天抜き 其の六十一






 三千一「記す」

 士郎 「小学校の頃だと、夏休みの宿題に絵日記ってあったろ」
 藤ねえ「そうねえ」
 士郎 「もしも今もあったら書くの困るだろうなあ」
 藤ねえ「何でよ、毎日いろいろ起こってるじゃない」
 士郎 「そのまま書けないのがほとんどだろう」



 三千二「夏の味」

 セイバー「むう。不味いとは言いませんが、シロウ達が作った物の方が
      遥かに美味しいと…」
 士郎  「うんうん、やっぱり、これだよな」
 凛   「そうね。少ない具に、炒めすぎの麺だけど」
 桜   「かろうじてお肉の欠片があったりして」
 セイバー「そんなものを何故、皆で嬉々として」
 藤ねえ 「セイバーちゃん、お祭りとか海の家の食事ってそれでいいの」
 セイバー「わからない」(でも食べる)



 三千三ノ一「風の向くまま」

 式 「どうした橙子、荷造りなんか。夜逃げか」
 橙子「1週間ほど休みにして出かけようかと思ってな」
 式 「ふうん」
 橙子「あてもないしな、土産は期待せんでくれ」
 式 「最初からしていないから心配するな。
    ……しかし休みって概念があったんだ、ここ」


 三千三ノ二「残された人々」

 幹也「やあ、式」
 式 「うん」
 幹也「あれ、橙子さん、いないんだ」
 式 「ああ。出掛け……え?」
 幹也「うん?」



 三千四「仰がれる人」

 凛   「粗食に耐えるのも上に立つものとしての務めよね」
 セイバー「無論です」(平然と)
 凛   「あれ、平気なの」
 セイバー「民が飢えている時に王のみが食べるわけには行かない。
      そもそも飢えさせる時点で王とはいえないかもしれませんが」
 凛   「そうなんだ」
 セイバー「時に、今日の夕飯は何でしょうか?」
 凛   「はいはい」(微笑)



 三千五ノ一「半分は半分じゃない」

 凛 「士郎、これ見た?」
 士郎「見た」
 凛 「どう思う」
 士郎「拙いな。遠坂はどうだ」
 凛 「わたしも同意見」
 士郎「焼き肉屋で半額セールか」
 凛 「半額だとしても相当な値段だし、普段のリミッター無くなるわよね」
 士郎「うん。セイバー達が戻る前に始末しとこう、このチラシ」
 凛 「未然防止、いい心掛けだわ」


 三千五ノ二「遅かったね」

 セイバー「シロウ、シロウ。ああ、凛もいましたか。調度良い。
      見て下さい。いま商店街で貰ったチラシですッ」



 三千六「芸術家的な」

 橙子「金の為に仕事をするというのはどうなのだろうな」
 幹也「まったく問題ないと思いますけど」
 橙子「んん……、まあ、そうだな」



 三千七「同じ武器を持つ者」

 志貴 「……」
 シオン「……」
 志貴 「凄いんだけどさ、あれって人間相手に使う武器じゃないよね」
 シオン「ドラクルアンカーの名を持つ武器ですから」
 志貴 「絶対にあんな振り回せる重さじゃないよ」
 シオン「よくかわせますね、あれを」
 志貴 「普通じゃないんだなあ、二人とも」
 シオン「普通ではないですねえ」



 三千八「練習光景が浮かばない」

 志貴 「先輩は自転車乗れる?」
 シエル「乗れますけど」
 志貴 「秋葉達は乗れないらしい」
 シエル「何故です」
 志貴 「必要なかったからだそうだけど」
 シエル「そういうものですか」



 三千九「一人、また一人」

 橙子「思えば、黒桐がいなければ、ここにこんなに人が来る事は
    なかった。違うかね」
 幹也「そうかもしれませんね。
    ……いつも以上に、どういう意味か、表情が読めないな」
 


 三千十「遠くへ行きたい」

 志貴「有彦、近々温泉行くって言ってたよな。
    よし、一緒に行こう。すぐにでも」
 有彦「行くのは構わないんだけどな。
    そんな切羽詰った顔で言われると、どうも」
 


 三千十一「花火」

 士郎「しまった。藤ねえだけでなく遠坂もか」

 

 三千十二「聖杯」

 士郎「聖杯戦争、弟一回か二回目くらいで誰かがきちんと勝って
    願いを叶えていたら、それで平和に終わったんじゃないかな」
 凛 「そうかもね。だから何よ、としか言えないけど」



 三千十三「珈琲の香り」

 シエル「はい、コーヒーはいりましたよ」
 志貴 「ありがとう。いい香りだ」
 シエル「けっこういい豆なんですよ」
 志貴 「なるほど、美味しい。
     でも、カレーだとどちらかというと紅茶のイメージがあるけど」
 シエル「秋葉さん、紅茶派ですから、お家では紅茶でしょう?」
 志貴 「まあ、そうだね」
 シエル「ですから、わたしの所来た時はコーヒーを出そうかなと」
 志貴 「そういう気遣いが。先輩らしいなあ」
 シエル「というか、正面切って勝負したくないというか。
     本当に美味しい紅茶淹れるの難しいですから」(小声)



 三千十四「物語が終わって」

 幹也「橙子さんらしいな、ふっと消えてしまうなんて」
 式 「もう、ここには用がないという事かな」
 幹也「そうかもしれないね。
    ねえ、式……」(思いつめたように)
 式 「何、幹也…くん」
 幹也「いきなり失業したんだけど、どうしよう。
     失業保険とかも出ないだろうし」
 式 「どうしましょうねえ」



 三千十五「残されて」

 鮮花「橙子師、一応、紹介状は残してくれたけれど。
    向こうに行ったら、封印指定の関係者と他人に知れぬようにしろって。
    これ、紹介の意味あるのかしら」



 三千十六「体育会系」

 蒔寺「夏の間に猛練習した奴が秋の大会を制するんだよ」
 氷室「一理あるな。しかし、またずいぶんと焼けたものだな」
 蒔寺「グラウンドは全てあたしの汗でまみれているのさ」
 氷室「それは、何か嫌な表現だな。ある種フェティッシュでもあるし」
 蒔寺「ええい、うるさい。もう一走りしてくるッッッ」
 氷室「おお。しかし、夏にそれだけ気張ると、涼しいシーズンになると
    逆に弱体化するようなイメージがあるが……」



 三千十七「一線から外れ」

 切嗣「擬装や目くらましはしているけれど、見つけようと思えば幾らでも
    破って辿り着けるだろうに。
    それでも誰も復讐や他の理由でここに来たりはしないとは。
    思っていたより、この世界は殺伐としていないのだろうか」



 三千十八「怪事件」

 志貴 「前は町で事件がとか、変な噂話とかあったら、何が起こっているか
     気になったりしたんだけどさ、今は違うな」
 シエル「と言いますと」
 志貴 「猟奇事件とかなら別だけど、夜現れる怪しい影とかそういうのって
     結局知り合いの事だろうなあって。先輩をはじめとして」
 シエル「否定しにくいですね」



 三千十九「小人閑居して」

 アルク「ねえ志貴、暇だし」
 志貴 「却下」
 アルク「なによぉ」
 志貴 「どうせろくでもない事だろう」
 アルク「ふんだ」
 志貴 「とは言え、聞かずにいて後でしまったと後悔するのも何だから
     言うだけ言ってみろ」
 アルク「うん、ええとね」
 


 三千二十「秘密の通路くらいは」

 志貴「外観と微妙に廊下の長さや部屋の幅が違うとか、窓の数が中からと
    違うとか、そんな類いの仕掛けがあるかなと思ったんだ」
 秋葉「ないでしょう、そんなものは」
 志貴「見つからなかったな。
    でも、本当にないのかな」
 秋葉「そう、真顔で問われると、肯定するのもためらわれますね、少々」



 三千二十一「発売延期」

 有珠「魔術は秘匿されるべき……とか」



 三千二十二「押し入れ行き」

 凛 「衣類の整理? 変な時期にするのね」
 士郎「着れなくなってるのもあるからえり分けしようと思ってさ」
 凛 「ふうん、少しは背が伸びたんだ」(悪気なく)
 士郎「まあな」
 凛 「……そうか、そうよね」(少し見上げる高さに視線を動かして)



 三千二十三「掌握」

 士郎「自然な流れというか、いつの間にかというか、なんで遠坂が
    うちの家計を握っているんだ?」
 桜 「そう言えば」



 三千二十四「護り手」

 朱い月「不思議なものじゃな。
     唯一のとは言わぬが、あれを滅ぼしうる力を持つ者が、
     逆に守る側にいるとはな」
 志貴 「不思議か?」
 朱い月「そうじゃな、か弱き姫を屈強な騎士が護るものか。
     弱い者に護られるのが普通であったからな」



 三千二十五「ぬちゃぬちゃとか」

 シエル「思うに、遠野君、素手で戦うスタイルでなくて良かったですね」



 三千二十六「酷夏」

 桜   「だいぶお野菜が値上がりしていて困りました」
 士郎  「天候で左右されるよなあ」
 セイバー「野菜がないなら肉を食べれば良いではないですか」
 桜   「……」
 士郎  「……」
 セイバー「どうしました?」
 士郎  「いや、やはりセイバーも王様だなと」
 桜   「いずれギロチンですかねえ」
 セイバー「?」
 


 三千二十七「気まずい二人」

 士郎「待っててくれ、お茶入れてくるよ」
 一成「別に気遣い無用で」
 凛 「……」
 一成「……」
 凛 「何か言いたそうね」
 一成「そんな事はない。
    ただ、少し雰囲気が変わったなと思ってな」
 凛 「そ、そう」
 一成「(そんな顔も以前なら見せなかったろうしな)」



 三千二十八「独り」

 七夜 「あの、黒いのの周りには普通の猫が集まるよな」
 白レン「そうね」
 七夜 「あの化物猫には変なのが群がるよな」
 白レン「そうね」
 七夜 「おまえは?」
 白レン「…………」
 七夜 「しまったな、怒るパターンじゃなかったか」



 三千二十九「物語の舞台」 

 シオン「どうも夏が終わると、店じまいといった気分に……」



 三千三十「力を合わせれば」

 志貴 「実際のところ、先輩はアルクェイドを斃せるの?」
 シエル「そう言ってくれるのを待っていましたよ」
 志貴 「え?」
 シエル「遠野君の助けがあれば、斃し切る事は不可能ではありません」
 志貴 「いや、そんなつもりないから。物騒な雰囲気出さないでよ」
 シエル「嫌ですね、今すぐ行こうなんて言ってませんよ。
     難しいですというのを婉曲に言っただけですよ」
 志貴 「冗談とは思えなかったんだけど」



 三千三十一「縁」

 エルメロイII世「聖杯戦争が終結して、遠坂家の当主が時計台へやって来る。
         ここまではわかる。
         しかし、衛宮切嗣の子と、あのセイバーが一緒にいる。
         冬木の地はマキリの者が代理で管理していると。
         まったく理解できない。おかしいだろう
         ……などと関心持ったのが失敗だったな」



 三千三十二「雨の休日」

 士郎「意外と、昼間に全員家にいるって珍しいんだよなあ」



 三千三十三「秋刀魚」

 キャスター「焼き魚に生野菜をつけるわけね。なるほど」
 士郎   「生野菜? ああ、大根おろしの事か。
       なんか違和感が……、ああ、いや、なんでもない」

 

 三千三十四「雨雲」

 桜   「あら、雨かしら」
 ライダー「通り雨のようですが、これはかなり降りそうですね」
 桜   「雨宿りする所もないし、いっそ戻った方がいいかしら」
 ライダー「それなら良い方法があります。
      ペガサスで雲の上まで飛びましょう。矢よりも速く」
 桜   「ちょっと、待って。きゃあああああッッッ」
 ライダー「さあ、これで一安心ですよ。
      よく考えると、目的地に着いた気もしますが。
      縦でなく横の動きであれば……」



 三千三十五「秋刀魚の味」
 
 桜 「あの、先輩。姉さんがぶつぶつ言いながら歩いていましたけど」
 士郎「さっき魚屋の前でキャスターに会って、秋刀魚は炭火で焼くのが
    一番だみたいな話になってさ」
 桜 「そうですよねえ。あ、焼き方を習いに来たんですか」
 士郎「当たり。それで煙が凄かったんで、キャスターが消してくれたん
    だけど、それを遠坂が見て愕然としちゃってさ。
    牛刀割鶏みたいな真似をとか呟いて、あとはずっとああ」



 三千三十六「山の栗」

 セイバー「ほう、立派な木ですね」
 士郎  「ああ、樹齢何年だろうなあ。俗に桃栗三年柿八年っていうけど」
 セイバー「意味は?」
 士郎  「芽が出てから実が成るまでに掛かる時間」
 セイバー「なるほど。含蓄のある言葉ですね。実に味わい深い」
 士郎  「そんなものかな。いや、一国の王だと別の意味を見出すのか?」
 セイバー「シロウ、栗を拾わないのですか」
 士郎  「拾うよ」



 三千三十七「栗の山」

 士郎  「そうだなあ、蒸かすとか茹でるとかかな」
 桜   「栗おこわとかにしても美味しいですね」
 凛   「手の込んだものならマロングラッセとか栗きんとんとか」
 藤ねえ 「でも一番目にするのは天津甘栗よね」
 セイバー「そうですか。ふむふむ」
 士郎  「何なら作ってやろうか」
 セイバー「おお、お願いします」
 凛   「そこらで見るし、買った方が早くない?
      だいたい、道具が……って、まさか」
 桜   「あるんです」
 凛   「本当に何でもありなのね、この家」



 三千三十八「認識」

 凛「秋が来たなと感じるのが一人、月夜に聴くと風情があるというのが一人。
   後は、煩いとか、音が乱れたら敵が潜んでいると警戒するとか、簡易的な
   使い魔として使えるとか、釣りの時に餌にできるとかの意見、と。
   やっぱり日本人独特なのかしら、虫の音色を愛でるというのは」



 三千三十九「八十」

 凛   「セイバーはタコは駄目なのよね」
 セイバー「はい。過去の経緯はおいても食欲を誘う外観ではありません。
      そもそも手足が何本もあるというのがいけません」
 凛   「まあ、ヨーロッパでは食べない人も多いわよね。
      でもセイバーはイカは食べるじゃない」
 セイバー「食べます」
 凛   「似たようなものだと思うけど」
 セイバー「それは全然違います。だいたいイカは美味しい」
 凛   「タコだって美味しいんだけど」



 三千四十「tea」
 
 セイバー「同じお茶と言う言葉で、緑茶と紅茶を使い分けているのが
       不思議です。受け取る側が間違えないのも」
 士郎  「状況とかで使い分けるんだけど。お茶請けの種類でとか」
 セイバー「その機微が難しいのです」
 士郎  「まあ、お茶でも飲んで考えたらどうだい」
 セイバー「頂きましょう」
 士郎  「(理解しているようだけど)」



 三千四十一「いと昏く」

 橙子「秋になると、だんだんと夜が長くなるな」
 幹也「何で、そんな禍々しい口調で言うんですか」
 橙子「え?」
 幹也「え、あの……、なんかすみません」



 三千四十二「内より」

 橙子「思うに、外に対して壁を作る人間というのは、正面きっての
    攻撃では崩せない。
    ただ、いらつかせれば攻略は可能と思えるが、どうかね」
 式 「何故、オレに訊く?」
 橙子「さて。
    その顔……、自覚はあるようだな」



 三千四十三「印度化」

 志貴 「確かにカレー味は汎用性高いか。カレーうどんとかカレー
     コロッケは普通だし、ピラフとかカレーパン、お菓子なんか
     もけっこうあるな」
 シエル「天麩羅とか立田揚げなどもカレー塩で食べたりしますね。
     さすがにお刺身とかには無理でしょうけど」
 志貴 「火を通すものはだいたいいけるんじゃないかな」  
 シエル「そうですねと言いたいところですけど、実は成り立たない
     料理があるんです。味には問題ないんですけど」
 志貴 「ふうん、何かな」
 シエル「ハヤシライスとか、シチューとかですよ」
 志貴 「それならカレー味でも問題なんて……、ああ」
 シエル「はい、そうなんです。カレー味にすると、カレーになって
     しまう訳です」



 三千四十四「記念」

 アヴェンジャー「よう、目が覚めたかい」
 バゼット   「……はい」
 アヴェンジャー「目覚めいい顔じゃねーな。ははッ。
         マスター、気がついているか、これで何回目か」
 バゼット   「そうですね、確か……、大台に乗ったというわけですか」
 アヴェンジャー「当たり。
         どうだい、記念して今回は血みどろ路線はやめて過ごすのは。
         面白おかしく、ヒャッハーッと派手に……いかないか。
         まあ、そうだろうとは思ったが」



 三千四十五「東へ西へ」

 エルメロイU世「世界最大の版図を築くモンゴル帝国の祖、チンギス・ハーン。
         もしも……。
         いや、召喚されるとしたら間違いなくライダーとしてだな。
         一緒に現れる事はありえないか」



 三千四十六「不和の種」

 綺礼「冬木の地を提供し、聖杯戦争の舞台とした。
    つまりこの地を管理するセカンド・オーナーは、無辜の人々の生活が
    阻害され、危険に晒される事を容認したのだ。
    目的の為には魔術師達が跋扈し惨事を引き起こさうと構わない、いや
    自らが参戦すると言うのは加害者側に積極的に回る意志を有していた。
    始めた者だけではない、代々の当主達も同じだ。
     衛宮士郎、お前が同盟を結んだ相手はそういう存在だ。
     ……、うむ、事実は歪曲せず、効果的に楔を打っている。
     これは使えるな。威圧的にでなく淡々と話した方がよいか」



 三千四十七「イメージだけど」

 セイバー「シロウ、ここのお店は非常に美味しいそうです」
 士郎  「グルメ特集か。まあ、確かにそうだろうけど」
 セイバー「一度味わってみたいものです」
 士郎  「こういう店は予約取るのも難しいよなあ。凄く高いし。
      それは置いといても、セイバー、懐石料理というのは、一品一品が
      ゆっくり間を置いて出される」
 セイバー「ほう」
 士郎  「それでいて一皿が上品に盛られてとても量が少ない」
 セイバー「そうですか」(やや沈静化)
 士郎  「それより、今日は肉が特売だったからすき焼きでもしよう」
 セイバー「おお。早く帰りましょう」
 士郎  「まあ、実を言えば俺も行ってみたいけどな」



 三千四十八「字を記す」

 鮮花「あれ、兄さんの字、こんなでしたっけ」
 幹也「その書類は所長の代筆だから、似てないまでも女性の筆跡にした」
 鮮花「女性のって、何でそんな事できるんです」
 幹也「自分以外の誰かとして手紙書いたりとかするだろう?」
 橙子「そうだな、あって困らない技能だ。多少コツをつかめばこんな風に」
 鮮花「え、これ、わたしの字?」
 橙子「真似ごとで、プロが見れば違いは一目瞭然だが」
 幹也「なるほど。鮮花の場合、この曲がりとかを少し強調すればいいのか」
 橙子「そうだ。特にサンズイの場合には、ここを、こう」
 鮮花「ちょっと、やめてください。物凄く嫌です。
    ほんとに何だって、こんな事できるのよ、まったく」


 三千四十八ノ二「記した字」

 式「別な筆跡か。昔は……」



 三千四十九「間接」

 翡翠「ニンジンを先に鍋に入れて少し茹でて下さい」
 琥珀「はいはい。いいですよ」

 志貴「二人してあれは何をしてるんだ?」
 秋葉「翡翠が指示をして、その通りに琥珀が動いて料理作るそうです」
 志貴「また、妙な事を」
 秋葉「直接食材に触れなければ良いのだろうと」
 志貴「なるほど」
 
 翡翠「ここでミリンを少々」
 琥珀「大さじいっぱいくらいですね。入れましたよ」



 三千五十「二人の師」
 
 ランサー「お、何だ、疲れた顔して」
 士郎  「遠坂の授業とセイバーの鍛錬が終わったところ」
 ランサー「ほう、ご苦労なことだな。だが、気をつけな」
 士郎  「気をつけるって、何をさ」
 ランサー「師にとって才能ある弟子ってのは可愛いものなんだけどな。
      ある程度まで熟練していて己への自負もある者にとっては、むしろ逆に
      才能の無い弟子を何とかするって行為が魅力的なんだ」
 士郎  「確かに才能は無いけどさ」
 ランサー「もともと何かする為の助けとしての剣と魔術なんだろ。
      別な言い方をすれば剣と魔術を極める訳じゃなくて、使える道具なれば
      それでいい。それと教える側の思惑がズレる恐れがある。
      そいつはけっこう厄介な事につながる危険性を秘めている」
 士郎  「なるほど」
 ランサー「ま、嬢ちゃん達もその辺は承知していると思うがな。
      ふむ。ところで、槍には興味ないか」
 士郎  「遠慮しとく」



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