天抜き 其の六十二






 三千五十一「適用範囲」
 
 ライダー「どうもわたし抜きでわたしの話をしていた様子ですが」
 凛   「別に欠席裁判じゃないわよ。
      どこまでがライダーのスキルの対象になるのかなって話」
 ライダー「最初から本人に聞くのが一番だと思いますけが。
      それより、ちょっと自転車で買い物に行ってきますけど、
      何か買い物はありますか」
 桜   「お醤油がもう少しで……自転車?」
 士郎  「さっきの定義から外れるんじゃないか、遠坂」
 凛   「生物でもないし、動力源もないわね。それに……」
 ライダー「行ってきます」(関わりたくない顔で)



 三千五十二「ブレイク」

 凛 「モノの構造を読み取ってとかして直しているわけよね」
 士郎「ああ。何か、壊した電化製品でもあるのか」
 凛 「何で壊れたじゃなくて壊したなのよ。ないわよ」
 士郎「そうか」
 凛 「話戻して、その能力を使えば、逆に脆い所、弱い所を見抜いて、
    壊す事も可能じゃないかしら」
 士郎「確かにそうだな。じっさいに近い事はするし」
 凛 「なら、指先一つでダウンとか、金槌一撃で車がバラバラとか」
 士郎「それは無理」



 三千五十三「似て非なる」

 士郎「タイプライターでなら普通に英文打てるんだろ」
 凛 「ええ」
 士郎「なのに何でワープロソフトだと、そんなたどたどしくなるんだ」
 凛 「だって、変なボタンとかマークとかあるじゃない。
    色つけたりもできるし」
 士郎「余計な機能は使わなければ同じだと思うんだけどなあ。
    やっぱり何かの呪いみたいな気がする」
 凛 「そんな大げさなものじゃないらよ。
    あ、止まった、動かない。どうするの、これ?」



 三千五十四「主の前に」

 リーズ「騎士団は相応しき騎士が後を継いでいるだろうし、こういう
     暮らしも、慣れれば趣きあるのだが」
 シオン「何か不足でも」
 リーズ「教会のミサに参加しないでいると、酷く堕落した感じがする」
 シオン「さすがと言うか、今更と言うか。
     行くのなら止めませんよ」
 リーズ「やめておこう。ここからでも主には祈りを捧げられる。
     ……いいのかな?」
 シオン「専門家はあなたの方でしょう」
 リーズ「そうだねえ」



 三千五十五「皿、皿、皿」

 秋葉「兄さん、よろしければお友達を何名か食事に招いて下さい」
 志貴「珍しいな。何かイベントでもあるのか」
 秋葉「特にそういう訳ではありませんけど。
    まあ、これをご覧下さい」
 志貴「凄いご馳走だな」
 秋葉「ええ」
 志貴「何人分、いや何十人分になるんだ、これ」
 秋葉「さあ、どれくらいでしょう」
 志貴「で、どうしたんだ、これ。パーティが急に中止になったのか」
 秋葉「琥珀が思う存分に料理を作ってみたくなったそうです。
    まあ、余れば捨てればいいんですが、さすがに」
 志貴「罰が当る気がする。よし、心当たりを連絡してみる」
 


 三千五十六「戦わずして」

 シオン「ひとつ問いますが、今の志貴は真祖を殺す事はできますか」
 志貴 「出来ない」
 シオン「なるほど、そうですか。
     ある意味で、真祖は、自分を殺しうる相手を倒してはいないものの、
     無力化に成功しているとも言えますね」
 志貴 「言えるのか」



 三千五十七「安静にする為に」

 有彦「何だ、けっこう顔色悪いぞ」
 志貴「ちょっと疲れてるのと、風邪気味なのが重なったな」
 有彦「おまえの場合、無理しないで休んで寝てた方がいいんじゃないのか」
 志貴「家だと、寝てる方が騒がしいし、疲れる羽目になる」
 有彦「そうか。まあ、学校に来さえすれば保健室もあるしな」
 志貴「そういう事。何かおかしいけど」



 三千五十八「冬の定番」

 藤ねえ 「これから寒くなると鍋の季節が来るわね」
 士郎  「そうだな。冬に美味い魚とかも店に並ぶし」
 藤ねえ 「ただ、冬も終わりに近づくとさすがに飽きるのよね」
 士郎  「ならば、いろいろバリエーションは増やすさ。
      カレー鍋とか、胡麻汁仕立てとか、遠坂も中華風で色々と
      工夫できるとか言っていたし」
 藤ねえ 「ふむふむ、それはいいわね」
 セイバー「そうまでして、拘る理由が良くわかりませんが……」



 三千五十九「言葉」

  鮮花「あなたが実の兄でなければ良かったのに。
     愛の言葉の筈なのに、不思議と呪詛のように聞こえるわね。
     まあ、実際、呪いの言葉だけど」



 三千六十「きのこ狩り」

 士郎  「けっこう素人には食用かどうかの見分けは難しいと言うぞ」
 凛   「去年は無害だったのに、今年は毒をもつなんて事もあるみたいだし」
 桜   「わざわざ採りに行かなくても、藤村先生が持ってきた椎茸が大量に
      ありますよ。ヨーグルトにでも入れようかというくらい」
 セイバー「私の直観力を信じてちょっと待っていて下さい。
      この崖の下に何かあると告げています。行ってきます」
 士郎  「あ、ああ。気をつけてな」
 凛   「何か自生の舞茸か松茸でも採ってきそうな勢いね」
 桜   「それなら嬉しいけど、でも、やっぱり毒茸とかが心配です」
 士郎  「セイバーなら毒は見抜くと思うぞ」
 凛   「セイバーならば平気、とかだと怖いわね」
 桜   「食べられるイコール美味しいという訳でもないですよね」
 士郎  「むしろ何も見つからないのを祈るべきか」



 三千六十一「ZER○」

 凛 「呼び出したマスターに剣を向けなかったサーヴァントって、
    今回、両アサシンのみなのね。何だか凄い」
 士郎「前回がゼロなだけになあ」
 凛 「うん? 士郎、あなた」
 士郎「え? ……ああっ、違う。そんな駄洒落言うつもりはない。
    本当だって。遠坂、皆に言わなくてもいいだろ。走るなって!」



 三千六十二「何事もなく」

 志貴「久々に体調悪くて保健室で寝たな。
    あ、もう大丈夫です。
    迎えか、タクシーでも呼ぶか?
    ええと……、そうするとどう転んでも凄く疲れる羽目になりそう
    なので自力で。
    はい、無理はしません」



 三千六十三「螺旋」

 羽居「あ、秋葉ちゃん、ちょうど良かった」
 秋葉「こんな会話の始まり、何度も同じ体験をした気がする」
 蒼香「実際、してるだろう」
 秋葉「嫌な予感もするわ」
 蒼香「予感じゃなくて経験則だろう」
 秋葉「今回はどうかしら」
 蒼香「まだ先への希望はあるのか。羨ましい。
 秋葉「ただの自己逃避よ」
 羽居「ええとねえ」
 秋葉「動じないわね」
 蒼香「まったくな。だから、何度と無く巻き込まれるんだが」

 

 三千六十四「視る」

 式 「よく画家とか彫刻家とかの人種は、実物を一度見さえすれば、
    その記憶だけで再現できるとか言うだろ」
 鮮花「腕のいい仕立て屋とかもそんな事言われるわね」
 式 「橙子の人形作りもそうなんだろうか」
 鮮花「そうでしょうね」
 式 「他人のはいいとして、自分の人形はどうしているんだろうな。
    どうやっても自分の目で見えない部分はあるだろ」
 鮮花「鏡で映すとか、写真を撮ってみるとか」
 式 「そのシーン想像すると面白くないか」
 鮮花「……面白いわね」



 三千六十五「先生、出番です」

 藤ねえ 「んー、でもセイバーちゃんて士郎の用心棒みたいなもんでしょ」
 セイバー「シロウを護るのが私の使命です」
 藤ねえ 「だったら、普段は別に何もしなくても、出入りだって時とかに
      活躍すればいいんじゃないの」
 セイバー「そういうものなのですか」
 藤ねえ 「古式ゆかしい用心棒はそういうものなの。
      ん?」(周囲の余計な事をという視線にさすがに気づいて)



 三千六十六「剣、魔に到る」

 キャスター「暇そうにごろごろしていたと思えば、今度は何を始めたの?」
 小次郎  「少々閃いた事があってな。
       燕返しは同時に三方からこの刀身を表す技だ」
 キャスター「多重次元屈折現象の具現化」
 小次郎  「一つしか存在し得ないものを同時に複数出せるのであれば、
       逆に、そこにある筈の物を消し去る事も可能だろうと」
 キャスター「主客逆転すればそうなるわね」
 小次郎  「さらに、無いものを再び現出させる時に、必ずしも手元の
        柄とつながっていなくてもよいのではないかと」
 キャスター「それを魔術ではなく、剣の腕だけで何とかする算段がある、
       そういう訳ね。可能だと」
 小次郎  「ふむ。どうも何かの尾を踏んだ気がするな」



 三千六十七「八面六臂」

 セイバー「サクラ、お訊ねしたいのですが」
 桜   「はい?」
 セイバー「シロウが晴れやかにして悲壮感と使命感とを併せ持つ、
      そんな表情をして出かけていきました。
      まるで信じるものの為に戦さに向かうような面持ち。
      何があるのです」
 桜   「学園祭のシーズンになったんです」(重々しく)



 三千六十八「出入りに支障は無いが」

 志貴「考えてみると、未だに家の鍵って持ってないんだな、俺は」



 三千六十九「こめこ」

 セイバー「お米からパンが作れるのですか」
 士郎  「ああ、パン屋ではあったけど、自宅で焼けるらしいな」
 セイバー「素晴らしい事と思います。
      しかし、そのような変革、何かの終わりの始まりでは」
 士郎  「そこまでか」



 三千七十「目利き」

 ライダー「士郎、これはいったい何です」
 士郎  「見ての通り、酒だよ。日本酒とかワインとかごちゃごちゃと。
      ネコさん、あ、バイト先の酒屋で古いのとかくれたんだ。
      客には売れないけど、料理とかにするにはいいだろうって。
      まとめてトラックで届けくれたんだ」
 ライダー「なるほど。料理用ですか」(残念そうに)
 士郎  「別に普通に飲めるから、何本か持ってってもいいぞ」
 ライダー「いえいえ、そう言う訳には……と遠慮するのも失礼ですね。
      せっかくのお言葉ですから、これとこれとこれ、それも」
 士郎  「あ、ああ。
      ……ラベル取れた瓶とかもあるんだけど、ヴィンテージとか
      一応大吟醸とか、上物ばかり瞬時に選んだな」



 三千七十一「知らない顔」

 橙子「初めて黒桐の調査に同行してみたのだがね」
 式 「ふうん」
 橙子「……」
 式 「なんだ」
 橙子「誘われたとしても断ったほうがいいぞ、特に式はな。
    『いつもあんななのか』『何がです?』か、はは」
 式 「何だかわからないが、忠告に従っておこう」



 三千七十二「隙ありッ!」

 凛   「いついかなる時でも油断していると感じたら打ち込む。
      それはいいわよ。そういう修行方法、聞くものね、剣の道では。
      でも場所は選びなさい。衛宮家の敷地内限定とか」
 士郎  「もともとはそのつもりだったんだけどさ」
 セイバー「しかし、外こそ危険であり、常在戦場の考え方からすると」
 凛   「女の子相手に物陰から襲い掛かろうとしているなんて、通報を
      されて申し開きできないの、わかってる」
 藤ねえ 「それくらいいいいじゃない」
 凛   「本来、藤村先生がお説教するところなんですけど」
 


 三千七十三「鉄女」

 士郎  「ライダーは自分で運転する乗り物しか興味ないのか」
 ライダー「と言いますと」
 士郎  「大型船とか電車とか」
 ライダー「どちらも操縦できますが、関心ない事は無いですね。
      乗り物に乗ったり見たりするのも決して嫌いではないです」
 士郎  「じゃあ電車とか乗り歩いても楽しめるんだな」
 ライダー「確かに楽しいかもしれません。
      どこの駅へでもひとっ飛びで出掛けて、乗ったり見たりと」
 士郎  「何か違う気がするけどね」



 三千七十四「衛宮家断絶」

 凛 「別に遠坂の姓を名乗らなくても良かったのに。
    夫婦別姓という手もあるんだし」
 士郎「いいんだ」
 


 三千七十五「改変」

 ギル「己が為してきた事を否定し、聖杯の力で覆す事を望んでいたな。
    我には理解できないが」
 言峰「ふむ、いかほどの挫折感と後悔とを抱いているかは知らぬが、
    随分と楽観的な思考をするのだな」
 ギル「楽観的?」
 言峰「選択を変えたことで、より悲惨なる事態になると考えていない。
    違うか?」



 三千七十六「思い出の味」

 セイバー「酒、そうですね、ギルガメッシュに振舞われて飲んだものは
      味だけで言えば素晴らしかった」
 士郎  「ギルガメッシュ?」
 凛   「どういうシチュエーションよ、それ」
 士郎  「ええと、二人で?」(幾分動揺しつつ)
 セイバー「他にイスカンダルが。彼の持ってきたワインも飲みました」
 凛   「ますますわからない。どういう聖杯戦争よ、それ」
 セイバー「今考えれば、あの時言われた言葉は……」(追憶の目)



 三千七十七「点を突く」

 シオン「万物の脆い部分を切り、穿つ、それが魔眼の力ですね」
 志貴 「ああ。力は要らない。触れれば抵抗なく死んでいく。
     相手が死徒であろうと、魔物であろうと」
 シオン「ましてやただの人間であればと言いたいのですね。
     得難い体験ゆえ、1つ問いたいのですが」
 志貴 「対峙しつつする会話ではないと思うけど」
 シオン「止まっているモノならともかく、動いているモノの線や点を
     切ったり突いたりするのは非常に困難な事ではないですか」
 志貴 「確かにそうだけど」
 シオン「どうやっているのです。克明に思い描いて下さい」
 志貴 「ええと、だから……あれ、ええと。わからない。
     なんで出来るんだろう」
 シオン「混乱していますね。
     言葉で勝利する、これも錬金術師の戦い方です」



 三千七十八ノ一「与えられるもの」

 セイバー「ライダーのクラスになる英霊であれば、名をはせるような
      名馬などに乗っていた訳ですね」
 ライダー「だいたいはそうではないですか」
 セイバー「当然、召喚に当たり、それらも伴っている。
      よくよく考えると不公平ではないですか」
 ライダー「一人で城を落とすような宝具持っていれば充分でしょう」


 三千七十八ノ二「使い方」

 セイバー「しかし、ペガサスでマスター共々空に浮いていれば、
      少なくとも負けは無い」
 ライダー「何日も空を漂っていろと?
      空にあるものは必ず射抜く弓とか、投擲すればどこまでも
      飛んでいく槍とか持っていたらおしまいです」
 セイバー「なるほど、一理ありますね。
      では、逆に地面、あるいは海中に潜むような乗り物を…」
 ライダー「もう、行ってもいいですか?」



 三千七十九「冬が来る前に」
 
 志貴「もうすっかり冬だな」
 琥珀「志貴さんが戻られてからもうそんなになるんですね」
 志貴「もともと別段遠くにいた訳じゃないけど」
 琥珀「甘いですね、ここでの雪の恐ろしさをご存知でないですよ」
 志貴「雪の恐ろしさって、確かに年に何度かは降るけど」
 琥珀「屋敷から学校まで歩いて行き来しないといけないんですよ」
 志貴「そんな大げさな。たいした坂でもないし」
 琥珀「いえいえ、それはさながら陸の孤島。
    そんな事言ってられるのも今だけです。
    ああ、あの時に琥珀さんの忠告に耳を傾けていれば……と、
    悔やんでも遅いですから」(ふふふと笑いつつ去る)
 志貴「何も忠告なんて受けてないじゃないか。
    そもそも幾らなんでも。幾らなんでもなあ」



 三千八十「続きのお話」

 シエル「万艱を排して本来出会う事もない筈の二人がカップルになりました。
     めでたしめでたし。
     で終わらないとすると、まずは新たなライバルの出現とかですかね」
 アルク「ライバル?」
 シエル「例えば、アルクェイドに近しい存在。
     突然、真祖であるとかが現れて、仲間であるアルクェイドを求めて
     やって来るとか」
 アルク「いないわよ、そんなの。どこから湧いて出るのよ」
 シエル「いないでしょうねえ。
     逆ならばどうです。怪しい謎の、それも人間以外の少女が遠野君に
     近づくパターン」
 アルク「それなら、心当たりは……、よし、今のうちに潰そう」(真顔)



 三千八十一「都市伝説のもと」

 志貴 「近くの高速道路を夜中に走ってる人影ってのが話題になってますよね、
     あれはアルクェイドですか、それとも先輩ですか?」
 シエル「どちらかが規定事実のように言われるのは少々不本意ですね」
 アルク「そうよねえ」
 志貴 「否定ではないようだな」



 三千八十ニノ一「利害」

 氷室「何か利益が得られると見て、遠坂嬢と親しくなりたいのだったな」
 蒔寺「おうよ。駄目かな」
 氷室「別に悪い事ではない。つまるところ人間関係は利害関係とも言える」
 蒔寺「そうそう」
 氷室「で、その場合に相手、遠坂嬢は汝からどのような利を得られるのかな。
    別な言い方をすればだ、蒔寺楓は何の役に立つのかね?」
 蒔寺「はっはっはっ、それはだな」
 氷室「うむ」
 蒔寺「ええと……、足が速い?」


 三千八十ニノ二「関係」

 氷室「ところで、現時点で友人関係を構築している我々についてもだ、
    自分に利があるから付き合っている訳なのかな」
 蒔寺「え」
 三枝「……」
 氷室「……」
 蒔寺「まてい、全部じゃない、全部じゃない」
 三枝「全部……」
 氷室「そういうところが、愛嬌ではあろうな」



 三千八十三「手段」

 凛 「実際のところ、お金を作るのはそう難しくは無いのよ。
    非合法な事とかに手を染めなくてもね」
 士郎「へえ。じゃあ、何で実行しないんだ」
 凛 「遠坂家の者として、常に優雅たれというのを保つとなかなかね」



 三千八十四「外と内」

 凛 「綾子って桜から見てどうなの」
 桜 「優しくて、それでいて強くて。何をしても上手で素敵です。
    それでいて気さくで、皆に慕われていて」
 凛 「あれ、そんなに高評価なの。なんで」
 士郎「何でって、別に不思議じゃないだろう」
 桜 「はい」
 凛 「ふうん」
 士郎「遠坂だって、外から見ればそうだろう」
 凛 「外から……か」



 三千八十五「甘くない罠」

 桜 「何ですか、これ」
 士郎「甘くない飴だってさ。食べてみるか」
 桜 「貰いますね。
    なるほど、甘くない……、というか味自体ほとんどないような」
 士郎「それでいて、カロリーは普通の飴と同じだってさ。
    変な飴だよな」
 桜 「変と言うか、酷い詐欺じゃないですか」
 士郎「詐欺って、別に誰も騙されてないじゃないか」
 桜 「騙されました」



 三千八十六「身近な美」

 琥珀「だいぶ紅葉が奇麗になっていますよ」
 秋葉「そう。
    どうです、兄さん。休みの日に庭を歩きませんか」
 志貴「庭なのか。まあ、いいけど」



 三千八十七ノ一「迷いなく」

 士郎  「たまには、ケーキでも買って帰るか」
 セイバー「熟慮には値しない問いですね」
 士郎  「え、値しないのか」
 セイバー「答えが出ている問いに価値はありません。
      さあ、疾く参りましょう」
 士郎  「うん」(止めとけばよかったかという顔で)


 三千八十七ノ二「さながら宝石箱のような」

 士郎  「どれがいいかな」
 セイバー「オーソドックスですが、それ故に完成度の高いイチゴショート。
      そしてこの新作の焼きリンゴのケーキを半々ずつでどうでしょう」
 士郎  「了解。半分にして両方食べるって事だな」
 セイバー「それにしても、どれも奇麗で、それでいて美味しそうです。
      一度全てを味わってみたいものですが」(しみじみと)
 士郎  「さすがに全部は……。ん、全部で40種類くらいで、一番高くても
      この値段で、あれ、意外とそれほど驚くほどではないか」
 セイバー「なんと」
 士郎  「いや今買う訳じゃないから。さあ、早く帰ろう」



 三千八十八ノ二「思想の対立」

 藤ねえ「ただいまー。あれ、どうしたの、士郎と遠坂さん」
 桜  「今日は寒いし、シチューにしようって、準備してたんです」
 藤ねえ「ああ、いいわねえ。それで?」
 桜  「先輩はビーフシチューにしようとして、でも先に姉さんが。
     ホワイトシチューにしてしまって」
 藤ねえ「それで喧嘩? 間違いは仕方ないじゃない」
 桜  「いえ、意図的に。それで何だか妙な雲行きに」

 凛 「認めない、認められないわ、そんなビーフシチュー」
 士郎「うちでは、前から作っているんだ、文句は言わせない」
 凛 「屑肉でも少量でも、牛肉が入ってビーフシチューでしょう。
    ルーだけなんて、そんなのただの紛い物じゃない」
 士郎「いいじゃないか、豚肉だって」

 桜  「あの調子なんです」
 藤ねえ「どっちでもいいのに」


 三千八十八ノ二「解決案」

 シエル「間を取ってカレーにしてはどうでしょう」
 藤ねえ「間かしらねえ」
 桜  「と言うより、どなたです?」



 三千八十九「冬蜂の死に所無く」

 シオン「どうしました、さつき?」
 さつき「そろそろ空き地とか行くと、冬越ししない虫が死んでたりするの。
     カマキリとか、バッタとか」
 シオン「そういう季節なのでしょうね」
 さつき「それ見ると、物思いのひとつもしたくなってきて」
 シオン「さつき、常夏の国でも虫は死にますよ」
 さつき「そういう事じゃなくて
    (でも、一応、励まされているのかな?)」



 三千九十「可逆」

 凛   「石になった人間は元には戻せないの?」
 ライダー「凛、石が血肉を具えた生物になる訳がないでしょう。
      灰からもとに戻せますか」
 凛   「確かにそうだけど、何だか腑に落ちない気がする」



 三千九十一「障壁」

 士郎  「いろいろやっていて壁にぶち当たるだろ」
 凛   「ぶち破ればいいでしょう、そんなの」
 セイバー「ええ、乗り越えて前に行かないと」
 士郎  「微妙に違いがあるな、性格の差かな」



 三千九十二「何とかの一つ覚え」

 幹也「はい、式。おみやげ」
 式 「貰って文句言うのも何だけど、他のもの買おうとは思わないのか」
 幹也「大丈夫。いつもの以外に抹茶とかラムレーズンとかもあるよ」
 式 「そうじゃなくて、こんなに寒い日にアイスクリームを買うっていう
    神経が……、あ、いや、うん、食べるけど。
    だから、そんな顔するな」



 三千九十三「最初からそうしなさい」

 士郎「どうも、このシャーペンの芯、折れやすいな」
 凛 「強化してやればいいでしょう」
 士郎「なるほど。……よし」

 士郎「遠坂、芯は折れないけど、ノートが時々裂ける」
 凛 「ノートも強化すれば」
 士郎「なるほど。……よし」

 凛 「キリキリと耳障り。もっと軽く書きなさい」



 三千九十四「理解と実行」

 士郎「遠坂は飛行機は平気なんだな」
 凛 「平気よ、何で?」
 士郎「あんな鉄の塊が空浮くのがおかしいとか言うかと思った」
 凛 「自分で使えないのと、理屈がわからないのは別でしょ。
    ジェットエンジンで揚力がとか、大まかには理解しているわよ」
 士郎「そうか」
 凛 「もしも何かあっても、わたしなら何とかなるし」   



 三千九十五ノ一「役割」

 セイバー「おや、ライダーいたのですか」
 ライダー「今戻った所です。どうかしましたか」
 セイバー「シロウ達が街に出掛けました。私も行くかと問われたのですが
      家に誰もいない状態もどうかと思い留守番を」
 ライダー「なるほど、もう少し早く帰れば良かったですね」
 セイバー「向こうでどこかの店に入るという楽しみは選べませんでしたが、
      替わりにおみやげを待つという楽しみがありますから」
 ライダー「嘘でもマスターの盾とか、砦を守るとか、そういう主旨の話に
      して欲しいものですが……」


 三千九十五ノ二「先と後」

 ライダー「サクラとリンが一緒? 両手に花とは、隅におけない」
 セイバー「何かバーゲンがあるとか言っていました。
      別々に二人から誘われて苦慮していたようですね」
 ライダー「それで選べずに二人一緒にですか」
 セイバー「しかしどちらから話をするか、シロウも考えたようですよ」
 ライダー「そうですか」
 セイバー「まず、サクラに一緒に行くと答え、次いでリンにも誘われたので
      一緒でいいかと訊ねていましたから」
 ライダー「逆だった場合……、なるほど、穏便な選択ですね」
 


 三千九十六「争点」

 士郎「どうした、考え込んで」
 綾子「考え込むってほどでもないよ。
    どっちが先に手に入れるかの勝負に負けたけど、奪い返した場合、
    相手に与えるダメージって相当だろう」
 士郎「単純に相手のマイナス分がプラスされるだけでは無いって事か。
    そうかもしれないな」
 綾子「でもそうやって勝っても、結果として失ってしまうものもある。
    難しい問題だよ」
 士郎「ふうん。前提がよくわからないけど」
 綾子「わかられても困るけどな」(笑み)



 三千九十七「寒波到来」

 士郎 「そろそろコタツ出そうか」
 藤ねえ「賛成」
 桜  「でも、早いんじゃないですか。まだ暖かい日もありますし」
 士郎 「それも一理あるな」
 藤ねえ「えー、電源入れなくてもいいんだし、用意するだけしとこうよ」
 士郎 「出すにしても一度布団出して日干しした方がいいし」

 セイバー「リン、あの盛り上がりは何ですか」
 凛   「コタツについてらしいけど、わたしもわからないわ」



 三千九十八「ほこほこ」

 士郎「ただいま」
 凛 「お帰りなさい。随分とさつま芋ばかり買って来たわね」
 士郎「随分と安かったんだ。
    セイバーが石焼き芋を食べてみたいって言ってたし」
 凛 「本当にセイバーには甘いわね。まあ、いいけど。
    石焼はというからには、単にオープンで焼くとかじゃなくて、
    中華鍋に石を敷いてとか手を掛けるのよね、当然」
 士郎「へえ、そういうやり方もあるんだ」
 凛 「違うの。じゃあ、どうするわけ? まさか、石焼き芋の車が
    ある……、そのまさかなんだ。本当に何なのよ、この家は」



 三千九十九「理解への道」

 凛「で、士郎がどうしたっていうの?」
 桜「ええと、火床? とかいうのを作っているんです。
   正しく投影する為には、自分で実際の技法を学ばないといけないんだ、
   とか思い至ったとか何とか」
 凛「思い至っちゃったか。いつかはと思っていたけど」



 三千百「GOLD」

 凛 「…と言う訳で、アトラス院は時計塔とは大きく性質が違うの。
    だから、魔術師というより錬金術師の方が通りがよいかもね」
 士郎「なるほど」
 凛 「錬金術……。魅惑的な言葉よね、表層的に受け取ると」
 士郎「……」



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