天抜きリクエスト 二頁目


※サイトの90万HIT企画です。
文中で使う言葉を挙げて貰い、それを複数使って書くという趣旨です。
45迄書いて、お題の追加をしています。

【追加お題】
爪先、きつい香水、3Mの大いたち、補導、オーバーホール、新機軸、
畳のへり、ペイパーバック・ライター、イエロー・サブマリン、
マジカル・ミステリー・ツアー、銭湯、温泉、サウナ、シャワー、
風の子、食事、真っ白、人、コウモリ、紅茶、日曜日、パリジェンヌ、
香港、車線、悲しみ、ポケット、両手両足、みび、十七時間、
ベルトコンベア、アクセル、斬首、白無垢、ドリル、落し蓋、
八百万(やおよろず)、気合、つらら、鏡開き、携帯充電器、
変身ベルト、トランザム、般若、あおい祭り、勇み足、
ナイトライダー、宦官、ごろんぼう、有閑マダム  ...計49個

【出題された方々】
秋月さん、しゅらさん、のちさん、KTさん、星の車輪さん、
ペースケさん、がんさん、カパーラさん、天戯京介さん、
神代斑さん、もとはるさん


 46.「公衆衛生関係の文献見ると怖気振るいます」  幹也「うわ、なんですか、これ。酷い匂い。     え、香水なんですか? なんでまたこんなきつい香水なんか」  橙子「何を言う。そもそも香水と言う物は風呂もろくに入らない、服着たまま排泄     行為を行う、そんな貴族の嗜みとしてだな〜中略〜で、パリジェンヌならば     当たり前に付けているものだよ」  幹也「言ってる事は史実に基づいていると思いますけど、本当のところは?」  橙子「ちょっとした調合の実験に失敗してね。     原液の瓶が弾けてばしゃりと……」  幹也「とりあえず、シャワーでも浴びてきたらどうです?」  橙子「そうさせて貰う」  47.「意外と近いですけどね」  秋葉「たまには兄さん、外でお食事にしませんか」  志貴「そうだな。何がいいかな、蕎麦、焼肉、寿司なんてのも久々だし。     秋葉は?」  秋葉「私は兄さんのお好みで結構ですよ。何でも仰って下さい」  志貴「うーん、そうだ、中華料理なんてどうかな」  秋葉「わかりました。琥珀、手配して」  琥珀「はい、すぐに」  翡翠「志貴さま、お出掛けの支度を」  志貴「え、あ、ああ」  秋葉「デザートに茘枝のゼリーを」  志貴「俺は紅茶プティングとマンゴープリン。翡翠たちは何にする?」     しかし、わざわざ自家用の飛行機で香港までだもんなあ、何か別世界」  秋葉「どうせなら、本場の美味しいものを食べた方が良いではないですか」  志貴「まあ、秋葉が連れて来てくれただけあって凄く美味いけどね。     でもなあ……」   48.「詐術」  橙子「なに、人を謀る事など造作も無いよ。     大体において、人はとっさの事に対してあまりに弱い。     例えばだな、黒桐、人とコウモリの共通点を今すぐ挙げてみろ」  幹也「え、何です、コウモリ、ええっ?」  橙子「予期せぬ質問を受けると、まず瞬時には対応できないものだよ。     落ち着けば、幾らでも答えがあるのにな」  鮮花「なるほど」  幹也「どちらも動物で、いや、哺乳類で、それから……」  橙子「そして、ようやく回復するととりあえずの対応をしてしまい、よく考えない。     ほほう、黒桐、コウモリ傘は哺乳類か。なるほど君の博物学への造形の深さ     には感服するよ」  幹也「ちょっと、橙子さん、そんな汚い」  橙子「却下。……まあ、良い例ではないが、こんな感じだ」  鮮花「なるほど」      49.「お代は見ての」  アルク「ねえ、志貴、次はねえ」  志貴 「まだ何か買うつもりか? 綿菓子にヨーヨーに玩具の指輪に。      まあ、おねだりに負ける俺も悪いんだけどな」  アルク「なに、ぶつぶつ言ってるのよ。      あ、志貴、これ面白そう」  志貴 「見世物小屋……、珍しいな。      親の因果が子に報い、なんて奴だな。呪われた女の子出たりとか。      ええと、3Mの大いたちねえ、胡散臭いなあ」  アルク「早く行こうよ」  志貴 「待てって。何、ねろ・かおす屋? ……ふむふむ、行こうか」  50.「トワイライト・ゾーン」  橙子「なんだ、黒桐。熱心にデスクに向かって。     ちょっとしたペイパーバック・ライターぶりだな」  幹也「じっと待っていても懐が暖かくはならないのを悟りましたので、せめて     今の環境を活かそうと思い立ったんです」  橙子「働かざるもの食うべからずは真理だからなあ。     で、何を……『マジカル・ミステリー・ツアーのご案内』、何だ?」  幹也「いろいろいわくありげな場所を案内したり、不思議な体験をして貰うん     です。特に新機軸はないですけど、なにしろこちらは本物の強みが」  橙子「まあな、凡百の手品師が束になって掛かってこようと……じゃなくてだ     な、一応わたしは身を隠しているのだがね」  幹也「少しは美味しい物が食べられますよ」  橙子「うーん。まあ、大ツアーと言う訳でもなさそうだしな、協力せん訳では     ないさ。何々、最後はミステリアスな女魔術師による実演?」  幹也「ちょっと陳腐ですけど、最後に眼を引くような芸でもあると、満足度高     いと思うんです。ただでさえ魅力的なのに、まるで夢に誘われるように」  橙子「なるほど。まかせておけ、妖艶な姿をだな……」  幹也「あの、藤乃ちゃんと鮮花に頼むつもりなので、所長は結構です」  橙子「何故?」  幹也「何故って」  51.「定期点検」  朱鷺絵「うーん、あまり良くはないわね。疲れが堪っているのかな」  志貴 「確かに」  朱鷺絵「ただでさえ、志貴くんの体はオーバーホールで悪い所全部交換しちゃ      いたいくらいなのを騙し騙ししている面があるんだからね。      自分の体は労わってあげて?」  志貴 「はい」  朱鷺絵「体もそうだけどいろいろとストレスたまっているみたいだし、日曜日      にでも、温泉ででものんびりしたりするといいかもしれないわね。      露天風呂で、夜に入って月を眺めたり、今なら風花が散るのなんての      も素敵でしょうねえ。ちょっとだけお酒も飲んだり……。      美味しい物を食べて、朝もちょっとお寝坊したりして、風光明媚な処      をゆったりと観光したり……、いいわよねえ」  志貴 「……もしかして、朱鷺絵さんもストレスたまってるんじゃないの?」  朱鷺絵「え、やだ。ちょっと父さんがね……、ふふふ、ふふふふ」  52.「Please speek more slowly.」  志貴「うわあ、トランザム……、どうしたのこれ」  琥珀「秘密裏に作り上げたのですよ、志貴さん」  志貴「ふうん? でも、子供の頃に見た『ナイトライダー』を思い出すなあ。     好きだったんだ、車がこう自分で……、ええっ!?」  琥珀「ほぼ再現してありますよ。     ふふ、どうぞ。そんな目をしないでも乗せて上げますから」  志貴「やった、夢みたいだ……」     しばし中で過ごした後で  志貴「英語……」  琥珀「当然じゃないですか」  53.「トンネルを抜けると」  琥珀「本当に真っ白なんですねえ、何処もかしこも」  志貴「ほんの何時間前には雪の欠片もなかったのにね。     ほら、屋根の所、あんなに大きなつらら」  琥珀「お日様が出たので、ぽたぽた雫が垂れてますけど、ああしながらどんど     ん大きくなるんでしょうねえ」  志貴「……」  琥珀「どうなさったんです? 顔色が……。     子供は風の子と言うにはちょっと寒すぎますものね。     何か温かいもの、紅茶かコーヒーでも買ってきましょうか」  志貴「あ、大丈夫。そんなに寒くはないよ。     ただね、つらら見てたら連想しちゃってさ、般若の角」  琥珀「……秋葉さまですか。     でも、わたし……」  志貴「俺だって後悔してないさ」(優しく手を握る)  54.「ハレの日」  志貴 「この前のも確かにお祭りだけどさ、もっと大きなお祭りがあるんだ。      祇園祭とかねぶた祭りとか、葵祭とか。札幌の雪祭りは違うかな」  アルク「ふうん、そんなに大規模なの?」  志貴 「比較にならない」  アルク「それじゃガッツ入れないと全部食べられないね」  志貴 「そうだな朝から頑張って……って、無理。      だいたい食べる事だけか、おまえは」  55.「知られざる過去」  鮮花「冗談でしょう?」  幹也「いや、本当」  鮮花「でも、あの橙子師が音楽聞いて涙を浮かべるなんて」  幹也「だって、二、三回目撃しているんだ。     もしかすると倫敦にいた頃の思い出とかが蘇ってくるんじゃないかな」  鮮花「そうですね。なまじ悲しい曲とかでないだけにかえって……。     ちょっとあの曲で泣くなんて違和感ありますけど」  幹也「まあ、何かしら誰でも心の傷痕とか、感傷的になるツボがあるものだよ。     鋼鉄の処女なんて陰口されている橙子さんだって、王子様が現れるのを     待っていた女の子の頃はあったろうしね」  鮮花「そうですね。橙子師だって、あれで繊細な処もありますもの。     あら、凄い偶然。ラジオから流れてるの……」  幹也「おっ、噂の『イエロー・サブマリン』だね。よし、鮮花見てようよ」  橙子「……ふう。ダメだ、この曲を聴くと、どうしても思い出してしまう。     若かったとは言え、なんて馬鹿だったんだろう」  鮮花「……本当だ」  幹也「……だろう?」  橙子「なんで、なんでわたしはあの時……、全部食べておかなかったんだ。     ああ、悔し涙がこぼれる……、くそっ、くそっ」  鮮花「兄さん?」  幹也「いや、その」  56.「こっちが気にする」  志貴「俺も銭湯とかサウナってほとんど経験無いよ」  琥珀「あら、そうなんですか」  志貴「有間の家にも立派なお風呂あったし。     それに……」  秋葉「それに何ですか?」  志貴「胸の傷がさ、知らない人をかなりびっくりさせちゃうから」  琥珀「あ……」  秋葉「その、ごめんなさい、兄さん」  志貴「謝られるとこっちが困るぞ、秋葉?」  秋葉「はい。     私は平気です。兄さんと一緒に銭湯でもサウナでも温泉でも」  琥珀「はい、わたしもご一緒しますよ」  志貴「あ、ああ(って、そういう訳にもいかないけどな)」  57.「青信号は進め、赤信号は気をつけて進め」  アルク「志貴、少し煩い」  志貴 「煩いじゃないだろ、前見てくれ、頼むから。      ほら車線跨いでる。信号も見て、ほら」  アルク「せっかく志貴とドライブしようと思って自動車用意したのに、全然喜んで      くれないんだもの、つまんないなあ。      よーし」(アクセルを思い切り踏み込む)  志貴 「わ、止せって。わあ、ああああ!!!」      十数分後。  アルク「でも、面白かったよね、ほらジェットコースタームービーみたい」  志貴 「これは映画でなくて現実だし、ジェットコースターはどれだけ怖い思いし      ても事故までは起こさない。      駐車場からここまで来る間に、何で廃車になるんだ……」  58.「最後の優しさ」  シエル「さあ、遠野くん」  志貴 「やっぱり出来ない、出来ないよ、シエル」  シエル「これしか方法が無いんです。      平気ですよ、わたしは何回も死んでいるんですから。      両手両足を縛られたままハリネズミみたいに串刺しにされた事も、斬首さ      れた事もあるんです。それに比べたら幸せです。辛さも悲しみも無いです。      愛している人に殺されるんですから」  志貴 「そんなの、嘘だ」  シエル「嘘ではありませんよ。つみびとのわたしがほんの少しだけど幸せになれて、      こうして遠野くんに泣いて貰っている。      わたしがわたしでいられる内に、どうか、遠野くん、お願い」  志貴 「……」      蒼白な顔でポケットから取り出される七夜の短刀。      のろのろと近づく手を、嬉しそうに見つめるシエルであった吸血鬼。  59.「狂った果実」  秋葉「何ですって、兄さんが補導された?」  琥珀「ええ、そう連絡がありました」  秋葉「何て事でしょう。     こうしてはいられないわ。     最高の弁護団を組織して、いえ、それよりも兄さんの経歴に傷が残るような     事は……。     お金で解決するなら……、それは、でも……。     そうだわ、実力行使で、奪還を。     兄さんがどんな凶悪犯罪を犯していても、私だけは傍にいて味方に。     二人の絶望的な逃避行。でも、互いがいれば、それだけで……」  琥珀「最初は単なる勇み足だったのに、ドリーム入っちゃって。     もう、帰って来て下さいってば。……聞いてないわね」  翡翠「あの、姉さん。志貴さまはただ……」  琥珀「ええ。それを説明しようとしたんだけど、秋葉さまったら。     でも意外とマイナス方向に信頼されているんですね、志貴さん」  60.「後手後手に回るご攻め」  志貴「ご…………、ごろんぼう」  秋葉「却下。適当な事を言ってもダメです」  志貴「まて、本当にある言葉だって。ごろつきとか無法者といった意味。     方言かもしれないけど確かにある」  秋葉「うーん……、わかりました。では、翡翠の番ね」  翡翠「梅サンド」  琥珀「毒矢」  秋葉「やご」(にやりと笑みを浮かべ)  志貴「ご、また、ごか……」(呆然と)  秋葉「まあ、ゆっくりと考えてください。     その間に、私達は日曜日の予定を考えていますから」  琥珀「そんな、秋葉さま、もう志貴さんが負けるのがわかっているみたいに」  秋葉「そんな事はないわよ。もしかしたら私が降参して、朝から夜まで一日皆の言     う事を聞く羽目になるかもしれないもの」  翡翠「志貴さまが……、何でも、何でも」  琥珀「ふふ、翡翠ちゃんまでうっとりと。     そうよね、七時に目を覚ますとして、日付変わるまで十七時間」  秋葉「楽しみね。兄さん、どうですか?」  志貴「ご、ご、誤謬は言った、誤診はダメ。ご、ご…………」  61.「新年を迎えるにあたり」  志貴「さすがに立派な正月飾りだな。     鏡餅もこんなに大きいし」  秋葉「当然だと思いますけど?」  志貴「そうだよな。     でもさ、鏡開きの時に困りそうだね。七草粥したり、お汁粉したりするにし     てもちょっと大きすぎるだろ?」  琥珀「はい?」  秋葉「兄さん、何を言っているのです?」  翡翠「志貴さま?」  志貴「だからさ、鏡開きするだろ」  秋葉「もちろん致しますよ」  志貴「そうしたら、その餅をさ……。     いや、何でもない。気にしないでくれ」(本能的に危険を感じて会話終了)  秋葉「変な兄さん」  62.「報告と許可」  秋葉「もっと落ち着いて下さい、兄さん。     畳のへりを弄るのはやめて。爪先も痛みますよ。     言いたい事があるのなら、早く仰ったらどうです。     わざわざ和室に場を設けて、私にお話をと仰ったのですから、さぞ興味深い     事が聞けると楽しみにしているんです。     実は……?     どうしました。     用が無いのなら私も忙しい身ですので失礼しますよ。     貴女は黙っていて下さい。これは私と兄さんのお話です。     さあ、兄さん?    (婚約の報告なんてものに付き合っているんですから、せめてしっかりと私の     眼を見て話すくらいして貰わないと駄目ですからね……)」  63.「物憂げに気だるくかな」  橙子「今の時期の倫敦はちょっと憂鬱ね。巴里の方がいいかしら。     久しぶりにパリジェンヌを気取ってカフェで過ごすのも素敵。     黒桐くん、知ってる? 意外とあそこで食べる焼き栗が美味しいのよ。     七番街のお店のモンブランとか、マロングラッセもいいわね。     あ、紅茶のおかわりはいかが?     そうね、本当に久々に欧羅巴でも回ってみるのも退屈しのぎにいいかも。     黒桐くんもご一緒にいかがかしら?」          誘うような妖艶な瞳で年下の青年を見つめる。  橙子「どうだ、有閑マダムっぽいだろう」  幹也「あんまり」  橙子「そうか、いい線行っていたと思ったがなあ」  幹也「確かに暇だけは嫌になるほどありますけどね。     そもそも暇つぶしに有閑マダムごっこって発想からして間違ってます」  橙子「じゃあ、やっぱり最初に言っていたように黒桐を若いツバメに見立てて…」  幹也「却下」  64.「それでも可能だけどね」  秋葉「兄さんには本当に呆れ返ります」  志貴「いや、その……」  秋葉「学生の身でありながら、ふしだらな真似をして。     補導されそうになったそうじゃないですか」  志貴「それは……、その、ええと」  秋葉「言い訳は結構です。     何か考えないといけませんね。盛りのついた犬みたいにまったく。     そうだ、兄さんは宦官って知ってます?」  志貴「聞いた事はあるような。何?」  秋葉「教えてあげましょう」       十数分後。  志貴「それだけは、それだけは、許して、許して下さい、秋葉……」(土下座)  65.「無きゃ無いですみますけどね」  有彦「おっとしまった。ちょっと連絡入れとかないと。     王子様の不在で女の子を悲しみに暮れさしたんじゃ、男がすたるからな。     ん? あれ、なんだ電気切れか。     遠野、すまないけど電話貸してくれ」  志貴「ああ、好きに使っていいよ、王子様」  有彦「サンキュー……、ってダメだ。番号は見ないとわかんないな。     携帯充電器貸してくれ。それと電気はくれ」  志貴「変な表現だな。ええと、ごめん、ウチにはないや」  有彦「へ?」  志貴「誰も携帯電話持ってないからさ、充電器も無いよ」  有彦「つくづく変わった家だな。まあ、らしいと言えばらしいけど」  志貴「ああ」  66.「燃える!」  琥珀「いまでもその眼の力のみに頼っていては、いつか身を滅ぼします」  志貴「それはわかっているよ。     でも、俺が戦わないで誰が三咲町の平和を守るんだ?」  琥珀「そう言うと思っていました。     それで、幾つかパワーアップアイテムを用意しました。     まずは、これです」  志貴「おお、男の子の遺伝子レベルで内蔵されている浪漫な、ドリル!」  琥珀「このドリルアームは凄いですよ。     続いては加速装置。真っ赤なスカーフ付です」  志貴「色が違う……。まあ、いいか。     使い方は、ふんふん、気合入れて叫ぶのか。OK」  琥珀「そして、最後は変身ベルト。     全身タイツで主に防御面を重視した仕様になっています」  志貴「これもいいなあ。ありがとう琥珀さん。俺、やるよ」     ぱっらぁ、ぱらららぁぁぁんんん(トランペットの音)  志貴「って、なんて夢だよ。それも初夢で。      力拳作って上半身起こして目覚めてる辺りが、何と言うか……」  67.「雖千萬人吾往矣(千万人といえども吾往かん)」       式 「止めるのか、橙子?」  橙子「止めはしないが、さすがに無茶じゃないのかね」  式 「うるさい。邪魔するものなら、たとえ神でも殺す」  橙子「ほほう、我が国には八百万の神々がおわすのだがね。     まあ、その意気や良しとしよう。     今のおまえの姿を見たらそれだけで黒桐は感激して涙流しそうだな」  式 「無駄口に付き合っている暇は無い。まだ、引き止めるなら…」  橙子「わたしも情け容赦無くか。ふ、行くなとは言わんさ。     だが、わたしも同行する。仮にも可愛い従業員の危機だ。     それに、我が愛弟子も飛び出したようだし、見殺しには出来ん。     それでは、行こうか、式」  式 「ああ」    68.「幸せの瞬間に」  秋葉「近づけば近づくほど信じられなくなって来たわ。     もうほんの数分しか残っていないのに。     こんな白無垢姿で、すぐ傍には兄さんがいて。     まるで夢みたい。     ううん、夢でもいい。こんな夢なら、後で醒めてしまったとしても幸せ」  69.「嫌な夢を見た」  式 「それで、部屋の中央、ちょうど幹也の立っている辺り。     そこが変に膨らんでいたんで見たら、落し蓋になっていたんだ」  幹也「ふう、何もないよ」  式 「当たり前だろう。     それでどうなっているんだろうと思ったら、下の部屋が覗けてガタガタいう     音が聞こえてきたんだ。ベルトコンベアに載って次々に……」  幹也「ああ、それで最初の話につながってくるんだね。     うわあ、それは嫌だなあ」  式 「だろう? あんなのが量産されて…」  橙子「ほほう、話が弾んでいるな。何が、量産だって?」  幹也「……」  式 「……」      70.「終わりを間近にして」  志貴「あ、ああ……、意識が、飛んでたみたいだね。     苦しさは無いよ。だから却って、もう今度こそって感じる。     うん、嘘はお互い止めようって誓っただろう。     ごめんね、こんなに早く体が。     でも、満足はしている。     こんな小さな時に出会って、血の繋がりはないけど兄と妹で。     それなのに愛し合って、結ばれて、いろいろあったけど皆にも祝福されて。     喧嘩もしたけど、その度に仲直りして、もっと仲良くなって。     本当に、短い間だったけど、喜びも悲しみも充分すぎるほど二人一緒に。     うん、うん、そうだよね。     あの時、がんとして拒まなかったらどうなっていただろう。     有間の家を出なかったら、こうならなかったのかもしれないね、都古」  71.「古今東西、中途半端でいらいらさせられるもの」  志貴 「パーツが微妙に歪んでて、うまくはまらないプラモデル」  幹也 「消すんだか、置いてあるだけなのかわからないタバコの吸い殻」  琥珀 「もう少しの処で開かない蜂蜜の瓶」  アルク「肝心の部分が載っていない攻略本」  シエル「勢いが足りないシャワー」  鮮花 「電源ボタンだけ効かなくなったテレビのリモコン」  式  「寸前で終わる夢」  秋葉 「使用できる範囲が制限ありすぎるカード」  一子 「狭い駐車場の空きスペース」  志貴 「後は何があるかなあ……、翡翠はどう?」  翡翠 「お茶の支度はしたものの、出すに出せない今の状態でしょうか」    72.「どちらがいい?」   志貴 「で、コウモリは動物の仲間にも鳥の仲間にも入れなくなったんだ」  アルク「ふうん、面白い。      ねえ、わたしもそうかなあ。      人じゃないし、真祖ももういないし」  志貴 「バカ。おまえは一人じゃないだろう?」  アルク「うん、そうだよね」    73.「王侯貴族な気分」   一子「サウナの後、こうやってぐんにゃりとしているのは堪らないな。     こうして甘露で喉を潤して、と」    (タバコの吸い殻を灰皿に放って、ジョッキを口に)    「ああ、本当に天国だよ、ヘヴンだな。     後は、年下の男の子に足揉まれたりしたら最高だろうなあ……」  志貴「やれって言うならやりますよ」(溜息)    74.「雅楽が趣味ではないでしょうし」   志貴 「うーん、どこやったかなあ」  秋葉 「何がです、兄さん」  志貴 「あれだよ、あれ。浄瑠璃の羽じゃなくて、ええと……」  琥珀 「ばちでしょう。あれは、前に使ってから……、翡翠ちゃん、わかる?」  翡翠 「確か、またお部屋に戻していたと記憶しています」  志貴 「最初に見た筈だけどなあ」  秋葉 「よくある事ではないですか。さんざん探し回って、ポケットに鍵が入っ      てるの見つけたり、いざ食事に出掛けるという段になってから……」  志貴 「今はいいだろう。まあ、いいや、見てくるよ」  シオン「皆には何の不自然さも無いようですが、三味線と志貴の組合せ?」         75.「踏み台が見つからなくて」   志貴「仕方ないな、ほら」(両手両足をついて四つん這いに)  秋葉「え、え、ええっ!?」  志貴「何なら肩車でもいいけどさ、これくらい高さあれば届くだろ?」  秋葉「それは、届きますけど。兄さんの上に、足を、踏んで、そんな……」  志貴「いいから、いいから。でも足場に気をつけてな」  秋葉「はい。あああ……、いいのかしら、でも……」     爪先を志貴の背に、そして踏みしめ。  志貴「おい、気をつけないとぐらつくぞ」  秋葉「だって、だって(ダメ、お酒に酔ったみたいにぼうっとしている)」        76.「料理」   琥珀「ただお鍋の蓋をするだけでなくて、落し蓋をしておく事で熱が均等に回り     ますし、煮汁の染み込みも早くなるんですよ。     ほら、このちくわとか人参も良い色になっていますでしょう?」  秋葉「なるほど、上から押さえつけて行くことで効果を出す訳ね」  琥珀「……まあ、そうですね。     ただ、あんまり重くするといけないんですよ、潰れてしまいますし」  秋葉「過度に重圧を掛けるのはダメなのね、それはそうよね」  琥珀「はい、適度なものにするのが大切ですね」  秋葉「生かさず殺さずといった感じなのね」  琥珀「何だろう、このもやもやする感じって」(呟き)    77.「殺人淫楽はどうなるのかな」   シエル「遠野くんの中には、殺人を好むもう一人の遠野くんがいる、それは眼を      背ける事の出来ない事実です。      遠野くんはその自分を嫌悪しています。もしかしたら夜に蠢き魔剣を振      るう邪鬼と化すかもしれない……、それは本能的な恐怖を招くでしょう。      それで、その血を求め、殺し、壊し、恐るべき死の舞踏を行う代わりに、      代償行為として、別の欲望を求めるのかもしれません。      その、性的な……、SEXをですね……」  アルク「なるほどね、じゃあ、志貴のあれって……。      そうよね、両手両足ばらばらで斬首する行為の裏返しだものね」  秋葉 「大量殺人と言うか、連続殺人鬼ね」  シオン「一家惨殺で飽き足らず、外にまで出て凶刃を振るうのですね」  翡翠 「念入りです」  琥珀 「淫楽殺人症ですね」  志貴 「……。      レンだけだよ、わかってくれるのは」  レン 「……」(話がわかったのかどうなのか、殺さないでと訴えている瞳)  志貴 「…………、ふう」  78.「昔は安かったけどね」   志貴 「うん、美味しい」  秋葉 「鯨のベーコンですか。珍しいものが好物なんですね      琥珀が食事がどうのと言っていたと思ったら」  志貴 「好物ってほどでもないけど、久々だし。      最近はすっかり高級品扱いだから、あまり見ないよな」  アルク「志貴が鯨好きなんだったら、持ってくるよ」  志貴 「え……」  秋葉 「ちょっと止めてください」  アルク「え、え、なんで、鯨のベーコンでしょ。なんでダメなの?」  志貴 「……鯨を担いで来るのかと思った」  秋葉 「兄さん、私もです」  79.「一人で穴を掘ると一時間だが」  琥珀 「では、次の問題になりますが、どうですか、シエルさん?」  シエル「どきどきしています」  琥珀 「次に正解なさいますとメシアンの無料御食事券が獲得できます。      頑張ってくださいね。      問題です。      アルクェイドさんを、志貴さんが縦か横に切断すると復元に一時間掛かるとします。      では、十七分割すると完全復元まで十七時間が掛かる。      さあ、○か×か、どっちでしょうか?」  80.「白い羽根が舞うように」  秋葉「あ、兄さん。とうとう雪になりましたよ。     綺麗……。やはりこちらだと違いますね。     パウダースノー。本当に風に乗っていて軽い感じ。     夕闇にくっきりと見えて、空を見上げると吸い込まれそう。     もっと積もったら、この峠からの眺めは素敵でしょうねえ。     もしも、この寒空に耐えて一晩持てばですけど。     風邪どころか、肺炎までなりそうな、この…」  志貴「悪かった、悪かったってば。     連絡は取れたから、もうすぐの辛抱だよ」  秋葉「そうですか、まあ許してあげてもいいですけど、条件があります」  志貴「な、なに?」  秋葉「体が冷えないように隣で暖めてくれません?」  志貴「いいよ、おいで」  81.「語源」  志貴「だから、元々は智慧を意味する言葉なんだよ。     決して変な意味でなくて、仏教のありがたい考え方でさ」  秋葉「そうですね、それくらいの知識は私にもありますよ、兄さん。     でも意外と博識なんですね、驚きました」  志貴「そうか?」  秋葉「ええ。で、その博識の兄さんにお訊きしたいのですけど……。     私が般若みたいにって今しがた仰ったのは、誉め言葉だったんですよね?     答えてください。     どうしたんです、風邪ではないですよね、そんなにがたがた震えて。     さあ、答えてくださいな?」  82.「喜びも悲しみも」         アルク「そうか、人みたいな感情を知るって、楽しい事ばかりじゃないんだね。      こんな、悲しみとか寂しさとかも味あわないといけないんだ……。      でも、それでも、志貴と過ごした時間は、私のいちばんの宝物だよ。      おやすみなさい、ゆっくり、ゆっくり休んでね、志貴」  83.「連続物なんです」           「ふははは。どうだぁぁ、殺人貴。所詮、貴様は死せる人の身だ。     我らが7死徒、魔剣の選び手達が揃えば、単なる煩わしい蝿にすぎん。     いかな姫の危機とは言えのこのこと、とんだ勇み足であったな。     後悔しつつ死ぬが良い。     行け、ふくろう怪人γマッシヴ、コウモリ鬼ドリルヘヴン」    「いゅみゅみゅみゅみゅ……みびゃああああ!!!」    「ごろおおお、ごろんぼうおおおおお」     大地を震わせ、空を割り、二つの影が倒れ伏す人影に迫る。     しかし、その時。     爆音と共に疾走する車。近づき、さらにアクセルが踏み込まれる。     漆黒の弾丸の如きトランザム。    「待てぃ」    「ぬうう、何奴?」    「まだ、そいつに死なれては困るんだ。     立て、遠野。悲しみを、絶望を、恐怖を、乗り越えて。     気合で立ち上がるんだ。     そして、こいつを受け取れ。新しい変身ベルトだああああッッッ」                            ……つづく。  シオン「いえ、こんな夢を見たと言われても。      夢占いというのは専門外です。しかし、不可解な……」        84.「男としてね」    志貴 「そろそろ昼だな、食事にするか」  アルク「うん。何にするの?      この前のお蕎麦だっけ、あれは立ったまま食べるのが面白かったよね」  志貴 「いや、もうちょっとマシ。今度は椅子がある。      ここだよ、うどん屋。麺と汁だけ貰って、後は自分で具を乗っけるんだ」  アルク「ふうん、面白い。志貴っていろいろ知っているね。      ええと何て言うんだったかな、そう、グルメだね」  志貴 「……。ほら、トング。俺は、そうだなあ、月見にしようかな」  アルク「天麩羅だけでもいろいろあるんだね。      海老にかき揚げに、イカに、これはトリ天ね、ふうん。      こっちはナルトにかまぼこ、椎茸にほうれん草。      どれにしようかな。いいや、いろいろ乗せちゃおう」  志貴 「そんなに……?」(心配そうな顔ょ  アルク「うん。平気だよ、今日はわたしが奢るから」  志貴 「え?」  アルク「ね、いつも志貴にご馳走して貰ってるもの、たまにはいいでしょ?」  志貴 「あ、ああ」  アルク「うん、美味しいね。どうしたの、志貴?」  志貴 「いや、奢られるのはまあいいんだけどさ。      それならもっといろいろ取れば良かったと思ってる自分がちょっとな」  アルク「ううん? よくわからない。      はい、ちくわ天あげるから元気出して」  志貴 「そうか、ありがとうな」  85.「花嫁衣裳」    幹也「式はやっぱり着物がいいよ。白無垢姿」  式 「まあ、違和感はないかな。じゃあ、鮮花は?」  鮮花「私は……、どっちかな」  幹也「鮮花はどちらも似合いそうだね。ウェディングドレス姿もいいと思うよ」  式 「ふうん、えらく評価高いんだな」  幹也「そうかな? 藤乃ちゃんならドレス姿が映えるね、きっと。     綺麗だろうなあ」  式 「……」  鮮花「……」  幹也「え、何かまずい事言ったかな?」  橙子「面白いな、お前達は。     じゃあ、わたしはどうだね、どっちが似合う?」  式 「……」  鮮花「……」  幹也「……」   橙子「いや、場を和ませようと言っただけなんだが。     どうせ、する気あるんですかとか、鋼鉄の処女だのなんだのと言われる     と思って。そう申し訳無さそうに下向かれると……」       86.「冬だなあ」   志貴 「お、あんな処につららが出来てる。      ここしばらく雪が続いて、昼間はぽたぽた雫が落ちたりしてものなあ」  アルク「え、どこ?」  志貴 「ほら、あそこ。つららって言うにはちょっと小さいけどな」  アルク「あれね」     ポキン  志貴 「何するんだ、おまえは」  アルク「え、たって下に人がいたら危ないんじゃないの。       なんで、怒ってるのよ、志貴は」  志貴 「そうだけどさ、情緒とかそういう……、いや、俺が悪かったよ」  アルク「うん」(わかっていなさそう)        87.「さよならは言いません」   秋葉「遠野志貴なんて人は我が家にはいません。     ずっと遠い昔に、我が身を省みずに幼い私を助けてくれた兄がそんな名前     でしたけど、もういません。     私の兄さんはその時に死んだのです。     そう思う事にします。     一度手元に戻ったのにすぐに失ってしまうなんて耐えられませんから。     もう、あの頃の悲しみに耐えられそうにないですから。     だから、無関係な貴方が何処で何をしようと構いません。     何を探すのだか知りませんが、宿願を果たされる事を……」     月も無い闇夜の中で、何かの影が頷き、そして風と共に消えた。   88.「香料でダブリはあるかも」   死徒狩り「きつい香水で血臭を隠したつもりかもしれんが、そんなものは通用し       ない。死ね、異端め…ぐあぁぁああ」バタリ  カリー 「失礼ね、この最高のブレンドのカレーをきつい香水だなんて。       殺されなかった事を感謝なさい」       マッシヴなポージングを決めつつ。  89.「むしろ疎外感覚える事もありますが」   橙子「しかし、何気に黒桐も女の子に囲まれる立場だな。     それもかなりレベルの高い娘ばかり」  幹也「そうですね所長を筆頭に、ハーレム状態ですね」  橙子「お、軽く流したな、麗しの王子様?」  幹也「だって鮮花は妹だし、藤乃ちゃんは鮮花の友達。     所長は所長じゃないですか」  橙子「そういう事を言う辺りが……、まあ、最初から式一筋で旗幟鮮明だったか     らね、君は。女の敵にはなりえないな」  90.「あとで振り返れば」  志貴「夢みたいに思うのかな。     朝から夜、そして次の朝までまでずっとありえない夢を見ていたように。     でも、今はこれが日常なんだよな」     周りのいつもの面々の様子を、やさしい笑みで見つめながら。     

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