天抜き 其の五十二






 二千五百五十一「天界住人に捧ぐ」

 志貴 「まだまだ暑いですね、先輩」
 シエル「まったくです」
 志貴 「ところで何を食べてるんですか」
 シエル「かき氷ですよ」
 志貴 「カレーかけ……じゃないですね。
     わかった、カレー自体を凍らせて……もいない」
 シエル「正真正銘の氷のみですよ。
     ちょっと買い物しすぎて、カレー粉にも事欠く有様です」
 志貴 「そこまで困っているとは」
 シエル「ただ、カレーと思って食べるとただの氷がカレーの味に
     なってくるんですよ、遠野君」
 志貴 「……冗談じゃない目か」



 二千五百五十二「正眼定かならず」

 セイバー「前から疑問に感じていたのですが、私やタイガと稽古する時と
      比べて、ライダーが相手だと妙にやりにくそうではないですか」
 士郎  「確かにそうだな」
 セイバー「何故です」
 凛   「何かに気をとられるのかしらねえ」
 士郎  「ライダーだと目が隠れてるからどうもどこ狙われているのかが
      わかりづらくてさ。意外とやりにくいぞ。
      って、何で、そんなつまらなそうな顔になるんだよ、遠坂」
 


 二千五百五十三「バケツに水」

 士郎「藤ねえとか遠坂が派手な花火好きなのはわかるけど、桜もか。
    ちょっと意外だな。
    で、セイバーが線香花火がこんなに気に入るのも予想外だった」



 二千五百五十四「お昼休み」

 橙子「そう言えば、黒桐は高校の頃は昼にパンを食べていたそうだが」
 幹也「そんな事までよく知ってますね」
 橙子「勘当前の黒桐母であれば、きちんと弁当を持たせそうなものだが、
    そんなの恥ずかしくて持っていけるかと愚劣な反抗期ポーズでも
    していたのかね。
    それとも昼が来るまでにいつも食べてしまっていたのか。
    どちらも、らしくないのだが」
 幹也「式の家もきちんとお弁当持たせそうですよね」
 橙子「露骨に話題をそらすな、さあ、答えたまえ」
 幹也「ええと……」



 二千五百五十五「学園に巣食う悪」

 一成「ふむ……」
 士郎「どうしたんだ」
 一成「投書があったのだが、この平和な学園にも闇はあるようだな」
 士郎「何だって、それは見過ごせない」
 一成「何でも、恐るべき生徒がいるそうだ。
    教師を後ろ盾にして、一方で生徒会にまで強い関係を持つ。
    下級生の女生徒を頻繁に自宅に連れ込む一方、学園のヒロイン的
    存在にも手を出して、それだけでは飽き足らず多数の不順異性交遊
    をしていると思われるふしがあると。
    夜は酒場に繰り出している……、だそうだ」
 士郎「ソレハ捨テオケナイナ」
 一成「マッタクダナ」
    


 二千五百五十六「あてはまるなら挙手を」

 志貴「次は、強そうに見えるかもしれないけれど、本当は繊細。
    ……へえ、へえええ」(見回しつつ)



 二千五百五十七「見た目だと少し違う」

 シエル「カレーコロッケが5つと普通のコロッケが4つ」
 志貴 「まだ紙袋の中なのになんでわかるのさ」
 シエル「心ですよ」



 二千五百五十八「大鉄板」

 藤ねえ 「士郎、今度バーベキューしようよ。川原とかで」
 士郎  「たまにはいいかな」
 セイバー「バーベキューとは?」
 藤ねえ 「外でお肉とか野菜とか焼いて食べるのよ、セイバーちゃん」
 セイバー「外で……、どうもあまりそそられませんね」
 藤ねえ 「えー」



 二千五百五十九「カカオ」

 士郎「あ、セイバー、その缶の中はチョコじゃなくてコーヒー豆だから。
    間違えて食べたりしないようにな。
    遅かったって? ああ、そうか」



 二千五百六十「単品ダイエット」

 アルク「リンゴとかバナナとか単品のものと水を多く摂るんだって」
 志貴 「何だっておまえがそんなものに興味持つんだ」
 アルク「わかつてないわねえ、女の子はこういう話題に弱いのよ」
 志貴 「何か違うぞ、何か」
 アルク「それでね、シエルがカレーばっか食べてるのもそうなのかな」
 志貴 「あれは肉とか野菜とか入ってるだろ。全然単品じゃない」
 アルク「あ、そうか。効果も出てないもんね、うん」



 二千五百六十一「健康食品」

 アルク「この黒酢がね、普通の酢より健康にさせるのよ」
 志貴 「健康番組か通販か知らないが、随分買ったなあ」
 アルク「みるみる健康になるんだから」
 志貴 「そうやってコップいっぱい平気な顔で飲める奴には効果はない」
 アルク「ええー」



 二千五百六十二「類似的」

 藤ねえ「今日は趣向を変えて、お便り紹介をするッッ」
 イリヤ「師匠、ロードローラーだッ! でペッチャンコになった件には、
     スルーでありますか」
 藤ねえ「女の子に気を取られて道路に飛び出すような子にお姉ちゃんは
     育てた覚えないもん」
 イリヤ「かわいそうな、シロウ。……でも自業自得」
 藤ねえ「さてと。何々、なんで藤ねえとイリヤは本編で出番少ないのに、
     キャラ変えしてまで専用コーナー持ってるんですか?
     ……知らんッッ!!」
 イリヤ「むしろ出番少なかったから救済なんじゃないのかしら」 
 藤ねえ「ふむ。そうなると眼鏡のあの人は……」
 イリヤ「あれだけ出番あってもまだ足りない訳? なんて貪欲」
 藤ねえ「見習わないといけないわねー、同じ女教師として」
 イリヤ「同じカテゴリーでありますか、師匠」(異論ありげな顔で)



 二千五百六十三「変化」

 琥珀「あの、秋葉様、いくら美容院行ったといっても、志貴さんが
    気づかないのも無理はないのでは」
 秋葉「わかっているわよ」
 琥珀「髪を結ったとか、ばっさり切ったとかならともかく、毛先を
    整えただけなんですし」
 秋葉「だから、わかっているって言ってるでしょ」
 琥珀「でも不機嫌にはなるんですねえ」(小声)



 二千五百六十四「過去の思い出」

 藤ねえ「ねえ、士郎。セイバーちゃんに切嗣さんの事訊いてみたのよ」
 士郎 「なんでまた」
 藤ねえ「外国ではどんなだったのかなあと思って。
     でも、何だかどんよりしちゃったんだけど」
 士郎 「そうなのか。何があったのかな」
 藤ねえ「あまり触れないほうがいいかしらねえ」
 士郎 「そうかもしれないな」



 二千五百六十五「台所にて」

 士郎「そろそろ茹で上がるな。
    桜、ちょっとあれ取ってくれ」
 桜 「はい、先輩」
 士郎「サンキュー」

 凛 「あれ、でわかるんだ。ちょっと悔しいわね」



 二千五百六十六「世はおしなべて」

 シエル「確かに各種スパイスをもとに自分で作り上げたものには格別の
     価値があるかもしれません。でもインスタントのルーを使ったり
     レトルトのものを使ったり、そうしたものも立派なカレーです。
     この世に不味いカレーはあるかもしれませんが、偽物のカレー
     などありません。等しくカレーであり、尊重されるべきです」
 志貴 「こういう面では寛容的なんだ」



 二千五百六十七「ルート」

 橙子「最初は歯牙にもかけられず、愚鈍と思われむしろマイナスな
    感情しか持たれていなかったのに、次第に存在を認知されて、
    最後には自分以上に強い感情を向けられるようになっていたと。
    いや、男側から見れば何とも攻略しがいのある高難易度キャラ
    に思えるんだが。
    似たカテゴリーのヒロインがいたのが敗因かね」
 鮮花「何か仰いましたか」
 橙子「いや、二周目に期待だな」
 鮮花「?」
 橙子「もっとも、次は目先を変えて、年上の妖艶なお姉さまキャラを
    対象にしたりするものだな。不憫な事だ」
 鮮花「??」



 二千五百六十八「あらしの後」

 秋葉「凄い雨でしたね」
 志貴「風がまた凄かった」
 秋葉「窓ガラスとか平気だったかしら」
 翡翠「先に手を打ちましたので、主だったところに被害はありません」
 秋葉「ご苦労様」
 琥珀「菜園に行ってきたんですけど、こんなに豊作ですよ」
 志貴「被害はなかったの?」
 琥珀「別段、何も。ほらほら、もぎたてですよ。
    さっそくお料理しますねー」
 翡翠「わたしももう一回りしてまいります」

 秋葉「どう考えても、雨風を受けた筈ですよね」
 志貴「近郊の畑に被害とか出てた筈だぞ、確か」
 秋葉「普通の野菜ではないんでしょうか、あれ」
 志貴「どうだろう」



 二千五百六十九「週末温泉」

 志貴「有彦、今週末どこか温泉行こうぜって誘ってくれてたよな」
 有彦「あん? まあな。でもよ、乗り気じゃなかっだろ」
 志貴「そんな事はない。あっても気が変わった。
    行く。行こう。何なら今すぐにでも」
 有彦「今すぐっておまえ……って、その荷物なんだよ」
 志貴「辺鄙なだーれも知らないような温泉がいいんだ」
 有彦「聞いちゃいないな。
    ま、おおかた何かやらかしてとにかく逃げたいってとこか。
    いや待て、場合によっちゃ向こうについた方が得策なんじゃ。
    でも、こいつにこんな目で見られるとなあ。
    ああ、わかった。一緒に逃げてやるって」



 二千五百七十「とんぼ返り」

 秋葉 「ただいま帰りました。はぁ、疲れました」
 志貴 「お疲れ様。ほんと疲れてるな」
 秋葉 「現地まで飛んで、用事を済ませたらすぐに帰路について。
     そんな出張仕事を立て続けでしたから」
 志貴 「外国も行ったんだったよな」
 秋葉 「移動しただけでしたけど。空港で少し待ち時間があったくらい。
     本当に移動と用件のみ、他は何もなかったです」
 アルク「まあ、そういうものよねえ」
 秋葉 「なんであなたがしみじみと同意するんです」



 二千五百七十一「見渡す限りの明かりの中」

 シエル「レトルトパックの料理を否定はしませんけど、出来れば家庭の
     味を大事にして欲しいですね。どれひとつ似たものはあっても、
     同じではない。各家庭ごとの…」
 志貴 「カレーの味」
 シエル「遠野君は嫌いです」



 二千五百七十二「古きよき友」

 さつき「わたしがメインヒロインになっても、シオンは友達だからね。
     それと猫さんも」
 シオン「はい」
 レン 「……」(頷く)
 シオン「でも、MELTYBLOOD……」(小声)
 レン 「……」(歌月十夜と口が動いている)
 さつき「何か言った?」
 シオン「別に。強いて言えば、それはとうの昔に通り過ぎた道だ……と」
 


 二千五百七十三「殺し文句」

 白レン「暗殺者なんてもっと寡黙なものかと思ってたけど、意外と
     戦いに望んで饒舌なのね」
 七夜 「…………」
 白レン「あら、意外と痛いところ突いたんだ、ふーん」



 二千五百七十四「リーチ」

 シオン「戦いを好まないというのはわかりますが、戦わねばならないなら
     もう少し刃渡りの長い武器でも手にした方が良いのでは?」
 志貴 「まあ、そうかもしれないけどさ。
     そんな剣なんか振り回す技量持ってないからさ」
 シオン「なるほど」



 二千五百七十五「解決」

 シオン「志貴、貴方の持つ魔眼、わたしに解析させて貰えれば、理解し
     無効化する事も出来るかもしれません。試してみますか」
 志貴 「そうだなあ」
 シオン「どうやら同意しがたいようですね。どれだけ無くなれと思おうと、
     忌もうとも、自分自身を消す事はより厭わしい事なのか。
     無理強いはしませんよ。
     しかし翻って、わたし自身はどうなのでしょう……」



 二千五百七十六「原因」

 志貴 「シオンは未来予知の力あったら欲しいと思う?」
 シオン「不要ですね」
 志貴 「確かにシオンには不要なものか」
 シオン「志貴の思っている事とは理由が違います。
     どうしてそうなるのかの材料も過程も無く、ただ答えのみを
     得られても、わたし達には使い道がありません。
     検証しないと使えないなら、最初から計算した方が速いです」



 二千五百七十七「目に入る対象」

 橙子「思うに、彼女らに比べて普通過ぎるのだろうな、我が弟子は。
    全体としては限りなく非凡だがどこか一点突破出来ていないというか。
    他人の事は言えないか」



 二千五百七十八「後に残されし者」

 エルメロイ二世「何だってわたしがこんな面倒な事をしなくちゃならんのだ」
 凛      「別段、頼んではいませんけど。
         そもそも先生が自ら立候補されたと聞きましたよ」
 エルメロイ二世「もう行なわないのであれば、冬木の聖杯戦争の全てを隠蔽し
         消去せよなんて声が大きくなっているんだぞ。
         黙っていたら、全てを無かった事にされる。
         ならばせめて聖杯戦争を解体してしまい、過去の歴史として
         留めるしかあるまい」
 凛      「同意です。でも、なんでまた先生が固執するんです」
 エルメロイ二世「……いろいろあるんだ。残さねばならぬものがな」(遠い目で)



 二千五百七十九「常ならざる」

 志貴 「教会の代行者とか魔術師ってのは、普通の人と違うんだな」
 アルク「そうよ。ほら、シエル見ればわかるでしょ、あれが普通?」
 志貴 「先輩はその中でも特殊だと思うけど。
     確かに普通の人とは違うのかな」
 アルク「そうそう。人でなしってやつね」
 志貴 「それは違うんだが、何となくあってる気もするな」



 二千五百八十「有閑」

 橙子「何を難しい顔をしてるんだ」
 式 「幹也に何か趣味でも持ったらどうかと言われた」
 橙子「やればいいじゃないか」
 式 「何も浮かばない。習い事は別だろ。
    トウコは何かやっているのか」
 橙子「いや、ないな。ふむ。しかしそう言う黒桐はどうなんだ」
 式 「それどころじゃないとは言ってたぞ」
 橙子「そうか、なるほど。そうだろうなあ。
 式 「趣味か……」
 橙子「趣味なあ……」



 二千五百八十一「花園にて」

 秋葉「よくよく見ると……よりどりみどりね」
 蒼香「なにがだ」
 羽居「なになに?」
 晶 「何がですかあ」



 二千五百八十二「9/22の誕生祝」

 秋葉「学校の授業が終わったら寄り道しないでまっすぐ家に帰って来る。
    それも一週間だけ。
    金銭的な負担も、頭を悩ませる必要もありません。
    何か文句はありますか」
 志貴「いやないけど」
 秋葉「では、決まりです。
    兄さん、誕生日のプレゼントありがとうございます」
 志貴「何か違う、何か違うぞ」(ぶつぶつと)



 二千五百八十三「開眼」

 士郎   「いきなり味付けするんじゃなくて、まずどんな状態か確認。
       ベーコンの塩気で何も加えなくてもすむかもしれない」
 キャスター「なるほど。そうね、少し何か足りないかしら」
 士郎   「そうしたら足りない部分を補う為に、塩を入れる。
       後は何か一味も加えるといいかも」
 キャスター「一味加えるのね」
 士郎   「だからいきなり幾つも調味料を取り出したりしない。
       味見してみて、ひとアクセントなら胡椒くらいでいい。
       いきなり大量に加え……」
 キャスター「今度は何?」
 士郎   「今さ、強化の魔術の根本を掴んだ気がする。
       そうか、そうなんだ。そういう事なんだ」
 キャスター「……ああ、そう」(どうでも良さそうに)
   


 二千五百八十四「姫は人の心がわからない」

 志貴 「心とはと言っても、これほど説明するの難しいものもないぞ。
     そうだな、シエル先輩がカレーを食べているのを取り上げて
     地面に叩きつけるのと…」
 アルク「そんなの不可能よ」
 志貴 「ん……、そうだな。でもコップの水取りに行った隙にとか。
     そうしたら…」
 アルク「死ぬような目にあわされるわね。目に見えるようだわ」
 志貴 「そういう事じゃなくて、そうなかもしれないけど……。
     ともかくその行為と、シエル先輩にカレーを作って貰ってさ、
     その皿を目の前で地面に叩きつけるのとどっちが容易か…」
 アルク「後者でしょ。手に入れるという一番の難関は突破してるもの」
 志貴 「だから、そういう尺度の話じゃなくて……、
     いや、そう考えるのがおまえがまだ人の心をわかってないと
     そういう事なんだ。わかるか」
 アルク「さっぱりわからない」
 志貴 「そうだよなあ。
     シエル先輩をたとえに使ったのが失敗だったな」



 二千五百八十五「普通の人」

 凛「あいつに自分が普通と思うかって訊ねたら、頷くわよ」
 桜「そうでしょうね」
 凛「ありえないでしょ、そんなの。
   それで、頷いてから思い出したみたいな顔して、魔術が使えるなとか
   言い出すのよ、きっと」
 桜「先輩なら言いそう」
 凛「そこじゃないでしょ、あいつの場合の普通じゃないところは」
 桜「でも、そう思っていられる先輩は良いと思います」
 凛「ああ、この話題に関しての桜の判断は普通な訳がないか」



 二千五百八十六「対空」

 藤ねえ「矢に対してね、斜めから交差させて払うのは出来ると思う。
     でも、突きで正面から止めたり、刃で受け止めたりするのは、
     ちょっと難しいかなあ」
 士郎 「間違っても本当に試すなよ」
 藤ねえ「試さないとわからないじゃない」

 
 
 二千五百八十七「才能」

 凛 「人にもよると思うけど、才能があって努力する人間はね、
    才能が無くて努力しない人間を軽視するわね」
 士郎「そんなものか」
 凛 「だから人によるわよ。
    ただ、才能が無くて努力している人間に対してはその反対」
 士郎「反対と言うと?」
 凛 「何か引っ掛かってくるわね。もどかしいのか、イライラするのか、
    はたまた感心するのか、いろいろだけど」
 士郎「そういうものなんだ」(他人事のように)
 凛 「そういうものなのよねえ」(しみじみと)



 二千五百八十八「君去りし後」

 幹也「いつかふらりといなくなるかもしれないとか行ってたけど」
 鮮花「本気だったんですね」
 式 「徹底してるな、しかし」

   破壊の限りを尽くされ更地となった、伽藍の洞を前にして



 二千五百八十九「秋の庭」

 志貴 「夜になると虫の音が随分と聞こえるようになったなあ」
 シエル「虫の音ですか」
 志貴 「外国だと雑音にしか聞こえないっていうけど、そういうもの?」
 シエル「正直よくわからないですね。
     ちなみ、そこの茂みから三つの音、そこの木の下には二匹。
     鳴いてはいませんが、コオロギが動いているのがその木の陰です」
 志貴 「わかるんだ」
 シエル「ええ。とりあえず耳に入ったものだけですが。本気出しましょうか」
 志貴「いや、いいよ。情緒も何もないなあ」



 二千五百九十「主無き城」

 式 「やっぱりここに来てたのか、幹也」
 幹也「うん。ちょっと外出するみたいに出て行ったから、何事もなかった
    みたいに戻ってくる事もあるかなって。
    それに人が時々出入りしているなら、まだここは生きているって
    言えるだろう」
 式 「そうかな。あくまでここはトウコの場所だろ。
    あいつがいなければ、ここはもう別の場所じゃないのか」
 幹也「そう言うけど、式も時々顔を出すじゃないか」
 式 「あのな、幹也、わかっているんだぞって顔してるけれども、幹也が
    いるから来ているだけだぞ。一人でここには来てないから」
 幹也「あれ、そうなの」
 式 「ああ」
 幹也「ふうん」(微妙な表情で)



 二千五百九十一「剣」

 藤ねえ「士郎、隙ありッッ」
 士郎 「うぉっ。痛ッッッ、てなんで藤ねえがここにいるんだ」
 藤ねえ「わたしだって柳洞寺に用事はあるわよ」
 士郎 「竹刀はどこから」
 藤ねえ「境内にあったから借りたの」

 小次郎「見事なものだな。
     相対すればまた違うのだろうが、あそこまで殺気なしに
     鋭い一撃を放てるとは」
 宗一郎「知人に対してはああらしい」
 小次郎「ほう?」(問うように)
 宗一郎「ああ」(肯定)



 二千五百九十二「才能」

 凛 「才能って何なのかしらね」
 士郎「わからないよ。遠坂ならわかるだろ。あるんだから」
 凛 「当たり前の事はわからないわよ。
    無い人間の方が意識するからわかるんじゃないの」
 士郎「そう言われても。
    (才能あるって部分は否定しないんだな。らしいけど)
    


 二千五百九十三「一を知りて」

 綺礼「人間の他に対する認識とは随分と面白いものだな。
    意外な、そして特異な一面を垣間見せると、それが全てだと
    勝手に思い込む。自らを省みればわかりそうなものだが」
 ギル「雑種など単純な存在であろう」
 綺礼「そうかもしれんな。
    下賎なものだが、ひとつどうかね?」
 ギル「甘味か。たまにはつきあってやろう。お茶を用意せよ」
 綺礼「うむ。
    まったく、毎日同じものを食す訳がなかろうに」
 ギル「はやくせよ」



 二千五百九十四「定義論」

 凛 「そろそろ鍋物とかも良い季節になってきたわね」
 士郎「寒い日なんかは鍋……ああッ、そうだ
    なあ、遠坂」
 凛 「な、何よ」
 士郎「すき焼きは鍋物に入ると思うか? しゃぶしゃぶは?」
 凛 「え、何、急に凄い顔して」
 士郎「いいから。思うところをまず答えてくれ」
 凛 「すき焼きは…」
 桜 「待って、早まらないで下さい、姉さん」
 凛 「桜!?」
 桜 「姉さんを抱き込もうと言うんですか、卑怯です、先輩」
 士郎「意見を訊いているだけだ。引っ込んでいて貰おうか」
 凛 「嘘、桜と士郎がこんな険悪な雰囲気に」
 士郎「さあ、遠坂」
 桜 「言って下さい、姉さん」
 凛 「は、はい……(過去、この家で何があったの、いったい?)」」
 
   

 二千五百九十五「死」

 式 「ストックが無くなりそうになった事はないのか」
 橙子「私のかね? あるさ。
    追っ手が急にかかってばたばた倒れた事もあるし、不慮の事故と
    いうものは神ならざる身ではわからない」
 式 「ふうん。なんか最後だったとしても構わないって口調だな」
 橙子「死自体は避けえないからな。
    別段何度も死んで慣れるというわけではないのだが。
    うん? そろそろ人形作らんと今度こそおしまいだとか言ってたの、
    あれは私だったか、それとも前の私か。
    余計なこと言うから気になってきたじゃないか」
 式 「余計なことなのか。おまけに文句言われているし」
    


 二千五百九十六「戦術」

 シオン「志貴が真祖や代行者と組んだ場合には、正面に出すより彼女らが
     道を切り開き志貴を奥の手として使うという形になるでしょう」
 志貴 「なるほど。君だと違うのかい?」
 シオン「ええ。志貴が協力するのであれば、かなり大規模な攻撃が可能と
     なります」
 志貴 「大規模?」
 シオン「はい。例えば、この街路灯ですが、ここの辺りを殺し、なおかつ
     道路の右側を崩す形は可能ですか?」
 志貴 「ああ、おあつらえ向きって感じだな。こうして、こうか。
     で、もしも本当にやったらどうなるの?」
 シオン「町の1/4ほどに即座の復旧が不可能な被害がを起こります。
     特に真祖の住むマンションは崩れて跡形もなくなりますよ」
 志貴 「え、嘘」(切る真似をピタリと止めつつ)
 シオン「地脈や、力のかかり具合のバランス、電線の流れ、そういった
     要素を計算に入れれば簡単ですよ。
     どこを発点にするかはわかりますが、私では物理的な破壊力に
     欠けます。志貴さえいれば、可能です」(期待の目で)
 志貴 「そうか」(失敗したなあという顔で)



 二千五百九十七「お助けしますよ?」

 翡翠「あの、志貴様」
 志貴「何だい」
 翡翠「ついて回るような真似はご遠慮頂きたいと」
 志貴「暇だし仕事手伝うって言っても頑として拒絶されるから、せめて
    翡翠の頑張りを見守ろうと思うんだけど」
 翡翠「そんな事をなさらないで下さい」
 志貴「邪魔はしないよ」
 翡翠「……」
 志貴「(本当は翡翠の少し困った顔が見たいからなんだけど)」
 


 二千五百九十八「蝉の声今は途絶え」

 琥珀「ああ、やっと夏が終わりました」
 志貴「やっぱり暑いものは暑いのか」(小声)



 二千五百九十九「被保護」

 鮮花「どうでしょう、橙子師」
 橙子「ふむ……、見事な読解だ。もう少し別なものも教材に貸そう。
    幅を広げておけば、間接的にだとしても役立つだろう」
 鮮花「はい」
 橙子「まったく、学ぶという事については文句なく優秀だな。
    だから優秀でなくなる方向で目を向けさせるというのは、考えの
    外なのだろうな。
    黒桐以外のものには救えないモノになる事が一番早道だろうに」
    


 二千六百「髪結い」

 志貴「琥珀さんがやったのか」
 秋葉「ええ」
 志貴「三つ編みか、似合っているような。
    というか、今までのが当たり前すぎて違和感あるな」
 秋葉「もう、戻します。
    この結んであるのを解けばいいんですか?」
 志貴「さあ。なんかもっと複雑に編みこんであるぞ。
    下手に解いて平気かな」
 秋葉「知りません。じゃあ、このままですか?」
 志貴「からまっても拙いだろ。琥珀さん戻るまで待ってろよ。
    しかし、ふうん」(珍しそうに)
 秋葉「もう」(落ち着かない様子で)



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