天抜き 其の四十四






 二千百五十一「錬鉄の戦士」

   「見ろ、あれがEMIYA SHIROUだ」
   「ありとあらゆる剣を生み出す力があるそうだ」
   「俺は奴が竜殺しの剣を手にしたのを見た。
    あの、封印されている剣を事も無げに」
   「魔力が……、おい、見ろ。何かを行っている」
   「おお、これは……何の剣だ。名高い聖剣か魔剣なのか」
   「ん……、剣ふたつ? 意外と……」
   「普通だな」

 士郎「手に馴染んでるんだ、いいだろう、別に」



 二千百五十二「されど心の眼は」

 志貴 「目隠ししてても、別な方法で見えているとか?」
 シエル「いいえ」
 志貴 「でも、見えないって信じられない」
 シエル「見えてませんってば。
     その証拠に、カレーじゃなくてシチューなら作れませんよ」
 志貴 「作れませんよって。まあ、食べようか」     



 二千百五十三「妖精の如く」

 幹也「前に昔の写真見たけど、間違いないよ」
 鮮花「時の流れって無常ね……とかいうレベルじゃないわよ、これ」
 式 「よほどの事があったって事かな」
 藤乃「あの、それが魔術師になるという事なのでは」
 幹也「なるほど」
 式 「ああ」
 藤乃「……」
 幹也「……」
 式 「……」
 鮮花「な、何よ、みんなして」
 式 「ご愁傷様。まあ、自ら弟子入り志願したんだ、覚悟は出来てるんだろ」
 鮮花「……」

 橙子「他人の写真を勝手に見るなとか、倫敦に渡る前から立派に魔術師だとか、
    そもそもそんなに私は変った覚えはないんだがとか……。
    泣くな、我が弟子よ。まったく」(ややうんざりと)



 二千百五十四「緑の扉とフランスの聖母」

 ライダー「……」
 士郎  「ライダーって本当に何でも読むんだな」
 ライダー「ええ」
 士郎  「何だか変な気分になりそうだから戻るよ」
 ライダー「うん? はい、何かあればいつでもどうぞ」
 士郎  「ああ、また来るよ。
      しかし、美女が淡々とポルノ小説を読んでいる姿か……」(小声)



 二千百五十五「積み重ね」

 小次郎「おお、珍しいな、主の主殿」
 宗一郎「その剣の振りを体得するには数え切れぬ鍛錬をしたと思うが」
 小次郎「然り。棒切れを振り回すところから始めて何年経ったか。
     未だ至らぬ腕ではあるが。
     剣と拳の違いはあれど、それは同じでは?」
 宗一郎「うむ。違いがあるとすれば……、
     その鍛えた腕を存分に振るうのを望んでいるかどうかか」
 小次郎「望まれぬか。それは確かに大きな違いだ」
 宗一郎「邪魔をしたな」
 小次郎「望まぬとは言っても、自然とこちらの間合いは外すか。
     もし剣気を……、いや、何度殺されるかわからんな。
     悪女とは言うまいが、深情けは虎の尾だ」



 二千百五十六「有から有」

 士郎「なあ、遠坂」
 凛 「何よ、うるさいわね。神経集中しているところなんだから」
 士郎「神経集中はいいけど、そんなになってる遠坂見ると……」
 凛 「ああ、もう。中断。
    難しいのよ、これから行う魔術は」
 士郎「宝石を使って、よりレベルの高い宝石を作るだっけ?」
 凛 「そうよ。偽物ではない、本物をね。
    ただし、失敗しても元の宝石はおじゃん。ああ、緊張する」
 士郎「邪魔しないように、外に出てるよ。頑張ってくれ」
 凛 「ありがとう。さて、それじゃ……」

 士郎「難しいのはわかるんだけど、それならいきなりありったけの宝石を
    掻き集めなくてもいいんじゃないかなあ。とりあえず一個試すとか。
    まあ、遠坂なら巧く…悲鳴?」



 二千百五十七「両手で受け取る」

 志貴「……」(読書)
 秋葉「……」(雑誌を手にぼうっとしている)
 志貴「秋葉って名刺は持ってるのか?」
 秋葉「え? いえ、作っていませんが」
 志貴「そうか」
 秋葉「?」



 二千百五十八「ぴかごろ」

 アルク「うーん、志貴のところ行こうかなあ。
     レンも一緒に来る?」
 レン 「……」(ふるふる)
 アルク「何で? え、雷が恐い?
     そういうものなんだ。それじゃ出掛けるの止め。一緒にいてあげる」



 二千百五十九「いもうと」

 桜 「妹だと思っていたのに、傍にいて異性として意識の方が」
 秋葉「いったん妹という意識を捨てさせてゼロから始めるより、よほど」
 鮮花「そうかしら、そうなのかしら。でも偽妹や義妹と実妹では……」



 二千百六十「勇者のいない場所」

 橙子「信じ難いが、歯痛がある」
 幹也「早めに歯医者に行った方がいいですよ」
 橙子「そうなのだろうがなあ」
 式 「なんだ、その年になって恐いのか」
 橙子「恐い」
 幹也「……ねえ、式、真顔だよ」
 式 「ああ、逆にこっちが恐くなるな」
 橙子「みすみす殺傷能力のある器具を口腔から入れさせて好きにさせる。
    どうにも気が進まない」
 幹式「……良かった」



 二千百六十一「改変」

 士郎「なあ、遠坂、教えて欲しいんだけど」
 凛 「なによ」
 士郎「もしもセイバーが聖杯を手にして、過去を変えていたとするとさ」
 凛 「うん」
 士郎「後の歴史はがらりと変わってたんじゃないかな。
    死ぬ筈の人間が死ななくて、それに騎士王の影響とか」
 凛 「確かにそれはあるわね。
    直接間接を問わず、一国内だけでなく多大な影響を与えたんだから。
    だからこそ、英霊になったとも……」
 士郎「……」
 凛 「考えると複雑な気分になるわね。私達もなかったのかもしれない。
    そうね、ここで士郎に出会って、そして帰った事も……、何がしかの
    変化につながったのかもしれない。私達自身にはわからないけど」
 士郎「そうなのか」
 凛 「ええ。ま、仮定の話はいいわ、休憩終わり。
    さ、フランス語の勉強の続き。絶対に一緒に留学するんだから」
 士郎「はいはい。英語ならまだしもなあ……。仕方ないけど」
 凛 「そういう事」



 二千百六十二「星空の下、一人呟く」

 エミヤ「アーチャー王と円卓の騎士。……響きは似てるな」



 二千百六十三「たけぞう」

 セイバー「見事なものです。
      それであれば、双刀だった宿敵にも勝てるのではないですか」
 小次郎 「さて、どうかな。数の上では優る事になるが、それだけではあるまい」
 セイバー「ふむ。両手にフォークと、二本の箸でどちらが早く食べられるか、
      そんな話にも似ている気がしますね」
 小次郎 「……」



 二千百六十四「むしろお茶漬けが美味い」

 凛 「士郎ってハーレム願望はあるの?」
 士郎「ないよ、そんなの」
 凛 「ふうん、じゃあ、今の状況はどうなのよ」
 士郎「ひとり静かに暮らすのも悪くはないよな」
 凛 「真顔で言われちゃった」



 二千百六十五「猫可愛がり」

 琥珀「志貴さん、それは少々意味合いが違うんじゃないですか」
 志貴「そうかな」
 琥珀「まあ、嫌がってはいないようですけど、レンちゃん」



 二千百六十六「ねこねここねこ」

 橙子「黒桐は、周りの異性で誰が一番猫に似てると思う?」
 幹也「何かの心理テストですか」
 橙子「単なる興味だ」
 幹也「そうですね、式に鮮花は……、うん。藤乃ちゃんもある意味。
    そもそも猫の定義が多彩ですね」
 橙子「まあ、そうかもしれない」
 幹也「所長だって、猫と言えば猫ですし」
 橙子「ほう、ほほう、それは意外だ。そうか、ふむ」
 幹也「(あれ、妙に嬉しそうな。
    ……魔女の黒猫とか化け猫というのは言わない方がよさそうだな)」



 二千百六十七「目覚め」

 志貴「……ん、……朝…か。
    ふわあ…あ…………うわあああああ。
    なんだ、なんだよ、みんなして」



 二千百六十八「家に入る」

 アルク「志貴と結婚するじゃない」
 志貴 「じゃないって言われても。で、なんだ」
 アルク「志貴がブリュンスタッド名乗ると、すごくバランス悪いのよね」
 志貴 「入り婿なのか。
     ……そうだな。なんとか佐衛門みたいな長い名前なら良かったな」
 アルク「仕方ないから我慢してあげる」
 志貴 「はいはい」



 二千百六十九「険悪」

 志貴「翡翠と琥珀さんが喧嘩してると恐ろしい空気になるな」
 秋葉「ええ。そういう関係になれた事を喜ぶべきかもしれませんが」
 志貴「雇用主として何か事態の打開は図れないのか」
 秋葉「兄さんこそ、この館唯一の男性としていかがです」
 志貴「それが出来るなら、こんな声潜ませてないよ」
 秋葉「働きが悪いなら叱責もできるのですが、むしろ良いだけに」
 志貴「プライベートには立ち入れないか。そうだよなあ」
 秋葉「はぁ」
 志貴「溜息も出るよな。ふぅ」



 二千百七十ノ一「試験前」

 鮮花「少しこの処サボリ気味でしたから、本腰を入れないと」
 式 「なら、ふむ寮でやればいいだろ」
 幹也「わからないところがあったら……、教えられるか微妙だけど」
 鮮花「教えて貰いますね。
    さてと………………終わり」
 式 「おい、三十分とたっていないぞ」
 幹也「それに教科書とノートをぱらぱらと見てただけだし」
 鮮花「ええ。ですから、終わりと。全部読み返して覚えなおしましたし。
    練習問題もやってみましたけど」(怪訝そうに)
 式 「そういうレベルなのか」
 幹也「鮮花だものなあ」
 鮮花「何ですか、二人して」
 


 二千百七十ノ二「今一人」

 橙子「何だね、皆で」
 鮮花「試験も近いので勉強をしてました」
 橙子「なんでわざわざここでやるのか。まあ、いいが。
    で、それで何で妙な雰囲気なんだ」(ノートを手に取りパラパラと)
 式 「鮮花がだな〜略〜だったんだ」
 橙子「ふむ。……それがどうかしたのか」(不思議そうに)
 鮮花「さあ、わかりません」
 幹也「普通のレベルで計ってはいけないみたいだな」
 


 二千百七十一「乾き」

 アルク「いったいどうしたの、これ?」
 志貴 「よくわからない。テレビ観てただけなんだけど。
     フリーズドライのドライカレーって響きが先輩の笑いのツボだったみたい。
     それも特大級の」



 二千百七十二「なすとかかぼちゃの絵に添えて」

 幹也「姉妹で仲良くはできないんですか」
 橙子「無理だ」
 幹也「即答ですね」
 橙子「では訊くが、黒桐家では兄妹仲はどうなのかね?」
 幹也「……どうなんでしょう?」
 橙子「何故に訊き返す」



 二千百七十三「切る」

 式 「髪が伸びてきたな」
 幹也「うん? そうだね、前行ってから結構経つかな」
 式 「調度良く、ここに髪切りバサミがある」
 幹也「それが、どう…・…、まさか?」
 式 「刃物と名のつくものなら問題ないぞ」
 幹也「その言い方は却って不安になるよ、式」
 式 「嫌ならやめるけど」
 幹也「お願いします」
 式 「ああ、まかせてくれ」
 幹也「……その笑顔は反則だと思うよ、式」(小声)



 二千百七十四ノ一「上から屋根を取るとそこには」

 シエル「秋葉さんずっと女子校ですよね」
 秋葉 「ええ。中高一貫で、通常は寮生活です」
 アルク「志貴の通ってる学校とは違うわけなんだ」
 秋葉 「兄さんのところは共学だから」
 シエル「秋葉さんのところは有数のお嬢様のみがいると」
 秋葉 「……」(何かを噛み締める表情)
 アルク「? とにかく妹の学校は女の子ばかりうじゃうじゃいるんだ」
 秋葉 「うじゃうじゃ……」


 二千百七十四ノ二「姉妹」

 シエル「ええと、それだけ隔離された環境ですと、やはり同性への関心は
     高まりますよね。いろいろな意味で」
 秋葉 「否定は致しません」
 アルク「妹なんかは妹だけど姉って感じ?」
 秋葉 「何を言ってるんです」
 アルク「うーん」
 シエル「では、秋葉さんからするとわたしとアルクェイドだとどちらの方
     が、姉、お姉さまという感じでしょうか」
 秋葉 「お二人でですか」
 アルク「……」
 シエル「……」
 秋葉 「(何だろう、この緊張感は?)」



 二千百七十五「ぐつぐつと」

 琥珀「あれ?
    え、翡翠ちゃん、味見したら何かひと味足りなかったから?
    そう、そうなんだ。
    昨日から下拵えして、ずっと煮込んで煮込んで……ふ、ふふふ。
    んんん、何でもないの。ええ、ええ。ふふふ、ふふふふふ」



 二千百七十六「隠し芸」

 アルク「え、レンも何かやりたいの。そうねえ、何がいいかしら」
 レン 「……」
 アルク「人間から猫に形態変化するのをスローモーションで?
     面白そうだけど、志貴達はどうかなあ」



 二千百七十七「朝ご飯」

 志貴 「ちょっと時間無いから、とりあえずそれで我慢しててくれ。
     昼に戻った時にはちゃんとするから」
 アルク「行ってらっしゃい。
     んー、別に私もレンもご飯はいらないんだけどなあ。
     まあ、志貴が用意してくれたんだし。
     ええと、ミルクとこの箱か」
 レン 「……」
 アルク「はい、とりあえずレンにはミルクね。こぼしちゃ駄目よ。
     私はこれを、と。
     ……。
     ん、わりと香ばしいしポリポリ食べるといいかも。
     さてと、ワイドショー、ワイドショー」

 志貴 「ただいま。
     ……コーンフレークの食べ方って一般常識には入ってなかったか」



 二千百七十八「脳を洗う」

 志貴 「先輩の力って、悪用するととんでもない事出来ますよね」
 シエル「遠野くん、神に仕える者がそんな事する訳がないでしょう」
 志貴 「そうだよね」
 シエル「ええ」
 志貴 「でも、真顔で言い切るのが逆に……何でも無いです」



 二千百七十九「灼熱」

 シオン「夏は嫌ですね」
 志貴 「そうなの? って、そうだよなあ、シオンの場合。
     あいつと同じに思っちゃいけないよな」
 シオン「ええ。道で高度な計算をしていると、他の季節よりも道行く人達に
     危ない人を見る目で見られますから」



 二千百八十「損して得取れ?」

 琥珀「どうでした?」
 秋葉「ええ、信じがたいほど上手くいったわ」
 琥珀「どちらも悪くないのなら、先に謝った方が勝ちなんですよ」
 秋葉「そうね。うん、おぼえておくわ」
 琥珀「時には絶対に自分からは譲歩しないのも効果的ですけどね」(小声)



 二千百八十一「割れスイカ」

 琥珀「あの、志貴さん」
 志貴「うん?」
 琥珀「時々スイカを貰ってきて頂くのは嬉しいんですけど、
    なんで必ず割れてるんですか?」
 志貴「それは俺が聞きたいよ」
 琥珀「?」



 二千百八十二「格差」

 秋葉 「お金ですか?
     それは無いよりはあった方が良いのではないかと思いますけど」
 アルク「そうだよね、うん」
 シエル「ほら、この辺が違う訳ですよ。わかるでしょ、遠野くん」
 志貴 「なるほど」
 秋・ア「???」



 二千百八十三「殺伐」

 アルク「シエル……?
     随分とまあ、強い殺気を纏って。そうね、昔を思い出すわね
     本気でやる気?」
 シエル「アルクェイドですか、別にあなたを構うつもりはありません。
     そちらが望むいうのであれば、いい機会です、お相手しますが?」
 アルク「うーん、面倒だからパス。
     わたし相手じゃないなら、どうしたのよ。死徒は現れていないし」
 シエル「もう一週間もカレーを食べていないんです。
     いや、あえて断っているッッ」
 アルク「ああ、そうなの。ふーん」(関わりたくないと後ずさりしつつ)



 二千百八十四ノ一「うどん屋」

 志貴 「けっこう変り種のメニューもあって美味しいらしいですよ」
 シエル「なるほど、いろいろありますね」
 店員 「ご注文はお決まりでしょうか」
 志貴 「そうだなあ、よし、釜揚げうどん」
 シエル「カレーうどんを頂きます」
 店員 「カレーうどんは、普通の汁にカレーを掛けたものと、汁全てが
     カレーになっているものがございますが、どちらになさいますか?」
 シエル「では、カレーを掛ける方を」
 志貴 「え?」
 シエル「何ですか、その意外そうな顔は」
 志貴 「だってさあ……」


 二千百八十四ノ二「じゃあ」

 シエル「すません、やっぱりカレー汁の方を」
 店員 「かしこまりました」
 志貴 「……」 
 シエル「遠野くん、なんでまだ変な顔をしているんです」
 志貴 「だってシエル先輩らしくない」
 シエル「カレーが多い方にしたじゃないですか」
 志貴 「すかさず両方って言わないなんてさ」
 シエル「……」



 二千百八十五「電線を繋ぐ」

 シエル「街の景観も変わっていくのですねえ」
 志貴 「そうだね。知らないうちに新しい店が出来たり」
 シエル「結構死活問題になるんですよ」
 志貴 「何が?」
 シエル「電柱の地中化」



 二千百八十六「包丁捌き」

 琥珀「新鮮なお魚だったんですけど、変ですねえ。
    ちゃんと生け作りになっているのに風味が。なんだろう」
 志貴「暴れてたんで、つい眼鏡を外して。
    こうなっちゃうんだ、知らなかった」
 琥珀「志貴さん、何か仰いましたか」
 志貴「いいえ。……完全に死んじゃってるもんなあ」(小声)



 二千百八十七「派遣先」

 シエル「食堂でカレー料理は食べる事が出来る。
     ただし恐ろしく不味い。
     これは……、悩みどころですね。
     いっそ自分で作るか、それとも徹底的に指導をするか」



 二千百八十八「力関係」

 シエル「秋葉さん琥珀さんでは秋葉さん。でも最後の一線で勝つのは琥珀さん。
     琥珀さん遠野くんでは琥珀さん。でも最後の一線で勝つのは遠野くん。
     それで秋葉さんと遠野くんではどうかと言うと、わたしが見た所では、
     秋葉さんが強いですが、最後は遠野くん」
 アルク「そんな感じかなあ」
 シエル「では、秋葉さんが最弱で、遠野くんが最強かと言うと」
 アルク「全然そんな事ないわね」
 シエル「ええ。人間関係の面白いところです」
    
 

 二千百八十九「原液」

 式 「あの塵溜めを整理したのか、ご苦労な事だな」
 幹也「うん、それでこんなの見つけたんだ」
 鮮花「古い写真?」
 式 「これはトウコか。前に見たのよりさらに若いな。
    隣にいるのは妹かな。この頃は殺伐としてないのか」
 幹也「でさ、似てないかな」
 式 「似てるって……、ああ、少し感じが似てるかもしれない」
 鮮花「誰にです?」
 式 「鮮花」
 幹也「うん」
 鮮花「そうですか?」
 幹也「でね、いろいろと考えていて怖くなってきた」
 式 「トウコと妹、それと鮮花か。なるほど……」
 鮮花「……」



 二千百九十「食事」

 藤ねえ「あ、今日はお肉なんだ。うんうん、士郎が作ってる感じ」
 士郎 「そう言えば、何だか最近野菜中心のメニューだな」
 藤ねえ「そうなのよ、桜ちゃんも遠坂さんも。美味しいけど」
 士郎 「確かに参考になるな。少し俺も新メニュー開発しようか」
 藤ねえ「士郎はお肉とかタンパク質ー。
     なんだか最近体重落ちちゃってるんだから」
 士郎 「わかったよ」

 凛  「あれだけ好き放題食べてるのに」
 桜  「こっちは全然効果ないのに、肉が憎いのに」



 二千百九十一「良き食卓の為に」

 士郎  「今日はサンマが安かった。それもかなり脂が乗ったやつがさ」
 桜   「あ、ほんとですね。美味しそう」
 凛   「へえ、なかなかいい眼をしてるわね」
 セイバー「ふむ。魚についてはまだよくわかりませんが、シロウは目利きなの
      ですか?」
 士郎  「そんなたいしたものじゃないよ。
      まあ、より良いもの美味しいものを見抜く眼は大事だよな」
 凛   「お金を払う以上は、それに見合うものを手に入れないとね」
 桜   「先輩と姉さん、微妙に言ってることが違うような……?」



 二千百九十二「ツン」

 士郎「終わったぞ、遠坂」
 凛 「ご苦労様」(背後を振り向きもせず)
 士郎「あれだけ人をこき使ってそれだけか」
 凛 「うーん、そうね。等価交換には少し足りないか。
    じゃあ、ご褒美にいい事してあげましょうか」
 士郎「いい事?」
 凛 「蔑んで侮蔑の言葉吐いてあげる」
 士郎「…………そ、それのどこがいい事なんだよ」
 凛 「三秒の間が生じるか。ふーん、なるほどね」



 二千百九十三「文化的な価値とか」

 志貴「よし、拭けたよ」
 翡翠「すみません、志貴さま。こんな事まで……」
 志貴「埃払う位の手伝いはしても罰は当たらないだろ。
    よっと、あッッ」

    ガチャーーーーン!

 志貴「割れた」
 翡翠「割れました」
 琥珀「割れましたねえ」
 志貴「あのさ、もしかしなくても高価なものだよね」
 琥珀「形あるものはいずれ壊れるのが定めですよ」
 志貴「そうかしれないけど、でも、幾らなのさ」
 翡翠「あの、秋葉さまが」
 志貴「そうだな、秋葉なら知ってるか。知られたくないけどな」
 翡翠「いえ、秋葉さまがそこで気絶なさっております」
 志貴「え、ああ。……ああッッ」



 二千百九十四「人と猫」

 志貴「人間と猫だと動きで違いが生じる? まあ、そうだろうね」
 レン「……」
 志貴「人の方が便利は便利かな。手が使えるからね」
 レン「……」
 志貴「え、人間になると耳が自由に動かない?
    それは重要なの? ……そうなのか」



 二千百九十五「庶民派」

 琥珀「あら、志貴さん」
 志貴「買い物の途中?」
 琥珀「ええ」
 志貴「大概のものは配達みたいだけど、やっぱりそれだけじゃ足りないよね」
 琥珀「そうですね。
    志貴さんリクエストのメニューだと取り扱いないものが多くて」
 志貴「……」



 二千百九十六「月であれスッポンであれ」

 橙子「魔術師などというものはね、扱う対象の価値を等列にしなければならない。
    世俗の貴賎や優劣は時に無意味」
 幹也「だから、高価なガラクタを構わず買ってしまうと?」
 橙子「ガラクタかどうかは意見の相違があるが、まあ、値段は気にしない」
 幹也「安くて粗雑な方に重きを置く方向には行かないんですか?」
 橙子「いかない」
 幹也「そうでしょうね」(別に期待はしない顔で)



 二千百九十七「山と積まれた」

 式 「……」
 鮮花「……」
 幹也「……何ですか、これ?」
 橙子「見た事ないかね、紙幣といってだな、物の売買の仲立ちとしての…」
 幹也「いえ、それは承知してますが、その紙幣が何で束になってこんなに」
 橙子「ああ、仕事の報酬だ。取りに来て直接払っていった。
    さすがにこれだけあるといささか邪魔だな」(ふらりと外へ)
 鮮花「凄いですね、橙子師」
 式 「単に無神経なんじゃないのか?」
 幹也「でも、あれだから躊躇無く浪費するんだろうなあ」
 


 二千百九十八「夏祭り」

 式 「……」
 幹也「……」
 式 「着物姿は見慣れてるだろう?」
 幹也「着物はそうだけど、浴衣は……」



 二千百九十九「麺と汁」

 シエル「ふむふむ」
 志貴 「また先輩、カレーうどんを何杯も。もう慣れたけど」
 シエル「ああ、遠野くん。同じのをおかわりしているのと違うんですよ。
     今日はおうどんを何種類か持ち込みさせて貰ってるんです」
 志貴 「ふうん?」
 シエル「同じカレー汁でもうどんが違うと味がまったく別なものになるんです。
     これは面白い試みでした。この細麺なんかは汁がですね……」
 志貴 「何杯も食べるという部分が問題なんだけど、まあいいか」
     


 二千二百「無数の剣と無限の剣が」

 凛「……剣の舞?」



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