かにしの天抜き・2時間目

作:しにを

 




 以下は「遥かに仰ぎ、麗しの」の全シナリオクリアしてるのを前提としています。
 ネタバレとか気にしてませんので、未プレイの方は読まない方が無難かと思います。
 読まなくてもいいのですが、未経験の方はぜひプレイして下さい。
 と、一応の注意書き。









  41.「毒殺するなら、毒薬はここに」

 邑那「そんな事を企んで、いえ、考えてらしたのですか」
 梓乃「恥ずかしいです」
 邑那「だったらいろいろと、お薬とかありましたのに。
    死なない程度に、体が教職に耐えられないくらい衰弱させるとか」
 司 「えっ?」
 梓乃「!!!」
 邑那「冗談ですよ」



 42.「少女たちの夜」

 貴美子「もうすぐできますから」(濡れた髪を梳かし整えてやりながら)
 千代美「ん」
 貴美子「ふふふ」
 千代美「どうもキャラクタ的には、わたしが憧れて世話焼きしてとかじゃ
     ないのかな」
 貴美子「それもいいかも……」
 千代美「考えとく」(実現味のあまりなさそうな声で)
 貴美子「はい」(それはそれで嬉しそうに)



 43.「言葉を口にする」

 栖香「言って下さい、お姉様」(真剣に)
 美綺「言うよ、言うけど……、ええと……」
 栖香「……」
 美綺「だから…、す……、あれれ、意識すると駄目だね」
 栖香「そうですか。駄目なんですか。そうですか
    それは仕方ありませんよね、……美綺さん」
 美綺「え、あ、やだ。その言い方、やだ。
    栖香ッ! あ、言えたッ」
 栖香「はい、お姉様」(満面の笑みで)



 44.「誰にします?」

 みやび「あたしを選べば、もれなくリーダもついてくるぞ」
 殿子 「私なら、梓乃も一緒」
 美綺 「アタシだったら、かなっぺが豪華付録にッ」
 栖香 「はい、お姉…えっ?」



 45.「あなたはだあれ?」

 司  「リーダさんと工藤さん以外のメイドさんの名前、知らないんだよな」
 リーダ「当然ですわ。名前などありませんから」
 司  「へ?」
 リーダ「メイドとなった時点で以前の名前は取り上げられるのです。
     働きを認められ、メイド達の上に立つ者と認めらる事によって初めて、
     名前を取り戻すのです。それまでは名無しのメイドです」
 司  「ええと、冗談だよね」
 リーダ「まあ、メイドを辞めても名前は戻りますけど」
 司  「本当なの、ねえ、リーダさんってば。ちょっと何か怖いぞ」
 リーダ「……」(笑顔)


 46.「あなたはだあれ? 2」

 リーダ「でも、辞めたくて辞められる境遇にある者が、どれほどいるか……」
 司  「うわあ……、黒いよ、怖いよ、リーダさん」



 47.「B級グルメ道」

 みやび「ときどき食堂で見慣れぬメニューを見かける」
 リーダ「ああ、多分、司様ですね」
 みやび「司? あいつが料理なんか作るのか?」
 リーダ「いえ、司様が料理人にリクエストを。何でも裏メニューなどと呼ばれてるとか」
 みやび「なんだと、あいつめ。あたしに黙って勝手な真似をするとは」
 リーダ「はあ」
 みやび「あたしも何かスペシャルメニューを用意してみようか。
     あいつが羨ましがるようなすっごい豪華なのを」
 リーダ「それは、どうでしょう……。
     そういう方面だと、司様には響かないのではないかと」(小声)

 

 48.「野望の荒野」

 邑那「敵を倒して、倒して、その先には何があるんでしょうね」
 燕玲「さあ。でも私は一緒にいるわ」
 邑那「ええ」
 燕玲「もしも敵を全て葬り去って、それでもまだ敵が必要であれば」
 邑那「あれば?」
 燕玲「私が敵になってあげる。あなたにそれが必要であれば」


   
 49.「乙女の制服」

 邑那「あのまま状況が変わらなかったとしたら、そう考える事があるんです」
    そして、あそこを出られて良かったと思うんです」
 司 「確かに、邑那には嫌な思い出があるからな」
 邑那「あ、その、学園自体には悪い感情はありません。懐かしく思えます。
    ただ……、あのまま制服を着続けるのが、どうも」
 司 「凄く似合っていたのに」
 邑那「それは嬉しいのですけど、あのままいてやがて、四捨五入で三…ふう」
 司 「あ、ああ、なるほど、そういう事か。
    いや、でも、やっぱり似合うと思うけどなあ」
 邑那「嫌なんです。十代の女の子用のデザインなんですからッッッ」



 50.「装いも新たに」

 みやび「今更仲良くしようにも、さんざん罵倒したり嫌な態度を取ってきたんだぞ」
 リーダ「司様は気には……、お嬢様が拘るのでしたら、お姿を変えてみては?」
 みやび「ん、新鮮な姿で対峙するのか。どんな格好をすればいいかな」
 リーダ「メイド服です」
 みやび「メイド服?」
 リーダ「はい。お嬢様なら良くお似合いだと思います。
     従順で優しく可愛らしいメイド姿、司様の好感度も高いと思います」
 みやび「そうか。
    (本気で言ってくれているんだろうけど。それ、リーダだから)」



 51.「ギャップ」

 邑那「どうなさいました?」
 司 「話してて、ふと燕玲に『結婚はしないのか?』って訊いたんだ」
 邑那「怒らせたんですか、彼女を」
 司 「いや。怒ってはいないと思う。
    何と言うか、意外な顔をされた」
 邑那「意外ですか?」
 司 「不意打ちで、あんな可愛い顔されても……」
 邑那「……」



 52.「失楽園」

 殿子「梓乃と二人でずっとここにいて。
    それはそれで幸せだったかもしれない」
 梓乃「そうですね、そう思います」
 殿子「でも、そうならなかった」
 梓乃「それに戻ろうとしても、もう戻れませんね」
 殿子「……」(少し寂しそうに、でも決して悔いない表情で)
 梓乃「……」(同じく)



 53.「外へ出て」

 司「あの学園で教師を出来て、本当に良かったと思ってる。
   でも、食生活だけは最後まで馴染まなかったな。
   馴染めなくて良かったよ、うん」



 54.「密輸」

 司 「お帰り」
 美綺「ただいまー」
 司 「けっこう大荷物になるな。
    疑いはしないけど、本当にまずいものは持ち込んでないよな」
 美綺「疑ってるって、それは。もう、大丈夫だって、やましいものはないよ」
 司 「すまん」
 美綺「罰としてこれも持って」
 司 「はいはい」
 美綺「まあ、男の人には見せらんないものはあるけどね」(小声)



 55.「和み」

 みやび「本校系と分校系の生徒をもっと仲良くさせたいと思うんだが」
 司  「良いお考えですよ、理事長」
 みやび「そうだろう。敬え。で、何か良いアイディアはないかな」
 司  「あれ、丸投げですか。そうですね、あります。制服ですよ」
 みやび「ふむ」
 司  「皆で本校の制服着る日、逆に分校の制服着る日を作るんです」
 みやび「ほほう、なるほど。却下」
 司  「何故です。良い案だと思いますが」
 リーダ「もう少し期待に溢れた瞳の色を抑えられたら良かったかと……」



 56.「凛として」

 栖香「あ、先生」
 司 「うん?」
 栖香「ネクタイの結び目が少し曲がっています」
 司 「ちゃんと鏡見たけどなあ」
 栖香「他の生徒にだらしない格好と思われたら、私が恥ずかしいです。
    はい、直りました」
 司 「ああ、ありがとう」
 栖香「では、先に行きますね」
 司 「ああ。ああも変わるんだなあ、夜と朝で。ううむ」



 57.「籠の小鳥」

 司 「しかしよく皆平気で暮らしているものだな」
 美綺「それぞれ事情あるしね。
    だいたい、不自由なのが自然らしいから、お嬢様って」
 司 「なるほどなあ」



 58.「悪徳の栄え」

 司 「八乙女は悪いことは出来ないだろう」
 殿子「うん」
 梓乃「ええ。……いろんな意味で」



 59.「人は何かになれる」

 司「王として生まれるのではなく、王になるのだとかいう言葉があるな。
   含蓄があると思う。
   はい、じゃあ、授業終わり」



 60.「目覚め」

 栖香「おはようございます、先生」
 司 「おはよう。今日も早いな、仁礼は」
 栖香「普通だと思いますが」
 司 「しかし良く起きられるな。時計はひとつなのか?」
 栖香「時計?」
 司 「目覚まし時計」
 栖香「ああ。確か探せばひとつあったと思います」
 司 「(つまり使って無いのか。凄いな……)」



 61.「赤子は水に浮かぶが」

 殿子「何で司は泳げなかったの? 運動は満遍なく出来るのに」
 司 「最初はみんな泳げないものだろ」
 殿子「……」
 司 「昔、水を腹いっぱい飲んで腹を壊してから苦手なんだ」
 殿子「……」
 司 「本当に、訊きたいんだな、本当に」
 殿子「う、うん」
 司 「後悔しないな、どんな理由だったとしても?」
 殿子「また、今度にする」



 62.「人間椅子」

 司  「理事長の椅子って、立派ですけど、意外と簡素ですね」
 リーダ「そうですね。お仕事をする為のものですし。
     もっとも、前はずっと大きなものだったのですけど」
 司  「跳びはねて壊したんですか?」
 リーダ「深く腰を下ろして、ずっぽりと埋もれてしまいまして。
     私も所用でしばらく部屋から出ていたので助けも入らず……」



 63.「方針」

 司 「俺が父親になるのかあ、良く考えると不思議だな」
 殿子「そう?」
 司 「でも、これだけは誓う。
    絶対に子供を手放さない。ずっと一緒だ」
 殿子「わたしは子供を縛らないで、好きに外にいかせたいけど」
 司 「……」
 殿子「……」



 64.「力ある者」

 燕玲「陽道グループの良い所?
    そうね、実力あるものはとりあえず重用される所かしら」
 司 「なるほど」
 燕玲「でもね、実力があってしかるべき地位を与えられたとして、それで正しく
    力を行使できているかというとまた別問題」
 司 「難しいものだな」
 燕玲「よい例が私達。まさに獅子身中の虫だった訳だもの」
 司 「最後には中から食い破って、自分が獅子になったと。確かになあ」



 65.「お花に水を」

 司 「物語とかだと、謎めいた美少女がよく植物の世話してたりするよな。
    温室の主みたいなっててさ」
 美綺「まさに、邑那さんだね」
 奏 「うんうん」
 邑那「けっこう力仕事だったり、汚く思える作業も多いんですけどね」
 司 「イメージの問題かもな」
 美綺「何気に美少女って部分はあっさりスルーだね」(小声)
 奏 「否定されても困るけど」(小声)

 

 66.「美味礼賛」

 梓乃「どうですか、先生?」
 司 「美味い。お世辞抜きで美味いぞ」
 梓乃「良かった」
 司 「食堂とかで食べられるものも美味いけど、こっちの方が好きだな」
 梓乃「お祖母様に教わったんです。
    男性には、色の地味な料理を出すと喜ばれると」
 司 「色の地味な……、ああ、なるほど。
    そう言えば、あっちのはカラフルだな」



 67.「アルコール」

 リーダ「たまにはお酒などいかがですか。
     ワインも日本酒も良いものがありますけど」
 司  「そうだなあ、休みだし。
     あ、でも瓶ごと持ってこないで下さい」
 リーダ「はい。飲みすぎ防止ですか?」
 司  「ラベルとかいろいろ見ない方が素直に飲めそうなので」
 リーダ「デカンタでお持ちしますね」



 68.「お褒めに与り」

 みやび「報告書に、会議の議事録に、データのまとめ。 
     意外にも有能だな、労働者。
     本当に意外だが。
     確かによくできている。意外だなあ」
 司  「けなされているようにしか聞こえない……」



 69.「ミステリー」

 司 「辺鄙な場所で行き来が難しく、なおかつ出入りは厳重に管理。
    山あり崖あり、昼なお暗き杉の並木。
    連続少女殺人事件とか起こりそうなもんだけど」
 美綺「そうだよね。お金絡みとか怨恨とかも縁遠くなさそうだし」
 司 「ただ、広すぎてなあ」
 美綺「そうだよね。普通に死体が転がっていてもしばらく気付かなそう」
 司 「うんうん。かといって学校とか寮とかだと、別段この学園が舞台
    でなくても良くなっちゃうし」
 美綺「残念だね、凰華ジャーナル記者とは仮の姿、名探偵二人組が颯爽
    と難事件を解決するところだったのに」
 司 「いつの間に探偵役になったんだ。それも僕まで」
 


 70.「この門をくぐるもの」

 邑那「でも、否応なくここから出て行くという希望を抱かざるを得ないと
    思いませんか?」
 司 「思うよ」



 71.「それ故に配備されてる訳だが」

 司 「よく女子校とか女子寮とか、外から見れば華やかそうに見えるけど、
    中はいると凄いものだとか言うじゃないか。
    でもここの生徒は程度の差はあってもちゃんとしてるな、さすがに」
 美綺「……」
 奏 「……」
 司 「何で二人して目を逸らすんだ。
    正確に言うと、上原が非難の目を相沢に向けて……」



 72.「きんこんかんこん」

 司「こういう学校でも、鐘の音とかは普通なんですね」
 暁「様式美の世界だからな」
 司「なるほど」



 73.「残りたい」

 司 「もうついていけないと僕が言い出して、君から離れようとしたら、
    止めようとするかな」
 邑那「いいえ」
 司 「じゃあ、裏切ったとして報復はするかい」
 邑那「しませんね」
 司 「いなくなっても憶えていてくれる?」
 邑那「すぐに忘れます。いえ、忘れてみせます」
 司 「それは、凄く嫌だな」
 邑那「それで、出て行かれるのですか?」
 司 「誰が?」



 74.「出会い」

 美綺「すみすみに一度訊いてみたい事があるんだ」
 司 「へえ、なんだい」
 美綺「半分血の繋がった姉が同じ学園に入ったと聞いて、どう思ったのか」
 司 「訊けばいいじゃないか。もう遠慮する必要のない間だろ」
 美綺「だから訊けないの」
 司 「そういうものなのか」



 75.「微かな負の感情」

 司「意地の悪い質問なんだけど、相沢が仁礼と仲良くなって少し寂しく
   なったりしないか?」
 奏「え、それは、少しは……。
   でも、その為にみさきち、ここまで来たんだし。
   あんなに嬉しそうなんだから、良かったと思う」
 司「そうか。良い友人関係だよな。うんうん」
 奏「どっちかと言うと、先生に対してジェラシー感じるけど……」(小声)



 76.「男なるもの」

 司  「酔った勢いで言ってしまいますけど、正直不思議ですね。
     相沢…、いや美綺さんが生まれるような事をしたのが」
 仁礼父「……」(秒コンマあるか無しかのニヤリ笑い)
 司  「男だものなあ」



 77.「シーズン到来」

 司  「大銀杏と逃避行って何か語感似てないかな」
 美綺 「似てる気がする」
 双子 「うんうん」
 智代美「強引過ぎ。30点」

 大銀杏「試験なんて無い。無いったら無い。無いんだったら…ぶつぶつ」



 78.「義父」

 猪早夫「貴様なんぞに、うちの可愛い可愛いお姫様がッッ、はあはあ。
     しかし、何だな、良く毎度毎度罵られながらも顔出すな」
 司  「それはもう、どれだけ感謝してもし足りないですから」
 猪早夫「どういう意味だ」
 司  「美綺をあんな立派に育ててくれましたから」
 猪早夫「ふん」

 

 79.「矢の如く疾く」

 邑那「お肌の手入れですか?
    もちろん気を使ってしてますよ」
 美綺「へえ、必要無さそうなほど綺麗なのに」
 栖香「はい。意外です、少し」
 邑那「だんだんと十代も終わりに来ると違ってくるものですよ」
 美綺「そんなものなんだ」
 邑那「今にわかりますとも。どれだけ恵まれていたかが」(小声)



 80.「お泊りの後で」

 栖香「それでは失礼します、お姉様」
 美綺「騒がしくてごめん。いつもはもっと……いや、いつもと変わらないかなあ。
    こりずにまた遊びに来てね」
 栖香「いいえ、素敵なお家だと思います。お姉様のお父様とお母様も。
    どうしてお姉さまがお姉様なのか、よく分かります」
 美綺「むむ、誉められてない気がする。
    でも、すみすみがウチで育っても、やっぱりすみすみな気がするよ」
 栖香「そうでしょうか」(同意と疑問半々で)



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