パルフェ天抜き・七号店

作:しにを

 




 「パルフェ」と「フォセット」の絵無し4コマ漫画風の何かです。
 クリアしてるのを前提として、ネタバレとか気にしてませんので、
 未プレイの方は読まない方が無難かと思います。
 いえ、先にぜひプレイして下さい。
 と、一応の注意書き。








241.「戦略会議」

 里伽子「PR戦略としては、恵麻さんを正面に出すという手もあるけど」
 仁  「特に有名な賞とか取ってないぞ。これから挑戦するのか?」
 里伽子「そういう正面から行く手もあるけど、そうじゃないわ。
     こんな綺麗で素敵なパティシエの手作りケーキですとアピール」
 仁  「男性客獲得と言う事か」(嫌そうな顔で)
 里伽子「そして、この人はケーキ好きで自分自身も尋常でない量を毎日
     食べているんですというアピール」
 仁  「何だ、それ?」
 里伽子「女性客向け。効果あるわよ、これは」
 仁  「よくわからないが却下していいか」
 里伽子「うん。仁の反応を織り込んでの没案だから」



242.「手と手つないで」

 明日香「あ、てんちょが」
 かすり「由飛ちゃんの手を握り締めている」
 仁  「違う、違う。由飛って、握力が半端じゃないだろ」
 かすり「凶器よね、あれは」
 由飛 「えー」
 仁  「でも、手自体は柔らかいんだよ、ほら」
 明日香「触る理由になってないよ、それ。でも、わたしも……ああ」
 かすり「ふむふむ、あら、本当」
 恵麻 「うーん、なるほどねえ」
 仁  「どっから現れた、姉さん」

 里伽子「……、何、これ?」



243.「ケーキに国境なく」

 玲愛「ちょっと、何よこれ」
 仁 「何って、お客様がキュリオでケーキ食べてるんだろ」
 玲愛「お客様って、あなたのお姉さんじゃない。
    何で競合店のパティシアが堂々とやって来て新作ケーキ次々と
    食べているのかって訊いているの。
    敵情視察をこんな堂々とやるなんてどういう神経よ」
 仁 「それは違う。敵情視察のつもりはまったくないから。
    そっちのパティシアの秋限定シリーズが絶品だって聞いてさ、
    単純に無類のケーキ好きに火がついただけだ。
    別に迷惑な事はしてないだろ。何なら追い返せばどうだ?」
 玲愛「あんな幸せそうにケーキ食べてる人を追い出せる訳ないでしょ」
 仁 「そうだろうな」
 玲愛「まったくもう」



244.「高」

 恵麻 「試作だけど食べてみて」
 明日香「うわあ、美味しい」
 由飛 「うんうん、幸せ〜」
 里伽子「濃厚なのに後を引かずにすっと消えて、もっと欲しくなる」
 恵麻 「好評みたいね。よーしもっと仕上げを練るわ」

 仁  「どうしたの、かすりさん。顔色が悪いよ」
 かすり「製造過程見てたから」
 仁  「何か食材に問題でもあったのか」
 かすり「ううん。ただね、尋常でないカロリーなの。
     あれ一個食べるのにどれだけ走らないといけないか……」
 仁  「追加が出てきた」
 かすり「みんな殺到してる」



245.「今、僕は幸せなのだけど」

 仁「葉書……、差出人の名前がないな。
   でも、この字。
   “結婚しました”か。
   そうか……。なんだろう、今のこの感情?」



246.「天才」

 明日香「かすりさん、もう少し残って特訓だって」
 仁  「姉さんの新作ケーキ食い入るように見てたからなあ」
 明日香「かすりさん、偉いよね」
 仁  「ああ。反復練習して腕上げてって努力してる。
     でも……」
 明日香「でも?」
 仁  「かすりさんが凄いケーキ作ったら、姉さん奮起して力いっぱいの
    ケーキ作るだろうなあって」
 明日香「ああ」



247.「1日1…」

 里伽子「何を悩んでいるの?」
 仁  「わかるのか」
 里伽子「ええ」
 仁  「卵を一日ひとつにしてるんだ」
 里伽子「ふうん。そんな事か。
     ああ、でも仁には辛い事なんでしょうね」
 仁  「もちろんだ。
     ただ、許されるその一個をどうやって食べるか、それを
     考えるのがたまらなく楽しい」
 里伽子「……ふうん。(業が深い話ね)」



248.「献身」

 由飛「仁、酷い。
    打倒キュリオの為に玲愛ちゃんを誘惑して骨抜きにして、店の
    秘密聞き出したり妨害工作させたりしようと企んでるなんて。
    そして用がなくなったらボロ雑巾のように捨てるなんて!!
    お願い、やめて。代わりにわたしが仁の恋人になるからッ」
 仁 「いろいろ突っ込みたいが、とりあえずかすりさんは何処だ?」
  


249.「大物移籍」

 瑞奈 「玲愛ってそちらでどんな具合?」
 かすり「ヘッドハンティングでいきなり新参者が上司になった感じ?」
 明日香「あ、的確」
 瑞奈 「そうなんだ」
 由飛 「で、でも、凄くみんなに気を遣ってるよ」
 かすり「大丈夫、それはわかってるから」
 明日香「うん、優しいし、指示も的確だし、凄いよね」
 由飛 「へへへ」
 かすり「別にあんたを誉めている訳じゃないわよ。
     でもあれね、恵麻さんにも遠慮なく反対意見ぶつけられるのは
     凄い。あれは他の誰にもできない」
 明日香「そうだよねえ。
     てんちょも、ある意味里伽子さんも出来ない事だものね」
 瑞奈 「ふうん」(よくはわからないが納得はした顔で)



250.「直球勝負」

 里伽子「恵麻さんは仁のどこが好きなんですかって問い。
     全部って答え、それも間髪入れずの即答か。
     訊く方も凄いけど、答える方も凄いわね、あの二人。
     こういう所なんだろうな、あたしに足りないのは」



251.「近くの親戚」

 由飛「恵麻さんとはどう」
 玲愛「どうって、まあ、それなりにやってる。
    ちゃんと折れるところは折れてるし」
 由飛「うん、それならいいけど」
 玲愛「それにしても、姉さんにまで心配されるとは思わなかった」
 由飛「なによー。
    あ、それと仁の実家の方とはどうなの?」
 玲愛「へ? あ、ああ、仁のお義母さんね、凄くいい方。
    問題ないわよ、二人とも仲良く出来てる」
 由飛「恵麻さんと、全然答える時の感じが違うんだね」
 玲愛「……うん」



252.「意見交換」

 玲愛 「なるほど、やっぱりアプローチの仕方が違うのね。
     私も本店の方は見ていた部分しかわからないけど」
 里伽子「でも、参考になります。
     それで、こちらが残っている記録」
 玲愛 「付加価値を犠牲にして下地作りする戦略と言えば聞こえいいけど、
     無茶すぎるわね。でも成功させてる」
 里伽子「純粋な経営戦略と別に目的があったから」
 玲愛 「でも面白い。ここでうちとの差をあえて出して」
 里伽子「そうですね」

 明日香「何かあの二人が話してるのって凄いね」
 仁  「そうだな」
 明日香「お店の経営のお話?」
 仁  「うん。同業種での意見交換ってところかな」
 明日香「なんで、そこにてんちょがいないの?」
 仁  「……うん」



253.「Merry X'mas」

 恵麻「ねえ、仁くん。
    クリスマスケーキの話なんだけど」
 仁 「予約は順調だよ。ただ、やっぱり当日売りも力入れないとな」
 恵麻「残ったらどうする。翌日に半額にしたりする?」
 仁 「どうしようかな。
    少しでも元取りたいところだけど。やめておこうか」
 恵麻「そうね、残ったら中で処分しましょう」
 仁 「ああ」
 恵麻「いっぱい食べられるわね。頑張って作るぞー」
 仁 「待て」



254.「どこかへと行く列車の中で」

 里伽子「とうとう最後まで気づかせずに済んだわね。
     ……。
     気づいてくれなかったな。
     もしも仁が……、ううん、もしもに意味はないわ。
     さようなら、仁」



255.「資産価値」

 玲愛「まさかとは思うけど、姉さんをそっちの商売に利用しようとか
    思ってないわよね」
 仁 「どうやって?」
 玲愛「それは……、って本気でわからないみたいね。
    いいわ、今の無し」
 仁 「いや、凄く気になるんだけど」
 玲愛「もう、いいの。帰る」
 仁 「ええーー」



256.「崩れて落ちた」

 明日香「かすりさ……ん、由飛さ……ん」
 かすり「うん、助けを呼ぶか細き声。
     どうしたのかなあ……なに、これ?」
 明日香「卵を何個積めるかって、てんちょがやってたんだけど、
     電話来てちょっと出てっちゃって。
     放っておくと揺れるし、押さえようとしたら崩れそうだし。
     どうしたらいいかわからない。助けて」
 かすり「わたしだけなら、見なかった事にするという手があるけど。
     冗談、冗談だから、泣きそうな顔しない」



257.「お手伝い志願」

 由飛 「久々だしわたしもお手伝いしたいなあ」
 仁  「やって貰ってもいいけど」
 里伽子「でも万が一お皿割って指でも怪我したら、きっととんでもない
     損害賠償が来るわよ。コンサートとかひとつふたつキャンセルに
     なるだけで」
 仁  「そうだな。そういう事だ」
 由飛 「じゃあ、お店の前でピアノ弾くのはどうかな。
     一日中だってへっちゃらだし」
 里伽子「それは、贅沢と言えば贅沢ね。
     時間決めてミニコンサートみたいにする手もあるし」
 由飛 「決まり。なに弾こうかなあ。みんなにも訊いて来るね」
 仁  「いいのか?」
 里伽子「ん。どうもあのタイプには逆らえない感じ」
 仁  「ふうん」



258.「生演奏中」

 玲愛「ちょっと、何で姉さんがこんなところでピアノ弾いてるのよ」
 仁 「本人のたっての願いだから。
    許可も取ってるし、お客さんも喜んでるぞ」
 玲愛「それはそうだけど……、仕事中聴かされるのは」
 仁 「そんなに違和感無いだろ」
 玲愛「曲もピアニストも素晴らしいわよ。
    だから……少し胸がチクチクとするのよ」
 仁 「あ、ああ。それは、すまん」
 玲愛「そんな深刻な話じゃないけど。
    ……良い曲ね」
 仁 「ああ」



259.「指導中」

 かすり「ストーップ、もう一回やって、そこ」
 明日香「うん、見たい」
 仁  「了解。こうやって四角く薄焼き玉子にするだろ。
     ここでポンとフライパン叩くと浮き上がるから、後は……、
     こんな感じ。最初は難しいかもしれないけど慣れだよ」
 明日香「無理」
 かすり「うん、浮いてるうちに菜箸で折り紙ならぬ折り玉子なんて
     そんなの料理でなくて曲芸の域だから」
 仁  「そうかなあ。俺からみたらかすりさんのケーキ細工の方が
     ずっと難しそうだけど」
 由飛 「わたしやってみようかな」
 明・か「卵の無駄だと思う」
 仁  「そうだな」
 由飛 「えー」



260.「師は無数にあり」

 かすり「ここでこうして、こう。で、さっき溶かしたのをかけます。
     そのまま冷やして、少し仕上がりで手直しして完成です」
 恵麻 「なるほど。凄いわね、かすりちゃん。
     味もそうだけど、見た目からして素晴らしいし、美味しそう」
 かすり「恵麻さんに誉められてる。夢みたい」
 恵麻 「わたしもファミーユをお休みしてキュリオのパティシオに弟子
     入りしようかな」
 かすり「うわ、冗談じゃない。本気で考えてる。
     こういうところ、恵麻さんってやっぱり怖い」



261.「独学」

 里伽子「難問みたいね?」
 明日香「あ、里伽子さん。
     応用で難しいからてんちょに訊きに来たんだけど」
 里伽子「ちょっと急用で出ちゃったものね。
     良かったら教えるけど」
 明日香「お願いします」
 里伽子「ここはねえ、ほら、明日香ちゃん、こっちの練習問題は自力で
     解いたんでしょ。基本は同じだから、少し考え方を変えるの」
 明日香「これ? 最初の部分はいったん置いておいて外周から……、
     あ、そうか。さらにもう一個、仮にしておいて進んじゃえば
     いいんだ」
 里伽子「正解。やっぱり明日香ちゃん、頭の回転速いわね。
     仁の家庭教師なんてなくてもい……、え、あ、そういう意味じゃ
     ないから」
 明日香「ははは」(ほっとした顔で)



262.「兄弟」

 かすり「あれ、どうしたの、あそこの姉妹は。
     また険悪な雰囲気になって」
 明日香「また、かすりさん面白そうな顔してる。
     よく話の流れは知らないけど、玲愛さんにお兄さんが出来て
     いいなあとか言ったんだって」
 かすり「うわあ。でも、それは前もそんな話してなかった?」
 明日香「してたね。だから玲愛さんもあっさりと返してたの。
     自分が結婚したら弟が出来るからとか。
     そうしたら、ぱあっと目を輝かせて、早く恋人見つけてよ、
     みたいな発言をね。まったく悪気は無いけど…」
 かすり「とてつもない爆弾落とした訳だ、天然娘め。それは怒るわ。
     金髪ツインテールに一票」


263.「兄弟2」

 明日香「あれ、恵麻さん、由飛さんのお姉さんになるんだよね」
 かすり「そうよ」
 明日香「じゃあ、恵麻さんが再婚したら、お義兄さん出来るよね」
 かすり「おお、そうだね。何だか盲点だった」
 明日香「でね、それを由飛さんに教えたらどうなるかなあ」
 かすり「どうなるって、恵麻さんに向かって……、うわあ。
     いや、幾らあの娘でもそれは言わないでしょう」
 明日香「言わないよね」
 かすり「言わない……、うん、言わない、言わない」
 明日香「……」
 かすり「……」



264.「近くにいる比較対象」

 玲愛 「あら、今帰りとは遅いわね」
 かすり「お互い様でしょ、それは」
 玲愛 「事務仕事まとめてやったから。そっちは明日の仕込みか何か?」
 かすり「仕事外の練習みたいなものかな。練習量でも増やさないと天才の
     足元に近づけないものなのよねー、凡人としては」
 玲愛 「すっごく、よくわかる。
     でも、不公平ね。もちろん天才だって苦労したり悩んだりする
     んだろうけど、基本的に好きな事を好きなだけやってるだけだ
     もの……、やっぱりどこか不公平」
 かすり「すっごく、よくわかる」

 

265.「好みと自負」

 由飛 「仁と恵麻さんの違い、見つけた」
 かすり「ほほう、言ってみるがいい」
 由飛 「どこかに美味しいケーキのお店できたとか聞いたら、恵麻さん
     行きたがるでしょ」
 かすり「そうね、誰より耳早かったりするし」
 明日香「でも、それてんちょもそうだよ。
     百種類のオムライス専門店なんて聞いたらすぐにも飛び出して
     行きそうだもん」
 由飛 「でもね、恵麻さんは楽しみ100%でね、仁の場合、半分とまでは
     いかないけど、別の成分が混ざっている気がする」
 かすり「あ、わかった。ちょっとだけ敵愾心燃やすよね」
 明日香「食べた後は二人とも反応同じだけどね」



266.「看板娘」

 明日香「お待たせしました」

 仁  「……」
 かすり「青い果実……というにはちょっと実りすぎてるけど、熱い視線を
     注ぐ店長であったと。どうしたの?」
 仁  「いや、明日香ちゃんが共学の高校だったら、随分と目当ての奴が
     来ただろうなあと思って」
 かすり「そうね。残念よね」
 仁  「え?」
 かすり「うん?」
     


267.「食べさせる」

 仁  「はい、あーん」
 里伽子「……」
 仁  「恥ずかしがらない。はい、あーん」
 里伽子「もう、自分で出来るんだけど」
 仁  「だから?」
 里伽子「…あーん」



268.「就任挨拶」

 玲愛「ええと、今のところは花鳥玲愛です。
    新参者ですので、皆さんのご指導を受けてお仕事をしたいと
    思います。不慣れな部分はお世話かけると思います。 
    しばらくはおとなしくしていますので、よろしくお願い致します。
 一同「しばらくは?」



269.「グッズ」

 仁 「あ、これいいなあ」
 由飛「ゆで卵スライサー? いらないでしょ、仁なら」
 仁 「そうだけどさ、欲しいんだ」
 由飛「別に好きにすればいいと思うけど。
    でも、わからないなあ」
 


270.「俺に任せな」

 恵麻 「あれ、卵たりなくなるかしら」
 かすり「買い足ししといた方がいいでしょうかね」
 仁  「話は聞かせて貰った。
     少しだけ時間をくれ。
     で、幾つあれば間に合う? 千個か、一万個か?」
 恵麻 「じゃあ、今日はケーキの変更しましょう」
 かすり「そうですね。変わりにチョコクリーム、と」
 仁  「ええええーーーッッ」
 恵麻 「そんなにいらないし」
 かすり「うんうん」



271.「ひとつ鍋を突く」

 玲愛「わからないわ」
 瑞奈「たまには同じ階同士」
 仁 「鍋でも突こうじゃないかって」
 瑞奈「賛成してましたよね」
 仁 「うん」
 玲愛「鍋はわかるわよ。やるのも賛成。でも何でわたしの部屋なの」
 瑞奈「別に私の所でもいいけど」
 仁 「俺の部屋もそれなりに片付いてるぞ」
 瑞奈「後で他の女を部屋に上げたって高村さんが怒られると気の毒だし」
 仁 「他の女の部屋に行ったって責められるの困るし」
 瑞奈「やっぱり玲愛の部屋ですよねー」
 仁 「そうだよねー」
 玲愛「うう」



272.「雑誌取材」

 由飛 「ねえねえ、キュリオの三号店が雑誌で紹介されてたの」
 かすり「ほほう、どれどれ」
 明日香「いいなあ」
 由飛 「あ、玲愛ちゃん写真大きい」
 仁  「少し照れてるな、これ」
 かすり「インタビューは……、板橋店長なのね」
 仁  「“スタッフが優秀なので、ボクはやる事が無いんですよ”か。
     その通りなんだけど、何か違うと感じるのは何故だろう」



273.「コンセプト」

 玲愛「キュリオの長所って、美味しいケーキやお茶もそうだけど、お店の
    内装と雰囲気、女の子の制服ときちんとした対応だと思う」
 仁 「そうだな、というかうちもそうなんだけど」
 玲愛「最初は仁と恵麻さん、それと里伽子さんの三人だったのよね」
 仁 「ああ」
 玲愛「ケーキは良し、内装もパクリだけど何とかしたとすると、残りの
    女の子分は一手に引き受けていた訳ね、里伽子さん」
 仁 「そうだな。かすりさんとか明日香ちゃんは後だから」
 玲愛「ふうん、だとすると意外と自己評価は……」



274.「立場が変わる」

 玲愛「思えば開店してからけっこう経ったわね。早いものだわ。
    いろいろな事があったわよね。
    そっちもそれなりにやってるし、少しは認めてあげてもいいわ」
 仁 「はいはい、ありがとうございます」
 玲愛「でも、成功を収めたと思ったら、今度は追われる立場よ。
    もしも新しいお店がファミーユのコンセプトを真似て、おまけに
    のうのうと近くに出店したらどうする」
 仁 「ふふふ、望むところ。そんな小癪な店は叩き…、いやいや。
    もちろん同業として仲良くするさ」
 玲愛「……ちッ」



275.「元祖」

 由飛「このファミーユは新しいけど、もともとはこの町にファミーユって
    お店あったんだよね。制服とか内装とかが同じ感じで」
 仁 「ああ」
 由飛「そうなるとね、本家とか元祖とかは別として、ここでもともとこう
    いうお店を出していたのはファミーユで、後から真似したのキュリオ
    なんじゃないの?」
 一同「……おお」
 


276.「犬も喰わぬ」

 玲愛「ねえ、仁」
 仁 「なんだい、玲愛」
 玲愛「今日は二人ともお休みだから、一日中仁にベタベタする」
 仁 「奇遇だな。俺も玲愛といちゃいちゃべたべたしようと思ってた」
 玲愛「でもわたしのほうがもっとするんだもん」
 仁 「いやいや、俺はもっと玲愛にべったりするんだ」

 瑞奈「ごめん、わからない。
    そんな会話からどうして、あんたがわたしの部屋に飛び込んできて、
    高村さんが黙々どプリン作り続ける事態になる訳?」



277.「何が出るかな」

 恵麻 「仁くん、じゃなくて店長」
 仁  「え?」
 かすり「ケーキ製造本部からの特別提案です、店長」
 仁  「二人して誌真面目な顔して、何を言うんだ」
 恵麻 「今日出したケーキに当たりを混ぜて、当たった人にはもう一個
     プレゼントするの」
 仁  「それは構わないけど、当たりって何?」
 かすり「ケーキの中に何か入っていたら当たり」
 仁  「何か?」
 恵麻 「……」
 かすり「……」
 仁  「まさか、指輪でも生地に混ぜちゃったとか」
 恵麻 「指輪じゃないなあ」
 かすり「指輪なら一個で済んだしねえ」
 仁  「却下。全品廃棄処分」



278.「誓い」

 恵麻「仁くんを誰よりも愛するわ。ケーキよりも」
 仁 「俺もだ。姉さんを卵よりも愛する」

 かすり「重いと言えば重い言葉だけど」
 由飛 「ええっ? 素敵じゃない」
 明日香「微妙」



279.「絶対評価」

 恵麻「一人さん? 素敵な人だったわ。
    本当にわたしなんかには勿体無い人だったと思う」
 由飛「仁と比べても素敵?」
 恵麻「ええと……、一般論で言えば上かなあ」
 由飛「それでも上なのか。それは相当ですね」



280.「つまらないものですが」

 仁  「あ、お義姉さん、これ、姉さんから……ややこしいな。
     とにかく、お土産です」
 かすり「恵麻さんが是非にって、手作りのお菓子」
 紬  「そうですか、それは嬉しいですね。開けてみましょう。
     なるほど、これは美味しそう。お茶をいれましょう」
 かすり「うわあ、こんなのいつの間に考えたんだろう」
 仁  「どことなく和風な味わいもするな」
 紬  「なるほど、これは……美味しい。
     ……。
     ええと、二人はいつまでこちらに?」
 仁  「二日ほどお世話になる予定です」
 紬  「そう、それだけあれば。わかりました。
     こちらからもお土産をお持ち頂きますから」
 かすり「あ、何か火ついちゃったみたい」(小声)
 仁  「そうだなあ」(小声)



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