですけどねえ」
 志貴「熱意持って取り組んでいたしなあ、翡翠」
 翡翠「それが唯一の不確定要素だったんでしょうかねえ……、ふぅ」



 二千百十九「口の中でとろけるようです」

 志貴「へえ、美味そうだなあ」
 琥珀「グルメ番組ですか、珍しいものを観ていますね」
 志貴「他になくてさ。でも、意外と好きなんだ。うわ、あのマグロ凄い」
 琥珀「ご希望でしたら、今日にでも食卓に出しますよ。
    霜降りのお肉でも何でも。何だったら料理人ごと来て貰う事も可能ですし」
 志貴「え、でも」
 琥珀「家で食べたいというのなら、秋葉さまは無条件でOKされますよ」
 志貴「うーん、でもやめとこう」
 琥珀「あら?」
 志貴「何かが壊れる気がする」
 琥珀「そうですか?」
 志貴「うん。お、刺身だけでなくわざわざねぎまにするか。でも、いいなあ」
 琥珀「はいはい」(微妙な笑み)



 二千百二十「怪物たち」

   夜の公園にて

 ネロ「面白い」
 荒耶「……ふむ」

 橙子「どっちが勝っても負けたのを飲み込んでより強くって感じだな」



 二千百二十一「改めて状況認識」

 アルク「ふふふーん♪」(お茶をいれている)
 志貴 「……」
 アルク「お待たせー」(笑顔)
 志貴 「慣れる訳が無いよなあ」
 アルク「何が?」
 志貴 「何でもない」



 二千百二十ニ「侵入者」

 志貴 「しまったなあ」
 アルク「だいぶ遅くなっちゃったね、志貴」
 志貴 「誰が遅くさせたんだ。ううん……、どうも玄関も裏口も不穏な空気がある」
 アルク「志貴の部屋の窓は開いているんでしょ?」
 志貴 「そうだな。あそこから……、何をしているんだ?」
 アルク「えっ?」(ピッチングフォームと思しき動きをしつつ)



 二千百二十三「君を信じるよ。君の目は嘘なんてついていない」

 ライダー「ふっ」



 二千百二十四「雷鳴」

 シエル「そうですね、遠野くんの眼なら自然現象すら“殺せる”のかも。
     でも、感電する方が早いんじゃないでしょうか。
     行くなら止めませんけど。
     ……はい、雨宿り、雨宿り」



 二千百二十五「睡眠学習」

 志貴 「アルクェイドは目覚めた時には、その時代で過ごす最低限の知識はあるん
     だったよな」
 アルク「うん、そうだよ」
 志貴 「最低限でなくて、もっと学習するのも可能なのかな」
 アルク「終わったらすぐに眠っちゃうからいらない知識は無かっただけで、可能な
     限り習得させるのも出来るんじゃないかなあ」
 志貴 「そうか、常識をわきまえた物知りアルクェイドか」
 アルク「志貴がそうしろっていうなら調べてみようか」
 志貴 「いいや。何だか、かえって物騒だから」



 二千百二十六「実力の顕示」

 志貴 「そう言えば先輩は行く所に行けば凄い人なんだよね」
 シエル「微妙に引っ掛かる言い方ですが、まあ、それなりの権限はありますよ」
 志貴 「学校にいると普通……、ん、まあ、紛れているのに」
 シエル「威圧しまくって何とかする任務でもないですし。
     力あるものは出来るだけ力を隠すというか、本当に恐い人は一見では普通
     だったりするものです」
 志貴 「そういうものかな」
 シエル「そういうものですよ」(まっすぐに見つめながら)



 二千百二十七「どこぞの常春の国の王とか」

 橙子「んん……」
 幹也「どうしました、橙子さん」
 橙子「少し調べ物をしていたのだがね、意外と普通の知識に欠けているものだと
    思い知らされた」
 幹也「誰がです?」
 橙子「わたしがだが、何か変かね?」
 幹也「頷けるような気もしますし、なんだか不思議なような気もしますね。
    ただ、今読まれている本のタイトルはどう考えても一般的ではないです」
 橙子「そんなものかね、ふむ」



 二千百二十八「兄より優れた弟など」

 式 「トウコが妹なら良かったのか?」
 橙子「そんな問題じゃない」



 二千百二十九「変換」

 橙子「どうだね、黒桐?」
 幹也「ええ、さすがにガタが来ていた前のと比べると大分違いますね」
 橙子「最新式のハイスペック機種ではないが」
 幹也「資料整理や文書作成なら充分ですよ。軽くなったのが何と言っても良いです。
    ああ、でも文字変換はもう一回設定してやらないといけないのかな」」
 橙子「ほう」
 幹也「例えば所長の名前とか。“とうこ”だと変換対象に出ないので登録しないと。
    今のうちにやっておこう。だいだいこ…変換と。よし」
 橙子「……」(何となく嫌そうな顔)



 二千百三十「本当の自分」

 幹也「もし、突然所長が死んだとすると」
 橙子「ほほう、面白そうな話の切出しだ」
 幹也「そうしたら、別の所長が現れるんですよね」
 橙子「ああ。しかし、そのいずれもが蒼崎橙子であり、それまでの記憶を共…」
 幹也「何かの拍子に二人意識を持ったらどうなるんです?」
 橙子「え?」
 幹也「事故にしろ人為的にしろ、同じタイミングで目を覚ましたら、その二人
    の間での本物・偽物という認識はどう発生するんですかね」
 橙子「なんだ、そんな事簡単だ」
 幹也「あれ、そうなんですか」
 橙子「もちろん。二人のうちでだ……」
 幹也「はい」
 橙子「生き残った方が本物だとも」(きっぱりと)



 二千百三十一「進路相談」

 秋葉「進学希望ですね、兄さんは」
 志貴「そうだな。とりあえずは」
 秋葉「はっきりしませんね、まったく。
    でも大学行かれるのなら…………」
 志貴「ん、どうした、秋葉?」
 秋葉「飛び級で、同じ学年に、そうすれば……うんうん」
 志貴「えーと」



 二千百三十ニ「晩餐」

 セラ 「お嬢様、お召し上がり下さい」
 イリヤ「うん、いただきます。
     やっぱりセラの料理は素晴らしいわね」
 セラ 「ありがとうございます」
 イリヤ「うん、でもシロウが言ってたけど……、ううん、何でもない」
 セラ 「何かお嬢様に失礼な事を?」
 イリヤ「高くて贅沢な食材を使えば美味しくなるのは当然でね、
     ありふれた材料からでも作り上げるのが料理の腕なんだって」
 セラ 「くっ……」(贅を尽くした食卓に目をやり)
 イリヤ「タイガが伊勢海老ーとか、大トローとかうるさい時に……、
     ねえ、聞いてる、セラ?」



 二千百三十三「桶狭間」

 凛 「どうしたのよ、士郎」
 士郎「ああ。片付けやってたら、こんなのも出てきた」
 凛 「何よ、これ。あ、わかった。大判焼の機械ね」
 士郎「当たり」
 凛 「庭でお祭りの屋台一式揃えられるわね、まったく。
    で、何を考え込んでいたの?」
 士郎「俺が作ってもまだセイバーは買い食いするかなあってさ。
    どっちが勝つかなあって」
 凛 「あ、そう」



 二千百三十四「料理教室」

 キャスター「どうかしら?」
 士郎   「うん、なかなか美味しい。
       鶏がらからしっかり出汁が取れてるスープだと思う」
 キャスター「そ、そう。それなら良かった。
       じゃあ、片付けするわね」
 士郎   「あ、いいよ。やっとくから」
 キャスター「教えて貰って、それではすまないわよ。
       えい」
 士郎   「鶏がらが歩いてる……」
 


 二千百三十五「携帯電話の使い方」

 凛 「……」
 綾子「いや、別に充電器見張ってる必要は無いから」
 


 二千百三十六「捉え方」

 士郎 「お城に住みたいか? いや、掃除とか大変だろ」
 凛  「ほら、こういう反応な訳よ、士郎は」
 イリヤ「そうね、リンの言うとおりだわ」
 士郎 「何なんだ?」



 二千百三十七「振袖」

 藤ねえ 「ここをこうするでしょ、で、こーやってと。
      はい、これが“ふくら雀”ね」
 桜   「うわあ、凄いですね、藤村先生」
 セイバー「ふむふむ」
 凛   「こうやって帯締めするのね、なるほど。
      でも藤村先生がこんな特技持ってるなんて意外」
 士郎  「藤ねえ案外、着付けとか上手いぞ。
      むしろ藤ねえしか出来ない方が意外だ」



 二千百三十八「どこから手をつけるか」

 士郎「むう……」
 凛 「珍しく悩んでいるわね。簡単な修理じゃなかったの?」
 士郎「壊れたのはあくまで一箇所なんだけど、そこを直すとバランスが崩れて連鎖的に
    おかしくなりそうなんだ。厄介だよ」
 凛 「でも、楽しそうね」
 士郎「そうか?」
 凛 「ええ」



 二千百三十九「聖なる剣」

 士郎  「アーチャー、おまえ、エクスカリバーは投影できるのか?」
 アーチャ「能力としての質問であれば、出来ると答えられる。
      だが、投影するかと訊かれれば、答えは否だ」
 士郎  「出来るけどしたくないのか」
 アーチャ「ああ、あの剣だけはな」



 二千百四十「原価償却」

 葛木「さて……、どうであろう」



 二千百四十一「ベーコンレタス」

 有彦「よし、ロン、満貫!」
 志貴「くッッ」
 有彦「わははは、どうだみたか。……って、何も賭けない麻雀は虚しいな」
 志貴「さっきもいったが、まったく持ち合せはないからな」
 有彦「ただでさえ二人麻雀なんぞ、そう盛り上がらないからなあ。
    お、そうだ、金が駄目なら脱衣麻雀で行こうぜ。最後まで行ったら、
    外を一周。どーだ?」
 志貴「よし」

 志貴「……というやり取りがあったんです」
 有彦「そうだ。いい加減脳が腐っててさ」
 一子「……ふうん」(無感動な眼で)



 二千百四十二「はねる」

 シエル「うーん、美味しいですねえ。
     うどんの質がいいとカレーがさらに引き立ちます」
 志貴 「まあ、それには賛同しますが、よく食べてて汁がはねませんね」
 シエル「カレーへの愛情です」
 志貴 「そうか、納得…できないなあ」
 シエル「すみませーん、おかわり」



 二千百四十三「なにか」

 志貴「点と線は見えるけど、何の死なんだろう、これは。
    気になるけど、試してみる訳にはいかないし。
    ……いかないよな」



 二千百四十四「カラフルではある」

 一成「なんだ、衛宮?」
 士郎「いや、何と言うか、その……」
 一成「言いたい事があれば遠慮なく言うがいいぞ」
 士郎「ああ。最近の一成の弁当、時々その……、変な…いやいや、
    ええと、そうだ、目新しいものが入ってる事があるな」
 一成「お裾分けだ」(憮然として)
 士郎「お裾分けって、誰から」
 一成「……」(訊くなという無言の声)
 士郎「鶏の照り焼き食べるか?(キャスターか)」
 一成「頂こう」



 二千百四十五「努力できる才能などとも言うが」

 士郎  「なかなか上手くいかないな」
 ランサー「ほう、魔術の訓練か。また嬢ちゃんに呆れられたか?」
 士郎  「まあ、そんなとこ。やっぱり才能がないな」
 ランサー「お、珍しく落ち込み気味か。
      だが、研鑚を重ねれば凡人でも才能を凌駕するそうだぞ。
      アサシンとかキャスターのマスターとかその口だろ?
      何よりお前の場合、生き見本がいるだろうが」
 士郎  「まあ、そうなんだけど」
 ランサー「そうか」
 士郎  「ランサーはどうなのさ」
 ランサー「俺は並外れた才に恵まれてたから」
 士郎  「(嫌味も何も無く当たり前に言うところが凄いよなあ)」



 二千百四十六「生みだしたもの」

 橙子「む……、ダメだな」
 幹也「人形がどうかしたんですか」
 橙子「失敗だ。素材の質が悪かったか、このまま続けても完成しない」
 幹也「ここまで仕上に近づいてるのに。
    見たところどこ瑕ひとつないようですけど」
 橙子「徒中だからだな。初めからやり直すさ。
    しかし、人形を壊すのは心痛むな」
 幹也「そういうものですか」
 橙子「ああ。手間ひまかけて精力を注いだものだからな。
    人間をばらすのは何とも思わないのに」
 幹也「え?」
 橙子「さてと、急がないと給金も払えないッと」



 二千百四十七「一年とか平気そうではある」

 橙子「ふと、気がついたのだが」
 幹也「はい」
 橙子「かれこれ一月ほど外に出ていない気がする」
 幹也「ダメですね」
 橙子「うむ」



 二千百四十八「八百万の死に様」

 式 「今までで一番無惨な死に様ってなんだ?」
 橙子「私のか。そうだなあ……」
 鮮花「まったくもう」(耳を塞いでいる)



 二千百四十九「属性」

 橙子「ふむ、ツンデレか……」
 幹也「それが何か?」
 橙子「私などはどうかと思ってな」
 幹也「無理です」
 橙子「即座に断言したな」
 幹也「だってツンはこの上なくハマってますけど、デレは無理でしょ」
 橙子「ほほう」

  ・
  ・
  ・
 
 幹也「お見それしました」
 橙子「ああ」



 二千百五十「人形作り」

 幹也「所長は人間以外の人形は作れないのですか」
 橙子「人の形を模したから人形というのだよ、黒桐」
 幹也「それはそうかもしれませんが、僕が言いたいのは」
 橙子「ああ、動物でも本物と区別できぬものは作れる」
 幹也「中身も含めて?」
 橙子「ああ。なんだ行方不明の犬でも作って賞金をとでも企んでいるのか」
 幹也「いいですね、それ。やりましょう」
 橙子「あいにく、本物を見ないと作れんのだ。まず本物を捕まえてくれ」
 幹也「何です、そのトンチ話は。そうじゃなくて」
 橙子「なんだね」
 幹也「まっとうに買うのよりは安く食材となる魚介類とか作れないかなと」
 橙子「微妙だな。蟹とか河豚では恐らく割に合わない。
    松坂牛とか鮪であれば何とか。だが、黒桐、ひとつ問題がある」
 幹也「何です」
 橙子「人体には有害な材料を用いると思うぞ、多分」
 幹也「それじゃ、ダメですね」
 橙子「そうだな」


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