天抜き 其の五十五






 二千七百一「落し物」

 幹也「あれ、何だろうこれ」
 式 「誰かが落としたんだろう」
 幹也「交番にでも届けておこう」
 式 「そうだな」
 幹也「何だか式、歯切れが悪い言い方だね」
 式 「おまえがそういうもの拾うとたいていそれだけで終わらない。
    厄介事がついてくる」
 幹也「そんな事はない……かなあ」



 二千七百二「嵐」

 凛   「かなり凄くなってきたじゃない」
 セイバー「そうですね。音も凄まじい」
 凛   「面白くなってきたわねえ」
 セイバー「同感ですね」

 士郎  「この辺の感覚が違うんだよなあ、どうも」(しみじみと)



 二千七百三「泥」

 凛 「終わってみれば早いものね」
 士郎「忘れられないけどな」
 凛 「わたし達が当事者になる事はもうないと思うけど」
 士郎「そう言えば柳洞寺の後始末って遠坂がやったのか」
 凛 「ええ。セカンドオーナーとしての義務よ」
 士郎「あれが残っていてひっそり悪さするとかないよな」
 凛 「大丈夫よ。聖杯関係はいちばん念入りに始末したもの」
 士郎「そうか」
 凛 「でも、もう一度くらい念入りに確認してもいいかもね」
 士郎「妙にさりげなさを装った声だな」(小声)



 二千七百四「頑固者」

 イリヤ「多いわよね、この家って」
 士郎 「否定はできないなあ」
 イリヤ「あら、素直なのね」
 士郎 「なんで残念そうなんだ」
 イリヤ「頑固なんかじゃないって頑固に言い張るかと思ったのに」



 二千七百五ノ一「挑戦者」

 橙子「ああ、勝負挑まれた事なんか数知れずあるな」
 鮮花「それでどうしたんですか」
 橙子「全部勝ってきたさ。そうでなければここにこうしていない」
 鮮花「そうですか」
 橙子「魔術師が全部が全部そうな訳ではないさ」
 鮮花「そうですよね」
 橙子「ただ、私の弟子だと知れたらどうなるか」(楽しそうに)



 二千七百五ノ二「好敵手」

 橙子「まあ、そんなまだ現れもしない敵より、もっと切実な存在が
    いるだろう。好敵手というにはまだ手強い相手が」
 鮮花「式は好敵手なんかじゃありません」
 橙子「そうか」
 鮮花「そもそも敵ではないですよ」
 橙子「ほう?」
 鮮花「わたしの敵は黒桐幹也ですから」
 橙子「なるほど。しかし……、業が深い話だ」

 

 二千七百六「闇」

 士郎「何も見えない状態ってのは、ちょっといいな」
   


 二千七百七「刃」

 アルク「ねえ、何やってるの、志貴?」
 志貴 「見てわからないか。刃を研いでるんだ」
 アルク「ふうん、何の為に?」
 志貴 「何の為にって、切れ味を良くする為だろう」
 アルク「だから志貴が何でそんな事する必要あるのかわからない」
 志貴 「まあ、いらないって言えばいらないけどな」



 二千七百八「大団円」

 凛「全員揃ってめでたしめでたしとはなかなかならないものね」
 桜「そうですね。
   でも全員揃うとめでたしめでたしにならないんじゃ」
 凛「うわあ、何気にすごい事言ってる。怖い子ね、桜」



 二千七百九「拳」

 凛 「士郎は自分の体を強化したりはしなかったの?」
 士郎「葛木先生みたいにか。いや、やらなかった」
 凛 「ふうん、なんぼかマシだったでしょうに。
    なんでしなかったの」
 士郎「木の棒をさ、強化しようとするだろ。
    失敗すると粉々に砕けたりしたんだ」
 凛 「ああ。なるほどね。失敗するって事もあるんだ、そうね」



 二千七百十「切れる女」

 士郎  「遠坂かな」
 セイバー「そうですね」
 桜   「同感です」

 凛   「ふうん。
      それ、頭が切れるっていう意味? それとも……」



 二千七百十一「名誉」

 セイバー「どうしてシロウは私より前に出ようとするのです」
 士郎  「当然だろう」
 セイバー「そんな事をされるのは、騎士として恥ずかしい」
 士郎  「む。でも、王様に守ってもらうのは変だろう」
 セイバー「民を守るのが王の務めです」
 凛   「またやってるのね。
      面倒だから、俺に守られろって命令出したら」
 士郎  「それは何か違う」
 セイバー「その通りです」
 凛   「……好きにやってなさい。とりあえず平穏だし、今は」
 


 二千七百十二「夢の涯」

 アーチャー「辿りつけなかった事こそが僥倖だと、知らぬまま
       無念を抱いて息絶えたか。
       貴様に羨望の念を抱くとはな……」



 二千七百十三「最後」

 凛 「もちろん、めでたしめでたしになるのよ。
    決まっているでしょう」
 士郎「決まっているのか」
 凛 「そうよ。
    するのは、当然なんだから。だったら、なるの」
 士郎「凄く能動的なのか、何なのかわからない」



 二千七百十四「復讐者」

 志貴「ちょっと先に味見してみたかっただけなのに。
    悪気もなく一口食べただけなのに。
    それなのに、こんな、こんな、こんなことにぃぃッッッッ。
    そんなに、そんなに酷い事をしたのか。
    こんな目に合わされるほど、そんな悪い事だったのか。
    答えてくれよ、先輩ッッッ。
    すまない、すまない、みんな……、ううう」
 
 

 二千七百十五「いくじなし」

 アルク「志貴のいくじなしッ」
 志貴 「え、そうなのか、俺?」(心底意外そうに)
 アルク「さあ。そう言えばいいんじゃないの?」
 志貴 「また、何かテレビでも見たのか」



 二千七百十六「高価食材」

 琥珀 「どうですか、凄く珍しいものだそうなんですけど」
 志貴 「どうって、うーん。食べつけないものだからかなあ」
 シエル「これ一切れでアレもコレも買えるお値段なんですよね」
 志貴 「ええと、美味いはずだよな」(歯切れ悪く)
 シエル「きっと、そうですよね」(首を傾げつつ)
 琥珀 「あら、秋葉さま。例のアレ調理してみたんです。
     お味見いかがですか?」
 秋葉 「そうね、少し貰おうかしら。
     ん……、駄目ね、不味いわ。口にあわない。
     口直しにお茶をお願い」
 志貴 「うわ、微塵も躊躇せずにすっぱり切り捨てた」
 シエル「さすがお嬢様ですねえ。やっぱり不味いんですね、これ」



 二千七百十七「出戻り」

 鮮花「そろそろ家に戻ったらどうです。
    少なくとも今より食生活は改善されるでしょう」
 幹也「でも勘当された身だからなあ」
 鮮花「そんな事どうでもいいです。
    そもそもそういうの如才なく宥められるでしょう」
 幹也「いやあ、そんな事ないよ。
    だいたいあまり戻る意味もないし。鮮花もいないだろ」
 鮮花「え……」

 橙子「うまいな。
    まったく意識せずに黙らせてしまうとは」



 二千七百十八「瑕疵」

 セイバー「シロウ、凛について思うのですが、あれほど優れている
      魔術師でありながら、時として信じがたい失敗を仕出かす
     というのは、確かに欠点であると言えます。
      でも、まったく隙のない存在であったとしら、他の魔術
     師達から過度に警戒される気がします。
      むしろこれは盾となりうる資質ではないかと……」
 士郎  「ああっ、遠坂ッッッ」
 セイバー「単なる気のせいのように思えてきました。やれやれ」



 二千七百十九「冬去りぬ」

 有彦「もう鍋の季節も終わりだなあ」
 志貴「真夏に土鍋引っ張り出すだろ、お前」
 有彦「美味いだろ、夏の鍋は」
 志貴「ま、そうだけどさ」
 有彦「温泉もそろそろシーズン外れるか」
 志貴「お前、季節関係なくぶらりと出かけるだろう」
 有彦「春は春で、夏は夏でいい所あるんだよ。
    情緒のわからぬ奴め」
 志貴「どっちがだよ」



 二千七百二十ノ一「仲良く会食」

 志貴 「みんな好きなもの食べてくれよ」
 アルク「うん」
 シエル「何にしましょうかねえ」
 秋葉 「さて」(メニューを眺めて)
 志貴 「ええと、ああ言ったけど平気なんだよな」(小声で横に)
 秋葉 「ここで兄さんに恥をかかせる真似はしませんよ。
     まったく……」(小声で返して)


 二千七百二十ノ二「選択」

 志貴 「あ、決めたのか、アルクェイド?」
 アルク「志貴と同じのにする」
 シエル「ふうん。では、わたしも同じものを頂きます」
 秋葉 「なるほど。では私も同じで。
     さ、早く兄さんお好きなものを頼んで下さい」
 志貴 「あ、ああ。
     (何だ、急にこんなプレッシャー)」


 二千七百二十ノ三「居残り」

 琥珀「今頃、志貴さん達、楽しく談笑して美味しいものを食べて
    てるんでしょうねえ。
    わたし達はここでお留守番、なんて寂しいんでしょう。
    およよ……」
 翡翠「姉さん、行きたかったんですか?」
 琥珀「ええと、お鍋そろそろいいかしら」(視線をそらして)
 翡翠「はあ」



 二千七百二十一ノ一「エイプリルフール」

 琥珀「志貴さん、アルクェイドさんに嘘ついたりしたんですか?」
 志貴「いや、してないよ」
 琥珀「へえ。あ、わかりました。
    嘘をついてないって嘘をわたしについているんですね」
 志貴「いや、本当に。
    騙されませんよーな顔しない」
 琥珀「つまらない」


 二千七百二十一ノ二「四月馬鹿」

 琥珀「アルクェイドさんならあっさりと引っ掛かってくれそうですのに」
 志貴「それはそうなんだけどさ」
 琥珀「だったら楽しく掌で躍らせたらいじゅないですか」
 志貴「あいつが騙された場合、そっからこっちに面倒が来る気がするんだ」
 琥珀「んー? あ、ああ。確かにそうですねえ」



 二千七百二十二「四月一日」

 橙子「黒桐はせっかくだから誰か騙してやろうとか思わんのか」
 幹也「そうですね。やってみても面白いかもしれませんが」
 橙子「女性陣、集合。
    これから黒桐が誰かを騙してくれるそうだ」
 幹也「え?」
 一同「……」(期待の目)
 幹也「え?」



 二千七百二十三「4月1日」

 凛  「そもそもあんた嘘なんてつけるの?」
 士郎 「そりゃつけるけどさ」
 イリヤ「自分を騙すのはうまいよね?」
 士郎 「そうなのかな」
 凛  「必要とあれば嘘もつくでしょうけど、嘘をつく為の嘘なんて
    本当につけるの?」
 士郎 「わからなくなってきた」



 二千七百二十四「共通の」

 リーズ「いや、そう見えるのだが実は」
 さつき「ふうん、意外」
 リーズ「それで……、と、シオン、お帰り」
 さつき「おかえり、シオン」
 シオン「ただ今、帰りました。
     随分と話が弾んでいたようですね。
     二人でそんなに盛り上がる話題があるとは」
 リーズ「別に意外でもないだろう。
     二人が共に興味を持つ話題ならあるよ」
 シオン「ほほう?」
 リーズ「もちろん、シオン、君のことだよ」
 シオン「なるほど。……えっ、いったい何を話したんですッッ」



 二千七百二十五「果てに」

 志貴「もしも琥珀さんの思惑通りに進んだとして、
    その後から何をしようとしていたのかな」
 琥珀「難しい質問ですねえ。
    それに凄く凄く嫌な質問です」
 志貴「答えが無いというのが答えになるかな」
 琥珀「そんなところにしておきましょう」



 二千七百二十六「倒すべき異端」

 リーズ「シオンはワラキアの後を継ぎうる能力を持っている。
     さつきにしても死徒たりうる資質を有している。
     よくあの代行者が黙っているものだね」
 シオン「まあ、そうですが、あなたが他人事のように言うのも何とも」
 リーズ「違いないね」



 二千七百二十七「雨上がりの蒼天」

 幹也「今日は良い天気だねえ。
    昨日は突然雨が降ってきたけど」
 式 「そうだな」
 幹也「こんな日は洗濯でも……あッ」
 式 「どうした」
 幹也「昨日出掛けに布団干してそのままだ。
    仕事が立て込んで泊まっていったから。うわ、まずい」
 式 「ふん、ちゃんと取り込んで畳んである」(小声)
 幹也「どうしよう。あーあ」
 式 「行ったら戻ってこないし。
    部屋着くまで言わないからな、ふん」(小声)
  


 二千七百二十八「航路」

 橙子「さて、また一人になったか。どこへ行くか……。
    今まで少々長く留まっていただけなのか。
    それとも今がそこから束の間離れているだけなのか。



 二千七百二十九「商店街」

 リーズ「おや、ごきげんよう」
 シエル「はい、ごき……、何をやっているのです、あなたは」
 リーズ「見ての通り買い物だが」
 シエル「いろいろと言いたい事はありますが、何を白昼堂々と出歩いて
     いるんです」
 リーズ「消去法だとわたしになるんだが。力もあるし」
 シエル「存在が知られた場合、いちばん大騒ぎになるのは貴方でしょう」
 リーズ「もう、死んだ事になっているだろう?」
 シエル「だからですよ」
 リーズ「そうか……、なるほど、さすが代行者。
     まあ、君が黙っててくれれば問題ないだろう。それでは」
 シエル「ちょっと……、何か違う、何かが」



 二千七百三十「道理」

 志貴「琥珀さん、料理のコツって何かな」
 琥珀「そうですね、決められた材料を決められた手順で扱う事ですよ」
 志貴「それだけ?」
 琥珀「ええ」
 志貴「ふうん」
 琥珀「まあ、答えがわかってても出来ない事の方が多いですけどね。
    ……たんに料理の話ということではなくて」
    


 二千七百三十一「多様性」

 シエル「それにしても自国の誇る料理に果敢にカレーを取り込むのは
     素晴らしくもありますが、実に驚嘆すべき事ですね」
 志貴 「カレーうどんとか、カレー鍋とかか」
 シエル「天麩羅ですらカレー塩で食べたりするでしょう。
     さすがにお寿司は無理でしょうけど」
 志貴 「カレー寿司ってどこかであった気がする」
 シエル「わたし負けましたわ」



 二千七百三十二「むしろ新しい店の方がやりそう」

 志貴 「はい、カレーの大判焼き」
 シエル「楽しみだったんですよ、これ。いただきます。
     ん、ふっ、美味しいですねえ」
 志貴 「意外といいね。カレーまんみたいなものか」
 シエル「江戸時代からの老舗なんでしょう。
     さすが伝統の味ですねえ」
 志貴 「カレーは最近じゃないかと思うけどなあ。
     まあいいか。わざわざ水ささなくても」(小声)    

  

 二千七百三十三「外人さん」

 セイバー「好き嫌いはいけませんよ、イリヤスフィール」
 ライダー「そうですね、同感です」
 イリヤ 「えー。
      わたしだって卵は好きだけど、これ生卵なのよ?」
 セイバー「美味しいじゃないですか」
 ライダー「何か問題でも」
 イリヤ 「うー」



 二千七百三十四「世の風潮に対し」

 橙子「芸術の創造の為に必要だと言っておきさえすれば……、
    とりあえず黙認はされると」(紫煙を燻らせつつ)



 二千七百三十五「賽の目」

 シオン「5」
 志貴 「……5だ。これでぬ10回連続で当たった。
     凄いな。どんな確率なんだ」
 シオン「偶然に頼ってなら信じがたい値でしょうけど」
 志貴 「でも未来予知でそんな精度でわかるものなのか
     計算する時間なんてほとんどなかっただろ」
 シオン「計算などしていませんよ」
 志貴 「え?」
 シオン「エーテライトで結果を調整しただけです」
 志貴 「それは単なるイカサマだろう」
 シオン「だから何か?」



 二千七百三十六「神にも悪魔にも」

 橙子「ひとつ言っておくが、その力は決して馬鹿には出来ない。
    全てを燃やし灰とする事が出来る。
    一歩間違えば恐るべき惨禍を引き起こす、そういう力だ」
 鮮花「はい。肝に銘じます。
    でも……」
 橙子「でも、なんだ?」
 鮮花「確かに怖いですが、要は火ですよね」
 橙子「然り。その通りだ」
 鮮花「つまり火の用心」
 橙子「ニュアンスはともかく意味合いとしては正しいな
    正しいんだが、もっとこう……」



 二千七百三十七「剣技」

 小次郎「………はッ」(烈破の気合)
 士郎 「え、今切ったのか。うんや、切れてない?……いや切れてる」
 小次郎「そうか。いまだ至らずだな」
 士郎 「なんで、凄まじい剣筋じゃないか」
 小次郎「切れていてなおかつ切れていない。そんな域を目指していてな。
     これではまだ、今までの手技の延長に過ぎない」
 士郎 「切れていて……、切れていない?」
 小次郎「そこまで至れば、切れないものをも切れるのではないか。
     ふと、そう思いついた」
 士郎 「禅問答みたいだな。まったくわからない領域だ」
 小次郎「なに、単なる手慰みよ」(鞘に収めつつ)



 二千七百三十八「個と他」

 橙子「誰かひとりわたしが封印指定となってしまえば、
    いろいろと協会絡みの厄介事から免れるのではないのかな。
    他の自分の為に自分の身を投げ出すという時点で、何か個として
    破綻するのかもしれないが」



 二千七百三十九ノ一「活眼」

 セイバー「む、シロウ、それはソースです」
 士郎  「え。あ、本当だ。危ないところだった」
 藤ねえ 「つまらなくなっちゃったなあ」
 士郎  「うるさいぞ、藤ねえ。助かるよ、セイバー」
 セイバー「いえいえ、活きのいいお刺身を穢す真似は許せませんから」
 凛   「士郎の為とは微妙に違うのね」
 

 二千七百三十九ノ二「判断」

 セイバー「……」(注視)
 士郎  「うん? あれ、これは醤油か。しまった。
      セイバー、どうして教えてくれなかったんだ」
 セイバー「コロッケにどちらをかけたかったのかわからなかったので。
      シロウはソース派なのですね。覚えておきます」
 士郎  「あ、ああ。何かポイントが変わっているような」



 二千七百四十ノ一「躍動」

 藤ねえ「ただいまー」
 士郎 「おかえり、って、セイバーとライダーも一緒か。
     何だか変な組み合わせだな」
 藤ねえ「みんなで競馬場に行って来たのよ」
 士郎 「なんでまた」
 藤ねえ「馬が見たいって言うから」
 士郎 「なるほど、なのかな」


 二千七百四十ノ二「B級グルメの宝庫」

 セイバー「馬が走る姿というのは素晴らしいものですよ」
 ライダー「そうですね。野生馬とはまた違った味わいもありましたし」
 藤ねえ 「凄いのよ、二人とも。
      この馬が一番でしょうとか、この馬は調子を崩していますとか、
      ほとんど当たってたんだから」
 士郎  「ふうん。まあ、そうだろうなあ」
 藤ねえ 「高いお肉とかいろいろ買ってきたから、今日は腕ふるうのよ」
 士郎  「はいはい」
 セイバー「楽しみです」
 ライダー「あれだけいろいろと買い食いしてまだ……」


 二千七百四十一「小麦だし」

 藤ねえ 「ふんふん、勝利の美酒は格別ねえ。
      士郎も飲む?」
 士郎  「教師が未成年に勧めるな」
 藤ねえ 「じゃあ、セイバーちゃんは」
 セイバー「私もやアルコールはめておきましょう」
 藤ねえ 「ビールは飲むパンて言うのよ」
 士郎  「だからなんだよ」
 セイバー「ふむ。それならばいただきましょう」
 士郎  「え?」



 二千七百四十二ノ一「出て戻る」

 志貴「秋葉のプレゼント買うのに秋葉から小遣い貰うのおかしいだろ?」
 琥珀「おかしいですけど、秋葉様にはおかしくありませんよきっと」


 二千七百四十二ノ二「好きにどうぞ」

 志貴「行ってきたよ」
 琥珀「その微妙な顔つき、ダメだったんですか?」
 志貴「いや、その逆」
 琥珀「なら良かったじゃないですか」
 志貴「こんなに即金でさ」
 琥珀「え、うわあ。ちょっと、むしろ、引きますねえ」
 志貴「うん。白紙の小切手とかカードこどの方がまだね」
 

 二千七百四十二ノ三「釣り銭」

 琥珀「余りはどうするんでしょうねえ。
    貰ったものだからってそのまま自分のものにできる度量は……、
    それはないでしょうね、志貴さんは」



 二千七百四十三「承服しがたい」

 橙子「何というか、君ら兄妹は二人とも親不孝だな。
    心外そうな顔をする辺りがその証明だ」



 二千七百四十四ノ一「削る」

 志貴 「あれ、先輩、どうしたの」
 シエル「遠野君。あれなんですけどね、夏向きに良いなあと思って」
 志貴 「なるほど、先輩に似合いそうな服だね」
 シエル「そう思います?」
 志貴 「はい」
 シエル「それなら思い切って。でも予算が少し……、うーん」
 志貴 「カレーを少し我慢してとか」(冗談っぽく)
 シエル「カレーを我慢する?」(いぶかしげに)


 二千七百四十ノ二「ランク」

 シエル「と、お、の、くんッッ」(テンション高く)
 志貴 「え、あ、先輩。
     ああ、買ったんですね」
 シエル「どうですか、どうですか」
 志貴 「え、ええと、似合ってますよ。うん、本当に」
 シエル「うふふふ」
 志貴 「でも、よく買えましたね」
 シエル「遠野君のアドバイスに従ったんです」
 志貴 「へえ、意外だ」
 シエル「外で食べる分減らしてを家で作ったり、学食にしたり。
     遠出する時には電車やバスを使わず節約したり。
     苦渋の選択でしたが、何とかなるものですね」
 志貴 「食べる回数自体は別に減らさないんだ……」


 二千七百四十ノ三「舟幽霊」

 志貴 「いよいよとなったらカレーを水で薄める方法もあるしね」
 シエル「それ、詳しく」
 志貴 「いや、冗談だけど」



 二千七百四十四「気になる」

 志貴「宿題やってるか、大変だな。
    わからないところがあったら訊いてくれ」
 秋葉「はい」
 志貴「ふうん」
 秋葉「何か?」
 志貴「秋葉、綺麗な字を書くんだな」
 秋葉「う……、邪魔しないで下さい、兄さんッ」
 志貴「あ、ご、ごめん。
    ……怒られる事したか?」

 琥珀「誰も怒っていませんよ」(小声で)



 二千七百四十五「凄い結果にはなるが」

 凛「素直に聖杯を勝ち取って英霊の座から降りたいと願おうとか
   思わなかったのかしら……」



 二千七百四十六ノ一「万が一」

 秋葉「いらっしゃい」
 羽居「こんにちわ」
 蒼香「やあ」
 羽居「お兄さんは?」
 秋葉「いないけど」
 蒼香「なんで?」
 秋葉「何でといわれても」



 二千七百四十六ノ二「焼きたてのクッキーよ!」

 羽居「これ、おみやげ」
 秋葉「ありがとう。……でも何なのよ、この量は」
 羽居「作る時、分量ちょっとミスしちゃった」
 蒼香「ちょっとか、これ」
 羽居「粉をグラムとキログラム間違えちゃったんだもん。
    全部焼くの大変だったんだから」
 秋葉「そう、それは大変だったでしょうね。
    全部持って来なくてもいいんだとか考えなかった?」
 羽居「うん? ああ、そうだよねえ。なるほど、うんうん」



 二千七百四十七ノ一「骨をせせる」

 藤ねえ 「むむ、セイバーちゃん、箸の使い方うまいけど、魚の食べ方が
      ダメダメじゃない」
 セイバー「くぅッ」(痛手を負った表情で)
 凛   「藤村先生、それは無理ないんじゃないですか。
      日本人だって持ち方からして駄目な人も多いし」
 藤ねえ 「そんな世迷言、衛宮家の門をくぐったからには聞けません」
 セイバー「大河に指摘されるまでもなく、ひそかに弱点と認識して改善を
      図っていましたが、まだ至らないようです」
 藤ねえ 「セイバーちゃんなら合格できるから精進あるのみよ」
 セイバー「はい」
 士郎  「まあ、好きにやってくれ」(淡々と)
      


 二千七百四十七ノ二「頭を押さえて……、ええい、ちぎれた」

 セイバー「最終的には鮎の骨取りなどもできるようになってみせます」
 藤ねえ 「そこまではしなくてもいいんじゃないのかな」
 セイバー「何故、トーンダウン?」



 二千七百四十八「結ぶもの」

 有彦「からかわれただけじゃないのか」
 志貴「そうだと思うんだけどさ。
    今までイチゴさんから貰ったもの、他に何があったかなあ」
 有彦「全部の共通点とか言ったって、まったく支離滅裂なんだろ。
    そんなの向こうだって憶えてないって」
 志貴「そうだよなあ」
 有彦「とか言いながら全然諦める気を見せないな、おまえ」
 志貴「机の鍵とバネとシクラメンの種の共通点……、うーん」 



 二千七百四十九「そして夜が明けた」

 シオン「ワラキアの夜は消え去り、つかの間の悪夢に踊らされた人々も
     目覚め、全ては元に戻っている筈です」
 志貴 「本当に都古ちゃんとかあの時の記憶は残ってないね」
 シオン「疑うのですか、このわたしの分析結果を」
 志貴 「疑いはしないけど、何かの拍子に自分が凄い拳法の使い手だと
     思い込んで危ない真似をするなんて事、本当に起きないんだな。
     それなら、いいけど」
 シオン「えーと……。
     一応記憶操作をした方がいいかもしれません。
     代行者あたりなら問題なく出来るでしょう。
     まったく問題はありませんが、もしも志貴が心配で気休めが
     欲しいならという事でしたら。
     本当に、本来は不必要なんですからね」
 志貴 「了解」(やれやれという顔で)



 二千七百五十「うわばみ」

 凛「ライダー的にはマムシ酒なんてどうなのかしら」
 桜「ダメなんじゃないですか、さすがに」




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