天抜きリクエスト 


※サイトの90万HIT企画です。
文中で使う言葉を挙げて貰い、それを複数使って書くという趣旨です。

【お題】
風邪、情報理論、攻略本、蕎麦(そば)、凧(たこ)、ヤドリギ、カード、
繰り返し、楽園、F、7、SEX、仲直り、女の子、プラモデル、日本人形、
タバコの吸い殻、鬼子母神、モンブラン、テレビのリモコン、下水管、
真っ赤なスカーフ、花、鳥、風、月、鋼鉄の処女、死の舞踏、γ、
モダンガール、寒空、夕闇、朝、鍵、蜂蜜、たわし、お線香、ヘヴン、
ガッツ、マッシヴ、魔剣、パウダースノー、鯨 、二千円札、全身タイツ、
群青、深海、代償行為、ちくわ、峠、雫、痕、茘枝(ライチ)、駐車場、
永久王座、瑠璃の羽、待ち人、日陰の庭、陽だまりの花、夢幻の夜、
ふくろう、王子様、筋肉、夢、本能        ...計65個

【出題された方々】
かがみゆうさん、MCさん、星の車輪さん、星詠師さん、秋月さん、しゅらさん、
天戯京介さん、権兵衛党さん、潜戸さん、KTさん、もとはるさん、がんさん、
ペースケさん、鰯丸さん、 Syunsukeさん、須啓さん、Jinroさん、月影さん


 1.「理論と実践」  シオン「情報理論? ああ、その概念なら学んでいます。      要は情報の伝達における手段や意義についての学問ですよ。      志貴にしては珍しい単語を……。      なるほど、暇に明かして読書していたら出て来たのですか。      読書は良いですよ。いろんな意味で人を豊かにします。      その理論についても良く考える事をお勧めします。      そうすれば不確かな情報に振り回されて寒空を無駄に歩き回って風邪を      引くような真似を……と、病人にお説教は慎みましょう。          とりあえず、元気そうで安心しました。早く良くなって下さいね」        2.「笑いとは共通認識の中で生まれるもので」    志貴「それでね、有彦がいきなり『なんだこれはー』とか叫んだんだ。     何かと思ったらテレビのリモコンと思って計算機をずっと握ってたんだ」  翡翠「はあ」(不思議そうな顔で)  志貴「ええと……、翡翠にはわからないよなあ。説明するのもなんだし。     じゃあ、別な話にしよう。     下水管からずぶ濡れで現れたシエル先輩がさ、真っ赤なスカーフを握り     締めてるから何かと思ったら、実はそれ……」  3.「別腹だしね」  シエル「モンブランと言えば栗のクリームの味を楽しむのが当然ですけど、      こんなのも面白いでしょう?」  翡翠 「美味しいです、シエルさま」  琥珀 「さすがですねえ、シエルさん。      このカボチャの一風変わっててわたし、気に入っちゃいました」  秋葉 「私はこちらのスイートポテトのが。甘味が深くて素敵ですね。      そちらと比べると、少しバターを強めにしているのかしら」  シエル「あ、わかって頂けましたか。でも、琥珀さんのも見事ですね。      けっこう自信あったけど、わたしの方が分が悪いです。      この生クリームとのバランスの絶妙さ」  アルク「うーん。琥珀のも美味しいけど、シエルのもスポンジ美味しい。      こんな特技あったんだ」  琥珀 「お茶おかわりお持ちしますねー」  志貴 「こんな平和で和やかな雰囲気なんて……。      やっぱり女の子って甘い物好きなんだなあ」(ちょっと疎外感)  4.「それでもいいと言う人もいるだろうけど」  鮮花「だから、私は……」  式 「不思議か?」  幹也「二人とも、女の子なんだから、そんな……」  橙子「人が気持ちよく居眠りしていたら、陰口か?」  幹也「うわっ」  式 「……」  鮮花「そ、そんな事はないです」  橙子「ふん。あいにくだが、少しは聞いたぞ。     私が鋼鉄の処女? つまりまだSEXの経験もないような……」  式 「ああ、橙子違う」  鮮花「そうです。そんな事を話題にするような事はしません」  橙子「ほう?」(意外そうに)  幹也「(ただ、相手の男性がただじゃすまない雰囲気がって話を)」    5.「一杯たぐって」  志貴「まあ、蕎麦とかは音たてて食べた方が美味しいし、粋だって言われたり     もするよね。もぞもぞ食べたら美味しくないし。     でも、カレーうどんでそんな真似するのはどうかと思うよ。     そもそも朝御飯に……、って言ってる暇はもう無いな。     とりあえず水につけておいて、早く先輩、着替え済ませて」  6.「先読み、超反応、見た事の無い連続技」  琥珀「おや志貴さん、熱心に何をお読みに……。     ふうん、ゲームの攻略本ですか。     甘いですね。所詮知識は知識。実戦と繰り返しの鍛錬によって培われた     力に敵うとでも。まあ、いつでもお相手しますねー」(勝ち誇り去る)  志貴「俺としてはあれだけ仕事とかきちんとしていて、いつそんな練習時間作     っているのかが不思議なんだけど」  7.「種も仕掛けもありませんよ」  シオン「そうですね、実践してみせるのがわかりやすいですね。       まずは解説は後にして結果だけを見せる事にします。自分の意志で選      択しているようで、いつの間にか他人の設定したゴールへと導かれてい      く様を味わって貰いましょう。      それぞれアルファベットか一桁の数字をまず挙げてください」  琥珀 「じゃあ、Fにします」  翡翠 「わたしはSでお願いします」  秋葉 「数字でもいいのよね、7を。兄さんは?」  志貴 「そうだなあ、じゃあγ」  シオン「え、γ? ダメです。ギリシャ文字は対象外です」  志貴 「予想外の事に呆然として、それからむきになるシオンってちょっと可      愛いよね」(周りに小声で)  一同 「そうですね」(同意)  8.「庭でかな」  志貴「昔、凧揚げした事があったっけ。風が強い日で。     それであの時秋葉が泣いてた記憶があるんだけど……なんだっけ」  秋葉「お忘れですか。私は憶えていますけど」  志貴「えーと、何かしちゃったのかな?」  秋葉「私の大切にしていた日本人形を括り付けて」  志貴「ああ、そうだった、そうだった。直るまでずっと泣いてて……。     って、今になって思い出し怒りはやめてくれ。     ……謝るから許してくれないか。仲直りししよう」  秋葉「……はい」  9.「全てに善なる者がいないように、全てに悪なす者も」  橙子「ほう、あれが縁もゆかりも無い子供を助けただと?     信じがたいな。人の正当なる宝を強奪するような……あれが、何か関係     しているのか、魔眼封じなどあいつには必要なかろうし。     まあ、夜叉が転じて鬼子母神になった逸話もあるか」     タバコの吸殻を灰皿に押し付けつつ、何かを思い出しニヤリと。  橙子「鬼子母神と言えば、青色鬼という別名があるな。そっちはお似合いだ」  10.「揺りかごを揺らしたりなんだり」  琥珀「はいはい、待っててくださいねー。     もうちょっと冷ましたら、食べさせてあげますからね。     ふふ、わかるのかしら。少しおとなしくなったみたい。     可愛いなあ。お二人に花よ蝶よと育てられるのがわかるわね。     ああ、ダメですよ。蜂蜜は小さい子には…」     少し無表情に幼児を見つめる。  琥珀「…毒になる場合があるのよね。     ……ああ、想像しただけで心の底からぞっとした。よかった」  11.「遠野志貴改造計画」  琥珀「と言う事で、筋肉隆々なマッシブボディーになるまで鍛えるは賛成3名。     ガッツ溢れる熱血漢というのも、ひいふう……、敬遠傾向ですね。     夜の……なんてのは、ほとんど全票取ってますのに。     だいぶ方向性が見えてきましたねえ。     さてと続いての方針項目のアンケート結果は……」  12.「依頼人も無く暇でした」  橙子「はてさて、空など時々見上げて過ごすのも贅沢なものだ。        空の色が濃くなり群青色になり、それがやがて夕闇に染められていく     ところなぞは、まさに…ん? 群青? ごめんだな、金輪際」  13.「斬人斬馬」  幹也「なんだか、いわくありげな刀ですね」  橙子「ああ、黒桐にもわかるか。     来歴がなかなかに壮絶だ。魔剣と言ってもよい業物らしい。     風舞う葉も剃刀のように滑らかに切断し、一方で岩をも断つそうだ。     何より人相手だと、何人敵に回そうとも後れる事無く、さながら、死     の舞踏とでも呼ぶに相応しい……」  幹也「へえ。で、それが何か?」  橙子「ああ、式辺りで試させようとしたんだがな、やめた」  幹也「そうですね。今と大して変わらないですね」  橙子「そう言う事だ」  14.「あなたの手を取って何処までも……と」  朱鷺絵「待ち人来たらず、ね。      安心した。期待していなかったと言えば嘘になるけど。      志貴くん、わたし、お嫁に行きます」  志貴 「止められないよ。俺なんかまだ子供で、朱鷺絵さんは……。      でも、でも……」(目尻から雫が頬を伝う)     「ダメだ。やっぱり。ごめん、朱鷺絵さん。思っていたより俺はず     っとガキだったよ。後の事なんか知らない」      覚悟を決めた顔。憤然と走り出す。礼拝堂へと。  15.「凍りかけも、口で溶かすのもよし」  秋葉 「兄さん、意外なものがお好きなのですね」  志貴 「うん、茘枝(ライチ)かい?      べたべたに甘くは無いけど、味わいがあるし」  シエル「上品な味ですね。わたしは初めてですけど、美味しいです」  アルク「でも種が大きくてあんまり食べるところないよ」  琥珀 「そこがいいんですよ、アルクェイドさん。      珍しく翡翠ちゃんも黙々と食べてる。ふふふ」  翡翠 「えっ!? その、ええと、美味しいです」  秋葉 「当然です。産地から空輸しての最高級品です。冷凍物とは違います」  志貴 「凍らせて食べてるんだけどなあ。      そう言えば、楊貴妃も好物で食べてたんだってさ、茘枝。      食べたら世界三大美女のご利益あるかもな」  一同 「ほほう」      食べる速度が倍以上になった女性陣を見つめる志貴。  志貴 「でもさ、楊貴妃って、すごく豊満と言うかまんまるな体格だったら      しいね。当時はそういうのが美女の基準で。      中国でないけど『千一夜物語』なんかでも月のように丸い美女なん      て表現あるし、今とは違ってたんだね。      あれ、みんな、もう食べないの?」    16.「島の如く巨大」      どこまでも広がる蒼き空。      遥かに広がる群青の波間。    スミレ「そして、遠出して鯨に飲み込まれたワタシ。      実際、どーしたものかしらねー」  17.「悪夢は再び」     夜が始まる。     数々の過去の亡霊が、恐怖の幻影が、顕在化する夢幻の夜が……。  ネロ「そうだ、おまえの恐怖はこの私だ。少年よ」  志貴「そうか。ところで裸コートはやめたんだな」  ネロ「然り」  志貴「で、今度は全身タイツか。極端な奴。     い、いいぜ。殺し合おうぜ、ネロ・カオス」(ちょっと脱力)  18.「夏は氷屋をやっています」  橙子「うーん、次はごぼう天と、はんぺんを貰おう」  幹也「じゃあ、僕はちくわと厚揚げを」  橙子「黒桐、遠慮せずに食べていーからねー。     熱燗もう一本、呑む?」  幹也「少し酔ってますね。貰います。うん、美味しい」  橙子「寒空で背中を風に晒しながらだと、身に沁みると思わないかね」  幹也「それが良いですよね。雪が降りそうなほど寒いですけど」  橙子「パウダースノーか。それは乙だな。     親父さん、次は玉子とこんにゃくのよーく煮えたやつ」  幹也「僕はじゃがいもとつくねを下さい。     でも、おでんの代わりに屋台のデザイン改修って……」  橙子「ほう、不満か。この出汁のよーく沁み…あっつ、ほふ…」  幹也「食べながら喋ると火傷しますよ。     いえ、別におでんの味に文句なんて全然無いですよ。     仕事自体も、これはこれでありがたいし。     ただ、もの欲しそうに屋台をじーっと見つめていたら見かねて一皿奢られて、     挙句に意気投合して……なんてきっかけがちょっと情けなッ、     ちょっと橙子さん。鍋底大根だ喰えって、そんな無理やりに。     その顔、怖いですよ。ちょっと、そんな、熱ッ、ひゃふあひぃ、ひゃあああ」  19.「いまだ消え去らぬ……」  秋葉「兄さん……。     この傷痕を笑う者はいなかったですか?     気味悪がる者などはいなかったですか?     馬鹿にする者などはいなかったですか?」  志貴「どうだっかな。     いたとしても、どうって事無いよ。     秋葉が無事だったんだ。それだけで充分だよ。     ほら、泣かないで」         愛しげに指を這わせつつも、声が震える秋葉。     真珠のような涙の雫に、軽く口づけする志貴。  20.「ロジックとクロスワードとその他諸々」  幹也「んー、一度アナグラムを解いてから、空き文字を入れる…か。     プラモデル、モンブラン……モーリス・ルブラン違うな。     二文字で略せるとなると、モ、モ、モガでモダン・ガール?     ちょっと違うなあ。     ねえ、式、これ、わかるかい?」  式 「知らない。     しかしいくら仕事が無いからって、古雑誌のパズルで日がな一日過ごすお前には     呆れるよ」  幹也「事務所を空にして出歩く訳には行かないし、それなりに面白いよ。     式こそ、さっきからぶつぶつ言いながら、ここにいるじゃないか。     他にする事はないの?」  式 「うるさい(幹也がいるから、ここにいるんじゃないか)」  21.「美人教師探偵知得留の事件簿」  知得留「ふふふ、わたしにはわかっていましたよ。      この部屋に入った時に、本能的にこれが鍵だと。たわしです。      あまりに自然であるが故に、誰もかれもに見過ごされてしまう」  猫アル「無理があるにゃー。違和感ありまくりにゃー」  知得留「これで全てが繋がります。日陰の庭で倒れていた女性が何故全身白で      決めていながら、真っ赤なマフラーなどしていたのか。財布の中に何十      枚もの二千円札が入っていたのか。      そして、ツインイールの女の子が学校に残していった蜂蜜のビンには      どうしてぎっしりとお線香の灰が詰め込まれていたのか。      なにより血塗れで転がっていたふくろうの剥製の謎。      しかし、このたわしで事件は峠を越したと言えるでしょう。      嗚呼、恐ろしい、なんて恐ろしい暗合。壮絶なる信じ難き真実!」  猫アル「そんなものの関連がわかる方が恐ろしいにゃー」  知得留「遠野家に伝わる秘宝『瑠璃の羽』はまだ盗まれてはいません。      いえ、言い方を変えましょう。この夢見る宝石は、そもそもなかった      のです。少なくとも、事件の起きた朝には。      それをしたのは、あなたです。唯一この部屋に近寄る事の出来…」       画面がザーッと乱れる。  志貴 「あれ、いきなり。どうしたんだろう?」  琥珀 「残念ながら、ここまででビデオが切れてしまったんですよ」  志貴 「ちょっと、話の一番肝心なところじゃないか」  琥珀 「そう言われましても、仕方ありません。      繰り返し使ったのでヘたれてしまったんですかねー。      ああ、犯人は誰なんでしょう」  志貴 「ちょっと、琥珀さん。酷いよ、楽しみにしてたのに、ちょっと、笑い      ながら何処に、ねえ、琥珀さん、琥珀さんってばッッ」  22.「宴の後」  志貴「うう、だるい。     全ての体力も何も零れ落ちて、体が棒と泥になったみたいだ。     起きようとしても……、なんだか水の中、それも深い深い深海の底で、     這いずってる感じ。マジで話すだけで疲れる。     目も霞む。眼を開けてるのもつ…ら…………」  琥珀「それは、あれほど夜を徹して朝まではっちゃけられれば……。     みんな倒れてるのに、まだ意識がある方が不思議ですよ。     わたしも……、少し……、おやすみなさい、志貴さん。     ごちそうさまでした。はふぅ」  23.「心の深淵」  琥珀「そうですね、シエルさんの「カレーを食する」という行為は何らかの代償     行為でしょう。好まれるのは構いません。惑溺することもあるでしょう。     でも、あれほど見境無く、大量に摂取なさるのは異常です。     シエルさんとて年頃の女の子ですのに」  志貴「うーん。でも、シエル先輩だからなあ。     そう言えば琥珀さんがカレーを認めないのは、何か理由あるの?」  琥珀「秘密です」  24.「身支度」  メレム「さてと、後はこれを身につけるんだ」  志貴 「本当に着ないとダメか、これ」  メレム「嫌ならやめるといいさ。ただし安全の保障は出来ない。      結界自体は君なら殺せるだろうけど、護っている電撃や凍気諸々をかわ      すのは無理だろう? 体を守るのに最適かつ合理的だよ」  志貴 「そう…だよな」  メレム「わかったら、行きたまえ、王子様」  志貴 「王子様?」  メレム「眠れる姫を起こすのは王子様の役目だろう?      僕には出来なかった役目を担うんだから、頑張ってくれ」  志貴 「行って来る。必ずあいつを……」      全身タイツの防護服を着込むと、眼が蒼く。それは殺人貴としての顔。  25.「男の矜持」  橙子「意地張らないで黒桐もおまえとでも暮らせばいいと思うがね     そうしたら少なくとも食生活は大幅に改善される」  式 「そんなヒモか寄生虫みたいな真似は嫌なんだそうだ」  橙子「ほう、言うなあ。せめてヤドリギくらいにしておいたらいいのにな」  式 「言い方の違いだけじゃないか」  橙子「何を言う。寄生虫は結局は宿り主に害を与えるが、ヤドリギは違うぞ」  式 「なるほどな」  橙子「だいたいだな、今の黒桐だって誉められたものではないぞ。     か弱い女の稼ぎを当てにして、隙あらば懐から掠め取ろうとしたり。     人の家にたむろしては、言葉巧みに言い包めて、働かせようとしたり。     挙句の果てには暴言吐いたり、泣き言口にしたり。     確かにヒモか寄生虫的存在だな、最悪な男。やれやれ……」    (忌々しげにタバコの吸い殻を灰皿で捻り潰す)  式 「ちょっと待て」  26.「瓜と爪みたいなもの」  秋葉「珍しいですね、兄さんが読書だなんて」  志貴「そんな事ないぞ、寝付けない時につい読み耽ったりもするし」  秋葉「あら、それは知りませんでした。     で、何をお読みなんですか?」  志貴「ああ、書庫を見てたら時代小説の選集があってさ。     普段は縁が無いけど、何の気なしに手に取ったらなかなか面白くて」  秋葉「ふうん、私もあまり読む事の無いジャンルです」  志貴「今読んでるのは、峠を境にした二つの国で腹の探り合いする話なんだけど、     ちょっとこれ、意味がわからないんだ」  秋葉「何か難しい言い回しでも?」  志貴「闇夜に鳥は鳴かぬもの、ってどういう意味かな。     あ、わかった。きっと鳥目と何か関係が」  秋葉「兄さん、それは鳥じゃなくて烏です」         27.「『鬼ゆり峠』でも可」  志貴「……」  秋葉「あら、兄さんずっと、こちらに?     夢中で私の声も耳に入っていないみたいね。     もう夕闇時なのに、明かりも点けずに夢中。     でも、こんな兄さんもちょっと知的に見えていいかな。     ……。     ところで、さっきと違うけど何をお読みなのかしら。     ええと、『花と蛇』団鬼六?     ちょっと、兄さん。何を読んでいるんですかッッ」  28.「浄瑠璃人形とかもね」  アルク「でね、この人形が動くのよ」  志貴 「どれ。なるほど、よく出来た日本人形だな。      背中を開いて、と。ほら、アルクェイド、見てみろよ」  アルク「ふうん、そんなになってるんだ。      から、から……」  志貴 「からくり人形。何かの拍子でスイッチが入ったんだろうな。      昔のだけど精巧だよな。この線なんかは鯨の髭を使ってるんだってさ」  アルク「志貴って物知りだね。      別に害は無いから放っていたけど、理由がわかれば安心。      夜になると動いて、部屋中飛び回ったりするから、不思議だったんだ。      昨日の満月の夜なんか、踊ったりして。からくりのせいなんだ、納得」  志貴 「おい、それって……」        29.「初歩的な事だよ」  志貴「この足跡は、繰り返しドアの前をうろうろしていた事を示しているね」  有彦「タバコの吸い殻の山を見れば、長時間この辺りにいたとわかるな」  志貴「この寒空だから、日陰の庭の方には行っていない」  有彦「風もあったしな」  志貴「でも、連絡はなかったと言う事は、また携帯を持っていかなかったと」  有彦「どこかマシな処に行く金も無かったと見た」  一子「見事な推理力だな、二人とも。     で、そんなただでさえ寒風が身に凍みる境遇で家に帰ってみたら、隠し     場所に鍵が置いてなくて閉め出された女は何を考えていると思う?」  有彦「お、お、お土産のケーキがあるぞ。姉貴の好きなモンブランとか」  志貴「そ、そうだ。それより風邪引いちゃうしお腹空いてるだろうから。     ええと、ラーメンか蕎麦でも。奢るから行きましょう、イチゴさん」  一子「……鴨南蛮」  30.「常夏の島」  秋葉「燦々と輝く太陽。澄み切った空と青い海。     本格的にクルーズやマリンスポーツを楽しみたければ用意があります。     鳥のように空から見下ろすのもお勧めですよ。     のんびり過ごすなら、浜辺や花の咲き乱れる庭、風の通る涼しい木陰で。     別荘の部屋も広々として快適。     捕れたての魚や新鮮な果実も届きますし、他にもお酒なども沢山。     夜になれば一面の星空、月もくっきりと輝いて魅了します。     まさに夢の楽園と言うに相応しいと思いませんか?」  志貴「ああ、まさにヘヴンだよ。実に素晴らしい」  秋葉「なら、この私から兄さんへの誕生プレゼント、何がご不満なのです?」  志貴「SHIKI&AKIHA ISLANDって正規に登録って……。地図にも載るって……」  31.「街は煌いたり、男には自分の世界があったり」  秋葉「今宵、貴方の一番大切なものを頂戴しに参ります。     犯行予告のようです、このふざけたカードは」  志貴「警察とかに連絡は?」  秋葉「不要でしょう。普通の相手ならセキュリティを万全にしておきます。     もしそれをかいくぐる相手であれば……。     兄さん、今晩は朝まで私の傍にいて下さい」  志貴「もちろんだよ。悪戯だとは思うけど、用心はしておいた方がいい」  秋葉「はい。月も出ないような夜ですしね」  志貴「うん。ところでさ、秋葉の一番大切なものって何?」  秋葉「え?」  32.「のり弁のは美味しいです」  秋葉「おかしな真似をと思ったのですけど、認識を改めます」  翡翠「美味しいです、志貴さま」  志貴「あのさ、ちくわの天麩羅って、本当に今まで見た事もないの?」  秋葉「ええ。おでんの具とばかり」  志貴「おでんの具と言えば、はんぺんとかもフライにするぞ」  翡翠「では、白滝やがんもどきも」  志貴「それはしない。がんもなんて、そもそも揚げてあるし。     しかしちくわの天麩羅なら立ち食い蕎麦……なんて縁がないか。そうだよな」  琥珀「それと、志貴さんに言われて、こんなのも作ってみました」  秋葉「ちくわの中にチーズ?」  翡翠「キュウリ……」  琥珀「なかなか美味しいですよ」  秋葉「では……、あら、本当」  翡翠「もぐもぐ」  琥珀「ちくわってどうして穴が空いているのかなあと思ったら、この為なんですね」  秋葉「なるほど」  翡翠「志貴さまは、いろいろとご存知なのです」  志貴「琥珀さんまで真顔? なんだろう、この家って……」    33.「トップを狙え」  係員「うん、見ない顔だな、新入りか。なかなかの有望株らしいな。     だが、この世界、持って生まれた素質だけじゃどうにもならない。     スペック上の能力だけ出なくて、相性やら運やらが大きく作用するしな。     特に運は馬鹿にしちゃいけない。その辺は、なんだ、自信なしか。     まあ、頑張るんだな。若かろうが何だろうが実力本意だ。。     咲き誇る陽だまりの花になるか、日陰の庭にひっそり咲く花になるか。     俺達にはどっちが良いのかわからないけどな。     とにかくだ、真祖の姫みたいに、永久王座を誇れる奴は、この死徒ランキ     ングには存在しない。チャンス次第では幾らでも取って代われる。     どうせやるのなら、二十七祖辺りも倒して、一番になる位のつもりでいた     方がいいぜ、ええと……」  少女「わたしの名前は、弓塚さつきです」  34.「ラスト」     丁寧に墓の周りを綺麗にし、花とお線香を供えて  志貴「まさかなあ、最後に生き残ってるのが俺だなんて思いもしなかった」  35.「心を込めてね」  琥珀「素直じゃない女の子と仲直りするにはですか?     簡単ですよ、ただ、謝ればいいんです。     ご機嫌取りの贈り物も、変な演技もいりません。保証します。     だから早く秋葉さまのお部屋に行ってあげる事をお勧めします」  36.「百頭の羊を持つ者が……」  志貴 「鬼子母神だって、大勢いる子供の一人がいなくなって半狂乱になって      それを仏様から諭されて改心して……って、わからないよな」  シエル「いえいえ、そのお話なら知っていますよ」  志貴 「よかった。      それから、えーと、聖書の「羊飼いの喩え」のええと…」  シエル「そちらはなおさら説明されるまでもありません。      で、遠野くん、何が言いたいんですか?」  志貴 「だから、その、さ……」  シエル「わたし一人にかまけていないで、あの馬鹿猫だの可愛いメイドさんに      も良い顔を見せているのを正当化して、わたしと仲直りしようと言うの      なら、お断りですけど?」  志貴 「えーと…………」  37.「何か文句でも?」  志貴「日本人形のような清楚な美少女。     緑の黒髪は、艶やかにして美麗。     微笑めば花のようなれど、普段はむしろ夜空の月の如し。     煌々として輝けど、どこか夢のように儚げ。     ……。     間違ってはいない、確かに間違ってはいない。     けど、これが秋葉の事かと思うと……」  38.「君の為に出来る事」  橙子「式の力になりたい……か。     まあ、他ならぬ黒桐の頼みだ。     そうだな、マッシヴな強化筋肉で身を包むとか、武装融合とか。     持ち手の体力と引き換えに信じがたい凶刃を振るう魔剣なんてのも、商売柄     簡単に手に入りはする。     でもまあ、個人的な忠告をさせて貰えばどれも不要だ。     そんなもの、式は喜ばんさ。君が君でいればいい。     式をずっと見続けて、突き放されても挫けずにいて、心の扉の鍵を開いた時     点で、充分すぎるほど白馬の王子様になったのだからね」  39.「下駄箱とかもいいかもね」       琥珀 「はい、アルクェイドさん。お茶ですけど、どうぞ。      少し休憩なさったらどうです」  アルク「あ、ありがとう。ふうん、何なの、これ。いつものと違うみたい」  琥珀 「限定した花からのみ集めた蜂蜜を入れてあるんですよ。      香りも良いし、疲れが取れるんです」  アルク「疲れは関係ないけど、うん、美味しい」  琥珀 「喜んで貰えたなら嬉しいですよ。      で、調子はどうです」  アルク「うん、取り合えず教わった通りに練習してるよ。      もう少し上手くなったら、志貴に……。ふふふ」  琥珀 「あー、間違い発見。アルクェイドさん、『わたし』と書くところが、すべ      て『たわし』になってますよ」  アルク「え、え、あああ」  琥珀 「ああ、アルクェイドさん、乙女な表情から一転して……。      でも、放課後に待ち人してラブレター手渡しって、何見て思い付かれたん      だろう。謎だなあ。      まあ、健気と言えば健気だし、志貴さんも悪い気はしないでしょう」  アルク「ううう……、たわし、たわし、ここもだ。うう……」  40.「君の為に出来る事」  秋葉「あら、また……」  志貴「別に文句言われるいわれはないぞ」  秋葉「言いませんよ。     余暇をどう使われようが、兄さんの自由です。     でも、面白いのですか、ちまちまと」  志貴「そのちまちまが楽しいんだよ、プラモデルってのは」  秋葉「それにどれも同じ様なのばかり幾つも……」  志貴「それぞれ全部違う。     まあ、こういうのって男は本能的に好きなんだよな」  秋葉「男の子は好きなんですね」(強調するように)  志貴「うん? ああ、そうだな」(苦笑混じりに)  41.「MY詩集とか書いてそうな」        シエル「空を舞う鳥……、いいですね。      わたしも鳥になって自由に羽ばたいてみたい」  アルク「それで、毛虫とか、その辺の腐った果物とか食べるんだ」  シエル「風に乗るのは気持ちよいだろうし」  アルク「無い時はどうするの。ずーっと羽ばたき続けるんだよ。      それに雨とか降ったら大変そう」  シエル「なんでいちいちいらない突っ込み入れてるんです、あなたは」  アルク「だって、シエルに似合いそうな鳥なんていないもの。      せいぜい烏とか」  シエル「どこが、烏です」  アルク「黒ずくめで、しぶとくて、ずる賢くて……、ほら、ぴったり」  シエル「もっと他にあるでしょう」  アルク「そうねえ、あ、そうだ。シエルに似合うのがあった」  シエル「蝙蝠とかふくろうとか言うんじゃないでしょうね」  アルク「違うわよ。まあ、別にそれでもいいけど。ナイチンゲール」  シエル「え、あれ、意外。可愛い小鳥じゃないですか。鳴き声も綺麗だし」  アルク「満足したみたいね(小夜鳴鳥とか言うもの、ちょっと良すぎたかもしれな      いけど、夜うろうろとしていて喧しいシエルには丁度良いよね)」  42.「確認と実践」        翡翠「……」(繰り返し何度も手元を見つめては、自分に何か言い聞かせている)  志貴「いや、あの、テレビのリモコンくらいでそんなに悩まなくても。     チャンネル間違ったからって、誰も怒ったりもしないし」  43.「何の算段やら」     カードをテーブルに並べながら  志貴「アルクェイド、シエル先輩、秋葉、翡翠、琥珀さん、レン、シオン。     これで7人と」     それを裏返しにしながら  志貴「羽居ちゃん、弓塚さん、蒼香、イチゴさん、朱鷺絵さん、都古ちゃん、先生。     うんうん、これはこれで……」  44.「清しこの夜」      夕闇がやがて漆黒の夜に。風は無く、空気は澄んでいる。  シエル「あら、首筋に何か、雫みたいな。      違う、雪だ。パウダースノーがヤドリギに。      遠野くん、みんな、雪が降ってきましたよ。      ああ、クリスマスの夜に相応しい事。      ……この家で主の誕生を祝う資格がある方がどれだけいるかは別として」  45.「何が何やら」  志貴「常識で考えたら、わかりそうなものじゃないか」  秋葉「普段、兄さんが常識外れの事ばかりなさるのがいけないんです」  志貴「だいたい、おかしいと思ったなら訊けよ。     知ったかぶりなんてしないでさ」  秋葉「それは……」  翡翠「どちらが悪いの、姉さん?」  琥珀「まあ、秋葉さまかな。志貴さんのリクエストも珍しいと言うか、聞いた事     ないけど、でも、蛸じゃなくて凧のお蕎麦って解釈なさるのはちょっと……」

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