天抜き 其の五十三






 二千六百一「命の手綱」

 シオン「秋葉は、他人の為に自分の一部が常に失われ続けている事に
     後悔を覚えたことはありませんか」
 秋葉 「ないわ、と言いたいけど」
 シオン「では、自分がいなければ生存しえないという昏い喜びを、
     時に感じる事はあるのでしょうか」
 秋葉 「それは……、ん、あるわね。
     でも何でそんな事を訊くの?」
 シオン「立場が近いかと思ったので。
     なるほど、わたしだけがおかしい訳ではないのですね」



 二千六百二「伝聞と想像と」

 さつき「え、リーズバイフェさん?」
 リーズ「ああ、そうだよ」
 さつき「あのリーズバイフェさんですよね」(首を傾げて)
 リーズ「ああ。どう“あの”なのかはわからないけれど」
 さつき「リーズバイフェさんなんだよね?」(問うように)
 シオン「そうですよ、さつき」(顔を逸らしつつ)
  


 二千六百三「なるならない」

 青子「魔法使いになったのは、たまたま鉱脈だかを見つけただけか。
    うん、まったくその通り。
    蒼崎の血も遺産もある意味関係なく。
    でも、上位の魔術師ほどそれを認めてくれないのよね。
    爺さんなんかは、まったくじゃなとかいって笑ってたけど」



 二千六百四ノ一「いくら、それ?」

 翡翠「お屋敷を出たとして、わたしなどに出来る仕事はあるでしょうか」
 志貴「そうだなあ」
 翡翠「お掃除くらいですよ」
 志貴「翡翠がその格好で来て掃除してくれるなら、随分と需要あるとは
    思うなあ」
 翡翠「はあ」


 二千六百四ノ二「白い小さなお店」

 琥珀「ここはひとつカフェでも開くというのが良いと思うのですよ。
    料理はわたしが、接客は翡翠ちゃんで」
 志貴「男の客が多くなると思うけど、翡翠大丈夫かな」
 琥珀「そうですねえ。慣れれば。んん……」
 志貴「それと、琥珀さんが病気とかで料理作れない時はどうする」
 琥珀「臨時休業ですね」(明るく)
 志貴「そうだよなあ、確かに。
    でも人気でそうだね、その店」
 琥珀「翡翠ちゃんが妙な気を起こさない限り、バッチリですよ」



 二千六百五「炙っても良いけどね」

 士郎「これ藤ねえが持ってきたんだけどさ」
 凛 「うわ、マグロの塊?」
 桜 「お店でこんなに買ったら高そうですね」
 士郎「でも、セイバー食べてくれるかなあ」
 桜 「生魚はダメかしら。ライダーは平気ですけど」
 凛 「ただ切っただけ、火すら通さない雑な料理と思われるかもね」
 士郎「うん、そこを心配してるんだ」
 桜 「セイバーさんだけ焼いてあげましょうか」
 凛 「ねぎま鍋は? もともと昔はトロで作ったって言うし」
 士郎「こんな凄い活きの良い切り身だぞ。火を通すのは勿体無い」
 凛 「確かに」
 桜 「そうですよねえ」



 二千六百六「無欲とも違うんだが」

 凛 「もしもいきなり大金が手に入ったらどうする?」
 士郎「大金か……、どうしよう?」
 凛 「こっちがそれを訊いているのよ。
    そこで困る辺りが腹立つわね、正義の味方め」   



 二千六百七「○○のゲームは世界いちぃぃぃ!」

 志貴「琥珀さん、何か新しいゲームでも……って、何、これ?」
 琥珀「仕舞い込んでいるハードも年に何回かは電気を通してあげないと」
 志貴「何だか見た事もない機械があるけど、これ外国製?」
 琥珀「何と言う暴言。嘆かわしい、国産ですよ。
    志貴さん、歴史は勝者のみで作られている訳ではないんです。
    ひっそりと消えていった負けハードの歴史もあるんです」
 志貴「ふうん。負けハードか。じゃあ、これ全部負けハードなんだ」
 琥珀「負けとは何ですか、シェア的にはアレでもユーザーの満足度が
    高ければ、それは断じて負けなんかじゃありません」
 志貴「どっちなのさ」



 二千六百八ノ一「美しき天然」

 アルク「ねえねえ、志貴。これ見てよ」
 志貴 「ちらし。ふうん」
 アルク「面白そう、行こうよ」
 志貴 「ああ、いいよ」
 アルク「うん、約束ね」
 志貴 「アルクェイドが見たいっていうならいいんだけど、面白いの
     かな、お前が見ても。
     うーん、サーカスかあ……」


 二千六百八ノ二「行ってきました」

 アルク「面白かったねえ、志貴」
 志貴 「面白かったけど、面白かったのか」
 アルク「何言ってるのかわからない」



 二千六百九「剣を取る」

 凛   「士郎がアーサー王に仕えたいって来たら、配下にしていた?」
 セイバー「あのような有望な少年の未来を築く為に、私は戦場を駆けた
      のです」
 凛   「高邁な志とやらは置いといて、つまりあまり戦場に連れては
      行きたくないと、そう言うわけね」
 セイバー「凛、何と言うかもう少し修辞的な表現を尊んだほうが良い」
 凛   「その辺はむしろ魔術師の得意分野だと思うけど」



 二千六百十「貫くもの達」

 シオン「代行者とは戦ったのですね」
 リーズ「ああ、痛み分けというか、なし崩しというか、きっちりとした
     勝敗はついていないけど。
     いつか彼女が異端狩りに来たら、決着をつけるのも悪くない」
 シオン「音と法律の調停者、誉れある騎士団団長のあなたが異端……」
 リーズ「それも運命だろう。
     噂に聞くより凄まじい体術、さすがは埋葬機関の弓だな。
     それに第七聖典も、とんでもない代物だったよ。
     思わず別れ際に誉めてしまったくらいだ」
 シオン「あなたらしいと言えばらしいですが」
 リーズ「だが、代行者に、そんな言葉をかけるとつけあがるので止めて
     下さいと言われたよ。あれは何の事だろう?」



 二千六百十一「イベント開催者が参加者の半分」

 士郎「聖杯戦争ってよく考えると市内レベルの催し物なんだな」
 凛 「ちょっと何よ、それ。その理屈はおかしいわ。
    それ言ったらスポーツの世界大会とかだってどこかの市だか
    町だかのイベントだって事になるじゃない」
 士郎「ああ、そうか」



 二千六百十二ノ一「教える」

 士郎  「こんな感じかな。
      薄味にしといた方が好みで調味料加えられるからいいと思う」
 キャスタ「なるほど。うん、まあまあの出来だわ」
 士郎  「そうだな、教えた甲斐がある味だと思う」
 キャスタ「ふふ、ひとつレパートリーが増えたわ。
      それにしても、教わってばかりね。
      時々お礼にわたしの魔術でも幾つか教えようかと思うんだけど」
 士郎  「へえ」
 キャスタ「ただ……、かなり無理があるのよね。出し惜しみでなくて。
      基礎的な部分ならば、あの娘が教えているし」
 士郎  「ああ、わかるよ。
      よちよち歩きも出来ない子供に世界ランクのスプリンターの
      走りを教えるようなもんだろうしなあ」
 キャスタ「ええ」(もっと落差あるなあという目で)


 二千六百十二ノ二「教えがい」

 士郎  「それならさ、遠坂には魔術教えようとは思わないのか」
 キャスタ「そんなの欠片も思わないわね」
 士郎  「中華料理なら遠坂の方が俺より上だぞ」
 キャスタ「等価交換以上のものを持っていかれそうだから、あの娘は」
 士郎  「なるほど」
 キャスタ「それと、何となく坊やには教えてみようかという気になるのよ。
      セイバーとか、うちのアサシンとかもそうでしょう」
 士郎  「そうなのか」
 キャスタ「難易度が高いパズルに挑むみたいなものかしらね」



 二千六百十三「秘密の部屋」

 幹也「うーん」
 橙子「どうしたね」
 幹也「鮮花が言うには、家を出てからも僕の部屋はそのままらしいんです」
 橙子「ほう」
 幹也「それならば取ってきたい物が幾つかあるんですよ」
 橙子「ならば取りに行ったらいいだろう」
 幹也「それはできません」
 橙子「では、鮮花に頼んだらどうだ。家具を持ってきたいという訳では
    ないのだろう」
 幹也「鮮花、いえ、他の誰にも頼める訳ないじゃないですか」
 橙子「それは何なのかと聞きたいところだが、止めておこう。
    そういう何事もないという顔で言うだけにかえって怖いな、君は」



 二千六百十四「音楽家」

 さつき「あのリーズバイフェさん」
 リーズ「なにかな」
 さつき「高らかに何たらとか、奏でよ云々とか、
     音楽家の人って関係ない時にもそういう用語使うの何故?」
 リーズ「何と言うか、業界のお約束なんだ。何でなんだろうね」



 二千六百十五ノ一「言ったもん勝ちの面もある」

 シエル「地ビールというのがありますよね」
 志貴 「ありますね。一応縁の無いものの筈ですが」
 シエル「あれは歴史で言えば非常に浅いものが多いのに、妙に伝統とかを
     感じさせますが、地酒という言葉のせいでしょうか」
 志貴 「そうかもしれないね。地鶏なんてのもあるか」
 シエル「それならば地カレーという言葉を定着させていけば……」
 志貴 「どうもならないと思うけど」


 二千六百十五ノ二「どのくらい残るものなのか」

 志貴 「どちらかというとご当地とかつけた方がいいんじゃないかな。
     いつの間にかご当地ラーメンなんて言って知名度上がる例も
     あるし」
 シエル「ご当地カレー。土地土地にある素材や味付けの傾向を反映した
     他とは違った特徴あるカレー。
     何と魅惑的な。素晴らしいです、遠野くん」
 志貴 「はあ」
 シエル「さすがは副会長。こうしてはいられません。では」
 志貴 「……副会長?」



 二千六百十六「誰が元凶か」

 リーズ「しかし、あの一夜の時にも思った事だが、この地はあまりに
     節操がない」
 シオン「この地に集まっている真祖や代行者ですか」
 リーズ「そう、土着の鬼に、夢魔。
     アトラス院の次期後継者などもいる始末だ」
 シオン「それを言うならば、ヴェステル弦楯騎士団団長もそうです」
 リーズ「まったくだね。
     ただ、いちばん驚くのは、わたしならともかく、君がそんな中で
     馴染んでしまっている事なんだ」
 シオン「自分の事ながら、まったくです。
     先の事などわからないものですね」
 リーズ「(シオンが冗談を言っているのだろうか、まさか?)」
     


 二千六百十七「携帯電話」

 キャスタ「わかりやすく言えば、遠話の能力を行う道具……、それくらい
      さすがに知っている顔ね。正確には話をするのではなくて、音を
      伝達している。同様に文章や映像を変換させて飛ばす事も可能。
      それだけに特化させずに、オートマータにおける頭脳的処理を
      わざわざ内蔵させているのは面白いわね。受け取った文章や画像
      を保存したり、計算したり、予定管理したり。
      音楽を聞いたりテレビを観たりも出来るけど」
 凛   「す、凄いのね」
 キャスタ「ゲームとか、ネットまで行くと理解は無理かしらね」
 士郎  「無理だと思う。
      それにしてもキャスターから説明されるのも何か違う気がする」
 キャスタ「最新のテクノロジーを摂取するのは魔術師として当然よ。
      普通に世の中に溢れているなら特に」
 凛   「うーん」(手の中の携帯を見つめて)



 二千六百十八「弟の恋路」

 綾子「いい加減、桜は諦めたらどうだ」
 実典「放っといてくれ」
 綾子「他の子なら協力できないでもないぞ。紹介くらい」
 実典「姉ちゃんの友達だろ」
 綾子「ああ」
 実典「じゃあ、いい」
 綾子「なるほど。……じゃなくて、どういう意味だ」



 二千六百十九「憧れの先輩」

 綾子「お前が年上好きなら、いっそ遠坂とかどうだ。
    下級生にも人気あるんだろ。猫被ってるし。
    まず断わられるのは間違いないけど。」
 実典「猫被ってるとか、断わられるとか、それで勧める神経が
    わからねえよ」
 綾子「そうだね。
    万が一それであいつに先に恋人出来るのも癪だし」



 二千六百二十「持たぬものを」

 実典「よくさ、姉がいる奴は妹を欲しがるって言うだろ。
    それと逆に、妹がいる奴は姉に憧れるとか」
 綾子「あたしも頼りがいがある兄さんが良かった」
 実典「遠坂先輩って良く知らないけど姉ちゃんと似た匂いがある。
    だから、何だか嫌だ。桜先輩みたいなタイプがいい」
 綾子「なるほど。
    でも桜って……、いや、夢を壊すこともないか」(小声)
 実典「何か言ったか」
 綾子「いや、せいぜい自力で頑張りな」



 二千六百二十一「忍び寄る影」

 セイバー「凛の話にたまに出てくる同級生だという三人組ですが、
      怪しくはないですか」
 凛   「怪しい? 蒔寺達が? いいえ、別に怪しくはないわよ」
 セイバー「しかし執拗に凛に近づくというのは何か裏があるのでは」
      学校内では正体を隠しているだけかもしれない」
 凛   「ないない。ありえないわ」
 セイバー「しかしシロウは同じ学校に通っていた凛が魔術師だとは、
      気づいていなかったと言っていました」
 凛   「一緒にされたくないなあ。
      と、噂をすれば……ね。ねえ、士郎、どう思う?」
 士郎  「なになに、三枝さん達が? 考えすぎだセイバー。
      俺が保障するよ」
 セイバー「……」
 凛   「……」(考え込む顔に)
 士郎  「うん?」


 二千六百二十一ノ二「優先順位」 

 セイバー「どうでもいい事ですが、同じ三人に対して凛とシロウでは
      挙げる名前が違うのですね。蒔寺と三枝と」



 二千六百二十二「帰り道の両手の重み」 

 士郎「前は安売りだって言うんで買いすぎて困った事もあったよな」
 桜 「今はむしろ足りないかなあと心配してしまいますものね」



 二千六百二十三「洋館暮らし」

 有彦「寒くなってきたよなあ。
    学校サボって温泉でも行きたくなるな、こうなると」
 志貴「いきなりそこまで飛ぶのがわからない。
    確かに寒いよな。コタツ出したよ」
 有彦「そうか」
 志貴「ああ」
 有彦「……どこに?」



 二千六百二十四「石油」

 志貴 「シエル先輩は暖房器具は何ですか」
 シエル「当然ストーブですよ」
 志貴 「当然なんですか?」
 シエル「部屋が暖かくなって、同時にお鍋をグツグツとさせて、
     良いですよね、心とお腹が満たされるんです」
 志貴 「ああ、なるほど。温風ヒーターとかだとダメだな」
 シエル「ええ。本当に鍋いっぱいのカレーっていいですよね」
 志貴 「少し話がズレています」
 


 二千六百二十五「犬は駆けるが」

 白レン「ああ、もう何よこの北風。
     寒くて堪らないわ」
 七夜 「何だかいつになく不機嫌だな」
 白レン「猫が寒いの好きなわけないでしょう」
 七夜 「いろいろツッコミどころがあるな」



 二千六百二十六「殺人鬼の季節」

 七夜 「秋から冬にかけてはいい季節だな」
 白レン「ふうん、そんな美意識あったの、意外ね」
 七夜 「夏にこの姿で現れるとどう見える?」
 白レン「見てるだけでこっちまで暑くなりそうね。迷惑だわ」
 七夜 「本人は何ともないがな。では、もっと冬になった雪の日はどうだ」
 白レン「寒そうね。コートくらい身に着ければいいと思うわ」
 七夜 「そういう事だ。今の気候であれば違和感を生じさせない」
 白レン「でも、本人はどうでもいいのでしょう」
 七夜 「趣きを解さないな。まあ、所詮は毛唐の使い魔か」



 二千六百二十七「鍋物の時とかもね」

 志貴「ただいま」
 琥珀「お帰りなさいい、志貴さん。
    寒かったでしょう、温かいものでも用意しますね」
 志貴「ああ、お願いするよ、琥珀さん」
 琥珀「ふうん、、その眼鏡って暖かい部屋に入っても曇らないんですね」
 志貴「そう言えば、そうだね」
 琥珀「不思議ですねえ」
 志貴「そうだね」
 琥珀「あっと、お待たせしてはいけませんね。居間で待ってて下さいな」
 志貴「うん。……まあ、もっと他の部分で不思議なんだけど、言っても
    わからないしなあ」



 二千六百二十八「入るのは簡単だがね」

 秋葉「ねえ、蒼香」
 蒼香「うん?」
 秋葉「ライブとかコンサートって、何ヶ月も前にもう日程が決まって
    予約とか出来る訳なの?」
 蒼香「いろいろだな。早くから予約してるところとかはあるけど。
    何か聴きに行きたいバンドでもあるのか?」
 秋葉「いいえ。年明けの時点で来年の夏のイベントがどうとか瀬尾が
    カレンダー見てぶつぶつ言ってたから、随分と早いのねって」
 蒼香「なるほど」



 二千六百二十九「理解できない」

 橙子「勉強が出来ない人間に出来るようにする技術はあるのだがね、
    そもそも何故出来ないのかについてはよくわからない」
 鮮花「それはわたしもです。
    一度見たり聞いたりすれば、だいたいは記憶して理解できると
    思うのですが。練習が必要なものはありますけど」
 橙子「そうなんだ。何でわからないのだろうかな」
 鮮花「わかりませんね」



 二千六百三十ノ一「名は体」

 式 「何だってそんなに黒いのばかり着るんだ」
 幹也「黒桐だから当然だろう、式」
 式 「(笑うところじゃないよな、真顔だし)」



 二千六百三十ノ二「見えない」

 式 「鮮花はどうなんだ、ここにいる時はいろいろな服着てるぞ」
 幹也「普段は礼園の制服着ている。あれは黒いよ、式」
 式 「じゃあ、トウコはどうだ。あいつは蒼でも橙でもないぞ」
 幹也「えーとね、式、今度温泉にでも一緒に行ったらどうかな。
    あまり詳しくは言えないけど」
 式 「温泉?
    …………下着か、まさか」
 幹也「詳しくは言えないけど」



 二千六百三十三「焚き火」

 士郎  「落ち葉を集めて、燃やすついでに焼き芋を作るなんてのは、
      秋の風情があると思うな」
 桜   「そうですね」
 士郎  「でも、焼き芋をするには自分の家のだけだと全然足りなくて
      他所からかき集めてくるって何か違わないか」
 桜   「そうですよね」

 セイバー「シロウ、桜、見て下さい。こんなに集めてきましたよ」
 藤ねえ 「セイバーちゃん、焼き芋だけでなくてホイル焼きなんかも
      出来るわよ。ジャーン」
 セイバー「おおッ。それは素晴らしい」

 桜   「でも、いいんじゃないですか」
 士郎  「まあね」
    


 二千六百三十四「荷物を取りに」

 凛「ええと、どこの戸棚にしまっていたかしら。
   それにしても、こんなに静かだったんだ、この家」



 二千六百三十五「名も無き小さな花」

 琥珀「たまにはハーブティーなどいかがですか。
    疲れを取る薬効があるんですよ」
 志貴「へえ。それじゃ一杯貰おうかな。
    ああ、ありがとう。ふうん、変わった香りだね。
    ちなみに、何て名前のハーブ」
 琥珀「さあ?」
 志貴「さあって、琥珀さんが育てたハーブじゃないの?」
 琥珀「育てたのはわたしですけど、何なのかは知らないですねえ。
    毒ではないし、効能は知っていますけど。
    美味しいでしょう?」
 志貴「まあね。(でも、変なもの飲まされたり、笑って教えてくれない
    のよりある意味怖いのは何でなんだろう)」



 二千六百三十六「生クリームの芸術」

 志貴 「あれ、レン、こんなところにケーキ屋があるよ。
     知らなかったなあ。
     新作がディスプレイしてあるんだ。
     ん、食べてみたい?
     じゃあお土産に買っていってお茶にしようか」
 レン 「……」(こくこく)

 白レン「……」
 七夜 「何だよ、その目は?」



 二千六百三十七「間接視」

 シエル「遠野君、映像でも死の線は見えるんですか」
 志貴 「それは見えないな」
 シエル「だとしたら、目に映るもの全てを映像を介して見れば
     日常での支障は無くなるのでは」
 志貴 「なるほど、でもどうやって」
 シエル「小型のテレビカメラをつけて、眼鏡にそれが映る様に
     するとか」
 志貴 「日常生活に著しい影響があるような気がしますけど」

 

 二千六百三十八「異端」

 アルク「魔術師って、自分の目的の為なら自分以外が滅んじゃっても
     いいって連中じゃない」
 シエル「そうですね」
 志貴 「そうなのか」
 アルク「だとすると、人間の終末回避なんて考えるのは異端なのね」
 シエル「魔術師としては異端かもしれませんね。
     まあ、どっちにしろ魔術師は異端ですけど」



 二千六百三十九「いや、元を正せば」

 アーチャ「……。
      なるほど、これがフェイカーに対する怒りの気持ちか。
      自分がその立場にならねばなかなかわからないものだな」

     干将莫耶を手に訓練中の士郎を、遠くから眺めて。
 


 二千六百四十「災害対策」

 士郎「エクスカリバーみたいに多人数相手とか攻城とか出来るレベルの
    宝具って、簡単に町を破壊したりできるだろ」
 凛 「余裕でふっ飛ばせるわね」
 士郎「冬木の管理人としてはどういう予防手段を講じていたんだ」
 凛 「使用制限のルールとか設けたりしているけど」
 士郎「でも、生死が掛かった時にはルールが破られる事もあるだろう。
    最後の切り札だとするとさ。
    サーヴァントはともかくマスターが命じる事もあるだろうし。
    まさか対策が何も無いって事はないよな」
 凛 「……。
    とりあえずもう無いから。聖杯戦争は起こらないから」



 二千六百四十一「暦」

 志貴 「来年のカレンダーとか見ると、今年も終わりかって思うよな」
 アルク「そうだよねえ」
 志貴 「アルクェイドはカレンダー飾ったりするのか?」
 アルク「それなんだけどね、カレンダーって何に使うの?」
 志貴 「そう来るとは思わなかった。
     そうだなあ。ポスターみたいな役割もあるだろうけど、今日が
     いつか確認したり、先の日付確認したりとかが基本かな」
 アルク「うーん? 何でいるかな、それ」
 志貴 「2345年の最終日は何曜日?」
 アルク「月曜日」
 志貴 「なるほど、おまえは必要ないのかもしれないな」
 アルク「一人で頷かない。
     その日が何なのよ。あ、もしかしてどっか行くって話?」
 志貴 「いや、多分それは無理」



 二千六百四十二「夜訪」

 アルク「来たけど、志貴眠ってたから、そのまま帰ったわよ」
 秋葉 「その時に窓は?」
 アルク「ええと……」
 秋葉 「ほら、ごらんなさい。
     開けっ放しにしていたから、兄さんが風邪を引いたんです。
     今日のところはこのままお引取り願います」
 アルク「はい」

 

 二千六百四十三「魂魄此土に留まって」

 士郎「歴史上の人物で、死んで怨念になって祟った伝承とかあるだろ」
 凛 「菅原道真とか平将門とか、幾つもあるわね」
 士郎「そこまで行かなくても、古戦場なんか霊的な作用あるよな」
 凛 「そうね」
 士郎「英霊になったほどの存在が世界中から集まって、目的を果たせず
    死んだりしたのって、怨念が凄い事なってないかな、冬木市って」
 凛 「そういわれてみると……、ちょっと怖いわね」



 二千六百四十四「議決」

 セイバー「改めて聖杯戦争の仕組みを見ると、不合理な部分が幾つも
      あるように思えます」
 士郎  「確かに有能な魔術師が集まって作ったにしては」
 凛   「そうね。理由はだいたい見当がつくわ。
      セイバーならよく分かるんじゃないかしら。
      それなりに力を持つ連中が最終的には自分の利益を目的と
      して何かを決めようとすると、どうなるか」
 セイバー「なるほど。明らかな答えがあってもそこには至らない」
 凛   「そう。国際会議でも学級会でも同じ。
      不合理でも始まってしまえばそれはそれで定着するしね。
      魔術師も人間という事ね」
 士郎  「なるほどな」



 二千六百四十五ノ一「剣に生き」

 アーチャ「もう一度言ってみろ。何だと?」
 士郎  「だから、良くわからないけど、どうせなら何か凄い剣を
      出して貰ってこいって、遠坂が言ってるんだ」
 アーチャ「ほう。まあ、容易い事だではあるが、英雄であるが故に
     手にしたものを、貴様ごときが持って良いものなのか」
 士郎  「それはそうかも知れないけど……」
 アーチャ「まあ、マスターの命令だ。承知せざるをえまい。
      む……、どれでも好きなのを持って行け」
 士郎  「すまない。
      ……どれも禍々しいというか、呪われてそうなんだけど。
      そっぽ向くなよ、おい」


 二千六百四十五ノ二「剣に倒れ」

 アーチャ「つまらんところで洞察力を見せるな。さんざん自分から
      危地に飛び込む真似をしていながら。
      この振るう度に生命をすり減らす剣などお勧めだが」
 士郎  「いらねえ」
 アーチャ「では、これならどうだ。これならば支障は無い」
 士郎  「支障が無い色はしてないけど。まあ、いいや。借りてく」
 アーチャ「……人を殺める度に、その断末魔を吸い込んでいって、
      1000を数えたら持ち主を喰らう剣だったか。
      あと1人だが、まあ支障は無いであろうな、恐らくは」
      


 二千六百四十六「使ったんじゃないか」

 シエル「遠野君、こんな深夜にふらふらしているのは感心しませんね」
 志貴 「先輩も同じだと思うけどな」
 シエル「見回りを終えて戻るところです。遠野君も帰りましょう」
 志貴 「はいはい。もういい加減冷え切ったしな」
 シエル「それなら、いいものがありますよ。これ、飲みます?」
 志貴 「いただきま……、まさかカレーじゃないよね」
 シエル「コーヒーですよ」
 志貴 「ならば遠慮なく。あ、どうも。
     ん、んん? コーヒーだよな? うん、コーヒーなんだけど?」
 シエル「え? あら、確かにこの匂い。
     昨日、洗って……、洗ったかなあ。ううん?
     でも、美味しいですね、これ」(悪びれずに)



 二千六百四十七「空の彼方の」

 志貴 「地球から遠く離れたら、先輩を不死身にしていた力も効果を消失したり
     しなかったかな」
 シエル「実証は無理ですが、考えさせる問題ですね。
     確かに人間の住まう活動領域だけが世界の対象であれば。
     それから何光年もの彼方へ行って戻って来た時に、既に地球で何千年も
     経っていれば、原因自体が消え去った後だったかも……」
 志貴 「まあ、人類自体が絶滅してるかもしれないけどね」



 二千六百四十八「肉の脂身とか魚の皮とか」

 志貴 「先輩ってニンジン嫌いでしたっけ?」
 シエル「え、あ、いえ。つい癖でどけてしまって……。
     ペットがいる家で良くあるあれですかね」



 二千六百四十九「大晦日と正月」

 志貴 「ざる蕎麦をカレー汁でというのはありかもしれないけど、餅を
     カレーに入れて雑煮ってのは、認められない」
 シエル「でもお雑煮って餅を入れた汁物という定義しかないようですよ。
     地方によってお出汁も具も多種多様というかばらばらですし。
     カップラーメンにお餅を入れるだけで完成というのに比べたら、
     わたしのは立派にお雑煮です」
 志貴 「それはそうなのかもしれないけど。でも何か、何かが違うんだ」
 シエル「美味しいのにい」



 二千六百五十ノ一「要求と回答」

 秋葉「何かに腹を立てていたのですけど」
 志貴「忘れるくらいなら、きっと些細な事なんだろ」
 秋葉「確かにそうかもしれませんね。
    じゃあ、兄さん、謝ってください」
 志貴「なんでそうなる」
 秋葉「原因は兄さんに決まっています」
 志貴「待て。幾らなんでもそれは理不尽だろう」
 秋葉「だったら、じっくりと原因を思い出してみましょうか」
 志貴「む。秋葉、ごめんなさい」
 秋葉「はい」(満足そうに、でも幾分消化不良な表情で)


 二千六百五十ノ二「その分析」

 琥珀「どうした事でしょう、志貴さんらしからぬ状況判断。
    迅速にして的確。驚きですね、これは」
 翡翠「……何か知っているのですか、姉さん」
 琥珀「いいえ、何も。
    ついでに言うと、さらにポイントなのは、『もうしません』とか
    余計な言質をとられる事を言わなかったところですね、うんうん」
 翡翠「やっぱり何か知っています」(呟き)
    


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