天抜き 其の四十七






 二千三百一「さかしまに」

 蒼香「そんなにぶつぶつ文句言うなら、たまには逆の立場になったらどうだ」
 秋葉「逆ってどういう事よ」
 蒼香「おまえさんが、焼もちを焼かせる方になったらどうなんだ」
 秋葉「ああ、そういう事。ん……、無理ね」
 蒼香「ええと、それは全然怪しい素振りをしても気に留められないからか」
 秋葉「私が、他の男なんてとんでもないから」
 蒼香「そっちか。まあ、そうだろうなあ。じゃあ、遠野が広い心を持って」
 秋葉「それもイヤ」
 蒼香「はいはい」



 二千三百二「平穏」

 シエル「最近は、黒鍵の補充とか、服や靴の修繕とかの費用が減ったんです」
 志貴 「そうなの?」
 シエル「ええ。無茶な戦いをする事が少なくなりましたから」
 志貴 「そうか」
 シエル「おかげでカレーにかけられるお金が増えたんです。嬉しい」
 志貴 「それは良かった」(投げやりに)



 二千三百三「不意打ちだしね」

 所在「ねえ、マトさん。銃弾食らって平気な奴がさ、バットで叩かれたくらいで
    ダメージ受けるものかな」
 戸的「ラクダも最後の藁一本で背骨が折れるからな」
 所在「何、それ?」
 戸的「いや。精神的なものもあろう。
    よりによってお前からとどめを食らったのだからな」
 所在「あー、なるほどね。で、この場合俺が恨まれる方な訳?」
 戸的「知らん」



 二千三百四「光速」

 志貴 「アルクェイドってどのくらい速く移動できる?」
 アルク「さあ」
 志貴 「光速でとかは」
 アルク「やった事はないけど、試してみようか」(事もなげに)
 志貴 「さすがに無理だと思うけど。下手したらやりそうだよなあ」



 二千三百五「異名」

 セイバー「あります」
 ライダー「同じく」
 ランサー「俺もある」
 バーサカ「……」(頷く)
 小次郎 「微妙だが、あると言えよう」
 キャスタ「少しも嬉しくないけど、あるはあるわね」

 アーチャ「ほっといてくれ」

 凛 「別に名の知れた英霊じゃないものねえ」
 士郎「……」(複雑な表情)



 二千三百六「重力」

 ギル「我の時代と比べれば、現在は変化している」
 凛 「数値的にはそうかもしれないけど、信じがたいわね」



 二千三百七「自在」

 小次郎「―――、こんな具合だが、参考になったろうか」
 士郎 「凄いな。剣筋を見てるだけで寒気がしてきた」
 小次郎「なんの。星の数ほど刀を振っていれば会得できる程度だ。
     まだ、自在に刀を操れるというだけに過ぎん」
 士郎 「それで充分でないのか」
 小次郎「自在に操るという部分がな。操るというは、まだ異物たるという事。
     意識すら消えている境地、さらにその先―――」
 士郎 「想像も及ばないな」(溜息)
 


 二千三百八「高貴」

 キャスター「さあ、王族だろうが貴族だろうが駄目な人間は駄目ね。
       却って品性の欠片も無い屑もいたし。
       自分から好き好んで王になろうとする人間?
       馬鹿だと思うけど、それはそれで志は高いのかしら。
       どうなの、そこら辺は?」
 セイバー 「難しい……、難しい問いです」



 二千三百九「女騎士」

 士郎「セイバーも女騎士なんだよな。なんだか凄く違和感あるけど」



 二千三百十「稀な」

 橙子「なんだ、姦しいと思えば、つまらん話題で盛り上がっているのだな。
    黒桐の寝顔など、何度となくここで見ている。
    え……、わたしだけなのか?
    そうか。それは何と言うか……」



 二千三百十一「イメージ」

 幹也「式にたまには女の子らしい格好をしたらどうかと言ったんです」
 橙子「ほう。それは、嫌な顔をしたのではないのかね」
 幹也「ええ、そうでした。少し怒らせちゃったかもしれない」
 橙子「で、その状況で何でぽやぽやした顔をしてるんだ、黒桐は」
 幹也「式が考えるところの女の子らしい服ってどんなのかなと思って」
 橙子「なるほど。む……、ああ、なかなか想像するに面白いな」



 二千三百十二「因果」

 所在「マトさんは、大量惨殺事件現場の検証したすぐ後でも、ピザとか
    焼肉とか食べられるでしょ」
 戸的「何ら問題なくな」
 所在「そうだろうと思った」
 戸的「どう、そうだろうなんだ。
    ああ、ひとつ言っておくがな、関係なく食べられるんだ」
 所在「へ?」
 戸的「だからこそ食べる、のではなくてな。そこは間違えるな」
 所在「はいはい。何だかわからないけど」



 二千三百十三「てっぽう」

 志貴「へえ、綺麗なものだなあ」
 琥珀「ふぐの良いのが手に入ったんで、お刺身とお鍋にしました」
 秋葉「今の時期にはいいわね」
 琥珀「はい。うまく捌けました」
 志貴「お、琥珀さんが自分で捌いたんだ」
 琥珀「はい。どうぞ、召し上がってください」
 秋葉「……」
 志貴「……」
 琥珀「どうなさったんですか?」
 秋葉「兄さんから」
 志貴「いや、秋葉こそ」 
 秋葉「……」
 志貴「……」
 秋葉「むしろ、安全かも」
 志貴「なるほど」
 秋葉「あ、美味しい」
 志貴「美味いな」
 琥珀「……」



 二千三百十四「逆に考えるんだ」

 アルク「ねえ、志貴ってば。遊んでよ」
 志貴 「だから、テストなんだって。
     これで成績下がってたら、ここに顔出すのも難しくなるぞ」
 アルク「むう」
 志貴 「少しの辛抱だからさ、な」
 アルク「でも、つまんない」
 志貴 「じゃあ、つまらないって事を面白がれるようになれ」
 アルク「え、ええっ?」(考え込む)
 志貴 「さてと、半径10pの円があって……、うーん」



 二千三百十五「デビル」

 シエル「ふう、なんで深い味わい」
 志貴 「あのさ、先輩」
 シエル「何ですか、わけて欲しいんですか?」
 志貴 「ちょっと魅力的ですが結構です。
     それイカとかタコとか入ってるけど、平気なの?」
 シエル「何を言ってるんです、遠野君。
     これはシーフードカレーですよ」
 志貴 「それはわかってるけど」
 シエル「この新鮮な魚介類を包み込むルーがまた、嗚呼。
     すみません、おかわり。大盛りで」
 志貴 「まあ、いいか」



 二千三百十六「一本でも」

 シエル「ニンジンのカレー煮込み」
 ななこ「……」
 シエル「ニンジンのカレーソース和え」
 ななこ「……」
 シエル「白身魚と温野菜のサラダ、カレー風味」
 ななこ「じゃあ、それで」
 シエル「ふう、夕飯のメニュー決めるのも一苦労ですね」
 ななこ「じゃあ、わたしだけ生ニンジンで」
 シエル「却下です」



 二千三百十七「必殺じゃない技」

 アルク「とりゃあーーーーッ」
 シエル「なッッ! はああッッッ!」
 アルク「あれ、避けられた。変だなあ」
 シエル「アルクェイド、あなた変なマンガとかに影響されましたね」
 アルク「あ、シエルも読んでたんだ。
     決まったら格好よいかと思ったんだけどなあ」
 シエル「読んだなら、返し技がある事も覚えておきなさい」
 アルク「ああ、なるほどねえ」



 二千三百十八「ひいふうみい」

 橙子「豆撒きの炒り豆か。
    ん……? ああ、年の数だろう? 別段見られても困らん。
    困らんと言っている。言っているんだッッ」



 バレンタインもの

 二千三百十九「推理」

 士郎「何度か包み直したような跡。
    元々入っていたらしい紙の箱。
    不自然な空間。
    ゴミ箱からこぼれていた包み紙。
    いやまあ、くれた事自体が凄く嬉しいけどさ」
 凛 「何をぶつぶつ言ってるのよ。
    ああ、味見された訳ね。過度に」



 二千三百二十ノ一「タイミング」

 秋葉「兄さん、チョコレートです」
 志貴「ありがとう」

 琥珀「凄い、絶妙なタイミングで志貴さん現れましたねえ。
    あと少し早ければ上手く渡そうとして言い出せなくて。
    あと少し遅ければ煮詰まり過ぎて渡すに渡せず。
    空白みたいな何も考えずに渡せる数秒間。
    いつもはあんなに信じられないほど間が悪いのに……」


 二千三百二十ノ二「外し」

 琥珀「その奇跡の数秒をあっさり覆してしまう不用意な物言いが……、
    やっぱり志貴さんですねえ」
 翡翠「……」(ため息)
 


 二千三百二十一「もっと高く、もっと遠くへ」

 さつき「本当に、これでいいの?」
 シオン「間違いありません。志貴の場合高級なベルギー製チョコなどより、
     普通の板チョコの方が間違いありません」
 さつき「でも、でも、普通過ぎない?」
 シオン「まあ、データをどう捉えるかはさつきの自由ですよ。
     せっかくの機会ですから、思い通りにした方が……」
 さつき「うん、そうだよね。ちょっと買い物してくるね」
 シオン「した方が、後悔は小さくてすむでしょう」(嘆息)



 二千三百二十二「黒猫とチョコレート」

 レン「……」
 志貴「チョコレートか。ありがとうレン」
 レン「……」(やや嬉しそうな顔をして立ち去り)
 志貴「ん……、小さな女の子に貰うと妙に嬉しいのは何故だろう。
    変な意味でなくて」



 二千三百二十三「朝から何も口にしていなかった」

 橙子「ふむ」(パキリ)
 鮮花「これでいい筈よ。誤解されず、それでいて意識させるぎりぎり」
 藤乃「渡していいのでしょうか、これ」
 式 「ふん」
 橙子「なるほど、甘さを抑えるとなかなか」
 鮮花「あの、さっきから何を食べているのですか」
 橙子「チョコレートだが」
 鮮花「何だって、こんな日にわざわざ」
 式 「買ってみたはいいが、やる相手もいないから自分で食べてるんだろ。
    ちょっと寂しい光景だな」
 橙子「いや、さっき黒桐に貰った」
 一同「!!!!!」
 橙子「たまたま持ってたらしくてな。お腹がすいたと呟いたらだな、
    ああ、わかった、わかった。一欠片ずつわけてやろう」
 


 二千三百二十四「気合意気込み」

 志貴 「何だって、おまえはこんな時ばかり妙に凝った事やろうとするんだ」
 アルク「だって」
 志貴 「そんな顔するなって。
     ま、嬉しくない訳じゃない」
 アルク「あ、そうなんだ」
 志貴 「とりあえず、片付けるか。取れるのか、この焦げは」



 二千三百二十五「見た目もね」

 シエル「遠野君、チョコレート味のチョコレートですよ。はい」
 志貴 「ありがとう、先輩。
     でも、何でその言い方、もの凄く禍々しいんだろう」



 二千三百二十六「きみだけしか見えない」

 翡翠「あの、皆様のチョコレートの山の中から、どうしてわたしのものを
    簡単に見つけ出されたのですか?」
 志貴「ええと、その……」(どう言ったらやんわりとなるだろうか思案顔で)



 二千三百二十七「パスタとかフライとかはあるが」

 士郎「変な事で悩むんだなあ、桜は」
 桜 「だって、先輩相手だと、ご飯のおかずとかでないといけない気がして」
 士郎「む。何かわかる気もするけど、こういう時は普通でいいと思うぞ」
 桜 「はい。
    ええと、では、改めて。先輩、チョコレート受け取って下さい」
 士郎「ありがたく、頂戴します」



 二千三百二十八「無かった日々」

 アーチャー「これは?」
 セイバー 「近しい人にも配る風習と聞きました。
       特にあなたはこの国の生まれですから」
 アーチャー「なるほど、義理チョコだな」
 セイバー 「いらないのであれば、引き取りますが」
 アーチャー「いや、頂いておこう」
 セイバー 「では」
 アーチャー「セイバー」
 セイバー 「はい?」
 アーチャー「ありがとう」
 セイバー 「はい」
 アーチャー「……」
 セイバー 「……何だろう、あのアーチャーらしからぬ表情は?
       なんで、あんな目で私を見るのでしょうか」



 二千三百二十九「これ見よがしに」

 ランサー「……」
 カレン 「何か言いたそうね」
 ランサー「お前、あいつがこそこそこっち覗ってるの気づいてるだろ」
 カレン 「何の事かしら」
 ランサー「じゃあ、何だって俺にチョコなんぞ渡すんだよ、わざわざ外で」
 カレン 「心外ね。普段の感謝の念の何物でもないわ」
 ランサー「じゃあ、何で小僧の方には渡さないんだ」
 カレン 「さあ」
 ランサー「ったく。嫌がらせの為なら俺にチョコ渡すくらい平気でやるんだな」
 


 二千三百三十「意外なような、そうでないような」

 士郎「え? ああ、藤ねえなら毎年幾つかチョコレート貰ってくるぞ。
    何でかって言われても、俺も女子の事は良く分からないよ」



 二千三百三十一「イメージ」

 イリヤ「はい、シロウ」
 士郎 「ありがとう、イリヤ」
 イリヤ「ねえ、開けてみてよ、どう?」
 士郎 「へえ、凝ってるなあ。でも……」
 イリヤ「でも?」
 士郎 「ホワイトチョコじゃないんだなって」
 イリヤ「んん? なんで?」
 士郎 「いや、何となく。うん、ありがとう、イリヤ」
 イリヤ「それは、もう言ったわよ、シロウ」



 ……以下通常


 二千三百三十二「小銭を貯めておく大きなガラス瓶」

 士郎「やっぱりあったか。
    うーん、似合わないけど、似合うなあ」
 凛 「うるさいわね」



 二千三百三十三「ことの他美味くできたので」

 シエル「ああ、残って一晩寝かせたのを食べようとしていたのに。
     仕方ない、もう一鍋作りましょうか」



 二千三百三十四「男の手料理」

 志貴「いや、何となく作りたくなってさ。
    簡単なものだけど」
 秋葉「でも、なかなか美味しそうですね」
 志貴「皆に食べて貰いたくなってさ、たまにはいいだろ」
 琥珀「はあ。まあ嬉しいのですけど」
 翡翠「……」(志貴の言葉に頷き)
 琥珀「うーん」(余計な知恵つけない方がと言いたそうな顔で)



 二千三百三十五「帰り道」

 桜 「て、手を」
 士郎「手を?」
 桜 「手を繋ぎますッッ!」
 士郎「あ、ああ。これでいいかな」
 桜 「あっ……」(勝ったような、負けたような顔で)



 二千三百三十六「主従」

 凛 「何、ぼんやりして」
 士郎「いや、サーヴァントとマスターって考えてたんだけど」
 凛 「ふうん」
 士郎「あまり、マスターに恵まれたサーヴァントっていないのかなあ」
 凛 「何よ、それ。わたしも勘定に入って……、なるほど」



 二千三百三十七「姿なく」

 秋葉「兄さんは勉強中なのね?」
 琥珀「はい、先ほど翡翠ちゃんがお茶をお持ちしました」
 秋葉「そう」
 琥珀「秋葉さまはおかわりは?」
 秋葉「そうね」
 琥珀「少々お待ち下さい」
 秋葉「勉強ね……」
 琥珀「(文句は言えないけどつまらないといった感じでしょうかねえ)」



 二千三百三十八「ジュージュー」

 セイバー「きちんと焦げ目がつくまで焼いた方が美味しいではないですか」
 ライダー「そうですか。しかし私は血の滴る方を好むので」
 セイバー「ああ、また私の楽しみにしていた肉をッッッ!!」



 二千三百三十九「知り合いの知り合いのそのまた」

 橙子「ときどき思うのだがね、
    黒桐、きみがわたしの処へ来なかったらどうだったろうかと」
 幹也「どうなんでしょう」
 橙子「まあ、世間は非常に狭く作られるからな。
    発端はどうであれ、静寂さは破られていたのかもしれない。
    とは言え、何でこんな事に……」
 幹也「さあ」



 二千三百四十「中華まんください」

 シエル「お待たせしました」
 志貴 「買い物くらい俺が行くのに」
 シエル「いいんですよ。ただ、ご注文のカレーまんが無くて。
     代わりに肉まんになってしまいました。」
 志貴 「まあ、それならそれでいいよ。
     あ、ありがとう。まだ熱いね。
     頂きます。……って、あれ?」
 シエル「とりあえずカレー粉を忍ばせておきました」
 志貴 「ふうん…、悪くないけど……、変な感じ」



 二千三百四十一「麺」

 シエル「うどんとかラーメン、スパゲティやビーフン。
     麺類はカレーやカレー味とよくマッチしますね」
 志貴 「米粉とか小麦粉が原料だからならそうなるのかな。
     そうだ、素麺とか冷麦は?」
 シエル「カレー汁に漬して食べるのは夏の定番じゃないですか」
 志貴 「え?」
 シエル「ん?」



 二千三百四十二「ミニカツ丼も選べました」

 シエル「高級なカレーもいいですが、セットメニューでおまけについてくる
     ミニカレーライスもいいですねえ」
 志貴 「ダメなカレーってあるの、シエル先輩的に?」
 シエル「良いところを突きますね、遠野君」



 二千三百四十三「こねてまるめて」

 志貴 「先輩、本式のカレーは食べた事ある?」
 シエル「本式と言うと?」
 志貴 「ほら、皿に盛ったのを手で食べるようなやつ」
 シエル「ありますよ。
     官能的ですね、あれは……」
 志貴 「そんなうっとりとなるほどに」(そそられた表情で)



 二千三百四十四「暑い寒い」

 シエル「どうしました、遠野くん。
     おかわりならまだ幾らでもありますよ」
 志貴 「いえ、もういいです。
     カレーを食べるのにいちばん合ってる季節っていつですかね?」
 シエル「一年中ですと言えば終わりですが、なるほど、難問ですね。
     寒い冬の日はもちろん、食欲の無くなる夏にもうってつけ。
     考えれば考えるほど難しい。
     むむ……、すみません、一晩時間を下さい」
 志貴 「そんな根詰める質問じゃないんだけどなあ……」



 二千三百四十五「はじまり」

 志貴 「今にして思えばさ、よくアルクェイドの事、バラバラに出来たな」
 アルク「そう?」
 志貴 「出会い頭って勢いかもしれないけどさ」
 アルク「蚊に刺されるまで蚊の事を気に留めていなかったみたいな話かも」
 志貴 「蚊……」
 アルク「結果として病源体が伝染して酷い目になったって感じとか」
 志貴 「病源体……」



 二千三百四十六「おわああ、ここの家の主人は病気です」

 志貴「猫の発情期か……」(視線を向けつつ)



 二千三百四十七「逃避行の中で」

 志貴 「なるほど、身銭を切るとはよく言ったものだなあ」
 さつき「どうしたの、志貴くん」
 志貴 「いや、何でもない。夜まで休んでいなよ。
     先は長いから」
 さつき「長い……かな?
     うん、休む。綺麗な夜が来るまで」
 志貴 「ああ」(優しく)



 二千三百四十八「年上の女」

 志貴「イチゴさん、結婚するんですか」
 一子「ああ」
 志貴「そ、そうですか。おめでとうございます。
   (何でこんなにショック何だろう……)
 


 二千三百四十九ノ一「ホットケーキ」

 志貴 「ふうん、そうか。確かに料理覚える手始めとしてはいいかもな」
 アルク「バターに卵に牛乳に……、うん、準備万端。
     もう作り方ばっちりだから、志貴びっくりだよ」
 志貴 「はいはい。でも、かなり最初は失敗したんだろ。焦がしたりさ」
 アルク「ん? 焼くのは初めてだよ」
 志貴 「そうか……」


 二千三百四十九ノ二「焼いてみました」

 志貴 「なんで、初めてなら手本通りにやらないんだよ」
 アルク「テレビで、こうやってたよ」
 志貴 「本には買いてないだろ。何でこんなとこばっかり凝るんだ」
 アルク「だってえ……」(天井に貼りついた粘体を見つめつつ)



 二千三百五十「切り札と言えば言える」

 志貴 「先輩は、一応魔術を使えるんですよね」
 シエル「YESとNOで答えるのならば、YESですけど。
     でも、よほどの事があっても、使う事はないでしょう」
 志貴 「なんで?」
 シエル「遠野くんは魔眼の力をリスクなしに使えるとしたら、使います?」
 志貴 「うん? ああ、何となくわかった」
 シエル「状況は違いますけどね。まあ、そういう事です」



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