天抜き 其の五十七
二千八百一「囚人」
凛 「囚人のジレンマ?
聖杯戦争の同盟も似た感じしなくは無いけど。
最終的にお互いに利益を分かち合える選択が存在しないでしょ。
勝者は一組だもの」
士郎「でも遠坂は別に聖杯に願いはなかったんだろ」
凛 「ええ」
士郎「俺も無い。だから願い事が2つ叶えられるなら成り立つ」
凛 「サーヴァント2人がという訳ね。
なるほどね、それは盲点だったわ。
んん……、駄目よ。5組のサーヴァントを倒すのが条件なんだから」
二千八百二「侵攻」
セイバー「敵軍を迎え撃つというのは説明し難い重圧でした。
それに比べれば単身で戦えばいい状況は遥かに容易い」
士郎 「そういうものか」
セイバー「ええ。私一人で敵軍勢を相手に出来ればどれほど良かったか」
凛 「そう考えるのが駄目だったんでしょうけど」
セイバー「そうですね」
二千八百三「秘密」
凛 「どうしたものかしらね」
セイバー「何か問題でも」
凛 「士郎の能力。倫敦塔に行ったら魔術師だらけなのよ。
いつどこで目をつけられるかわからないわ」
セイバー「魔術師として特異である事を知られてはならないと」
凛 「そうなのよ。
いっそ普段から無数の刃物をぶら下げて歩かせたらどうかしら」
セイバー「葉っぱを隠すには森、ふむ。
手品の才能があると周りに認知させるのも良いのでは。
ナイフなどを始終宙から出してみたり呑み込んでみたり」
凛 「なるほど。それはありね」
士郎 「ただの危ない奴だと思うけどな、それ」
二千八百四「魔法」
幹也「所長、魔法…」
橙子「わたしには妹などいないのだよ、黒桐くん」
幹也「はい。とりあえずその物騒なの引っ込めて下さい。
そうでなくて、所長も魔法使いを目指しているんですか」
橙子「否と言えば嘘になるな。
魔術師達の究極の目標ではあるからな」
幹也「なるとどうなるんですか}
橙子「そうだなあ、妬まれたり命狙われたり誹謗されたり」
幹也「本当になりたいんですか」
橙子「もちろんだとも」
二千八百五「計画」
晶「できた。この順番、このルートで行けば、一番効率的にお目当ての
サークル全部回れる。ここをあえて後に持ってきて、委託で買える所
は優先度を少し下げて、そして注目のここへ行ってと。うん、完璧。
……。でも、効率とかでなくて偶然の出会いとかが大事なんじゃ。
作業になり過ぎてもつまらないような。
あ、前目に付けた所が今回出てる。うー、やり直し」
二千八百六「危機」
シエル「え、危機管理意識ですか?」
志貴 「うん。先輩なんかはどう考えているのかなあって」
シエル「そうですねえ。
最低限、第七聖典だけあればいいですし。
何があっても身一つで対処可能ですから」
志貴 「そうか。アルクェイドと似た答えなんだな」
シエル「ふふふ。実は逃走経路や備蓄などもあり万全なのです」
志貴 「ふうん」
シエル「本当ですってば」
二千八百七「怪盗」
志貴 「この屋敷って泥棒とか入ったらどうするのさ」
秋葉 「大変な事になるでしょうね」
琥珀 「そうですねえ」
志貴 「なら何か考えないと」
アルク「志貴、あのね、泥棒が大変なの」
志貴 「?」
翡翠 「アルクェイド様だから平気で侵入できるのです」
アルク「そうよねえ」
志貴 「あまり深く聞かない方が良さそうだな」
二千八百八「もしも、意味があるのなら」
アルク「志貴の眼が何だと言うわけ?」
シエル「あらゆるものに何らかの役割があるとしたら、遠野君の魔眼は
何をすべきものとなっているのかという話ですよ」
アルク「なんだ、そんなの簡単よ」
シエル「わかりますか」
アルク「死を与える為でしょ。それも」
シエル「通常では殺せぬ者の為に」
アルク「そういう事よね。さて、それは誰の為なのかしら」
シエル「さて、どうでしょう。
ま、準備されてそのままのものも世界には多いですけど」
二千八百九「答え無しもまた答えなり」
橙子「モノを見つけるという点においては君は稀有な特質を持っているが、
見つからない場合もあるだろう」
幹也「それはありますね」
橙子「そうした場合、どこで見切りをつけるんだ」
幹也「ああ、これは無理だなと感じるんです。後は予算なり時間なりで」
橙子「ふむ。では、目的物がダミーであったりして存在しない場合は。
もっともらしい材料はあるが当然ながらどう整合をとっても、結論
には至らない場合。
またはそもそも探す対象自体を間違えている場合。
なまじ探せてしまう者だと、泥沼になりそうに思えるが」
幹也「うーん、無いなとわかるんです、それは」
橙子「そこが、分かれ目なのだろうな」
二千八百十「RPG終盤にさも似たり」
士郎「英霊ってもともと強い訳だろう」
凛 「そうね」
士郎「その強い英霊が宝具持っているのって、よく考えるとあんまりだな」
凛 「そんな事無いわよ、生前から持ってたものだし。
だいたい考え方が逆よ。その宝具は英霊になるほどの者だからこそ
獲得できて使いこなせるんじゃないかしら」
士郎「なるほど」
二千八百十一「にぎわい」
志貴「うーん」
翡翠「どうかなさいましたか、志貴さま」
志貴「いや、今日は平穏だったなと思って」
翡翠「平穏ですか」
志貴「ああ。平日ならともかく休日なのに何もなかったろ」
翡翠「それぱ喜ばしい事では?」
志貴「まあそうなんだけどね。でも、逆に落ち着かないというか。ん?」
翡翠「あの物音……、アルクェイド様のようですね」
志貴「そうだな。お、秋葉も気づいたみたいだな」
翡翠「こちらへと向かわれていますね」
志貴「やれやれだ」(どこかほっとしたように)
二千八百十二「味噌汁のパターンもあるね」
志貴「……何、これ?」
琥珀「よくぞ訊いてくれました。
特別な田んぼで丹念に育てられた新米、名人とうたわれた職人の
手作り最高級鰹節、そして秘伝製法のお醤油と最高級品のみでの
至高の一杯。俗に言う猫まんまですね」
志貴「大仰だなあ。何でまた」
琥珀「秋葉さまが、どこかで耳にされたのか、名前の響きがいいとかで
リクエストなさいまして。
こう見えても美味しいのですよ」
志貴「それは知ってるけどさ。
でも、こう厳選素材とかだと猫まんまじゃないよなあ」
琥珀「そういうものですか」
二千八百十三「足裏にも入れるのか」
志貴 「今朝はえらく寒いな」
シエル「真冬なみの冷え込みだそうですよ」
志貴 「風がまた凍えそうに冷たい」
シエル「そういう時にはこれですよ」
志貴 「手のひらを出すの?
……これをどうしろと」
シエル「舐めると辛さで寒さがまぎれますよ」
志貴 「七味とかは聞いた事あるけど……」
シエル「ああああっ、飛ばされッッッ」(悲鳴)
二千八百十四「夜警」
シエル「熱帯夜の暑さも過酷ではありますが、真冬の夜に比べればマシと
思いませんか」
志貴 「そうだね。寒いというか凍りそうだ」
シエル「でも、夏の夜は短くて冬の夜は長いんですよね」
志貴 「皮肉だな」
シエル「まったくですね」
二千八百十五「自費負担らしいが」
志貴「ただいま。夕食は何を作るの?」
琥珀「お帰りなさい。
ええとですね、志貴さんのはカツ丼です」
志貴「志貴さんのは?」
琥珀「はい。ふさわしいメニューにしました」
志貴「ふさわしい。……取調べ?」
琥珀「さあて」(にこにこと)
二千八百十六「G13型トラクター買いたし」
志貴「前に漫画で見たんだけどさ」
琥珀「はい」
志貴「莫大な遺産はあるけど管理されていて自由にできない子供がいてさ、
どうしても大金が必要になるんだよね」
琥珀「それでどうするんですか」
志貴「趣味に使う費用は制限が無いのを利用するんだ。凄く高価な切手を
購入して、それを使って支払い方法にする手を使っていた」
琥珀「なるほど。で、それがどうかしたんですか」
志貴「趣味を始めようかと思うんだ」
琥珀「切手蒐集ですか」
志貴「宝石なんかどうだろう」
琥珀「……志貴さん、何を切羽詰っているんですか」
二千八百十七「人としての」
幹也「橙子さんは魔術師をやっていない方が幸せのような気がします」
橙子「そう思わなくも無いが、今がまさにそういう状態ではないかね。
不本意だが」
幹也「なるほど、そうかもしれませんね」
二千八百十八「聖なる夜」
セイバー「シロウはキリスト教徒なのですか」
士郎 「違うな」
セイバー「では凛や桜は」
士郎 「多分違うんじゃないかな。
特に遠坂なんかは後見人が言峰だったから逆にさ」
セイバー「では、クリスマスに七面鳥は出ないと」
士郎 「七面鳥はちょっと手に入らないけど、鳥もも肉のローストとか
ケーキとかは用意するよ」
セイバー「おお。しかし、それは私一人の為にでしょうか」
士郎 「いや、毎年そうだし」
セイバー「?」
二千八百十九「他に向かず」
シエル「対象に集中していれば、普通では見えない死の線や点すらも
見る事が出来る訳ですね」
志貴 「ああ。物凄く負担が掛かるみたいだけど」
シエル「ならば、逆に集中しないで、放心状態でいれば余計なものは
見えないのではないですか」
志貴 「まあ、そうだよねえ」
二千八百二十「風習」
アルク「引越ししようかなって思うのよ」
志貴 「何でまた。広さも充分だし、相当に良い部屋だぞ」
アルク「部屋自体には不満は無いわ。
ただ、フロア全体を借り切っているでしょ」
志貴 「ああ」
アルク「だからここに来た時に、あれができなかったのよ」
志貴 「あれ?」
アルク「隣近所に引越し蕎麦配るやつ」
志貴 「今時やらないと思うぞ」
アルク「あ、そうなの。じゃあやめる」
二千八百二十一「お歳暮」
士郎 「どうなっているのか興味あってひとつ開けてみたと」
セイバー「そうです。
もともと軍隊の保存食として開発されたと聞きましたので」
士郎 「そうか」
セイバー「こんな無骨な塊に果物が入っているのが何だか面白くて」
士郎 「ついついあるだけ全部開けてしまったと。
ああ、いいよ。何とかする……とは言え、どうしたものかなあ。
小さく刻んでゼリーかフルーツかんも作るか……」
二千八百二十二「さばいた後だろうけど」
琥珀「今日はふぐ三昧と行きますよ」
志貴「へえ、豪勢だなあ」
琥珀「お刺身に鍋に唐揚げなども用意しますよ」
志貴「それは楽しみだ。
琥珀さん、ふぐ調理免許なんて持ってないよね」
琥珀「ある訳無いじゃないですか」
志貴「そうだよな。
……でも、逆にまったく心配ないような気がするのは何故だろう」
二千八百二十三「水枕にて天井を見る」
士郎「久々だなあ、風邪で寝込むのなんて」
凛 「馬鹿は風邪引かないって言うけど」
桜 「いつも無理をしているんですから、いい機会です。
ゆっくり休んでください」
士郎「それにしても、ダメージ食らって体がボロボロの時よりもさも
よっぽどこたえるのはどうしてなんだろう」
凛 「アドレナリンの分泌とかそういう類いじゃないの」
二千八百二十四「至近距離でなくとも」
シエル「遠野君の眼が認識していれば、直接自分の手で触れなくても、
同じ作用は働きますよね」
志貴 「直接触れないというと、何かぶつけるとかかな」
シエル「投げナイフや弓、いっそ銃による射撃なども」
志貴 「そうかもしれないなあ。
シエル「そして遠距離から確実に当てられれば脅威ですね」
志貴 「うん。
いや、遠距離から的を外さない時点で凄く脅威だと思うけど」
二千八百二十五「二人なら」
志貴 「話には聞いていたけど凄い行列だなあ」
アルク「わあ、大勢並んでるんだね」
志貴 「一時間は待たないとダメかもしれないぞ、これ。
どうする、他のラーメン屋に行くか?」
アルク「え、なんで。いいじゃない、並んで待ってれば。
一時間でも二時間でも」
志貴 「それほどここの食べたかったのか、おまえ」
アルク「別に。ただね、公園でも映画館でも志貴と一緒にいるのは同じでしょ。
こんなのに並ぶの初めてだし」
志貴 「了解。並ぶとしよう」
二千八百二十六「羽が舞うような」
シエル「濡れた半紙を床に敷き詰めて、破らないでその上を走ったり、
音も無く屋根から屋根へ飛び移ったり。
重力を無視したような動きで飛びまわるとか、そんな真似は
いくらでも出来ますよ。
まるで、体の重さが無くなったみたいなね。
でも、無くなっていないんです。
いいですか、体重は無くなっても、減ってもいないんです」
志貴 「わかりました」
二千八百二十七「紫煙」
幹也「所長」
橙子「うん、どうしたね?」
幹也「どうしたでなくて、煙草の灰が。
ずっとその姿勢でぼんやりしてたんですか」
橙子「ご明察の通りだ。む、火でも散ったか。机に若干焦げのようなものが」
幹也「そんなに小さくなるまで。下手すると火傷しますよ」
橙子「火傷か。痛みとか熱さなど意識せぬうちに遮断する事もあるからな。
前なんか指から掌まで燃え始めた事もある。
いや、人間の肉が焼ける匂いでしたので、気がついたさ。
あの匂いは独特……、ん、そんなに嫌な話だったかね?」
二千八百二十八「美しき天然」
アルク「シエルは教会なんかやめてサーカスに入ればいいのに」
シエル「それは、わたしにはピエロがお似合いだという事ですか?」
アルク「え、違うけど?
あ、でも、ピエロいいわよねえ。動きだけで笑わせるって
凄いわ。そう思わない?」
シエル「そうですねえ。……違うのですか。
じゃあ、何です。空中ブランコでもナイフ投げでも、猛獣
使いでも……、よく考えると何でも出来ますね」
アルク「そういうのじゃなくてあれよ、大食い。
鳥の丸焼きをとか頭より大きいチーズの塊を食べる芸。
あれをカレーでやれば一石二鳥でしょ」
シエル「どこが一石二鳥なんです。
そもそも、いつの時代のサーカスです、それは」
アルク「いいと思うのに」
シエル「本気の提案だというのが一番のツッコミどころですかね」
二千八百二十九「能力」
アルク「あ、志貴、そこ計算が違う。最後が6」
志貴 「本当だ。ああ、ここで勘違いしたか」
アルク「志貴は注意が足りないのよ」
志貴 「そうかなあ。おまえだって計算は別に得意じゃないだろ」
アルク「えー、得意だけど」
志貴 「そうなのか、意外だな」
アルク「意外じゃないわよ」
志貴 「そうなのか」
アルク「そうよ」
志貴 「そう……なのか。そうかもしれないな」
二千八百三十「倹約生活」
琥珀「ふうん、青野菜がけっこうお買い得のようですねえ」
志貴「特売のチラシか、珍しいもの見てるね」
琥珀「たとえ僅かでも積み重ねれば効果が出るんですよ」
志貴「それはそうだけど、この家でそういうの気にしてるの?」
琥珀「まったく必要ないですねえ」
志貴「そうだよなあ」
二千八百三十一「寒い夜」
志貴「そんなに難しい質問だったか」
翡翠「いえ、そうではありません。
ただ、姉さんや秋葉さまに志貴さまとした会話について訊ねられ事が
あるので、その際に口にして良いものかと思いまして」
志貴「別に問題ないだろ。
いや、ちょっと待った。
もしも、明日訊かれたらどう答えるんだ?」
翡翠「志貴さまから、夜にどんな格好で寝ているか訊ねられましたと」
志貴「ストップ。
寒くなって来たけど、夜は暖かくして寝ているのかい、だろ。
微妙にニュアンスが違う」
二千八百三十二「日は昇り、また沈み」
シオン「あえて吸血鬼としてプラスな事を見出すとすれば
使える時間を得る事でしょうね」
さつき「暇だもんね、昼間とか」
シオン「いえ、そうでなく悠久の刻とか、そういう方面の……」
二千八百三十三「もっともらしい」
橙子「日本の切手を貼り、日本の郵便局で出しているのに、世界中の
どこかへ直接は関係を持たない郵便組織の手により手紙が届く。
よくよく考えると驚嘆すべき事だとは思わないかね」
幹也「そうですけど」
橙子「ふむ、何か異論があると」
幹也「そうじゃなくて。
橙子さんがもっともらしく『そう思わないかね』とか言えば話の中身に
関わらずそう聞こえるんじゃないかと」
橙子「そんな事はなかろう。
言い方によって変われども、言葉は言葉だろう。そう思わないかね」
幹也「なるほど。……ほら」
橙子「どうも風が入ると思ったら、窓が閉まりきっていないようだ。
これでは寒い筈だ。そうは思わないか」
幹也「まったくです。うんうん、含蓄ありますね」
橙子「煙草が切れたな。買ってこないと」(話を逸らすように)
幹也「……」(期待の目)
橙子「そう思わないかね」
幹也「いや、まったくその通り」
橙子「こんな事でもか。ええと、じゃあ……」
二千八百三十四「実際食べて愕然とする訳だが」
セイバー「シロウ、今、大河にッ、大量の牛肉を届けたと言われましたッ!」
士郎 「ああ、見てくれ。凄い上物だ」
凛 「そうよねえ。セイバー、夕食には美味しいすき焼き食べさせて
あげるから待ってなさい」
桜 「姉さん、待って下さい。さっきからしゃぶしゃぶの方が良いと
言ってるじゃないですか」
凛 「士郎もすき焼きって言ってたもの。多数決よ。
割り下はわたしに任せてもらうわ。本当に絶品の…」
士郎 「ちょっと待て、遠坂。割り下だって」
凛 「ええ」
士郎 「却下」
桜 「ええ、却下ですね」
凛 「何を言ってるのよ」
セイバー「何でこんな白熱して……。
こんな、こんな薄っぺらい貧弱な肉で……、嗚呼」
二千八百三十五「仲間はずれは誰でしょう」
幹也「だから、日程がですね」
橙子「仕方あるまい」
式 「……」
幹也「どうしたの、式?」
式 「何でもない」
橙子「あの時素直に魔眼封じの眼鏡貰っておけば良かったとでも
考えているんじゃないのか」
幹也「あれ、式?」(視線で追いつつ)
橙子「当たったか」(同じく)
二千八百三十六「あなたが私にくれたもの」
アルク「それでね、志貴にねだったの。
こういうの買ってって」
琥珀 「はあ。ブランド物ですか」
アルク「何を女に送るかで男の価値は決まるのよ」
琥珀 「女性誌のコピーでありそうな煽り」
アルク「なのに、志貴ったら無理だって」
琥珀 「そうでしょうねえ」
アルク「文句言ったら、おまえは何着ても似合うから、新しいの買ってやる
甲斐がないからやだ、って」
琥珀 「おや」
アルク「酷いわよねえ」
琥珀 「そうですねえ」
アルク「それから」
琥珀 「志貴ったら酷いのよから始まったと思ったら、結局のろけ話に。
しかし志貴さんけっこう巧くかわしますね、ちょっと意外」
二千八百三十七「需要」
鮮花「手から火を放つ女と言うのは、実際のところ、アピール性は
あるのかしら」(呟き)
橙子「異能の力をその手にしたが為に、周囲に火をつけて回らずに
はいられなくなった少女とか、自らの力が制御できず無意識に
発火させてしまう悲劇の少女とかまで行ければ……」(小声)
二千八百三十八「ニチブツ」
アルク「わたしばっか志貴の部屋を訪ねるのは不公平よ」
志貴 「今、俺達がいるのはどこだ?」
アルク「わたしの部屋」
志貴 「何を言ってるんだ、おまえは」
アルク「そうじゃなくて、夜に志貴の部屋訪ねたりするでしょ。
志貴からそういうのないじゃない」
志貴 「ええと、つまり、この部屋まで外から登ってこいと。
できるか、そんな事ッ」
二千八百三十九「霜柱」
志貴 「霜柱って外国にもあるのかな」
シエル「……それは、ありますよ」
志貴 「そうなんだ」
シエル「乾燥した地方とかはわかりませんが、同じような気候であれば
当然出来ますよ」
志貴 「それは何だか不思議だ」
シエル「その感覚こそが不思議です」
二千八百四十「濃縮」
アルク「なに、これ?」
琥珀 「塩引鮭ですよ」
アルク「食べられるの」
琥珀 「食べられるどころか贅沢品ですよ。
普通だとなかなか手に入らない逸品なんですから」
アルク「ふうん。干からびてるだけなのかと思った。
じゃあ、冷蔵庫にそのままになっていた、あの…」
琥珀 「却下です」
二千八百四十一「忍び入る風」
志貴 「どうも寒いな」
アルク「もっと暖房入れようか」
志貴 「そうしてくれるか。
でも変だな、妙に冷たい風がくるような」
アルク「窓開けてるもの」
志貴 「なんで」
アルク「テレビで換気を忘れるなって言ってたのよ」
志貴 「ストーブとか使ってないからここの部屋はそれほど気を使わなくても
いいんじゃないか。もう充分だろ、閉めるぞ…って、おまえ」
アルク「何々、星が綺麗だねとか言うの」
志貴 「違う」
アルク「あ、そうか。私が言ったら、志貴が言うのよね。
君の瞳のほうが綺麗さって」
志貴 「そうじゃなくて、なんで全部の窓が全開になってるんだよ」
二千八百四十二「否」
凛 「今の士郎は忌むべき存在と」
アーチャ「ああ」
凛 「じゃあ、アーチャーは士郎とはかけ離れた存在な訳よね」
アーチャ「そうなる」
凛 「逆に言うと、あんたが持つ要素は士郎にはまったくないと」
アーチャ「いや、ちょっと待てくれ。
それは何か違う気がする」
二千八百四十三ノ一「トントンいう音と」
志貴 「朝眼を覚ますと、台所では朝食の支度をしていて、良い匂いが
漂ってきてなんてシチュエーションはいいと思うんだけど……」
アルク「何よ」
志貴 「おまえがやっていると、強烈な違和感があるな」
二千八百四十三ノ二「身近な」
志貴 「そもそも普通にエプロンとかでなくて、わざわざ着物を
着てるのは何故なんだ」
アルク「形から入れって言うじゃない」
志貴 「それで何で……って、お手本が、ああ、なるほど」
二千八百四十四「面会謝絶」
翡翠「志貴様、お加減が悪いのでしたら無理をなさらない方が」
志貴「まだそれほどじゃない。
風邪のひき始めってとこだから、気をつけてれば直るよ」
翡翠「しかし」
志貴「なまじ部屋で寝ようとしても、いろいろと騒がしくなり
そうだしさ」
翡翠「それは大丈夫です」
志貴「アルクェイドとか先輩が来たりとか、秋葉がさ」
翡翠「大丈夫です」(異様な迫力で)
志貴「そ、そうか。もっと具合悪くなったら頼むよ」
翡翠「行ってらっしゃいませ」
二千八百四十五「海のそばのとかもいいけどな」
有彦「寒くなると、温泉とか入りたくなるだろ」
志貴「そうだな」
有彦「でも、温泉宿なんてのはたいてい寒い地方にあるよな」
志貴「平地より山とかに近い方が温泉湧き易いだろうしな」
有彦「寒いから温泉入りたいと思っているのに、より寒い地方へ
わざわざ出掛けて入るのって、よく考えると変だよな」
志貴「でも、雪とか降ってる地方の方がより味わえるだろ」
有彦「そこなんだよな。よし、今度はここ辺り行ってみるかな」
二千八百四十六「分け隔てなく」
志貴 「カレー好きな人って、辛いカレーが好きな気がする」
シエル「そんな事はありませんよ。
極辛カレーも子供向けの甘いカレーも共にカレーです。
好みはあってもどちらが上や下という事はありませんよ」
志貴 「慈愛の表情……」
二千八百四十七「ナレノハテ」
ライダー「しかし、あなたを見ていると世の無常を感じますね」
アーチャ「ふむ?」
ライダー「あんなに小さく可愛かった少年がこんな姿に。
勿体無いと言うか、儚いというか」
アーチャ「妙に君に言われると堪えるな、何故か」
二千八百四十八「日々平穏」
さつき「シオンもリーズバイフェさんも元々は凄い人なんだよね」
リーズ「何を持って凄いとするかによるかな。
確かにある種の能力を持ち、特殊な環境にいて用い、それを
評価されてはいたが」
シオン「今となっては皆同じですよ」
リーズ「むしろ、特殊な訓練も受けずに平穏な生活を送っていたのに
こんな真逆の境遇に落ちてしまい、しかし健気に日々暮らして
いる、そんな少女の方が実は凄い存在なのではないかな」
シオン「なるほど。賛同します」
さつき「え、何、この展開。やめて、そんな目で見ないでってば」
二千八百四十九「長い夜」
志貴 「外、凄く寒い。凍えそうだ」
アルク「雪降るかもだって」
志貴 「そしたら学校行くのがまた面倒だな。
寒い時期は冬眠して過ごしたいとかちょっと思う」
アルク「ああ、眠るのはいいんじゃない。
あっという間に月日が経つから」
志貴 「おまえが言うと笑えない……」
二千八百五十「説明と納得」
橙子「そうだな、例えば科学技術の最先端のニュースなど見た時に
まったく理屈はわからなかったとしても、さして疑いもせずに
受け入れるだろう?
逆に目の前に燃え盛る炎を見ても、これは魔術によるものと
説明されたら、大抵の人間は疑わしい顔をする。
魔術というものについて説明するとも゜こんな感じかね。
本人たちが秘して、ある勢力が異端として排斥した歴史がとか
付け加えた方がもっともらしいか……」
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