かにしの天抜き・1時間目
作:しにを
以下は「遥かに仰ぎ、麗しの」の全シナリオクリアしてるのを前提としています。
ネタバレとか気にしてませんので、未プレイの方は読まない方が無難かと思います。
読まなくてもいいのですが、未経験の方はぜひプレイして下さい。
と、一応の注意書き。
1.「花園にて」
邑那「恋人候補はそれなりに溢れていると思いますけど?」
司 「僕は教師だからね」
邑那「そうですか」
司 「それに、僕は年上に可愛がられるタイプだと思わないか」
邑那「年下では対象にならないと?」
司 「そうだよ」
邑那「うふふ」(どこか勝者めいた表情で)
2.「必要」
司 「正直、僕の存在って邪魔じゃなかったのか。学園にいた時には」
燕玲「まあ、そうね」
司 「よく手を回して排除しなかったな」
燕玲「私が与えたものでなくて、初めて自分で見つけて欲しがったものなのよ。
あの子から取り上げる真似は、絶対にできなかったわ」
司 「でも、邑那が全権を握ってからは? もう用無しだとか判断を…」
燕玲「……」
司 「その、なるほどって目はやめて欲しいなあ」
3.「だし」
司「え、凄く美味しい。本当に美味い。
ただ、鍋物をして残った汁を使って雑炊を作るんであって、
雑炊の為に河豚でスープ作って具は捨ててしまうというのは……。
ええと、おかわり? 貰うよ」
4.「なまじ色々持ってる人だけに」
司「双子の絵ですか」
暁「ああ。どうだ、素晴らしいだろう」
司「芸術的な事はよくわかりませんが、惹きつけられますね」
暁「鑑賞には、理屈はいらないさ。
才能ってのは凄いものだと思うよ。俺には無かったからなあ」
司「(あなたが言うかって突っ込みたいけれど。
何だか、聞いたこと無いほどしみじみとした響きだな)」
5.「クレムリン宮殿」
通販さん「戦時中に使ったような戦闘機が欲しかったのか、なら」
司 「ならって。……まさか、あるのか、売っているのか」
通販さん「……」(始まった番組に集中)
司 「まあ、自分の手で直して飛ぶのに意義があるんであって」
通販さん「……」(聞いてない)
司 「さてと、行くか」
6.「共に過ごし」
司「美綺って一緒の部屋にいてどうなんだ?」
奏「え? ええと……」
司「困った顔と、溜息と、何故か真っ赤に……か。
まあ、ちょっと笑顔もあったから良しとしよう」
7.「方眼紙必須」
美綺「新しいゲーム入手したからやらせて」
司 「いいけど。ほう、RPGか。珍しいな」
美綺「たまにはね」
一時間ほど経過
司 「ところで、3Dダンジョンの捜索しマッピングって、気分転換に
なるものなのか」
美綺「ならない……、失敗したよ、先生」
8.「しょせんはと見くびっていました」
燕玲「邑那は魅力的な女の子だけど、あなたに正体を知られたら、それでけりがつくと
思っていたのは確かね」
司 「どういう意味?」
燕玲「背後にあるものに恐れ戦くか、それとも表面的な事実にショックを受けて穢れた
ものでも見る目をして離れていくか。
自分から逃げ去るのならそれまで。逆に甘い蜜に集るような虫なら、彼女自身が
拒絶したでしょう」
司 「なるほど」
燕玲「どちも当てはまらないなんてね。変な男」
司 「心外だけど、自覚はあるな」
9.「どんなマーケティングだ」
美綺「せんせぇ、助けてー」
司 「金の相談なんか、いちばん僕が不向きだ」
美綺「うう。新製品だし、みんな飛びつくと思ったのにぃぃ」
司 「さすがに、シュールストレミング味は一度試したらもう買わないだろう」
美綺「在庫の山が……、うううう」
10.「需要と供給」
邑那「一般に、惜しみなく与えられる場合、あるいは好きなだけ手に入る場合、
そのモノに対する希求は薄れますね。希少価値が減りますし。
手に入らない、入りにくい方が熱が強まる傾向はあります」
美綺「ふうん」
栖香「そうですか」
11.「ヤングミセス」
リーダ「ふう」
司 「どうしたの、リーダさん。溜息なんかついて」
リーダ「つ、つ、つ、司様ッッ」
司 「うわッ、て、こっちが驚くよ」
リーダ「す、すみません。ちょうど、司様の事を考えていたので」
司 「えっ?」
リーダ「あの、学園でのわたしと司様の噂はご存知ですよね」
司 「ああ、リーダさんが若奥様で云々ってやつか。いい迷惑だよな」
リーダ「いえ、お世話するのはわたしの大事な役目ですし、問題ありません。
若奥様というのも、そう、嫌ではないのですけど……」
司 「けど?」
リーダ「わたしはまだ未成年なのですが、そんなにしっくり来るものかと」
12.「女心」
司 「ああ、ありがとう、上原。心底から感謝感激だ。
暁さんがいなければ惚れちゃいそうだ」
奏 「いえ、これくらい……、感謝されるほどではないです」
司 「何か反応が今ひとつだな」
美綺「先生、暁さんがいなければ、が余分」
司 「いや、だって、実際問題がさ」
美綺「それでも、余分だって。わかってないなあ、先生は」
13.「悪」
司 「最初は、凄い悪人だと思ってた」
燕玲「悪人よ」
司 「まあ、そうなんだが」
燕玲「肯定するんだ」(意地悪っぽく)
司 「う……」
14.「洋梨」
司 「邑那ってお祖母さんと瓜二つなんだよな」
邑那「写真など見る限りではそうですね」
司 「それは信じがたいな」
邑那「そうですか?」
司 「ああ」(体の線のでっぱりやらくびれやらに賛嘆の目を向けつつ)
15.「志向」
邑那「みやびさんですか? 私は嫌いではないですよ」
司 「あれ、そうなのか」
邑那「意外ですか。
与えられるのを待つのではなく、自ら求めようという人間の生き方は
好ましく映りますけど」
司 「そんなものかな」
邑那「ええ」
16.「まだ慣れぬ頃に」
栖香「あ、あの……、お姉様」
美綺「え、……あ、あ、は、はい?」
奏 「うわあ、みさきちでもあんな顔するんだ」
17.「陰謀劇」
みやび「あああああ、もう」
司 「どうしました、理事長」
みやび「理事会の頭の固い連中に、ほとほとうんざりした。
こうなったら、手段は問わないから、あいつら全員…」
司 「ストップ。物騒な事は言わないで下さい」
みやび「ふ、ふん。冗談に決まっている。
だがなあ、司、何とかならんものかなあ、本当に。
微塵も穴の無い辛うじて合法な策略を立案できる奴、この学園にいればなあ」
司 「無理ですよ。ここをどこだと思ってるんです」
みやび「わかっている。単なる現実逃避の愚痴だ」
邑那 「ふふふ……」(優雅にティーカップを傾けつつ)
18.「滅び」
鹿野上「僕に本気で任せると?」
邑那 「ええ、お兄様。思うが侭に、グループを解体してしまって構いません。
余計な画策をするのであれば……」
鹿野上「とんでもありません、会長。お命じのままに。
壊して崩してあとにはペンペン草しか残らないようにして見せましょう。
いや、それでも足りない。誰もが名前を口にするのすら憚られる様な……」
邑那 「そこまでは、いいです」
19.「全世界だとかなり愛されているよ」
みやび「ソフトボール一辺倒ではいけないか。なるほど、理解した。
で、そういう事ならば代案は持って来たんだろうな」
司 「はい。バスケットボールなんかはどうか…」
みやび「却下」(即座に)
司 「え、ええと、ではバレーボールで…」
みやび「却下だ」(即座に)
司 「理事長」
みやび「なんだ」
司 「……」
みやび「……」
リーダ「で、結局?」
司 「クリケット大会になりました」
リーダ「はあ」
20.「知り、伝える」
美綺「えー、報道の自由に対する侵害だー、横暴ー」
司 「報道と野次馬根性は別物」
美綺「ちぇっ」
司 「もっと穏便にすませられるネタだってあるだろ」
美綺「そうだけど、大衆はセンセーショナルな真実を求めるものなのだよ。
まあ、触れると不味いもの、いろいろあるしね、ここ」
司 「いや、そう急に真面目な目されると、ちょっと背筋が寒い」
21.「ネーミング」
司「リーリア・イリーニチナ・メジューエワ。
何で通称がリーダさんなんだろう。リーリアで良さそうなもんだけど。
まさか、リーダーと引っ掛けた訳じゃあるまいし」
22.「補完しているようで」
司 「八乙女は他人という存在を恐れている。
殿子は他人と共にある事を、別に強く求めてはいない」
邑那「それがどうかしましたか?」
司 「幼馴染だという条件がなければ、むしろ一緒にいない方が自然に思える
組合せだなって」
邑那「でも、持って生まれた奇縁こそが、人と人の関係をつくるのでは?」
司 「なるほどね」
23.「あえて享受しない贅沢」
美綺「ふんだんに高級食材が集まり、腕の良い料理人が調理しているのに、
こんなものが食えるかと、ちゃぶ台返し。
どこの食通様かっていうわがままぶりだね、先生」
司 「ちょっと待て、そんなんじゃないだろ。ちゃぶ台返しって何だよ」
でも、それは……、いや、わがままか。わがままなのかなあ。
好き嫌いじゃないんだけどなあ」
美綺「何だかんだで、リクエスト自体は喜んでるみたいだけどね」
司 「素直に箸で切れる神戸牛とか上海蟹とか食べるべきなのか」(ぶつぶつと)
24.「略奪愛」
司「自分のしたいように行動してみてもいいだろう」
由「なるほど、そうですね、先輩」
司「そうだ。……って、その由らしからぬ邪悪な笑顔は何なんだ」
由「とりあえず、理事長には泣いて貰おうかなと」
司「待て。何をする気だ、何を」
由「先輩を手に入れるだけですよ。
いえ、その、そう引かれるような変な意味ではなくて。
いずれ僕がする仕事の片腕としてですね、先輩ってばあ」
25.「この大空に」
司 「今度こそ」
殿子「頑張ろうね、司」
司 「ああ、諦めたりしないさ」
殿子「いつか、二人で飛んでみたい」
司 「そうだな、自由の地へと飛び立つなんていいよな」
殿子「うん」
みやび「そんな真似したら心中になりかねん、とか言ったらいけないんだろうな」
リーダ「はい」
26.「でも男のが少ないよね」
司 「この学園ってさ、なんでほとんど男の教師なんだろう」
邑那「メイドさんが大勢いますからね」
司 「なるほど。……って、答えになってないじゃないか」
27.「実現性」
邑那「どうぞ。少し茶葉を変えてみました」
美綺「うん……、美味しい。これは立派にお金取れる味だね」
邑那「あら、褒められるのは嬉しいですね。
ここを出たら、喫茶店など始めるのも良いかもしれません。
相沢さん、どうなさいましたか?」
美綺「ええとね、邑那さん、少し哀しそうな顔をした。
多分、『ここを出たら』じゃなくて『喫茶店』と言った時に」
邑那「……。
おかわり、いかがです?」(表情を変えずに)
美綺「いただきます」
28.「古き…」
梓乃「先生が名づける前から、この子はダンテです」
司 「そうか。でも、ゴンザレスの方が喜んでるぞ」
梓乃「そんな事ありません」
美綺「まあまあ。じゃあ、間を取ったらどうかな」
司 「間って?」
美綺「海に面した辺境地だし……、ダゴンなんてどうかな」
二人「却下」
29.「あまり正面から言う人いないし」
司 「いや、別段今の立場に大きな不満なんて無いよ。
むしろ不相応だなと思うくらいだ。
それにほら、君たち美女二人に挟まれてると両手に花って感じだろ?」
邑那「……」
燕玲「……」
司 「え……?(何だ、この雰囲気。呆れさせた訳でもないし)」
30.「姉と妹」
美綺「ねえ、すみすみ」
栖香「何でしょうか、お姉様」
美綺「ちょっと生まれがずれてて、わたしが妹だったらどんなだったかな」
栖香「お姉様が……妹?」
美綺「そうしたらもっと早くうちとけられてたかもしれないって思わない」
栖香「わかりません。でも、もしかしたら……」(少し切なそうに)
31.「妹と姉」
美綺「でも、仲良くなれても、めちゃくちゃ厳しくなりそうだよね。
不素行の妹に対してはさ」
栖香「当然です」
美綺「それを思うと、お姉ちゃんで良かったよ、うん」
栖香「それは何か違う気がします、お姉様」
32.「大人買い格好悪い」
通販さん「その気になれば、毎日新しいもの全てを買う事は可能」
司 「やっぱりこの学園にいる生徒だなあ。
でも、そうはしないんだ」
通販さん「吟味して買うかどうか判断するのが楽しい。
無造作に棚買いするような真似は興醒めだ」
司 「なるほどね」
33.「思うがままに」
司 「邑那って人の思考パターンとかから、先の行動を読めるよな」
邑那「あくまで予測レベルですよ」
司 「見るだけでなく少し手を出して、先の方向を変えたりは?」
邑那「より行きやすく、働きかけする事はできなくも無いですけど。それが何か?」
司 「僕がいつの間にかこんな境遇にいたり、抗いがたいほど君に惹かれたり
してるのも、自分の意思が全てでは、なかったのかなってね」
邑那「ええと、私のは殿方には働かぬ力です、というのはいかがです?」
司 「邑那がそう信じさせたいのなら、信じる」
邑那「あら、意地の悪いパラドックスですこと」
34.「芸術鑑賞」
燕玲「ねえ、あれは?」(小声)
司 「狙って古びさせているのかもしれないけど、透けて見える。
ダメだな、あれは。褒めないでスルーでOK」(小声)
燕玲「もう、厄介だわ」
司 「意外な弱点だな。情緒的なものがわかりにくいと言うのも」
燕玲「うるさいわね。ええと、これは?」
35.「根源」
司「憎悪と絶望かなあ」(のほほんとした表情で、でも間違いようの無い声色で)
36.「蜂や蟻の如く」
司 「よくメイドさん同士でさ、言葉なしの目配せとかで意思疎通してるだろ」
リーダ「そういう事もあるかもしれませんね」
司 「あれって、何か暗号体系みたいなのがあるの?
それとも純粋なアイコンタクト?」
リーダ「知りたいのであれば仲間になっていただかないと」
司 「仲間?」
リーダ「……」(司の背後に視線)
司 「えっ?」(振り向く)
メイド「……」(メイド服を持って近づいてくる)
37.「嗜好」
みやび「わかった、司はロリコンだ」
リーダ「…………、あの、何故でしょうか?」
みやび「それはだな、あたしに…」
司 「理事長、いいですか?」
みやび「……」
リーダ「……」
司 「ええと?」
みやび「な、何でもない。何だ、言ってみろ」
リーダ「(お嬢様、続きはどちらだったのでしょう。
ご自分を客観視なさったのか、そうでないのか)」
38.「自らの価値」
司 「しかし、三嶋は弱点が無いな。完璧だ。
単に勉強が出来るだけでなくて頭がいいし、人望も統率力もある。
スポーツも出来るし、考え方もしっかりしている。
それに……」
鏡花「何ですの?」
司 「教師としてははっきり言えないけど、女性としての魅力が、その……」
鏡花「あら、照れますわね。もしかして誘惑されているのでしょうか」(笑み)
司 「そういうさらりとした受け答えもそつが無いな」
鏡花「ふふ。そうですね、それは、そうでなければならなかったという答えでは
いかがでしょう。私の立場的に」
司 「ああ、わかる。わかるよ」
39.「家族の肖像」
殿子「司はお父さんだけど」
司 「うん」
殿子「子供でもいいよね。わたしがお母さん」
司 「……。
そうだな、殿子がお母さんなら良かっただろうな」
殿子「司……、ごめんなさい。何か悪い事言った?」
司 「そんな事無いぞ。優しいな、殿子は。
やっぱり殿子の子供なら良かったな、ああ」
40.「家族の肖像2」
司 「それにしても、何で親子なんだ」
殿子「ん?」
司 「兄と妹とか、姉と弟とかさ。家族でも他の関係ってあるだろ」
殿子「どちらもいないから良くわからない」
司 「まあ、それは僕も同じだな。
でもさ、いないから憧れたりしないものかな」
殿子「ん……、そうだね。
じゃあ、わたしが妹かお姉さんになるなら、司はどっちがいい?」
司 「!
ま、待ってくれ。うわ、凄い難問だ。しばらく時間くれ、時間」
殿子「う、うん、わかった」(少し引き気味に)
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