天抜き 其の五十一






 二千五百一「出藍とは少し違う」 

 橙子「昔は周りが馬鹿に見えたと言っていたが、今はどうかね」
 鮮花「それだけではないと知りました」
 橙子「ふむ。今はわたしは鮮花の持たぬ知識を持っている訳だが、
    それ以外の部分では、弟子に勝っているのかな」
 鮮花「橙子師は尊敬できる方ですよ、魔術師の弟子として」
 橙子「そうか」
 鮮花「はい」
 橙子「……答えを逸らされた気がするのだが」(呟き)



 二千五百二「豹変」

 幹也「そう言えば、橙子さん自動車免許持ってましたね」
 橙子「ああ。前に乗せた事もあったろう。
    正確にはわたしが乗せた事は無いんだが」
 幹也「あの時は緊急時でしたけど、普段ハンドル握る時って人間が
    変わったりはしないんですか」
 橙子「しないよ。
    そもそも人間なんてものはそうキャラクターを一変させたり
    出来ないものだ」
 幹也「……へえ」



 二千五百三「魔術師的に」 

 橙子「魔術回路とは違うが、異能の力は有している。
    一方で、実兄も妙な能力を宿している。
    掛け合わせたらどうなるのだろうな。打ち消しあうか、変異でも
    するのか。興味深いと言えば、興味深いのだが……」



 二千五百四「色即是空」

 一成「急に深刻な顔をして訪ねて来るとは。
    御仏の加護が必要なのか。
    む、煩悩を振り払いたいと?
    何があった、衛宮。
    いや、言えないとそんなに深く溜息突かれても……」



 二千五百五「意外な一面」

 氷室「人間誰しも、他人からは不思議に思えるギャップがあるものだ。
    遠坂嬢とて例外ではないだろう。
    容姿端麗文武両道で完璧に見えるが、意外な弱点があるとか。
    弱点ではないが、例としては……、
    蒔の字、汝は一人で着物の着付け出来るかね?」
 蒔寺「当然」
 氷室「こういうのがそうであるな。
    普段の学園でのキャラクターからは信じがたいギャップとは」



 二千五百六「とまどうペンギン」

 士郎  「暑いとは言ってもかき氷はまだ早いんじゃないか。
      まあ出してきたんなら作っても良いけど」
 セイバー「お願いします」

     ガリガリガリ……。

 士郎  「はい」
 セイバー「……シロウ」
 士郎  「うん、何だ、セイバー、怖い顔をして」
 セイバー「このような嫌がらせをされるとは心…」
 藤ねえ 「うんうん、氷に透明なシロップのスイ。粋をわかっているわね」
 士郎  「たまにはいいだろ。単に普通のシロップなかったから作ったん
      だけどさ」
 藤ねえ 「ふうん。あれ、セイバーちゃん、どうしたの?」
 セイバー「いえ、その、んんん???」



 二千五百七ノ一「アインツベルンの騎士王」

 凛  「姑息に聖杯戦争前にバーサーカー召喚していたくらいだから
     過去の聖杯戦争の分析や対策なんかはしていたのよね」
 イリヤ「姑息とは言ってくれるじゃない。当然の事でしょ。
     聖杯戦争始まってから望んでもいないサーヴァントを慌てて
     召喚する方がおかしいわ」
 士郎 「だったら、前回と同じセイバーがまた召喚された事なんかは、
     かなり驚きだったんだろうな」
 イリヤ「……当然ダワ」
 凛  「何なのよ、それを今わたしに言われてもって顔」


 二千五百七ノ二「アインツベルンの魔術師殺し」

 士郎 「じゃあさ、魔術供給が万全でないセイバーと魔術師らしくない
     マスターの組合せって、また囮作戦かと判断したんだろ」
 凛  「その割にはマスター自らわざわざ姿を現していたわね」
 イリヤ「……アエテ姿ヲダシテ事態ヲ動カス戦略ヨ」
 凛  「だから何なのよ、それを今わたしに言われてもって顔」



 二千五百八「わかりやすく」

 セイバー「この圧力鍋というのはどういうものなのですか」
 桜   「ええと、ぎゅっと圧力が掛かって高温で調理して、短時間で
      煮たりできるんです」
 セイバー「ほほう。しかし、その理屈がよくわかりません」
 桜   「うう……、先輩」
 士郎  「俺に振られても。
      構造はともかくとして、普通に焼いたなら食べられない魚の
      骨まで柔らかくしてくれるんだ。凄いだろう」
 セイバー「ふむ、納得しました」
 桜   「納得するんだ」



 二千五百九「年長の者として」

 橙子「他人の家に興味を持つのは構わんが、別段この先音信不通でも
    何ら困らないのだがな。向こうもそうだろう。
    あー、いや、私にはそもそも妹なぞいない」
 幹也「どうも納得いきません」
 橙子「では訊くが、黒桐は兄として妹に何かしたのかね」
 幹也「え……」
 橙子「困った顔なら分かるんだが、何で意表つかれた顔なんだ」



 二千五百十「わたし作る人、あなた食べる人」

 士郎「ふと思ったんだけどさ」
 凛 「何よ。あ、桜、それもう茹ってるかも。見てみて」
 桜 「はい」
 士郎「今は買い食いするの除くと、俺達が作ったものを食べてるだろ」
 凛 「セイバー? そうね」
 士郎「それで、時々料理手伝ったり、おぼえたりしたいって言うだろ」
 凛 「回りくどいわね、それが何よ。
    料理当番が増えればもっと楽になるとか言いたいのかしら」
 士郎「まさか。もしもセイバーが自分で材料から調理できたとしたら
    どうなるんだって思って。今は料理されたものだけを」
 凛 「ああ、なるほど」
 桜 「わかりました」
 士郎「抑止力になっているのかなってね。さてと仕上げ、仕上げ」



 二千五百十一「上昇」

 志貴「なあ秋葉、今年はクーラー導入しないか」
 秋葉「却下です」
 志貴「個室にまでとは言わないから、居間だけでもさ」
 秋葉「珍しく粘りますね、何でそんなに欲しがるんです」
 志貴「だって、人が多いじゃないか」
 秋葉「……なるほど。考えておきましょう」



 二千五百十二ノ一「シーズン」

 シエル「これから暑くなってくると辛いカレーが美味しいですね。
     スパイシーな香りは夏バテの体にも食欲を喚起しますし、
     夏こそカレーと言えるでしょう」
 志貴 「冬の間は、体を温めるカレーはまさに冬の食べ物とか先輩
     言ってたよーな……」


 二千五百十二ノ二「既知感」

 志貴 「あれ、先輩、ずっと前にも同じような会話した気がする」
 シエル「そうでしたか。
     でも、夏に辛いカレーが美味しいというのは真理です。
     何度も言っていてもおかしくはないですね」
 志貴 「まあ、そうかもしれないね。
     これが秋になったら、実りの秋の素材を活かせるカレーは
     絶品とか言いだしたりもするんだろうけど……」


  ※其の三十一の千五百十三「とりあえず食欲はそそる」参照



 二千五百十三「練習用」

 セイバー「しかし、よくよく見ると考えられたものです、これは」
 士郎  「竹刀がどうかしたのか」
 セイバー「ええ。本当の剣を使っての立ち合いは、練習であったと
      しても怪我をする危険が大きいです。
      木剣だとしても充分人を殺める事は可能です。
      しかし、竹刀ならば当たっても痛いくらいですみます」
 士郎  「まあ、そうかな」
 セイバー「それにこれで鎧を打ち砕いたり穴を穿つようになれば
      剣を持った時にはどれほどの威力を持てるか……」
 士郎  「それはちょっとおかしい」



 二千五百十四「ナイルも何でも知っている」

 士郎「みんなして集まって何をしているのかと思えば、星占いか。
    そんなの信じるなんて……、いや、魔術師的には信じる方が
    正しいのか?」



 二千五百十五「高く跳ぶ為に屈む」

 シエル「決めかねているんですよ、遠野君」
 志貴 「そんなにげっそりするまで何をいったい」
 シエル「ここ一週間、カレーを食べていなかったんです」
 志貴 「!!!」
 シエル「ふふふ……、もう限界近いです。
     で、ですね、こんな極限状態で食べるカレーは涙が出るほど美味
     しいと思うんです」
 志貴 「そうだろうけど……、あ、その為のカレー断ちなのか」
 シエル「そうです。それで、今は最高級のカレーを食べるべきか、あえて
     レトルトのカレーを食べるべきか、考えていたんです」
 志貴 「せっかくだから最高級のにしたら」
 シエル「でも、もともとハイレベルだから感激レベルの伸び率は低い気が
     しませんか。むしろ普段食べている程度のカレーに桁違いの美味
     しさを感じるなんてのも良いと思うんです」
 志貴 「じゃあ、そっちにしたら」
 シエル「しかし、ハイレベルのものを最高の状態にした時の一線を超えた
     領域なんてものもあるかもしれないじゃないですか。それをみす
     みす逃してしまうかと思うと……」
 志貴 「じゃあ両方を交互に食べてみたらいいんじゃないかな」
 シエル「ふぅ」(溜め息を残してよろよろと立ち去る)
 志貴 「うわ、人からあんな心底から見下された目で見られるなんて。
     それもシエル先輩からッッッ」



 二千五百十六「食べればわかる」

 セイバー「良い音がしますね、シロウ。揚げ物ですか」
 士郎  「ああ。油はねるから気をつけろよ」
 セイバー「トンカツやエビフライではなく、天麩羅ですね」
 士郎  「掻き揚げのみだけどね。いろいろ冷蔵庫とかに残ってたのを
      刻んで使ってるんだ」
 セイバー「ほほう」
 藤ねえ 「口に入れるまで何が入ってるかわからない訳なの。
      そう、これこそが有名な闇鍋なのだ」
 セイバー「なんと。もっとおどろおどろしいものを想像していましたが、
      見ると聞くとは違うものですね。いや、それがむしろ罠?」
 藤ねえ 「そうそう」
 士郎  「そうそうじゃない。……というか、今藤ねえ何か混入しようと
      しなかったか?」



 二千五百十七「ある晴れた日の」

 セイバー「良い天気ですね。風も何とも穏やかで優しい。
      こういう日は馬に乗りたくなります」
 ライダー「そうですね、わかります」

 士郎  「そういうものなのか?」(小声)
 凛   「わたしだって知らないわよ」(小声)



 二千五百十八「心の姿」

 凛   「あなたの固有結界だけど」
 アーチャ「どうかしたかね」
 凛   「殺風景な丘陵とか、剣はわかるわ。剣を鍛える為の炎も。
      でも歯車って何なのよ。剣と関係ある訳?」
 アーチャ「固有結界は術者の心象風景を具現化したものであって、何も
      剣に起因するとは限らん」
 凛   「知ってるわよ、そんな事。だから歯車って存在が謎なの。
      芥川龍之介じゃあるまいし」
 アーチャ「そう言われてもな、自分でデザインしたものでもなし」
 凛   「心象風景なんだから精神分析してみればいいのか。
      何かのメタファーなのか、何を表しているのか。面白そうね」
 アーチャ「……」(嫌そう)
 


 二千五百十九「どう処すか」

 カレン「信じ……られない。こんな辱めを受けるなんて」
 士郎 「……。
    (下手にごめんとか言って目を逸らすとどんな目にあうか
     わからない。あえて見続けてるんだ。それが正解……、
     でいいのかな、本当に、これ、こんな)」



 二千五百二十「よくわからないが」

 一子「手」
 志貴「?」(とりあえず差し出す)
 一子「うん」(手を握って歩きだす)
 志貴「え、あれ、何、これ。ねえイチゴさん」
 一子「……」(そのまま歩き続ける)
 志貴「うーん」(羊のごとく従う)

 アルク「何よ、あれ」
 シエル「そのまま手つないでますね」
 アルク「ずるい」
 シエル「ずるいですね」
 アルク「ああやればいいのかしら」
 シエル「途中で離れちゃうと思います」
 アルク「そうだよねえ。じゃあ、何でまだ歩いてるの、志貴」
 シエル「さあ。で、わたし達はいつまでこうして眺めているんです」
 アルク「……」
 シエル「……」



 二千五百二十一「従者たち」

 翡翠「何だか今日は忙しそうですね、姉さん」
 琥珀「そうなの。もう、秋葉様から面倒な用事を仰せつかっていて
    目が回っちゃいそう」
 翡翠「わかりました。では、昼の準備はわたしがします。
    夕食に手を出す訳には行きませんが、二人だけの分であれば、
    多少失敗しても……」
 琥珀「え、え、え、あのね、翡翠ちゃん」
 翡翠「任せてください」
 琥珀「あれ、少しこっちを手伝ってくれたら嬉しいなあとか考えた
    だけなのに、どこでこんな事に」



 二千五百二十二「未然防止」

 士郎「宝具とか使わないでさ、単純に竹刀とか使って戦ったら
    誰がいちばん強いのかな」
 凛 「さあ、誰かしら。
    でも士郎、セイバーとかの前でそんな事訊ねたらダメよ。
    絶対にね。面倒な大事になるから」
 士郎「そうだな……、うん、なるほど、了解だ。言わないよ」



 二千五百二十三「バリエーション」

 シエル「カレー風味の料理をいろいろ試してみましたけど、本当に
     何にでも合いそうな感じですね」
 志貴 「先輩の場合は『合う』の領域が常人より広いと思うけど」
 シエル「でもやっぱり、カレー風味のカレーが一番ですね。
     うん、美味しい」
 志貴 「カレー風味のカレー?」



 二千五百二十四「トマトが大量にあったので」

 士郎  「あまり得意じゃないんだけど、たまにはチャレンジしてみた」
 凛   「カポナータとパスタが士郎と桜で、わたしはピッツァ」
 桜   「美味しく出来ましたけど、カロリー凄そう……」
 藤ねえ 「うんうん、美味しい。幸せー。セイバーちゃん食べてる?」
 セイバー「もちろんです。何と熱く美味な。
      さすがは強大なるローマの生み出した食文化。
      所詮、ブリテンは辺境地と言う事なのでしょうか」
 桜   「ローマ帝国、関係あるんですか?」
 凛   「さあ。そもそも英国だって大帝国築いたはずだけど……」
 士郎  「同じ島国だけど日本食は凄いぞ」

 

 二千五百二十五「増強」

 橙子「なあ、式」
 式 「なんだ」
 橙子「何ならもっと胸大きくしてやろうか。
    違和感は無いし、後から中身の詰め替えとかも不要だぞ」
 式 「いらん」
 橙子「そうか。喜ぶと思ったんだが」
 式 「ふん」
 橙子「……」
 式 「……」
 橙子「……」
 式 「……幹也がか?」



 二千五百二十六「真夏の太陽」

 アルク「ねえ、志貴。海行こうよ、海。
     そうでなかったら大きなプール」
 志貴 「いろいろつっこみたいところだな。
     でも、いちばんそんな事言い出しそうなのがおまえなんだよな」
 アルク「いいから、行くの、行かないの?」
 志貴 「はいはい」



 二千五百二十七「サマーデイズ」

 アルク「夏でも同じ服かと文句言われたんで変えてみた。
     ね、似合う、似合う?」
 志貴 「……似合う。
     でも、なんでそう極端に突っ走るかな。
     外に着ていくのは禁止」
 アルク「えー」



 二千五百二十八「聖者の帰還」

 アルク「いい加減、うんざりだわ」
 シエル「それはこっちの台詞ですよ、吸血鬼」
 アルク「ここから消え去って貰うわ」
 シエル「それは叶いませんが、二度とこの町に現れないようにして…」
 アルク「あ、メレム? あんたの上司出してー。そう、ナルバレック」
 シエル「ちょ、ちょっと、何を、アルクェイド」
 アルク「配置転換、そう、シエル。うん、見返り? そうねえ」
 シエル「頭上で何か話が進んでいるぅ……」



 二千五百二十九「西も東も」

 アルク「さっきあそこのカレースタンドにいたわよね」
 シエル「いましたよ」
 アルク「駅の裏のカレー屋にもいたらよね」
 シエル「いましたよ」
 アルク「駅前の喫茶店にもいたわよね」
 シエル「いましたよ」
 アルク「その傍のカレーのチェーン店にもいたわよね」
 シエル「いましたよ」
 アルク「それから、インド料理の店」
 シエル「いましたよ」
 アルク「まだあるけど、この辺で何か疑問はおきない?」
 シエル「いえ、別に」



 二千五百三十「再現性」

 七夜「ひとつ訪ねるが、お前はアレを殺れるのか?」
 志貴「アルクェイド? 無理だと思う」
 七夜「素直だな。まあ、そうだろう。
    俺か? さて。無論可能だと言いたいところだが」
 志貴「そう考えると、あの時は何で……」
 七夜「運が良かったな。万に一つの当たりを引いたというところか」
 志貴「当たりなのか」
 七夜「ある意味外れを引いたとも言えるやもしれん」



 二千五百三十一「招かれざる客」

 琥珀「吸血鬼って中の人に招かれないと屋敷に入れないとか言われて
    ませんでしたっけ。違ったかなあ」
 秋葉「……」
 翡翠「……」
 志貴「何で非難の目を向けられるのさ」



 二千五百三十二「進入禁止」

 琥珀「どうでしょう、秋葉様。
    志貴さんのお部屋を三階にしては」
 秋葉「それでも窓から入ってくるでしょ」
 琥珀「じゃあ窓も無い地下室に閉じ込めるとか」
 秋葉「なるほど」
 志貴「なるほどじゃなくてさ」



 二千五百三十三「連なるもの」

 シオン「ある意味、さつきは孫とでも言える存在なんですよ」
 さつき「えー、そうなの?」
 シオン「転生を繰り返すような死徒ですから、そもそも直系といって
    良いのかとも思いますが……、まあ、間違ってはいません」
 さつき「ふうん、おばあちゃんなんだ」
 シオン「間違っても真祖の前でそんな言葉を吐かないように。
     何でしたら生存確率を計算してみますが」
 さつき「い、いいよ」



 二千五百三十四「力愛不二」

 都古 「たあああーーーーッッッ」
     ぽこッ

 アルク「……ねえ、志貴、どうすればいいの、これ?」
 都古 「やあ、とうッ、はぁッ」
     ぽん、ぺちん
 
 志貴 「別に痛くも痒くもないんだろうけど、こんなに困った顔の
     アルクェイドも珍しいな」



 二千五百三十五「年上のひと」

 朱鷺恵「この前、街歩いてるの見かけたんだけど」
 志貴 「あれ、そうなんですか。声かけてくれれば良かったのに」
 朱鷺恵「デート中みたいだったから。綺麗な人よね」
 志貴 「え…………ああ…………」
 朱鷺恵「ちょっと意外だったけど。
     年上なのね」(自然すぎて不自然に聞こえかねない口調で)
 志貴 「まあ、そうですね」
 朱鷺恵「そうか、そうなんだ。年上でも良かったんだ……」(呟き)



 二千五百三十六「高くても上質な醤油を一度使ってみると良い」

 シエル「わかりましたよ、遠野君」
 志貴 「はい」
 シエル「カレーの味を高めるのにスパイスのみを厳選しても駄目なんです」
 志貴 「ほほう」
 シエル「水やお米、そちらを良質なものにする事でカレールーも美味しく
     なるんですよ」
 志貴 「なるほど」
 シエル「こうしてはいられません」
 志貴 「あ、シエル先輩……、って、どこへ走っていったんだろう」



 二千五百三十七「沸点」

 志貴 「本気で怒った場合、アルクェイドや秋葉より先輩の方が怖いと
     言うか、壮絶な最後を遂げさせられそうな気がするんですが」
 シエル「何ですか、それは。
     わたしはそんなキレるほど怒りませんよ」
 志貴 「うん。だからこそ、限界を超えると凄いだろうなあって」
 シエル「……なるほど。
     でも、遠野君が怒らせるような真似をしなければいいだけ、
     それだけのお話ですよね」
 志貴 「……なるほど」



 二千五百三十八「ねこいじめ」

 志貴 「アルクェイドはまあわかるんだけどさ、レンも異端だって
     討伐しようとするの?」
 シエル「まあ、そうなりますよ」
 志貴 「ふうん」
 シエル「……遠野君もそんな目で人を見る事が出来るんですねえ。
     あの、別に今すぐどうこうしたい訳ではないですから」



 二千五百三十九「秘す方がより効果大との意見あり」

 志貴 「シエル先輩って意外と外で肌出さないですね。戦闘時以外は」
 シエル「教会に身を置く者ですから。
     それに体の線強調する服だと人目を引くんですよ」
 志貴 「そうだろうなあ」
 シエル「ええ」
 志貴 「(これだけさらりと言うのが凄いけど、凄いものな、実際)」



 二千五百四十「二日がかりで作りました」

 シエル「これは具材だけを先にじっくりと煮込んでいますね。
     それから後でスパイスを入れている。違いますか」
 琥珀 「あたりです。先に煮込む時に既に薄めの味付けもして。
     そしてスープ仕立てのカレーにして完成です」
 シエル「シンプルながら手が掛かっている。さすが琥珀さん」
 琥珀 「恐れ入ります。
     ……作りすぎたポトフを活用しただけですけどね」(小声)



 二千五百四十一「雨あられ」

 志貴 「黒鍵ってさ、一本を正確に投げるだけでも凄いと思うんだけど、
     何本もまとめてどうやって狙っているの?」
 シエル「簡単ですよ。こうして指で挟みますよね。
     それでこうして向きを、……あれ、向きを?
     どうやってましたっけ?」
 志貴 「さあ」



 二千五百四十二「朱に赤」

 志貴 「シエル先輩が言うには、埋葬機関だったっけ、そこのメンバー
     とか教会関係者は性格の悪い捻くれ者揃いだそうなんだけど、
     本当にそうなの?」
 アルク「そうね。シエルの言葉だけど、それには同意するわ」
 志貴 「そうか、じゃあシエル先輩は数少ない例外なんだ」
 アルク「え?」
 志貴 「うん?」
 アルク「あー、ちょっと待って。基準値の設定引き落とすから」



 二千五百四十三「理由」

 シエル「眼鏡の替えを買おうかと思うんですよ」
 志貴 「ふうん。何の為に?」
 シエル「え、何の為と言われても……、それは不要といえば不要ですが。
     欲しいからです。ダメですか」
 志貴 「ダメでないです。似合うのを買いましょう」
 シエル「はい」



 二千五百四十四「裏から潜入」

 シエル「遠野君」
 志貴 「え、シエル先輩? 
     ちょっとどこから入ってきているんですか」
 シエル「部屋の窓からですけど」
 志貴 「ですけどって、何を考えているんです」
 シエル「アルクェイドの場合とずいぶん対応の差を感じますが」
 志貴 「う、だって、シエル先輩はもっと常識あるでしょう」
 シエル「なるほど、納得しました」


 二千五百四十五「表から参りました」

 秋葉 「……何を考えているんです、あなたは」
 シエル「遠野君に会いに来たんですよと、言いましたよね」
 秋葉 「聞きましたけど、正面から現れて案内を請うなんて」
 シエル「何だか凄く理不尽な事を言われている気がするんですが」
 秋葉 「そう言えば、そうですね」
 琥珀 「要は、来るなと」
 秋葉 「そう、それ」
 シエル「そう、それじゃなくて。入りますからねッ」



 二千五百四十六「お前はまさかあの……」

 シオン「どうしました、さつき」
 さつき「眼鏡のおっかない人に見つかって命からがら逃げてきたの。
     なんであの人ああなんだろう」
 シオン「ああ、代行者ですか。
     本人の前では決して口に出せない異名が幾つもあるくらいですから」
 さつき「そうなんだ」
 シオン「ええ。でも、埋葬機関の中で本人がいない時に使われている渾名に
     比べれば……」



 二千五百四十七「オペラの如く」

 シエル「断面が綺麗だと思ったんですが」
 志貴 「ルー、ご飯、ルー、ご飯……か」



 二千五百四十八「イベント直前」

 晶「凄く嬉しいんですが、その日は……、いえ、そうでなくて、はい。
   また、お願いします。誘ってくれたのにすみません。おやすみなさい。
   ……。
   そうか、わたしってためらいなく、こちらを選ぶ側だったんだ。
   志貴さん断わってでもイベント参加……、原稿、原稿」



 二千五百四十九「締め切り直前」

 羽居「アキラちゃん、今見かけたよ」
 蒼香「ふうん、どっちだった?」
 羽居「この世の終わりが目前って感じの方だった」
 蒼香「まだまだ、九死のほうか。
    よく知らんがもっと前からやればいいのに」



 二千五百五十「家族旅行」

 秋葉「はい、おみやげ」
 羽居「温泉…」
 蒼香「饅頭?」
 秋葉「いらないなら持って帰るわ」
 蒼香「頂くけど、随分と遠野らしからぬものを。
    しかし、聞いた事のない温泉だな。どこだ、これ」
 秋葉「仕方ないでしょ」
 蒼香「仕方ないところにわざわざ行かんでも良いと思うが」
 秋葉「行かないよりはいいわよ」
 蒼香「そういいつつ、妙に満足げじゃないか、遠野」(小声)
 羽居「うんうん」(小声)
 蒼香「うかうかと話聞き始めると長くなりそうな気がしないか」(小声)
 羽居「するー」(小声)



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